「おい、おっさん!!あんたの今の状況を知っているやつは居るのか!?」
クリスから心配の言葉が聞かれた。それもそうだろう、彼女の言動は育ちのせいで多少ひねくれてはいる、その根っこの部分は世話焼きで優しい少女なのだから。
そんなクリスの心配にオールマイト改め八木はサムズアップしながら返す。
「もちろん、知っている者はいるさ。しかし、私の負傷は世間に知られれば少なくない動揺を引き起こす程度には影響力があるのだ。それ故に、知っている者はごく限られた数人のみなのだ。」
八木の言葉は響たち3人に様々な衝撃を与えた。
「それって、知ってはいけないことを知ってしまった私たちは口封じされちゃうんですか!?こう、ドラマみたいに!」
「ブフー!!な、何を言うんだ立花少女!そんなことをするわけないだろ!」
響のアホというか、どういう思考回路から弾き出されたのか問いただしたくなるような発言に強い八木は強い否定を示す。
重傷を負い、かつてのように活動できなくなったといえども、その身は、その心は、そのあり方は今も変わらず平和の象徴なのだから。
「そ、そうですよね。ごめんなさい、オールマイトさん。」
「なに、わかってもらえたのならそれで何の問題もないさ、立花少女。」
八木が響を落ち着かせている間、思考の内に沈んでいた翼が口を開く。
「オールマイト殿、無礼を承知した上で、お頼みしたいことがあります。」
「うん、いいよ。」
まさかのノータイムの了承である。
「ちょっと待ておっさん!!」
堪らず、クリスからツッコミが入る。オールマイトの即答に了承された翼すら驚きのあまり呆けてしまっていた。
「先輩はまだ何も言ってねえのに、了承するとかあまりにもお人好しすぎんだろ!!
この世界のヒーローってのはこうもお人好しばっかなのか!?
そんなんじゃ、真っ先に
「それは違うぞ、雪音少女よ!ヒーローってのは多かれ少なかれあれど、どいつもこいつもお人好しのおせっかい焼きばかりさ。
ヒーローというのはね、命がけで綺麗事を実践すろお仕事なのさ!」
八木の言葉は一見軽く思える。しかし、装者たちには違ってみえた。
それもそうだろう。その言葉は八木が、オールマイトが、人生をかけて実践してきたことなのだから。
その言葉は彼のヒーローとしての信念であり、誓いなのだから。
そして、八木は続けて口を開く。
「それと、私は考えなしに風鳴少女の頼みを受け入れたわけではないぞ。」
そう言って八木なりの見解をのべ始めた。
「まず、君たちの人柄だね。立花少女は特に分かりやすい性格をしているからね。見知らぬ人が襲われているところを目撃したとき人がとる行動はいくつかあるが、『助ける』というのは、そうそうできることでは無いのだ。それこそ、私がヒーローの資質として考えるほどに。そしてその資質を風鳴少女と雪音少女、君たちも持っている。まあ、些か雪音少女は分かりづらいというか、ひねくれていたがね。」
「っ~~~!?何「待て!雪音!」離せ、先輩!!このおっさんはここでしめる!!」
八木の言葉に突っかかろうとするクリスを翼は必死に抑える。
「おっと、失言だったね。申し訳ない、だが乏すつもりはないのだ。え~、それで続けても良いかね?」
「はい、大丈夫です。それと、クリスちゃんは照れているだけですから。気にしないでください。」
響が八木に答える。
「何言ってやがるこの、すかぽんたん!!」「落ち着け雪音!」
「本当に大丈夫かね。まあ、続けようか。次に君たちの状況だね。見知らぬ土地で現状の把握が十分でなく、その土地や現状に精通していると思わしき人と接触できた。となれば、その人物やその人が所属する組織に協力を求めるというのが普通だろう。」
「はへ~。そこまで考えているなんてすごいです、オールマイトさん。」
響が感嘆の言葉をこぼす。
「まあ、確証があるわけではないから結局は勘なんだけどね!」
「あだっ~~~!?」
八木の暴露に思わずリアクションしてしまう響であった。
「とはいえ、あながち間違いではないのだろう?風鳴少女よ。」
「ええ、その通りです。オールマイト殿。その慧眼、お見事です。」
「慧眼なんてものでは無いさ、言っただろう、あくまで私の勘さ。
とりあえず、着いてきてくれないかい?私の勤めている学校で改めて詳しい情報の交換や協力の内容を話そう。」
こうして、一行は八木の勤める学校、雄英高校に向かうのだった。
やっと、雄英に行けそうです。
次の投稿までまた日があくかもしれませんが、頑張りますのでよろしくお願いします。