異世界異聞録~生き残る努力をしたらチート化しました~   作:閃狼姫

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いい加減、話を進めないと・・・

なので本当に急展開です。


第十話 いや、急展開すぎませんか?

クーリアと一緒に艦内を歩き進むと反対側から歩いてくる緑色の髪を腰まで伸ばした少女がいた。身長は高くスタイルもいい。モデルとしてもやっていけそうだ。多分、今までのパターンからしてこの子がシスターズの一人で風華だと思う。

 

「あら?クーリア様。そちらにいらっしゃるのはもしかして・・・」

「ええ。私たちのマスターです。マスター。こちらが風華。優秀なオペレーターとして育てました」

「初めまして。ご主人様。私はクーリア様に作られたシスターズの風華です。医療系技術も修めているので艦を動かさない時は医務室におります」

 

丁寧にお辞儀をしてくる風華に俺も頭を下げる。

 

「ユウ・スクライアです。今後ともよろしくお願いします」

「はい。ご主人様。クーリア様やアリス様からはある程度お話は聞いていますが・・・決して無理をしてはいけませんよ?体を大切にしてくださいね」

「了解。気を付けるよ」

「忙しいのですか?」

「はい。工房で作っていた医療再生ポッドなどの搬入が終わりましたので調整作業をしています。まだけが人とかはいませんがいざという時に使えないのは不安ですから」

 

それでは失礼しますと一礼して去っていく風華を見送り、一言。

 

「なんか常識人を初めて見た気がする」

「マスターが非常識人ですからね」

「おい。どういう意味だ?」

「そのままの意味ですが?」

 

しれっと返したクーリアをにらむがどこ吹く風と視線をそらし再び歩き出す。さて最後のシスターズは何処にいるのやら・・・

 

「最後のシスターズってどんな子なんだ?」

「そうですね。担当は火器管制ですが・・・性格はおっとりしてますね。趣味は重火器のコレクションですが」

 

それのどこがおっとりなんだ?

 

「まあお会いすれば分かるかと・・・多分、シューティングルームにいると思います」

「そんなのも作ったんだ」

「PT用のシミュレーターもありますよ」

「PT用?おい、まさか作ったのか?PTを?」

「ふふふふ」

 

何故笑う?

 

その後も問い詰めたがのらりくらりとかわされ結局詳しいことが分からないまま通路を歩いているとスマホが振動し着信を告げる。

 

「誰だ?…ってユーノ?」

 

画面表示にはユーノの文字。ユーノやユイには俺のスマホへ連絡できるように端末を渡してあったのだが実際にかけてくるのは珍しい。

 

「ユーノ?どった?」

『兄さん!大変なんだ!!すぐに来て!!』

 

電話の向こうから聞こえてきたユーノの声は酷く焦っていた。さらにかすかであるが悲鳴のような声も聞こえる。これだけでもう大体分かった。

 

「ユーノ!すぐ行くから待ってろ!」

『う、うん!』

 

電話を切ると傍らに控えていたクーリアが俺の肩を掴んだ。

 

「マスター。アリスと連絡つきました。どうやらユーノ様が指揮していた発掘現場から異形の生物が出てきたそうです。アリスがすでに現場で戦闘を始めています」

「分かった。俺もすぐ跳ぶ!」

「分かりました。皆様の避難先としてスノードロップを使います」

「ああ、頼む」

 

クーリアと簡単に決めるとすぐに転移魔法を使う。

 

「テレポート!」

 

景色が歪むと目の前に映ったのはユーノ達がいるはずの発掘現場。到着と同時に索敵魔法を展開するとアリスの反応の周囲に数名の人間の反応が集まっている。どうやらアリスが護衛として守っているのだろう。部族の集落はもう少し先にある。こちらには敵正反応は現れていない。なら俺がやることはただ一つ。

 

「お前らがなんなのかは知らんが・・・」

 

振り返った先には全身が黒く細い手足を持った異形の者たちがいた。くぼんだ目の部分は赤く光り、口はだらしなく開いている。どう見ても会話などは無理だ。ならまずは殲滅するとしようか。こいつらに手加減も必要なさそうだしな。

