暗殺教室の戦闘員 〜異世界からの侵略×超生物の出現~   作:汐音 アイリ

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ようやく修学旅行です。




014-旅行の時間

E組の中間テストはボロボロだった。

私の予想に違わず、テスト範囲は大幅に変更されていた。それも、テストの2日前に。

 

殺せんせーはずっと黒板の方を向き──生徒に背を向けて落ち込んでいる。

「E組全員が50位以内を取らなければ出ていく」などと言っていたから、その言葉通りにするのでは……という懸念もあったが、テスト範囲の変更というイレギュラーで無効らしい。

 

「……先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見すぎていたようです。……君達に顔向けできません」

 

私は殺せんせーの落ち込む姿をぼんやりと眺めていた。

思うに、殺せんせーは早まりすぎたのだ。

もっとじっくり育てていくべきところを、自信をつけさせようとしたのか、反抗するのがはやすぎた。

理事長が釘をさしにきた時点で……それよりも、最初から上手くいくわけがないという“お約束”から考えて、今回の結果は当然のものだ。

 

しんみりとした空気の中、唐突に対先生ナイフが黒板に向かっていく。

そのナイフは当たる直前で殺せんせーに避けられ、黒板に軽くぶつかった。

 

「いいの〜?顔向けできなかったら俺が殺しに来んのも見えないよ」

「カルマ君!!今、先生は落ち込んで……」

 

殺せんせーの言葉は、ばさりとカルマくんが教卓になげたテストを見てとまった。

 

英語98点、国語98点、数学100点、理科99点、社会99点。

合計494点で学年4位。

 

それを見て、E組の他の生徒も感嘆の声を漏らす。

私も正直驚いた。

カルマくんのE組行きの理由は素行不良だし、彼の不意打ちの仕方や洞察力から考えても頭がいいのはわかっていた。

だが、学年順位は基本的に10~20位といったところで、1桁にのったことは1度もなかったと記憶している。

「能ある鷹は爪を隠す」と言うが……いや、カルマのくんのことだからやる気が出なかったとかで手を抜いていそうだ。

……あ、今のなんだかしっくりきた。

 

それにしても、何が彼のやる気スイッチを押したのかはわからないが、この点数は明らかに先の範囲の学習が終わっている……?

どうしてわざわざ、先の範囲の予習なんてしているのだろう。

余力があったとしても、目の前のテストに全力を注ぐのが普通ではないのか。

 

「俺の成績に合わせてさ、あんたが余計な範囲まで教えたからだよ。

だけど俺はE組、出る気ないよ。前のクラス戻るより、暗殺の方が全然楽しそうだし」

 

あ、殺せんせーのせいですか。そうですか。

そういえば、テスト直前の分身授業でなんだか嫌そうな顔をしていたのを見た覚えがある。

それでも、なんだかんだ言いつつものにしているのだから大したものだ。

 

そこでカルマくんは「それに……」と言いつつ教室の後ろ、私を見た。

返却されたテストを隠すこともなく机に広げていたのは私だが、盗み見はどうなのか。まあ、別にいいけれど。

 

「太刀川ちゃんも、点数結構いいでしょ?」

「……悪くはないけれど、私はカルマくんみたいに自分の点数をさらす趣味はないよ」

 

口では拒否したが、さらりと私のテスト用紙を持って行ったカルマ君に対して抵抗はしなかった。

 

英語82点、国語100点、数学85点、理科70点、社会76点。

合計413点で学年35位。E組内2位で、女子トップ。

 

私の点数はカルマくんには劣るものの、E組の空気を盛り上げるには十分だった。

数学の点数がいいのが誰のせい……いや、誰のおかげなのかは黙秘します。

 

「私も、ぬける気はないからね」

 

一応伝えておく。

本校舎に戻ったところで、また仮病でサボる毎日が始まるだけだし、何より私にはボーダーから与えられた任務(ミッション)があるのだから。

カルマくんはニヤニヤと笑いながら「全員50位以内に入らなかったことを言い訳にして逃げるのか」と殺せんせーを挑発した。

 

