暗殺教室の戦闘員 〜異世界からの侵略×超生物の出現~   作:汐音 アイリ

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このままだと進まない(わかっていたこと)ので、ちょっとカットしていきます。

あと、基本的に幸視点なので、裏で話されていることはあまり描写されません。
気が向いたらいれます。


006-大人の時間

奥田さんの毒薬騒動があってから数日後、5月になった。

ゴールデンウィークの訪れが楽しみだ。なんてことはなく、宿題と防衛任務で潰されることが決定している。

これはボーダー隊員の宿命だ。

 

「もう5月かぁ。早いね、1か月」

 

黒板の日付けを書きかえながら渚が呟く。

 

その通り。

殺せんせーの言葉が真実なら、3月までに殺せんせーを殺さないといけない。

期限はあと、11か月しかなかった。

 

 

◇◆◇

 

……まあ、だから政府も何かしら手を打つかなー、とは思っていたのだ。

思っていたけれど……この女性はいったい……。

 

「今日から来た外国語の臨時講師を紹介する」

 

そう言った烏間先生に促され、女性が口を開いた。

金髪碧眼と、「外国人」といわれて真っ先にイメージするような容姿の女性だ。

その胸はぱっと見でも大きく、スタイルもボンキュッボンを体現したかのように整っている。

大人の魅力を十分に兼ね備えた女性だった。

 

「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!」

 

殺せんせーに抱きつきながらという状態で、だけれど。

 

見るからに怪しい。

なぜ、これでいけると思ったのか。いや、殺せんせー以外なら怪しまれようとどうでもいいのか?

 

そのあからさまな態度を除いても、状況がもう怪しい。

普通、国家機密を暗殺する教室に新しい教師などやってくるのか?

答えは否。

来るとしたら、それは暗殺任務に関わる人間でしかない。

いくら学校側の意向といっても、無理がある。

 

「……そいつは若干特殊な体つきだが、気にしないでやってくれ」

「ヅラです」

「構いません!」

 

殺せんせーがカツラをとってみせても、変わらず女性はくっついている。

とても魅力的な女性なのに、殺せんせーにベタベタだ。演技(・・)だけれど。

 

やっぱり、殺し屋とかかなぁ。

そういえば、迅さんがなんか言ってたっけ。

うん、大人しくしとこう。

 

3行にまとまるほど簡潔な思考の後、放置することにした。

胸を見て普通にデレっとした顔になる殺せんせーに、イリーナさんがすり寄る。

 

「ああ……見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸みたいなつぶらな瞳、曖昧な関節。私、とりこになってしまいそう」

「いやぁ、お恥ずかしい」

 

私は、いろいろな意味でそのやり取りを見ていられなかった。

イリーナさんのいう殺せんせーの素敵ポイントとか、笑いがこらえ切れそうにない。

 

 

 

 

 

休み時間にクラスでサッカー(と呼べるのか、これ)をしながら暗殺していると、イリーナさんが駆け寄ってきた。

本場のベトナムコーヒーを飲みたいらしく、殺せんせーは快く頼みを引き受けて飛び去る。

同時に始業のチャイムがなった。

 

「……で、えーと、イリーナ先生?授業始まるし、教室に戻ります?」

 

戸惑いながらも声をかけた磯貝くんの言葉には興味を示さず、イリーナさんは煙草に火をつけた。

ふわりと煙が流れる。

 

「授業?……ああ、各自適当に自習でもしてなさい。それと、ファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?」

 

完全に見下した目。

先ほどまでの愛らしい女という偽りの姿はかけらもない。

 

「あのタコの前以外では先生を演じるつもりも無いし。『イェラビッチお姉様』と呼びなさい」

「フッ」

 

思わず鼻で笑ってしまった。

みんなの間に沈黙がおりていたから、意外と響く。

イリーナさんが犯人を探すように視線を巡らせたが、それを遮るようにカルマくんが挑発した。

 

「で、どーすんの? ビッチねえさん」

「略すな!」

 

イリーナさんは意外とツッコミキャラなのか、仕事モードの時と落差が大きい。

いまさらだけれど、随分流暢に日本語を話すものだ。

見た目も名前も完全に外国の人なのに。

日本で育ったとか?まさか。自分で勉強したに決まっている。

きっと仕事(・・)のために。

 

「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総がかりで殺せないモンスター、ビッチねえさん1人で()れんの?」

「……ガキが。大人にはね、大人の()り方があるのよ。……潮田渚ってあんたよね?」

 

渚の前で立ち止まったイリーナさんは、突然渚にキスを仕掛けた。

唇同士を合わせる軽いものではなく、舌と舌を絡ませる濃いやつだ。

 

これは、ほぼ確定かな。

この人は、色仕掛けで相手の懐に潜り込んで殺すタイプの暗殺者。

殺すまでに多少の時間が必要だけれど、ガードの固い相手にも接近できるスタイルだ。

……そして。今、イリーナさんは情報をほとんど持っていない。

 

「あと、少しでも私の暗殺の邪魔をしたら……殺すわよ」

 

彼女が本物(プロ)の殺し屋だと実感する。

「殺す」という言葉の重み。誰かの命を刈り取るということの意味を理解し、その上で実行してきた人間の言葉。

ふわふわした感覚のまま、お遊びの延長のように暗殺をしてきたE組とは格が違う。

 

誰もがそれを思い知り、そして当然、いい印象はもてなかった。

 

 

◇◆◇

 

自習になった英語の時間。

イリーナさんは、タブレットを見ながら何か笑っていた。普通に変人である。

 

「なービッチねえさん、授業してくれよー」

 

前原くんがそう言ったのを皮切りに、口々にみんなが言いつのる。

やはり不満はみんなあったのだろう。

 

「そーだよ、ビッチねえさん」

「一応ここじゃ先生なんだろ、ビッチねえさん」

 

イリーナさんが耐えかねて声をあげた。

冷酷な殺し屋としての面を見せながら、普通にノリがいい。この人の本当の性格がわからなくなってきた。

あまりにかけ離れていて……オンオフで意識が切り替わるタイプなのか?

