気ままに! ウェイストランド放浪記   作:気分屋

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第7話 メガトン解放その2

 

 突然の激しい揺れに宴を楽しんでいたレイダー達は浮き足立った。何が起きたのか、揺れの原因は何かを確かめるため皆あちらこちらへと走り回る。読みかけの本を投げ捨て宛がわれた家から外に飛び出した彼女、スプリングベール地区では副リーダーにあたるキャスもその一人だった。

 

 

「何が起きたの!?」

 

 

「わかりやせん……。しかしあの爆発音とほぼ同時に起きたデカイ揺れ…… けっこう近いですぜ」

 

 

「姉御、あれを!」

 

 

 近くにいた部下と話していると別のレイダーが何かを指差して叫んだ。指された方を見てみると壁の向こうに巨大な黒煙が立ち上っていた。煙とともに赤い火の粉が舞っているのを見るあたり、どうやらスクラップ置場の方で爆発があったようだ。

 

 

「何をボケッと突っ立ってる!? 早く火を消しに行くんだ!!」

 

 

声のした方を見ると我等がリーダーのポッポが回りの連中に怒鳴り散らしている。彼の近くには捕まってからも反抗的だった眼帯の男がいる。確か見せしめに殺すような事を言っていた気がするが、興奮して今はそれどころではないようだ。

 

 

「あそこにある部品だけでもかなりの利益になるんだぞ!? 全員で被害の拡大を防ぐんだ!!」

 

 

「待ちなよポッポ。幾ら何でも全員は不味いよ。何人かは見張りに残して――」

 

 

「リーダーはオレだっ! 決定はオレが下すからとっとと火を消すんだよ!」

 

「……了解」

 

 

 とりつく島もないポッポの態度に不満が喉から出そうになるがやめ、周りの連中を集めて現場に向かう。ポッポにはああ言われたが念のため二十人のうち四人を残しておく。このときポッポが欲を掻いて熱くならず冷静に指揮をしていれば、そしてキャスのいう通り警護に人員を割いていれば違う展開になっていたかもしれない。自分達が破滅の道を辿っていることを彼らはまだ知らない。

 

◆◆◆◆

 

 

(あ、危なかったーー!!)

 

 

 あの爆発(合図)がもう少し遅ければビリーは殺されていた。ナイスタイミングだジェームスさん。思わずマギーと一緒に胸を撫で下ろした。と、こんなことしてる場合ではない。

 

 

「マギー、作戦開始だ。街の皆を助け出してくれ」

 

 

「えっ、でもビリーが……」

 

 

「彼のことは任せてくれ。必ず助けるから」

 

 

 少しの間黙っていたが「……分かった」と言って駆け出していくマギー。本当は今すぐ助けに行きたいだろうが、今は行動の時だ。捕まった人達を解放するのはメガトンの内部に詳しいマギーが適任だ。ここは彼女にやってもらわなければならない。その代りビリーは責任を持って自分が助け出すから、と離れ行くマギーの背中を見ながら心の中で誓いを立てた。

 

 意気込みも程々に周囲を見回すと先程までいたポッポの姿が見えない。どこにいったかと探してみるとメガトンの上層、位置的には出入口の門より上にある見張り台によじ登り、手にした双眼鏡で外の様子を見ていた。他にも火の手が上がってないかと慌てふためいて外に気を配っているようだ。そのお陰で中までは気が回らないようで、比較的楽~に救出作業ができる。これぞまさしく灯台もと暗しってかな。そんなことを考えながらビリーを繋いでいる鎖を外そうと彼に近寄る。自身に近づくものを感じたのかビリーは身動ぎした。

 

 

「シッ、静かに。あなたを助けにきた者です」

 

 

返事はないが聞こえているようで、少しだけ警戒を解いてくれた。オレはポケットからヘアピンを取り出し、腕輪の鍵穴にピッキングで解除を試みた。

 

 

「……な……ぜ……?」

 

 

ビリーが呟いた言葉の意図が分からず少し考えたが、何故助けるのかと聞いているのを理解したので返答した。

 

 

「マギーに頼まれたんですよ。大切な家族を助けてって。泣きながらね」

 

 

「……マ…ギィ……が……?」

 

 

瀕死に近い重症を負って虫の息だったビリーだがマギーの名前を聞いたとき、虚ろだった目に少しだけ光が戻ったのをオレは見た。

 

◆◆◆◆

 

 