「なーんだ、殺せんせー、怖かったのかぁ」

「それなら正直に言えば良かったのに」

「ねー、『怖いから逃げたい』って」

 

それに乗っかり、口々に煽る生徒たちに殺せんせーは「にゅや──ッ!!」と声をあげた。

それは、今までの落ち込みやら後悔やら、マイナスの感情を吹き飛ばすかのようだった。

 

「逃げるわけありません!期末テストで倍返しでリベンジです!」

 

殺せんせーの言葉に、クラスに笑いが溢れた。

 

中間テストで壁にぶち当たったけれど、E組はまだ大丈夫だ。

 

 

◇◆◇

 

 

楽しいことへの切り替えははやいもので、教室はすっかり修学旅行モードだった。

 

修学旅行は、実はあまり好きではない。

年々平気になってきてはいるが、大規模侵攻以来、修学旅行中に再び近界民の大規模な侵攻があったら、と不安が募っていくのだ。

遠い地で自分が楽しんでいる間に、自分の大切な人や居場所がなくなったら……。と思わずにはいられない。

ボーダーが強いことはわかっていても、これは理屈じゃない。

 

大規模侵攻で精神的な傷を負った人は多い。

 

ある人は、空を見られなくなった。

──近界民は空に開いた(ゲート)から侵略してきたからだ。

 

ある人は、大きな白いものに恐怖を抱くようになった。

──目立つ大きさの近界民は白かったから。

 

ある人は、復讐を拠り所にしないと立ち上がれなかった。

──目の前で大切な家族を奪われた悲しみ、無力感に屈しそうになりながら。

 

……私は。

その人達に比べれば、トラウマは軽度なものなのだと思う。

それでも、確かに心は蝕まれていくもので。

私は「まもる」ために戦っているのだ。

まもる場所を離れるなんて、私には耐え難いことだ。

 

 

深呼吸を1つ。

ゆっくりと息を吐き、閉じていた目を開けた。

荒れていた心を鎮めていく。

私の内心がどうあれ、E組には関係のないことだ。

楽しみにしているみんなの中で、わざわざマイナスオーラを撒き散らす意味もない。

 

「先生、あまり気乗りしません」などと言いながら殺せんせーも大量の荷物をリュックに詰め込んで「ウキウキじゃねーか!」と突っ込まれていた。

 

だが、ここは暗殺教室。

単に楽しい旅行では終わらない。

京都の広く複雑な地形を利用し、国が雇った狙撃のプロが仕留める予定である。

生徒たちは狙撃ポイントに殺せんせーを誘導するのが役目だ。

 

狙撃のプロと聞き、脳裏にはボーダーの狙撃手ツートップの顔が浮かぶ。国が雇ったのなら彼らがその任務につくことはありえないが、同じくらいの腕前は期待したかった。

さらに、ボーダーでは「狙撃手(スナイパー)の天敵」といわれる私としては、狙撃手の居場所を突き止める気満々だった。

なんとも迷惑な話である。

まだ見ぬ狙撃手に合掌。

 

 

◇◆◇

 

修学旅行中、クラスは班に分かれて行動する。

私の交友関係を考えて余り物(・・・)になるのを避けるなら選択肢は1つしかないと察した。

私が今まで関わってきた人物と班構成を思い出せばわかってくれるはずだ。

 

だが、あえて1人で見回るというのもアリかもしれないと思い直す。問題は許可が出るかどうかだが……。

E組での私の協調性が低い仕様であることを除いても、四六時中他人と隣で過ごすのは疲れそうなのだ。

 

班員を書き込む用紙を1枚とると、班長の欄に自身の名を書く。

そのまま、気配を薄めながら教室の楽しげな雰囲気に紛れるような位置を陣取る。

騒がしい教室は、殺せんせーが辞書並みに分厚いしおりを配り始めたことでさらにヒートアップした。

 




でも結局トラブルに巻き込まれるのが幸クオリティ。

E組と壁をつくっているのには、一応理由があったり。
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