私、高町なのはには悩み事が沢山あります。
勉強のこと、塾のこと、人間関係のこと。色々な悩みがあります。
そんな悩みの中でも、特に気にかけているのが"ジュエルシード"について。
ジュエルシードは青色の石で、サファイアのように綺麗な石です。
何も知らなければ、宝石に見えてしまうかもしれません。
しかし、外見とは裏腹にジュエルシードはとても危険なものでした。
内部に膨大な魔力を含んだジュエルシードは、持ち主の願いを間違った方向で叶える石。
それがジュエルシードの正体でした。
私はそのジュエルシードを集める魔法少女、ユーノ君曰く魔導師というらしい。
ユーノ君は、魔法の世界にいたフェレットです。
危険なジュエルシードを安全に保管してくれる場所に運送中、事故にあってこの海鳴市に21個のジュエルシードとともにやって来たのが、全ての始まり。
ユーノ君は町にジュエルシードを撒いてしまったのを悔やんでいました。
それこそ『僕1人でもやらなきゃいけない』と思いつめ、危険な事に1人で立ち向かおうとしていたのです。
―――見捨てては置けない。
ユーノ君の話を聞いて、そう思いました。
幸い、私はユーノ君が持っていた"レイジング・ハート"というデバイスと契約し、魔導師になっていました。
手伝える力を持っていて、それを使わないなんてこと、私にはできない。
私は決断し、ジュエルシードの回収を手伝うことにしました。
私の決断は、人として正しいと思う。
町に危険が及ぶジュエルシードを回収する。それは、結果的に多くの人を救う行為です。
人知れず危険なことをし、誰かの為に力を使う。それは、まるでヒーローのようなもの。
だから……だからこそ、心の奥底でこう思ったのかもしれない。
―――楽しい。
回収する作業は大変だったけど、楽しんでいた。まるで、ゲーム感覚のように。
自分が得た魔法という力、現実とは思えない非現実を体験するのを楽しんでいました。
そして……楽しんでいたから、油断してしまった。
最近、町で起きた災害。
『大樹事件』と呼ばれたこの災害は、町に大きな大樹が突如現れた、というモノです。
軽傷者128名。重傷者12名。死亡者4名。あの災害で多くの人が傷つきました。
その事件の元凶はあるサッカー少年が持っていた、ジュエルシードが原因です。
でも、責任の一旦は私にもあります。
何故なら、私はあの少年がジュエルシードを持っていることを知っていた。
なのに、私は『たぶん、見間違いだ』と決め付け、調べることを怠った。
その結果があれだ。
悔やんでも悔やみきれない。
私は後悔し、そして決めた……ゲーム感覚では絶対にしない。
町の人達の為に、怪我をした人の為に、もう帰ってこれなくなった人の為に。
―――ジュエルシードを真剣に回収する!
私はこの言葉を胸に刻み、ジェルシードを真剣に回収するようになりました。
それが今、私が魔法少女である理由。
もう、どんなことにだって負けない!