 門から出たあとキャス達は爆発の起きた場所へ駆けつけていた。火の手は思ったより拡がっていて消火するには少し時間がかかりそうだ。

 

 

「お前達は消火器で火を消せ! 他の者は消火ホースのノズルを用意、水道管に繋いで水を――」

 

 

ビシュンッ ジュウゥゥゥ

 

 

キャスが指示をしている最中、何か音がした。振り返ると初めに指示を下した部下の一人がいない。もう一人も何が起きたのかわからずただ呆然と立っていた。よく見てみると消えた部下がいた所には灰の山ができていた。煙と熱を立ち上らせるそれを見てキャスは漸く何が起こったのかを理解した。

 

 

「敵襲だー!! 隠れろ!!」

 

 

部下に呼び掛けた途端燃え盛る炎の向こうから赤い光が伸びてきた。それはレーザーの光だった。 先程消えた部下はレーザー光線に直撃して灰にされたのだ。キャスはアサルトライフルを構えてスクラップの陰から様子を窺う。炎の壁の向こうには何体かのプロテクトロンの他にもカメラアイの光源が確認できた。正確な数は分からないが、かなりの数のようだ。この辺りにはそのような大規模な敵勢力はいない筈なのだが、ならば目の前にいるあれらはいったい何者なのだろう。

 

 思案している間もレーザーが放たれる。自身が隠れているスクラップの山にも数発当たり、その内の一発が鼻先を掠めたときキャスは詮索をやめて部下に指示を出していた。

 

 

「怯むんじゃないよ! 数は多いけど射撃の精度はかなり悪いみたいだ。そうそう当たるもんじゃないよ!」

 

 

 彼女のいう通りレーザーの精度は悪く、殆どは見当違いの方向を撃っていた。そのことに気づいた部下が反撃を始める。

 

 

――とは言え、精度に関しちゃこっちも大して変わんないんだよねぇ。部下は狙って撃つなんて事しないし(撃ちまくるしか脳のない阿呆だ)、武器も碌に整備してないし。おまけに相手の物量は下手したらこっちよりも多いときてる。長い夜になりそうだねぇ。

 

 

そんな味方の現状にげんなりしつつも、キャスもライフルの狙いを定め引き金を引いた。

 

◆◆◆◆

 

 何やら外が騒がしい様子だ。恐らくさっきの爆発と関係があるのだろう。見張りに立っていた者も何処かへ行ってしまい警備は手薄となっていた。行動を起こすなら今だ、とルーカスを含めた住人達は考えていた。しかし縛られた手足がそれをさせず、仮に外に出たとしてどうするかの具体的な案も思い付かず彼らの姿は未だ監禁された家の中にあった。

 

 ルーカスは何とか状況を変えられないものかと考えを巡らせるが、中々いい案が浮かばない。このまま丸腰で出たところで何人が無事でいられるだろう、かといってこのまま事態を静観しているわけにも行くまい。恐らく今が最大にして最後の脱出のチャンスなのだ。

 

 頭を悩ませているとガチャリとドアノブが回った。見張りが戻ってきたのだろうか? そう思い身体を強張らせたが開いたドアの先には誰もおらず、遠くに聞こえるレイダーの喚声の他は夜の暗闇と向こう側にある家屋の明かりが見えるだけだった。不審に思っているとドアがひとりでに閉まった。住人達には何が何だか分からなかったが、次に聞こえた声にその疑問は掻き消されていた。

 

 

「皆、大丈夫!?」

 

 

「その声……マギーなのか!? どこにいるんだ!?」

 

 

問いかけのあと、彼らの目の前の空間が歪曲し、それが収まるとマギーの姿が現れた。

 

 

「助けにきたよ!」

 

 

「馬鹿、何で戻ってきたんだ!? お前一人じゃ無茶だ!!」

 

 

 確かに一人で助けに戻ったなら無茶、いやそれどころか逆に捕まってしまいミイラ取りがミイラになりかねない。だが今マギーは一人ではない。

 

 

「大丈夫、一人じゃないよ。他にも助けてくれる仲間がいるから」

 

 

 危険であることを理解したその上で、共に助けに来てくれた二人の仲間がいる。この場にはいないが自身の境遇を想い、損得抜きで破格の援助を施してくれた一人の仲間がいる。

 

 ルーカスらに話したらきっと仲間はたったの三人なのか、と驚かれるだろう。だがマギーは“たったの”などと頼りないようなそんな風には思わない。自身の懇願を受け入れてくれた、危険を承知で命を掛けて家族を助けようとしてくれている彼ら。確かに人数的に言えばたったの三人だ。しかし、全てを理解した上で全力で協力してくれる彼らを、マギーはこの上無く頼りになる仲間だと思っている。

