気ままに! ウェイストランド放浪記   作:気分屋

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第10話 ただいま療養中です

第14話 只今療養中です。

 

 ビリーとマギーの再開を見届けた後、オレことユウはメガトンの町を散策していた。元々重度の汚染と絶対安静レベルの重症を負ったビリーと違い、オレは汚染だけ(それでも致死量寸前だが)であるため、比較的早く(それでも三日ほど寝込んでいたらしい)ベッドから離れることが出来たのだ。

 

 さて、街中を“一人”で散策しているわけだが、これには訳がある。診療所を後にし一番最初に足を運んだのは“自称”保安官のルーカスさん宅。一応リーダー的な位置付けの彼に治療のお礼と今後についてお話しに行ったのだが、そこで意外な話を聞いたのだ。

 

 

「えっ……じゃあ、ジェームスさんもスカベンジャーさんももうここにはいないんですか?」

 

 

 ルーカスから聞かされた話によると、協力者である二人は何日か前にメガトンを発ったそうだ。

 

 修復できそうなパーツを探してはそれを稼働できるようにしランダムに操作をして後方から援護・陽動をしてくれていたスカベンジャーさんは、騒ぎが収まると死んだレイダーから装備を剥ぎ剥ぎしたり住人とちょっとした商談を済ませた後、自分の拠点に帰っていったらしい。

 

 特にポッポの持っていたハンドメイド10mmピストルは気に入ったらしく、それを含めた戦利品を抱えてホクホク顔で出ていくのを多くの住民が見送っている。

 

 一方ジェームスさんは、ユウほどではないが彼自身重度の汚染に侵されており治療のためこのメガトンに一日滞在した。ある程度回復すると直ぐにルーカスの下を訪れ軽い挨拶を済ませた後、ユウ君を頼みますと頭を下げてから静かに旅立っていったそうだ。

 

 

「せめてお前さんが目覚めるまでこの町にいたらどうだって言ったんだが、『やるべき事がある』って言って行っちまったよ」

 

 

 やるべき事、恐らくは『浄化プロジェクト』の事だろう。元々そのために安全なvaultから抜け出してきた人だ。普通なら見ず知らずの青年や地上の町よりもそちらを優先するだろうに、ジェームスさんは何から何まで手を貸してくれた。ひょっとしたら一人で発ったのも自分を巻き込まないための配慮なのかもしれない。人のいいあの人のことだ、あながち見当違いでもないと思う。もし道中再び会う事があったらできるだけ彼の手助けをしようと、ユウは胸の内に密かに誓った。

 

 

「ああ、そうだ。ジェームスから伝言を預かってたんだ、忘れる所だった」

 

 

ジェームスさんから? 一体何だろうか。

 

 

「ゆっくり休めってよ。それと娘がいるらしくてな、もし会ったら助けてやってくれとさ」

 

 

 娘か……そういえば子供がいるとか道中で話してたっけ。詳しくは聞けなかったけど原作みたいに父親を追ってvaultから出てきてたりするんだろうか? もしそうなら会うこともあるだろうし、協力は惜しまないつもりだ。

 

 そう遠くない日にそのときは訪れるのだが、今のユウには知る由もない。

 

◆◆◆◆

 

 ゲームでは主人公の家が手に入る場所なので、飽きるほど訪れているメガトンだがこうして歩いてみると所々違う部分がある。まず町自体が広いのだ。原作だとそれほど時間をかけずに踏破できるメガトンだが、一日掛けても全体を見て廻れるか疑問だった。

 

 酒場や食堂、その他主要な施設に変わりはないが家屋が多く居住スペースが広くなっているようだ。当然それに比例して住民の数も(ゲーム中に比べて)多くなっている。そして嬉しいことに、広い通りには市場のような露店が立ち並んでいた。原作と違いメガトンの周囲にはスクラップの山が点在しており、貴重な部品類が多く調達できるため金回りがよく、それで行商が賑わっているらしい。

 

 それらを眺めながらぶらぶらしていると、見馴れた文字がペイントされている建物の前に着く。『クレーターサイド雑貨店』と書かれたその店は日中にも係わらずあまり人の入りがなかった。何となく気になったのでユウは店内に足を踏み入れた。

 

——思えばそれが面倒事の始まりだった。

 

 

「いらっしゃ~い♪」

 

 

 間延びした挨拶と爽やかスマイルで出迎えてくれたのはこの店の女主人であるモイラ・ブラウンその人だ。掃除でもしてたのか手にはモップを持っている。店内には他の客はおらず、いるのは彼女に雇われた傭兵の兄さん一人……それなりに広い店内と相まって閑散とした雰囲気を訪れた者に感じさせる。

 

 

「あ! あなた爆弾を解除してくれた人よね!?」

 

 

確かにその通りだが、何故彼女はキラキラした目でそんなことを聞くのだろう。

 

 

「そ、そうだけど……」

 

 

