気ままに! ウェイストランド放浪記   作:気分屋

1 / 10
第1話 ことの始まり

 20××年×月、とある県とある市とある住宅の一室にて1人の青年がテレビゲームをしている。これがオレこと梶間勇(かじま ゆう)である。

 

え? それだけかって?

 

髪は短めで黒、中肉中背18歳のただのゲーム好きだ。外見的にも内面的にも特徴のないオレの紹介はこんなもんでいいだろう。テケトー万歳。

 

 

「おし、ユニーク武器ゲット~」

 

 

今やってるのは『fallout3』というゲームで、核戦争後の荒廃したアメリカを旅するという超自由型RPGである。

 

 

「むぅ、さすがに徹夜でやってるとキツイな……」

 

 

 首を回して軽くほぐしながら時計を見る。壁に掛けられた丸時計の短針は4に、長針は12よりちょっと手前。時刻は午前4時を廻ろうとしている。窓から見える空は夜の蒼さから白みを帯びて朝の始まりを告げている。

 

 このゲーム、広大なマップを歩いては発見した建物等の内部を探索するため、中々切り上げられずついついぶっ通しでやってしまうんだ。こまめにセーブして後でやればいいじゃんとか思ってるかもしれんが、一旦足を踏み入れると隅々まで見たくなるじゃん? ならない? あ、そう…。

 

 

「はぁ、ここロクなもん残ってないなぁ」

 

 

 今いる場所はどこかのオフィスビルか何かだったようだ。地図には明記されていないが、このゲームではそういったオブジェクトも割と珍しくない。重要なアイテムはなくとも、弾薬やキャップ(この世界では通貨の役割を果たす)、悪くてガラクタがあるかも知れないのだ。倒壊しかけたひび割れた室内にはあちこちにクリップボードや本(焼け焦げてたりして価値は殆どない)が散乱している。

 

 

「使えるのといえばスティムパックやRAD系くらいか。しけてんな~」

 

 

 愚痴りながらもプレイしてると、ふと外からサイレンの音が遠くで小さく鳴っているのに気がついた。

 

 

「また救急車か、最近多いよなぁ」

 

 

 最近奇妙な事件が多発している。ゲームをしていると突然意識を失い昏睡状態に陥るというものだ。聞くところによるとやってるゲームもまちまちで、ハードや環境等バラバラで整合性や合致がなく原因がまだ解明されていないとか。

 

 このままだとゲーム禁止令みたいなのとか出されるのだろうか。そうなったら断固反対してやる。このストレイツォ……でなかったオレは自重せん!

 

 

「ん? あれ?」

 

 

 画面が動かなくなった。コントローラーをいじっても少し待っても変化はない。このゲームはデータ量が膨大だからなのかときたまフリーズすることがある。

 

 

「うわぁ、またやり直しかよ……」

 

 

OTLズーンとしてると画面にふと違和感を覚えた。

 

 

「……ん?」

 

 

 画面はオフィスビルから出た外の荒廃した荒野でフリーズしている。見馴れた背景の筈なのに何故か目が離せない。見ていると吸い込まれそうな感覚に陥った。

 

 その時既にオレの意識はそこにはなかった。まさかオレ自身が事件の当事者の仲間入りをするなんて、いやそれ以上にゲームの世界に跳ばされるなんて、この時のオレには思いもよらなかったんだ。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。