 

 マギーに拘束を解いてもらった住人達はこれからどうするかを話し合う。レイダーが消火のために出払って内部の戦力が手薄になっている事をマギーから聞き、武器庫を奪い返して奴等を撃退しようということで話が纏まった。先程まで絶望に沈んでいた住人達であったが、今は見出された一縷の希望を頼りに行動を起こす。メガトンの住人の反撃が静かに開始された。

 

◆◆◆◆

 

どうしてこうなった……。

 

 

「お、おい…何だよあの数……」

 

 

「オレに聞くなよ……。この辺にあんな数の敵がいるなんて聞いてねえんだからよ……」

 

 

 後ろで部下二人がそんなやり取りをしているが、それに答えてやることはポッポにはできない。これだけの規模の敵性存在を、メガトンに一年間住んでいたポッポですら見た事もなければ聞いた事もなかったからだ。

 

今彼らの視界には、宵闇の中小さく蠢く無数の光点が明滅している。スクラップ置き場の奥に無数の光点が、比較的近い場所にそれよりは少ないが幾つかの光点が見える。その近場である眼下では暗闇の中伸びる赤いレーザー光と発砲音とともに生まれるマズルフラッシュが各所で光っては消え光っては消える。

 

 キャス達は善戦しているようで戦闘開始から数十分経った今も敵は前衛が戦闘状態に入っているが後方の本隊と思われる集団には動きがない。

 

 

「……ど、どうしやしょう、リーダー?」

 

 

部下の一人が問いかけてくるが、答えられるわけがない。持ち前の知識や技術、そして群を抜いた残忍さでリーダーの座を勝ち取ったポッポだが、今日までこんな事態に直面したことなどなかった。

 

 

「リーダー!! た、大変だっ!!」

 

 

 完全に己の想定の範囲外の出来事に頭が沸騰しそうになっていたポッポは、慌てて駆けてきた手下の狼狽する姿に、嫌なモノを感じる。これ以上の厄介事は勘弁願いたいのだが、手下の慌て様は尋常ではなかった。

 

 

「今度は何だ、この大変なときに!!」

 

 

「閉じ込めてた連中が逃げ出しちまった! 武器庫に向かってるみてぇなんだ!」

 

 

部下の報告に思わず絶句する。

 

 

「見張りは何をしてやがった!?」

 

 

「い、いや他にも被害がないか探せとリーダーが命じられたんで……」

 

 

恐る恐るといった感じの手下の発言に、怒鳴り散らしそうになったポッポは言葉を詰まらせた。確かにその通りであった。目先の利益に固執した自分は、普通なら外せない見張りの手下まで駆り出し無防備にした。

 

 住人が拘束を解いて脱走するなどあり得ない、できるはずがないと心の何処かで思っていたのかもしれない。明らかに自らの失態、取り返しのつかない大きなミス、驕りなどと格好よく言うのも甚だしい己の間抜け加減さにハラワタが煮えくり返りそうな思いだ。

 

 リーダーの怒りの表情にどう声を掛けたものか迷うレイダー達。その彼らの後ろの町並みの間にポッポは確かに見た。ルーカスを筆頭に走る住人の中に、死んだと思っていた見馴れた少女の姿を。

 

「あ、の、ガキ……! 生きてやがった! 逃がしたのも奴に違いねぇ、テメェら行って捕まえてこい! 今度は何人か殺したって構わねぇぞ!」

 

 

ポッポの怒鳴るような命令に手下達は我先にと駆けていく。その様を見てフンと鼻で笑うと、自らも周囲の状況を確認するために走り出した。

 

(このままだとじり貧だ。何とか内側だけでも制圧しとかにゃ。外の奴等が近づいてきたら籠城決め込むしかねぇが、まぁこっちには奥の手のコイツ(・・・)があるんだ。)

 

ポッポは腕の端末を撫でる。そう、不発弾を起爆させるためのものだ。勿論押すつもりは毛頭なく、飽くまで脅しの手段に過ぎない。

 

 

「(いざとなればコイツで脅して……)ブガッ!?」

 

 

突然、横合いから何かがぶつかってきたような衝撃に襲われた。思い切り転んでしまったポッポは、慌てて取り落としそうになるのを堪えて10mmサブマシンガンを構えるが周囲には自分以外誰も居なかった。

 

 