「は~い。沁みるけど我慢してね」
「にぁぁああ!?」
でも、消毒液には勝てなかった。
突如膝に訪れた刺激に、私は思わず叫び声をあげ、膝を見ないように目を堅く閉じた。
さながら、注射器が刺さる瞬間から目を離すが如く。私は現実逃避中をするのでした。
―――がらがら。
「先生、大変です。鼻血が出ました」
「そんなのいつものことでしょ、花園君」
私が現実逃避をしてる間に、誰かがこの部屋にやって来ました。
名前は花園というらしい。声のトーンと先生が"君"をつけていることから、男の子のようです。
私は除々に引いてく痛みに比例し、まぶたを開けました。
このまま堅く目を閉じても意味ないし、何より、初めて会う男の子に『消毒液が怖くて目を瞑ってる』という印象を与えたくなかった。お子様だと、笑われたくなかったからです。
私は目を開けた後、足音のする方向に目を向けました。
この部屋に来るということは、何かしらの負傷か体調不良者であるのは間違いない。
"鼻血"という単語が聞こえたので、恐らく前者の方。つまり、私と同じように怪我をした子ということです。
怪我を治しに来た、という目的を持っている。
自分と同じ目的を果たそうとしている子を見てみたかった。芽生えた同属意識から、彼に目を向けました。
「おや、先約がいたのか」
彼を最初に見た時の印象は……鼻血という言葉しか見つからない。
鼻血が出ていることは知っていた。しかし、いざ目の前にその光景が映ると、顔の特徴よりも先に鼻血の方に目がいってしまった。
ティッシュで鼻を塞いでるとはいえ、真っ赤に染まったティッシュが、より鼻血の印象を強くしてしまっている。顔の情報など、一目ではほとんど頭の中に入ってこなかった。
それほどまでに、彼の鼻血は強烈な印象でした。
そう、彼に対する最初の印象は"鼻血"というものでしかなかった。
しかし、この時の私は知らなかったのです。彼がどういう存在なのか。一体、何者なのか。
私がそれを知ることになるのは、この後直のことでした……。
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私は、怪我の報告を担任の先生にしなければならなかった。
その報告の際は保健室の先生、赤野先生が同伴するのがこの学校のルールです。
普段なら何気なく、このまま担任の先生に会いに行って、怪我の報告をすれば終わるはずでした。
「―――ッ!?」
私が保健室を出て直のこと。
あの保健室から信じられないモノを感知しましした。
まさかと疑いながら、今度は集中して保健室に意識を向け……最初に感知したものが、間違いではないことを理解しました。
私の足は自然と保健室に向かっていました。
背後から赤野先生の声が聞こえるが、それは頭の中に入りませんでした。
何故なら今、私が感知したのは僅かなジュエルシードの魔力。
完全発動はしていないが、その力が発動してしまえばこの学校は無事ではすまない。
学校は崩壊し、クラスメートも先生も、親友の2人も傷つくことになる。
それが解かっているから、私の足は止まらない。
―――ガラガラ。
私は保健室の前に到着した瞬間、いきよい良くドアを開けました。
ドアが壁に当たり、バンッ、という耳障りな音がこの部屋に響いた。
そんな音を聞きながら、私は部屋のある一点を見た。
それは微かに残る、ジュエルシードの魔力発生元。
そこにいたのは、花園君。今日、初めて会った男の子だ。
―――間違いない、この子が持ってる!
私は直にそう判断した。
そして、ある2つの事を思った。それは安堵と疑問。
まだ完全発動していない、ジュエルシードへの安堵。
何故、僅かではあるが、発動したジュエルシードが大人しくなったのか、という疑問。
―――うんん、今は安心する時でも考える時でもないッ。
状況は少し違えど、今の状況は大樹事件が起こる前に似ている。
何も知らない男の子が、ジュエルシードを持っている。その事だけでも、あの事件を彷彿させてしまう。
あんな事件、もう起こしちゃいけない。
その為には、彼からジュエルシードを回収しなければならない。
『私の友達が落としたもの』と言って、返してくれればそれで良いが……。
もし、返してくれないのであれば……。
―――強引にでも、回収するしかない。
間違いなく、嫌われるだろう。
しかし、そうしなければ、多くの人が傷つく。無論、彼自身も傷つくことになる。
そんなことになるぐらいなら……私1人が彼に嫌われるぐらいで済むなら、安いものだ。
「何て罪深い男なんだ……」
