賢者の石拾って、超能力が使えた件   作:MrM3

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3話

校内に響くチャイムが、学校の終わりを告げる。

そして、それは始まりでもある。

今まで机で勉強していた数百人が、それぞれ違うことをしだす時間だ。

スポーツに励む者、勉学にさらに励む者、娯楽を楽しむ者。様々な事をして良い時間、我々学生に課せられた義務を果たし終えた後にあるもの、それは放課後だ。

 

そう、この時間帯は私の時間だ。

誰にも私を止める権利はない。あってたまるか。

私にはこの時間、やらなければならないがあるのだ。何人たりとも邪魔はさせない。

 

「花園君……ジュエルシードを渡して」

 

例え私の道を阻む者が魔法少女の格好をしていても。

空中に浮かび、スッテキを向けられたとしても。

 

「この子がジュエルシードを……」

 

フェレットが二足歩行しただけでなく、言葉を喋ったとしても。

私は止まらない。止められない。

 

「そこをどけ……そうしなければ、見たくもないモノを見ることになる」

 

彼女達は私の言葉を聞き、警戒心を上げたようだ。

臨戦体勢に入った彼女達は、テコでも動かないつもりなのだろ。

それはつまり、見たくも無い恐ろしいモノを見たいということだ。物好きなヤツらめ。

 

――――ぎゅるるるる~

 

そんなに私の脱糞を見たいというのか。

ふざけるな! この歳で漏らしたら、もう学校に行けなくなるわ!!

 

私は彼女達を睨みつけた。

それは極々当たり前のことだ。何故なら彼女達の背後には、WCと書かれた公共物があるのだから。

 

 

ことの始まりは1時間前……。

私は帰宅途中、ある変化が起きていることに気が付いた。

それは腹部から押し押せる、強烈な痛み。

内部を抉られ、何かが暴れまわっていると錯覚するほどの痛みだ。

 

「ぬぉぉぉぉっっっ!!」

 

私は堪らず、両手で腹部を抱えた。

少しでも痛みが和らぐように。少しでも楽になれるように、私の体は自然と動いていた。

しかし、現実とは残酷なものだ。どれだけ腹部に気を使っても、痛みは一向に減らない。

それどころか、痛みは酷くなる一方だ。

 

これはマズイ。

そう思った私は、近くにある公園へ逃げ込んだ。

腹部の痛みに耐え、ぎこちなく歩き。その末、私はとうとう見つけたのだ。

光り輝くWCの二文字を、トイレというヴァルハラを見つけ出したのだ。

 

「あぁ……」

 

私は感動し、涙が出そうになった。

実のところ私は公衆トイレに対し、不衛生な印象を私は持っていた。

臭い、汚い、さらに虫が多くいる……そんなトイレ必要ない。

そんな馬鹿なことを、昨日までの私は考えていた。

 

公衆トイレの神様ゴメンナサイ、私が間違っていました。

今までの間違いに気付き、後悔し、悔い改め。私は何度も何度も心の中で懺悔をした。

いるかもしれない公衆トイレの神に許してもらう為に……。

 

「なのは、結界張ったよ」

 

「……うん」

 

しかし、私の声は神に届かなかった。

それどころか、神は刺客を送り込んできた。

白い悪魔とその使い魔……私には、彼女達がそう見えた。

 

空に浮ぶ少女。

立って喋るフェレット。

人々が消え、色あせた世界。

ファンタジーな事だらけなこの状況。普段なら驚いたかもしれない。

だが、今の私はこんなことで驚いてる場合ではないのだ。

気を抜けば、肛門筋が決壊する……もうすぐそこまで来てるッ!

 

そんな極限な状態では、他のことなど気にしている場合ではない。

漏らしたら、社会的人生の終焉なのだから……。

 

           :

           :

           :

           :

 

話は冒頭へと戻る。

空中には白い悪魔。地上には使い魔。

私は脱糞の危機、最悪の状況である。

 

「ユーノ君ッ!」

 

「うん、チェーンバインド!」

 

フェレットの地面から出て来た鎖に、私の四脚は縛られた。

ギチギチと軋む鎖は、ちょっとやそっとじゃ解けない。私は拘束されてしまったようだ。

脱糞しそうな相手を拘束とは……なんて趣味してやがるんだ、こいつ等は。

 

―――ぎゅるるるる~

 

腹部からまたも訪れた痛みに、私は顔をしかめた。

額に大粒の汗が浮び、垂れてくる中、私はお腹を擦りたい衝動にかられていた。

少しでも楽になる為に、私は何度も拘束された腕を動かした。

 

しかし、結果はギチギチという耳障りな音を奏でるだけだった。

状況は最悪の一途を辿っている。泣きたい気持で一杯だ。

 

「チェーンバインド!」

 

フェレットは私が抵抗していると勘違いしたのだろうか。

新に一本の鎖を出し、私の一部分を拘束し、強く締め付けてきた。

 

「ッ―――!?」

 

私は、声にならない叫び声を上げた。

何故なら、あのフェレットが次ぎに拘束してきたのは腹部。

ギチギチと締め付けてくる鎖は、無慈悲の一言だ。

 