「……なんだってんだ? 一体……」

 

 

◆◆◆◆

 

 所変わってここはメガトンの外。謎の敵勢力とレイダーの戦いは尚も続いていた。ポッポの言う通りレイダー側は確かに善戦しているが、決して無傷ではなかった。幾条もの赤い矢の雨に晒され、初めはキャスを含め十六人ほどいたのが既に半数を数えるほどに減ってしまっていた。

 

 

「……ぐぁっ!?」

 

 

 銃声とともにまた一人部下が倒される。そう、レーザーではなく銃弾でだ。戦闘開始から今までで倒れた仲間のうちその殆どは銃でやられている。レーザーは前述の通り光の雨と形容してもいいくらいの勢いで放たれていたが、やはり精度は悪く全くといっていいほど当たっていない。逆に銃の方は中々に正確で、炎上したスクラップという光源があるとはいえ夜間でここまで的確な狙いをつけられるとは相手には余程腕のいい狙撃主がいるのだろう。

 

マズイねぇ……。

 

 現状を分析していたキャスはこのままでは全滅することを悟った。味方は残り僅か。にも拘わらずその味方は良く言えばだが臆する事なく、ヒャッハーとハッスルしながら無防備に乱射している。きっとジェットでもやってて頭が回らないのだろう。ったく、これだからレイダーはアホの集まりとか馬鹿なイメージが付いて回るんだと、戦闘中半ば現実離れした思考をしていたキャスだが自身の左腕に銃弾が命中したところで現実に引き戻される。

 

 

「姉御!?」

 

 

「アタシとしたことが……! これじゃバカとか言われても言い返せないねぇ……」

 

 

「はぁ?」

 

 

痛みに顔を歪ませるキャスの台詞を、部下はさっぱり理解できなかった。何の事なのか聞こうとした部下は、弾丸が隠れていた廃材に突き刺さったのを見て慌てて首を引っ込めた。

 

 

「……っ! 不味いですぜ、姉御。このまんまじゃ先にこっちがくたばっちまう。ここは一旦出入口の門まで引き返しましょうや!」

 

 

「だぁねぇ……! 後でポッポが怖いけど、死んじまったら何にもならないし、ね」

 

 

渋々ながらキャス達は出入口まで後退を始めた。外での戦いは一先ず謎の勢力の勝利で幕を閉じた。

 

◆◆◆◆

 

 

「ちっ、あいつらもう気づきやがった」

 

 

 そう言ってルーカスが見やる方向からは四人のレイダーが此方に駆けてきていた。各々の手には中国軍ピストルや10mmサブマシンガン、金属パイプにコンバットショットガンと思い思いの武器が握られている。対するこちらは武器庫に蓄えられていた10mmピストル十数挺とコンバットナイフ数本、それとスナイパーライフルとハンティングライフルが一挺ずつだ。

 

 人数や武器ではこちらに分があるかもしれないが、個々の戦闘能力では相手の方が上手だろう。メガトンの住人は戦闘経験が豊富とも言えず、対するレイダーは略奪と虐殺の日々を過ごしているのだから戦闘経験の差は如何ともし難い。

 

 

「来るぞ。相手は四人、油断するな!」

 

 

ルーカスが皆に向かって注意を促す。皆一様に頷いて気を引き締める。ただ一人を除いてだが。

 

(へっ、自由のためとはいえドンパチなんてまっぴらゴメンだ。勝手にやってろってんだ)

 

内心で毒づきながらこっそりルーカス達から離れたのはここメガトンで酒場を開いている店主のコリン・モリアーティその人だ。離れる彼に気づいてもう一人戦列から抜け出る人物。モリアーティに雇ってもらっているグールのゴブだ。

 

 

「ボス、どちらへ行くんで?」

 

 

「ゴブか。終わったら教えろ、それまでは隠れてるからよ」

 

 

雇い主の返答に少々驚いたゴブだが、逆らったら後で厄介な事になるのを知っているので「へい、分かりやした」と素直に頷く。

 

 

「おめぇも隠れろとまでは言わねェが、無理すんじゃねぇぞ。くそったれレイダー共を追い出したら直ぐ開店だ。そのつもりでいろよ」

 

 

「へい。でも……あの、ボス? 肝心の店があの有り様じゃあ、直ぐに開店ってのはとても……」

 

 