 

「ぶっ潰す!」

 

地面を蹴り先頭にいた一体に拳を叩き込む、それだけで上半身は吹き飛び、その後ろにいた数体も拳圧だけで同じように上半身が吹き飛んでいた。倒された異形は黒い霧となって消える。それを確認し残った奴らに手をかざす。

 

マハラギオン

 

種類でいうなら中級全体火炎呪文であるマハラギオンが生み出す業火の波は一瞬にして異形どもを黒い霧に変え霧散させた。すぐに索敵魔法を使い、残りを確認するとアリスたちの方へ大群と言っていい数が移動していた。

 

「上等だ。蹂躙してやる」

 

静かに呟きテレポートで転移した。

 

◆◆◆◆◆◆

 

「機神拳・焔!」

 

ユイちゃんが放った炎拳を受けた“バグ”はわずかに体制を崩すだけにとどまった。

 

「くっ!効いてない!」

「下がってユイちゃん!」

「はい!」

 

ユイちゃんが後退したのを確認し両手をかざす。私も『詠唱破棄』に『無音詠唱』があるのでほぼノータイムで魔法を発動できる。

 

シャインセイバー

 

光属性の魔法。地面から無数の光の剣が現れバグたちを串刺しにしていく。串刺しにされたバグたちはこの世界で姿を保てなくなり消滅していった。それにしてもどうしてバグたちが出てきたのだろう?こいつらはその名の通り世界から生まれるバグ。ただ現れては生きるものを襲い世界を壊していく。詳しいことは分からないけど世界のバランスが崩れた時に生まれるらしい。普通はこいつらが生まれる前に管理者の手で調整されている筈なんだけど。

 

もしかしてお兄ちゃんのせい?

 

管理者が手を出せない存在の一つが神々が認めた世界のバランスを内側から保つ者“破戒神”もう一つが世界が送り込み世界を危機にさらす存在を排除する物“守護者”。この者たちがいるときは管理者は手を出せない。手は出せないと言ってもバグを削除できることは可能な筈なのに?

 

「もう!邪魔だよ!!」

 

思考中に襲い掛かってきたバグを殴り破壊。そのまま両側から挟み込むように現れたバグを回し蹴りで倒す。

 

「早く帰ってきてくれないかな~」

 

別にバグ自体は私なら簡単なんだけど数が多い。お兄ちゃんが鍛えていたユイちゃんと発掘現場で護衛をしてくれていた一部の男衆が倒せないまでも足止めをしてくれているがこのままだといずれ押し切られる。ユーノ君が連絡してたみたいだからそう時間はかからないと思うんだけど・・・

 

「うわぁ!?」

 

しまった!?男衆の一人がバグに押し倒されバグがそこに群がっていく。他の男衆も下手に動けば壁が崩されてしまうから動くに動けない。しかしバグたちはそんな子とは関係ないこのままでは不味い!ここは突破されちゃダメ!

 

とっさに手をかざし魔法を放とうとするが男衆たちとバグたちの距離が近すぎて巻き込んでしまう。でもここでやらないと後ろでせっちゃんたちが避難させている部族の皆が危ない。迷っている暇はない。だけど・・・脳裏に浮かぶのは部族の皆との暮らし。赤の書に封印されている時には感じなかったものを味わってしまった今、私にはためらいが生まれてしまった。

 

……ごめんなさい!本当にごめんなさい!!

 

一を切り捨て、残りを救う。そう覚悟を決め魔法を放とうとした時だった。

 

「お待たせ!」

 

黒と紫の大鎌を振りかぶったお兄ちゃんが突然現れ、その大鎌を振るった。

 

「おらっ!!」

 

って!お兄ちゃん?!