「お、お前等……じ、自分達が何をしているのか、わ、わかっているのかっ」

 

「……これが悪いことだって、解かってるの。

でもっ! こうしないと皆が、花園君自身が悲しむことになるのッ!」

 

泣きながら叫ぶ彼女を見て、思う。

意味が解からない……泣きたいのは此方の方だ。

今君達がしている行動そのものが、私を悲しませていることに何故気付かない。

 

「お、お前達のやってることはぎゃ、逆効果だ……それでは誰も喜ばない」

 

「褒められたことじゃないのも、解かってるの。

誰にも喜ばれないことも、花園君に嫌われるのも……解かってるの」

 

「なのは……」

 

フェレットが心配そうに少女を見ている。

その気持の一割でも、私に慈悲を恵んで欲しいものだ。

 

「でもっ、何もしなかったら沢山の人が傷つくの!

そんなの、私は嫌だ!……だから…私は花園君を止める」

 

彼女は力強く、決意の篭った目で私を見ている。

そして、手に持つステッキを握り締め、直にでも攻撃してきそうな雰囲気だ。

 

「私を通さないというなら……止む終えない」

 

目の前のトイレに行けず、その場に拘束されたこの状況。

長くない内に、私は確実に漏らす。

ならば私は、最後の掛けにでることにした。

 

それは自分自身をテレポートすること。

ここから撤退し、トイレできそうな所に移動することだ。

そうすればこの刺客から逃げられるだけでなく、トイレに行ける。

まさに一石二鳥な手段だ。最初からそうすれば良いのに、と思ってしまぐらいに合理的な方法だ。

 

だが、最初からテレポートをしなかったのには理由がある。

それは……テレポートをする際、かなり集中しなければならないこと。

そう、集中することが問題なのだ。

今の私は、腹部の痛みと肛門筋に力を込めるのに手一杯の状態。

そんな状態で、他の事に集中しようものなら、直にでも漏らしてしまうだろう。

そんな危険なリスクを負ってまで、私はテレポートを使用する気は無かった。

 

しかし、状況は既に詰みに近い状況だ。

このまま拘束され続け、漏らすぐらいなら……私は賭けにでる。

 

「ジュエルシードの魔力が……ダメッ、止めて!!」

 

「止めるんだ!」

 

彼女達は焦り、叫びだし始めた。

どうやら彼女達には、私が何かすると解かってしまったようだ。

しかし、どれだけ制止を呼びかけようと、私がテレポートを止めることない。

このままでは漏らすし、何より私を更に拘束しようと、フェレットが鎖を5本追加で出しているのだ。恐ろしくて、止めれるはずもない。

 

目を閉じ、思い浮かべるのは4㎞離れたところにある大通り。

あそこには、公衆トイレは無いがコンビニはある。つまり、トイレがある。

 

私は行きたいと念じ、願う。

腹部の痛み、漏れそうなお尻。邪念を払い、私はひたすら念じる。

 

「花園く――」

 

白い魔法少女は、何かを言ったようだが、それは直に聞こえなくなった。

それどころか、辺りは急に静になり、音1つ無い場所に私は居る。

目を開け、周りを見渡せば、そこには大きな交差点、立ち並ぶビル。

そして、目先にあるものは……コンビニ。

 

―――ヴゥ

 

聞きたくも無い音が聞こえてきた。発信源は私のお尻。

私は直、下着の上からお尻を触ってみる。

腹痛は相変わらずだが、お尻に湿った感じはない。

ちょっと何か出た感覚はあったが、どうやらオナラだったようだ。

 

「勝った……」

 

私は歓喜した。

刺客から逃げ、トイレが目の前にあり、危険視していた脱糞も無かった。

完全勝利と言って良いこの状況。歓喜せずにはいられない。

 

しかし、いつまでも喜んで良いという訳ではない。

私がいずれ漏らすのもそうだが、あの刺客が追ってこないとも限らない。

ここは早々と用事を済ますのが先決。

それに、ある偉人はこのような名言を残している――油断大敵。

 

油断していては、勝てるものも勝てなくなる。

勝利目前の今のような状況が、まさに油断しやすい状況。

私は早々と、一歩ずつ足を進めた。

"絶対に油断しない"と心で何度も唱え、私は更に前進する。勝つ為に。

 

私は万全にことを進めた。

しかし、私は重要なことに気付いていなかった。

私が何故公衆トイレに行けなかったのか、私に刺客を向けたモノは誰なのか。

この時、私は早くに気づくべきであった。

 

―――私は公衆トイレの神を敵にしていると。

 

曲りなりにも、神と敵対していることに。

神が創造する存在だと、気付くべきだったのだ……。

 

「ジュエルシードを渡してください」

 

「早く渡しな。

そうしないと、ガブッといくよ」

 

コンビニの前に立ちはだかる、黒い魔法少女。

後方で"ガルルッ"と威嚇してくる朱毛の狼。

新に現れた刺客を見て思う……どうやら、私は神の怒りに触れてしまったようだ。

 

 

 

 

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