 雇い主に意見するゴブに少しムッとしたが、彼の言った言葉にモリアティーは店に目を向ける。そこには自分の店、キャップを沢山生み出してくれる彼の城がある。しかしどうだ。今ではレイダーに好き放題されて、空いているドアから見える中の様子は酷いものだ。テーブルやイスといった家具は引っくり返ったり横倒しにされたり、中には壊れているものもある。カウンターに並べられた自慢の酒の品々も飲み干されて空き瓶が散乱していて、無事な物の方が少ない。確かにこの様子では直ぐにというのは無理そうだ。

 

 

「……気が変わった。連中から飲んだ分は……いや、内装や慰謝料も含めてたんまり徴収してやらんとなぁ! ゴブ、ついてこい!」

 

 

余計な事を言ってしまったかな、とゴブは内心で溜め息を吐いた。この雇い主は身の危険があると動こうとしないが、金勘定の話となると一気に行動的になるのだった。だがまぁ、状況が状況であるから今は寧ろこれでよかったのかもしれない。理由は少々意地汚いかもしれないが、やる気になってくれた店主の後を追い戦列に再び戻る。

 

(オレも負けちゃいられねぇ、やってやるぞ。働き口と日銭のキャップを取り返すんだ!)

 

意地汚いという点では彼はモリアーティにも負けていなかったりする。人の事言えない自覚無しのゴブであった。

 

◆◆◆◆

 

 リーダーから命令を受けて武器庫に向かっていたレイダー四人は、辿り着いた途端銃弾の嵐に見舞われた。慌てて建物の陰に身を隠しここは別れて近づこう、と年長のレイダーが指示を出し二人一組になって左右から接近を試みる。時折反撃しては銃撃の間隙を縫って徐々に距離を詰めていく。年長のレイダーはもう一人と共に左側から近づく。曲がり角を曲がったそのとき後ろから鈍い音と悲鳴が聞こえ、曲がり角を戻ってみるともう一人が倒れていた。

 

 

「どうしたんだ!? 何があった!?」

 

 

駆け寄って聞いてみるが意識が朦朧としているのかうまく答えられないようだ。

 

 

「……お、オッサンが……」

 

 

 漸く出たその言葉は理解に苦しむものだった。怪訝に思い意味を聞こうとしたとき、上に何かの気配を感じた。目を向けたときには遅かった。彼が目にしたのは、右手に持った酒瓶を自分に向けて降り下ろす中年の姿だった。瓶はレイダーの頭に直撃し、粉々になり中身のアルコールとガラス片を辺りにぶちまけた。レイダーはその場に倒れ込み、その拍子に手からコンバットショットガンが滑り落ちた。

 

 

「てめぇら家の酒大分気に入ってくれたみたいだな! 浴びるほど飲みたそうだったからマジで浴びせてやったぞ。勿論お代はもらうからな!」

 

 

何やら暴論を吐いてるオッサン……もといコリン・モリアティーはポケットから新しい酒を取り出し美味そうにラッパ飲みし始めた。

 

 

「……うぅ、こ……この野郎ォ!!」

 

 

 やっと意識がハッキリしたのか、もう一人が起き上がりモリアーティ目掛けて金属パイプを振るう。それが当たる前にモリアーティは懐からライターを取りだし火をつけ、口に含んでいた酒を吹き付けた。

 

 

「ぐああぁっ!?」

 

 

ライターの火に引火したアルコールが業火となってレイダーに襲い掛かり、一時的に視界を潰す。 すかさず顔面に鉄拳を見舞って沈める。

 

 

「お買い上げありがとうございました! またのご来店はこっちからお断りだ、クソ野郎共が!」

 

 

「ギャッ!」「グワァ!」

 

 

 右側から近づこうとした二人は弾幕で近づけずにいるところを死角から狙ったルーカスのハンティングライフルと元レイダーのジェリコ愛用のスナイパーライフルの前に倒れた。まだ息はあるようだが戦闘不能には違いなかった。一か所に集められて縛られたレイダーから文字通り身包み剥ぎ始めたモリアーティは一先ず置いておこう。

 

 

「おうゴブ! お前も金目のもん集めろ。そのうちの幾つかはお前のもんにしていいぞ!」

 

 

「ホントですかい、ボス!? いやっほぅ! 喜んで手伝わせてもらいますぜ!」

 

 

ゴブも一緒になってやり始めたがまぁどうでもいい。

 

 

「よし、これで――」

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

「!?」

 

 

片付いたな、と言おうとした瞬間マギーの悲鳴が響く。悲鳴のした方をみるとマギーを人質に取って銃をこちらに向けているポッポの姿があった。

 

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