 

「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

そうお兄ちゃんは大鎌を振るった。男衆たちも巻き込んで・・・

 

「お、お兄・・・?」

 

今まで一緒に暮らしてきた部族の人たちを巻き込む一撃にユイちゃんはその場に座り込んでしまった。私もいくらお兄ちゃんが非常識な人間でもそんなあっさりと他人を犠牲にするとは思わなかったからショックを隠せない。そんな中、大鎌を肩に担いだお兄ちゃんは。

 

「安心しな。切ったのはその化けもん達だけだからね」

 

へ?あ、本当だ。鎌の一撃を受けた筈の人たちは傷一つない。でもバグたちは全部消えて行った。そしてお兄ちゃんは戦ってくれていた男衆に回復魔法をかけてあげていた。

 

「ボーっとするな!まだ敵はいるぜ。あ、おっちゃん達は集落に戻りなよ?そろそろ限界だろ。後は俺が引き受けるからさ」

「え、ああ・・・悪いな。ユウ。だが大丈夫なのか?」

 

それはそうだね。おじさんが心配するのも無理はない。でもお兄ちゃんは普通じゃないしむしろバグたちが哀れだと思う。だって今のお兄ちゃん、滅茶苦茶怒ってる。

 

「おう。任せてくれよ」

 

ニカッと笑みを浮かべサムズアップするお兄ちゃんに男衆も引き上げる。それに頷くとまだこちらに向かってくるバグたちへ鋭い視線を向け。

 

「アリス」

「戦えるよ」

 

お兄ちゃんの問いにガントレットを軽くぶつけ答え、構える。

 

「ユイ?」

「わ、私も戦えるもん!」

「たく・・・これ飲んどけ」

「え?」

 

アイテムボックスから取り出したのは小瓶。

 

「これ何?」

 

受け取ったユイちゃんが首をかしげながらも蓋を開け、一気に飲んだ。

 

「それな。スラ―酒っていう霊薬で疲労も取れるし魔力も回復するから」

 

さらっととんでもないことを言っちゃってるよ!この人!スラ―酒ってソーマ酒に並ぶほどのお酒じゃない!!ていうかスラ―酒は神ですら昏倒するほど悪酔いするお酒なんだけど?

 

「ん?これは数飲まなきゃ大丈夫よ。ほら、お前も飲んどけ」

 

そう言ってアイテムボックスから取り出したスラ―酒。私は苦笑しながらも飲んだ。あ、美味しい。それに体が軽くなってわずかだけど力がみなぎる感じがする。

 

「うし!じゃあやりますか!」

 

大鎌を構えたお兄ちゃん。ユイちゃんと私も拳を構える。もう負ける気がしないね!

 

まだ遺跡の方角からやってくるバグたちに向かってお兄ちゃんが指を指していった。

 

「暴れるぜ~!止めて見な!!」

 

それから数分もかからずにバグたちを全滅させた。やっぱり非常識の塊だね。お兄ちゃん。

 

◆◆◆◆◆◆

 

集落へ戻ってくるとそこには白亜の戦艦が停泊していた。いや、改装したのは聞いたけどさ。またえらく変わったね。

 

一言でいうなら聖剣のような美しさを持っておりまるで“世界一危険な芸術品”って感じか?

 

「はじめまして~主さん」

「ん?」

 

声をかけられ振り返ればそこにいたのは何故か肩からアンチマテリアルライフルを下げた少女が歩いてくる。歩いてくるのだが、その一部が揺れている。クーリアよりもあるんじゃ・・・っといかん、いかん。

 

「水色の髪・・・もしかして君が水華?」

「イエス。シスターズの四女。水華です~」

「そのライフルは?」

「これは~私の相棒です」

 

そういえば重火器のコレクションが趣味って言ってたけどまさかトリガーハッピーとかじゃないよね?