「その節は助かったわ~! お礼を言わせて貰うわね。それと頼れる貴方にお願いがあるんだけど~」

 

 

 ここでユウは記憶にある彼女関連のクエストを思い浮かべた。サバイバルガイド作成のために9種類だったかのメンドイ依頼を頼まれた筈だ。できれば丁重にお断りしたいが話だけでも聞いてみることにした。

 

 

「私達が生きているこのウェイストランドには沢山の危険が満ちているわ。私はそれで命を落とす人間をどうにかして減らせないかと常々考えているの」

 

 

 モイラの独白に頷いて相槌をうつ。それはこの世界の誰もが考えることだろう。人々は無数の脅威に晒されながらも何とか対策を講じて日々を生きている。希望を奪い絶望を与えるウェイストランドでは今日明日どころか一瞬先の命すら危うい。

 

 

「そのために色々な危険への対処法を学べるサバイバルブックを作成したいと思ってるの! 貴方にはその手伝いをしてほしいのよ」

 

 

 彼女が言うには三章から構成される内容の一章分の依頼を手始めにこなしてほしいそうだ。まず一つ、食糧の探索、二つ、放射能の影響、三つ、地雷原の調査。これらが一章の内容らしい。

 

 

「それで貴方には地雷原の調査をお願いしたいんだけど」

 

 

「え? 他の二つは?」

 

 

 彼女が口を開こうとしたとき店のドアが開き、四人ほどの男が入ってきた。ユウは彼らを見たことがあった。それもごく最近見た顔触れだが、何故ここにいる?

 

 

「只今戻りましたぜ、モイラさん!」

 

 

 元気な感じで挨拶をしたのは数日前に衝突したレイダー勢の一人、下剤入りの即席ポテトを食べて降伏を余儀無くされた見張りだった。彼は全てが終わった後で、襲いくる腹痛に身を悶えさせているのを住民に見つかり一先ず捕縛されていた。他の面々も住人によりメガトン内にて無力化された連中である。

 

 

「ご苦労様。それでどうだった?」

 

 

「スーパーウルトラマーケットには確かに食糧等様々な物資がまだ残ってましたよ。ただ既に他のレイダーどもが根城にしてたんで隅々まで調べることはできませんでした」

 

 

「そう……。でもこれでそういった場所には食糧が残ってることが確認できて、一つサバイバルガイド作成に近づいたわ」

 

 

 ありがとう、と言ってモイラは資料を作りに奥へと引っ込んでいった。それを見送ってからユウはレイダー勢に話しかける。

 

 

「……なあ、何であんたらがここにいるんだ?」

 

 

「それがな、一度捕まってもうお終いだと思ってたんだが、そんなオレ達にルーカスはチャンスをくれたんだ」

 

 

「そうそう、心を入れ替えてメガトンのために働くんなら命は助けてやるってな」

 

 

「初めはこいつだけやる気まんまんでよ。オレ達は隙をついて密かに逃げ出してやろうとか考えてたんだが、ジェリコがお目付け役に着いたせいで逃げたくても逃げられなくなっちまったんだな」

 

 

 三人目のレイダーがげんなりしながら指を指したのは先程元気に報告をした彼だ。指された当人はフッと哀愁漂う感じで語り出した。

 

 

「人間大切な何かを失うと色々と寛容になれるんだぞ。もうレイダーだった頃は忘れて人様のためになることをしたいんだ」

 

 

 もしかして間に合わなかったのか? ふとした疑問が浮かんだが、聞くまでもなかった。後ろにいたレイダーの一人がユウの肩に手を掛け、フルフルと顔を横に振るったからだ。触れてやるなというように、不幸な仲間を憐れんでいるように。当の本人はかなりのショックだったのだろう。それこそ非道なレイダーをである彼を改心させるほどには。

 

 

「あんたにも迷惑かけたな、すまなかった。紹介がまだだったな、オレの名はジョニーだ。オレの家系は代々男子にはジョニーと名前がつけられる」

 

 

 そして代々お腹が弱いのですね、分かります。どっか別の世界で聞いたような話に、内心だけで相槌を打った。

他の三人は名乗ろうとしなかったのでレイダーA、B、Cと認識しておく。オイ! とかレイダー三人が言っているが気にしないでおく。各々の自己紹介が済んだところでモイラが戻ってきた。

 

 

「さて、後は貴方にお願いした地雷原調査だけね~」

 

 

「ん、だけ? あのさ、食糧に関してはこの連中が調べてきたのは分かったけどさ。もう一つの放射能は?」

 

 

「ああ、それならもう調べてあるわ」

 

 

既に調べたらしい。他人ばかりに危険な作業を押しつけやがってとか思ってたけど、自ら調べる事もあるんだなーと意外な一面に感心した。

 

 

「貴方のお陰で楽に調査できたわ~。あれだけ重度の汚染に侵された患者ってそうそう見つからないのよね~」

 

 

