暗殺教室の戦闘員 〜異世界からの侵略×超生物の出現~   作:汐音 アイリ

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進め〜、進め〜




011-睡眠の時間

トリオン体と生身の関係には、未だ謎も多い。

トリオン体での経験がどの程度生身に反映されるのか。

トリオン体でのショックが生身にどういう影響を及ぼすのか。

トリオン体と生身での感覚には違いがあるのか。

トリガーは近界の未知のテクノロジー。

使い方、活かし方こそわかっているが、まだまだわからないことの方が多い。

 

そこで私は、鬼怒田さんに言いたい。

「疲労は結構反映されます」と。

 

ついつい、E組になる前の感覚で兄に付き合ってしまった。

私自身もノリノリだったので兄のことは言えないが、E組の授業はサボると面倒になりそうだ。

本校舎と違って生徒に、クラスメイトに無関心ではいてくれないクラスは、休むとなれば何かしらのアクションを起こしてくるだろう。

そういう目立ち方は、私の望むやり方ではない。

 

……感覚はほとんど戻ってきているが、模擬戦で切断されたところにまだ痛みがあるような気がする。

戦闘後の妙な疲れが全身を包んでいるが、感覚は逆に鋭く冴えていた。

意識を切り替えようという思考がなかったせいか、日常と非日常の合間にいるような、ふわふわした感じだ。

なのに、気配には敏感に反応してしまう。

身体は休息を欲しているというのに。

いろいろと面倒くさがった結果がコレだ。

 

その状態で勉強など、通常よりも効率が落ちるのは当たり前で、殺せんせーはとてもうるさかった。

ただでさえ、理事長に言われたことを気にしてか増えた分身がうるさいのに、とことん神経を逆なでされている気分になる。

……いや、自業自得だとはわかっているけれども。

 

だから、暗殺という身近なチャンスに甘える生徒たちに対して殺せんせーが何やら不機嫌になっても、校庭に巨大竜巻を起こしても、私はどこかぼんやりとしていた。

 

「第二の刃を持たざる者は……暗殺者を名乗る資格なし!!」

 

殺せんせーの声が遠くに聞こえる……。

 

「明日の中間テスト、クラス全員50位以内を取りなさい」

 

ああ、眠いなぁ……。

 

 

◇◆◇

 

睡魔は私を倒そうと躍起になってすがってくる。

それをどうにか抑え込みつつ、本校舎の理事長室までやってきた。

特に呼び出しがあったわけでもなく、いわば私の趣味なのだが、入室の許可はすんなりと出た。

 

「どうかしたのかな?」

 

そう、張りつけたような笑みで問う理事長に微笑み返し、勝手に端のほうのソファに腰を下ろした。

 

「特に用事があるわけではないので、お気になさらず。

……それにしても本校舎が、いえ、中学3年生が随分と慌ただしいですね。何かあったのですか?」

 

半ば確信をもっての問いかけだ。

理事長は特に動揺しなかった。いつも通りのままだ。

 

「テストの前日だからね。慌ただしいのも当然のことだ」

 

誤魔化しの色を纏って答える理事長を、数秒見つめる。

 

「……まあ、なんでもいいですけどね、私は。

それより、今日は来客の予定はありますか?」

「特にないね」

「じゃあ、仕事の邪魔はしないのでしばらく居させてもらいます」

 

勝手に宣言し、一瞬言葉に詰まった理事長を横目にソファに横になる。

制服の上着を畳んで、簡易枕をつくった。

 

「おやすみなさい……」

 

その言葉を最後に、意識はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

途中、気配を感じて意識が覚醒したが、特に何もされるわけでもなく、ただ相手の視線を感じた。

しばらくして、身体にふわりと暖かいものがかけられる。

気配が去っていくことを確認して、再び意識は闇に沈んだ。

 

 

◇◆◇

 

時間にして約2時間半。

全快とはいかないが、眠気は幾分マシになっていた。

 

身体を起こすと、肩からスーツの上着が滑り落ちる。

誰のものか、など聞くまでもない。

黙々と仕事を片付ける理事長に、畳んだ上着を差し出した。

 

「ありがとうございました。……意外と、優しいんですね」

「本当はブランケットがあればよかったんだけどね。

ここには置いていなかったから。体調管理はしっかりしなさい。睡眠は大切だ」

「はーい、気をつけます」

「それにしても……なぜ、ここに来たのかな?」

 

まあ、最もな疑問だ。

家に帰るなり、保健室に行くなりすればいいところを、あえて理事長室に特攻をかける人間など中々いない。

 

「人の出入りが少なくて、気配がわずらわしくない場所を求めていたので。家に帰るまで保たなそうだったし」

 

理事長室は基本、理事長一人しかいない。

生徒たちが過ごす空間からも離れた場所にあるので、校内ではわりと静かなところだった。

 

「それでは、お疲れ様でした」

「……待ちなさい」

 

とっとと退散しようとすれば、呼び止められた。

説教か、と身構える私の前に出されたのは数学の教科書。

 

「少し、授業をしてあげよう」

 

 

…………え?

 

 




いくら幸視点でも、すべてを描写しているわけでもないのです。
無意識のこととかもありますし。
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