 

「それでわざわざ挨拶に来たの?」

「いいえ。ユーノ君が主さんを探していたので」

 

そうだった。まずユーノに何があったのか聞かないと。

 

「ありがとう。行ってみるよ」

「はい~私は引き続き警戒にあたりますね~」

 

水華と別れ、向かうはスノードロップ。そこに部族の皆がいるからだ。俺がそこに着くと幸いにもけが人はいなかった。風華、雷華、雪華が部族の皆に声をかけ、烈華は炊き出しを行っている。

 

「兄さん!」

 

小脇に何かを抱え込んだユーノが走ってくる。俺もユーノに駆け寄る。

 

「で?何があったんだ?」

「う、うん。実はね。遺跡の発掘調査中にこれを見つけたんだ」

 

そう言って差し出されたのは二十一個の宝石がはめ込まれた石版。

 

「これは?」

「ジュエルシード。そう呼ばれているロストロギアだよ」

 

ロストロギア。確か滅んでしまった超高度文明の遺物だったか?オーパーツみたいなもんだよな?

 

『ふむ。これはまた面白い物が見つかったな』

 

おや?創星龍?珍しいね?お前が興味を持つなんて

 

『うむ。これは次元干渉型のエネルギー結晶体だ。この掌くらいの大きさ一つでナハトたちの動力源になるだろうな。ただ扱いが非常に難しい。うかつには使えんな』

 

なんでそんなことを知っている?

 

『我を甘く見るな。貴様と一体になっていると言っても能力は使える。暇つぶしにアカシアの記録を読んでおったのだよ』

 

なるほど。そこで知ったと?

『うむ』

「で?これが見つかった後、あいつらが出てきたと?」

「ううん。それが違うんだ。これを運び出してさらに発掘作業を進めようとした時に女の子が現れたんだ」

 

ユーノの話を要約すると・・・。

 

一つ、ジュエルシードを見つける。

二つ、謎の少女がジュエルシードを渡すように要求してきた。

三つ、断ると少女が遺跡を攻撃しそこからアイツらが出てきた。

 

う~ん・・・少女を見つけて話を聞く方が良さそうだけどまずは何でジュエルシードを狙ってきたかだよな?やっぱり創星龍の言うとおり、高密度のエネルギーが内風されているみたいだしそれを使って何かを起動させる気か?

 

「それでね。兄さんに聞きたいんだけど・・・」

「何?」

「この石板の中央を見て」

「ん?」

 

言われて見てみるとそこにはくぼみがあった。触ってみるとここにも何かがはめ込まれていたみたいだけど・・・?

 

「このくぼみなんだと思う」

「・・・もう一つジュエルシードがあった?」

『む?それはないはずだぞ』

 

どういうことだ?

 

『記録にはジュエルシードは二十一個のみ製造されたとある。しかし・・・むぅ、いかんな。情報量が多すぎて調べきれん。もう少し情報があれば探しやすくなるのだがな』

 

創星龍の言葉に頷き、ユーノと話をする。

 

「兄さんの言うとおり、僕ももう一個あると思ってたんだけど、もしかしてこのジュエルシードを制御できる何かが収まってたんじゃないかな?」

「でも、襲撃者はこれを要求してきたんだろ?」

「うん。だからあの少女が制御装置を手に入れているとしたら?」

「制御できる可能性があるなら奪うとするか・・・」

 

まあ、ユーノの推理は可能性としては大きい。

 

「おし。ひとまず考えるのはやめだ。ユーノ。こいつはどうする?」

 

分からんことをこれ以上考えていても仕方ない。それよりも襲撃者が現れるような代物をどうするかだ。

 

「管理局に送ろうと思う。管理局には遺失物管理班があるし、流石にあの子も管理局にまで襲撃しないだろうし」

 

いや、相手が本気なら多分襲う。俺だったら襲う。でも管理局に押し付ければあとはあっちが調べるしそれでいいだろう。

 

「オッケー!それで行こう。遺跡の発掘はどうする?」

「明日になったら行って見るよ。兄さん。護衛お願いね」

「任せろ」

 

弟の依頼だ。受けない筈がないだろ?

 

「ついでにこの艦のことも説明してくれるかな?」

 

あ、そこはスルーで。

 

「ダメに決まってるでしょう!!兄さん!今回は教えてもらうからね!!」

 

ユーノの追撃に俺はひとまず撤退することにした。

 




実際の発掘作業現場ではこんなに簡単に見つかるとは思いませんが・・・ご都合主義ということでご勘弁を・・・

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