 前言撤回。このヒトとんでもない外道だ。「大抵の患者は調べる前に理性を失ってフェラルになるか死ぬかのどっちかだからね~」とかのほほんとお話してるけどそれってつまりオレは体のいい被験体ってことじゃないですか。ユウは今更ながらにここに誰も近寄らない理由を理解した。因みに結果から言えば依頼は受けることにした。だって断ったら泣きつかれたんだもん、断るに断れず根負けしてしまった。

 

 

……なんで関わったんだろ、と今更ながらに後悔の念が過るが時既に遅し。本当に今更だ。

 

 

 その光景を横目で見ていた傭兵はユウが店を後にするとき「……ドンマイ」とか呟いてくれたが、彼も似たような境遇なのだろうか? すれ違い様に目があった彼の顔には疲れの色が見てとれた。

 

 

——あんたも大変だな。

 

 

——なに、もう慣れたさ……そっちも厄介なのに目をつけられたもんだな。

 

 

——全くだ。まぁ依頼は受けちまったからな、適度にこなすさ。

 

 

——ああ、頑張れよ。

 

 

——お互いにな。

 

 

 一瞬の間にそんなやり取りがあったかもしれないが、彼ら以外には特に関係ない話だろう。

 

◆◆◆◆

 

 

「よし、こんなもんかな」

 

 

 ユウはモイラの店を出た後、自分に宛がわれた家(爆弾を無力化してくれた礼らしい)に向かい室内の整理や装飾をしていた。モイラの雑貨店には“テーマ”という物が売ってある。これは言うなれば部屋の内装のことであり、“vault”“レイダー”“ウェイストランドの探求者”“科学”“戦前”“ラブマシーン”等々複数が存在する。ユウはその中から“戦前”をチョイスし、内装を変えていたのだ。

 

 

 まぁ、何ということでしょう。所々錆び付いていた内壁は見違えるような純白の壁に、閑散としていた室内には1950年代風のテレビやカップ、イスなどが置かれどこか懐かしい雰囲気を醸し出しています。最初はどこか淋しさすら感じさせた室内が、テーマを与えられて暖かな空間に、これこそ正に匠の技。

 

 

「……と、劇的ビフォーア○ター風に言うとこんな感じか」

 

 

 しょうもない事を考えながら装飾の済んだ室内を見渡す。うん、やはり“戦前”が一番落ち着くな。ゲームでもこれを好んで使っていたしな。

 

 後はこれに色々な設備を取り入れたいと考えている。ここメガトンではテーマとはまた別に設備を購入することができる。これもテーマと同じく幾つかあり、そのどれもがこの世界では重宝する物ばかりだ。自動販売機欲しいな~とかジュークボックスってレトロでかっこいいな~とか考えてみるが、流石に一気に購入したりすると周囲からの視線(主に物乞い的なのと獲物を見るようなのと)が痛いのでやらないが。

 

 作業を終えたユウは「ふぅ」と一息ついた後、手近にあったイスにドカッと座り込みpip-boyを操作しだした。その手が動くにつれて画面には様々な情報が表示されていく。ジェームスとの講習の間にユウはpip-boyのデータが閲覧可能になっているのを発見し、そのときから偶にこうして閲覧していたのだが最近になってその内容に見覚えがあるのに気づいた。表示されるアイテム欄にはとんでもない数の道具の名称が明記され、この端末が既製品とは比べ物にならないほどに大容量なデータ量であると同時に、この中には膨大な量のアイテムが貯蔵されていることを如実に物語っている。

 

 

「これって……オレのゲームデータじゃんか……」

 

 

 そう、所持していた道具の数々はユウがプレイしていたデータで入手した物とほぼ合致していたのだ。流石にG.E.C.Kなどのようなクエストに関係するキーアイテムは無くなっていたが、それでもこの事実は大きい。 ここでユウは講習の間に感じていた違和感について考える。初めは出来なかった作業も二度繰り返せば簡単にこなせるという奇妙な違和感。まるで記憶はないのに身体は覚えているようなと言った自身の言葉。そこにこのデータ内容である。

 

 

「ゲームデータと連動している……?」

 

 

 どういった仕組みかは分からないが、どうやら自身のステータスはゲームで使っていたプレイヤーの影響を受けているようだ。

 

 

「いや、あり得ないだろ……」

 

 

そう呟きつつも一方ではその考えを肯定していた。この仮説で考えれば奇妙な違和感の辻褄が合うのだ。

 

 

「訳が分からないな……」

 

 

何故この世界に紛れ込んだのか——

 

どうすれば元の世界に帰ることが出来るのか——

 

そもそもこれは現実なのか——

 

何か悪い夢でも見ているのではないか——

 

考えても考えても答えが出ることのない難問の数々にユウは心に不安が募るのを感じた。

 

 

「オレ、どうなっちゃうんだろ……」

 

 

見上げた天井に向かって一人疑問を投げかける。勿論口を突いて出たその言葉を聞くものはいない。その問いに答えてくれる者もまた、いない。

 

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