 

「あー!!ビッチビッチ、うるさいわね!

まず正確な発音が違う!あんたら日本人は、BとVの区別もつかないのね!」

 

確かに発音が違うけれど、Bの発音の方の意味も含んでいるから、いいんじゃないかな……?

様子見に徹するという決心をしていなかったら、きっと口に出していた軽口を心の中でつぶやいた。

 

「正しいVの発音を教えたげるわ。まず歯で下唇を軽く噛む! ほら!!」

 

素直に従ったクラスを眺めて、満足げに頷くイリーナさん。

教室の前から見れば、シュールな光景が広がっていることだろう。

 

「……そう。そのまま1時間過ごしてれば静かでいいわ」

 

これは!授業とは呼べないと思うのですが!

 

……なんだかなぁ。

プロ相手に余計なお世話ではないかと思いつつも、「焦らない方がいいよ」とアドバイスしたい気分になった。

 

潜入はじっくり気長にやるものだと思っていたのだが、殺しが絡むと別なのかもしれない。

上から急かされているのか、はやく仕事を終わらせたいのか。

どちらかといえば、後者か。

そんなサクッと()れる相手なら、烏間先生もここに留まったりしないだろうに。

 

 

◇◆◇

 

「……おいおい、マジか。2人で倉庫にしけこんでくぜ」

 

三村くんの言葉に、訓練中だった生徒も倉庫に振り向く。

倉庫として使われている小さめの小屋に、殺せんせーとイリーナさんが入っていくのが見えた。

 

「なーんかガッカリだな、殺せんせー。あんな見え見えの女に引っかかって」

「烏間先生。私達……あの(ひと)の事、好きになれません」

 

片岡さんの言葉に、烏間先生が申し訳なさそうに返す。

 

「……すまない、プロの彼女に一任しろとの国の指示でな。

だが、わずか1日で全ての準備を整える手際。殺し屋として一流なのは確かだろう」

 

一流かはわからないが、泳がされている(・・・・・・・)ことに気付いていないイリーナさんは少し哀れだ。

彼女が「殺し屋」だなんてこと、既にみんな気づいている。

殺せんせーが大きい胸に弱いのは本当みたいだけれど、だからといってここまで大きな違和感を見落とすはずもない。

 

そんな私の考え事を阻むかのように、銃声が響いた。

ドラマで見たような、凄まじい音量だ。

絶え間なく響く音は、本物の銃を使っていることを意味する。

もしかして実弾を使っているのだろうか。わざわざ政府が、「対先生」などとわかりやすい名称をつけているのに?

信じられないが、そうとしか考えられない。……ということは、殺せんせーには一切ダメージはない。

 

1分ほどで銃声はやむ。

代わりに「いやああああ!!」とイリーナさんの悲鳴に混じって、殺せんせーのものであろうヌルヌル音が響いた。

ヌルヌル音はかなり長く続き、合間に漏れ聞こえるイリーナさんの悲鳴はだんだんと色を帯びて、切なげな響きを孕んでいく。

 

……大丈夫だよね!?

これ、全年齢向けを目指しているのですが!

 

 

少したって倉庫の中から殺せんせーが出てきた。

さすがに衣服までは銃弾を避けきれなかったのか、ところどころ縫い直してある。

 

そのあとから、よろめきながらイリーナさんが姿を現した。

(まと)うのは、体操服。

……健康的でレトロな服にされていた。

 

イリーナさんはぶつぶつと呟く。

 

「まさか……1分であんな事されるなんて……」

 

あんな事(・・・・)という言葉に、嫌な予感がする。

 

「肩と腰のこりをほぐされて、オイルと小顔とリンパのマッサージされて……早着替えさせられて……」

 

あ、よかった。

早着替えはちょっと微妙なラインだけれど、案外普通の……

 

「……その上まさか……触手とヌルヌルであんな事を……」

 

そこまで言って、イリーナさんは力尽きたようにパタリと倒れた。

 

「殺せんせー、何したの?」

「さぁねぇ、大人には大人の手入れがありますから」

 

私は、渚の問いに白を切った殺せんせーを軽蔑の眼差しで見る。

殺せんせーも生き物だから、そういうエロ方面への興味がないとは思っていない。

だが教師として、生徒の前でそういう面を見せるのはどうなんだろうか、とは思うわけだ。

 

「にゅやッ! た、太刀川さん、先生、別に変なことはしていませんからね!?」

 

その言い方がもう怪しかった。

 

 

 




原作でも不思議でしたが、ビッチ先生の登場はちょっと不自然だったなぁ……と。

まあ、殺せんせーに潜入暗殺を仕掛けるには一番勝算高そうですが、そもそもなぜ潜入暗殺なんだ……って思ってました。

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