「え?」
突然語りだした彼に、思わず声を出してしまった。
先ほどまで抱いた決意は、一瞬にしてどこかに消え、私は彼の話に耳を傾けていた。
『罪』という言葉を言った以上、何か悪いことをしたという自覚を持っているのでしょう。
一体何の罪を……。
私は気になってしまったのです。彼がどのような罪をしたのかを。
「奪ってしまったのだから……」
「ッ!?」
私は彼の言葉を聞き、どのような罪を犯しているのかを理解した。
そして、彼が何故こんなことを語っているかを、薄々感づいてしまった。
「花園君が奪ったものって……」
彼が奪ったもの……それに関し、ある仮説を立てた私は、自然と口を開いていた。
私の立てた仮説は、当たってほしくはない。願わくば、彼に否定してほしいものだ。
だから、問い掛けていたのかもしれない。
「私はコレを奪ったのさ」
彼が……ジュエルシードを故意に持ってるなんて…。
そんな仮説、はずれてほしかった……。
しかし、皮肉にも私が立てた仮説は当たってしまった。
何故なら彼は自分の胸を指し、自分で奪ったと宣言したのだ。
胸ポケットに入っているジュエルシードを……。
■
私は彼女の質問に答えた。
自分の心臓を指し、心を奪ったと宣言をした。
先ほどの私の行動は、まるでプロポーズのように思えるセリフと行動だ。
だが、勘違いしてはいけない。私は会って20分しか経ってない子を口説くほど、女たらしではない。
というより、私はお姉さん系が好きなのだ。子供に興味はない。
そう、子供には興味がないのだ。
だから高町さん……そんなに此方を見つめないでほしい。
君がどんなに望もうと、私は君とは付き合えない。せめて友達からだ。
「花園君はどこでそれを……うんん。
それがどういうものなのか、知ってるの?」
「
表現は難しいが……例えるなら"自分の欲望を映す鏡"だ。
そして、その欲望を実現させるもの……と、いったところか」
心は人間の行動そのものだ。
そして、その行動は自分がしたいこと、やらなければならないことを実行するもの。
"あの人と友達になろう""あの人に告白しよう""あの子のスカートを捲ろう"それら全ては、自分がしたいこと、願ったこと、叶ってほしいこと、つまりは欲望だ。
我ながら、なかなか良い表現が出来たと思う。
高町さんなんて、目を見開いて驚いている。目をゆらゆらと揺らしながら、口を少し開けたその姿を見れば、どれほどの衝撃を受けたのかが解かる。
『そ、そんな表現があったとは!!』と、今頃思っているに違いない。
「違う……それは違うよ!
それはそんな都合の良いものなんかじゃない。
願いを叶えるどころか、周囲に災厄を起こす危険なものなのッ!」
何故だろう、高町さんがヒートアップした。
まさかとは思うが、高町さんは高町さんなりに"心"についての考えを持っており、それを私が否定したように見えたのだろうか。
もしそうなら、高町さんがこうなったのも頷ける。
自分の考えを否定されれば、誰だって反発するものだ。
「だから、早く私に渡して!
それを持っていたら、花園君だけじゃなくて、花園君の大切な人も傷つくの!」
「……どれだけ私の心は汚れているんだ」
持っているだけで不幸になるとか、どれだけ汚れた心なんだ。
というより、そんな汚れた心が欲しいとか、高町さんは何を言っているんだ。
もしかして、プロポーズのつもりか? 私に対するやり返しか?
私はちょっとやそっとじゃあ、落とせないよ。
「そんなに欲しければ、私がやったことと同じようにすればいい。
そう、奪い取れば良い……キミでは無理だろうけど」
私の心はお姉さんにしか落とせない。
高町さんが私の心を落とす可能性など0%に近い。
「そんな……どうして…」
高町さんは絶望的な表情をしている。
私が否定的な事を言ったのが、よほどショックだったのだろうか。
―――ガラガラ。
「高町さん! 急にいなくなったらダメでしょ!」
保健室のドアが開き、赤野先生が戻ってきた。
その表情はお怒りモード。原因は高町さんにあるようだ。
「あ、赤野先生……」
「膝を怪我してる状態で走ったら、治りが遅くなるでしょ!
このことは高町さんの担任にも報告するから、早く職員室に行くわよ!」
「あっ、ちょ、ちょっと待って下さい!
私、まだ花園君に話しが――」
高町さんは必死に先生に頼んいるが、聞いてもらえず、そのまま先生に引っ張られ保健室から出て行ってしまった。
急にやって来て、直に居なくなる彼女に対する印象は、嵐のような子。
そんな印象を私は抱いた。