異世界異聞録~生き残る努力をしたらチート化しました~ 作:閃狼姫
女神様視点なので話は短いです。
「どうやら今回は当たりを引いたようですね」
手元の水晶玉を見ながら私は笑みを浮かべる。今まで何度もこの世界へ“玩具”を放り込んだがどれもが簡単に壊れてしまった。しかし“彼”は違う。死ぬたびに原因を考察し続け生き延びようとする。そんな彼の姿に期待を込めて敵のレベルを上げていく。さあ次はどんな死に方をしてどう戦うのだろう。それを考えるとついつい楽しみになってしまう。
そんな思いが途中から焦りを感じ始めたのは彼が魔導書を入手してからだった。一回読んで頭がはじけ飛んだ。普通ならそれで二度は読まないだろう。なのに彼は再び読み始める。
「あ、また死にましたね」
あれからどれだけ死んでるの?もう読むのをやめればいいのになんで読もうとするの?って言ってるうちにまた死んだ・・・・・・
映し出されている映像の中で彼はついに魔導書を読み切った。たった一つの魔導書を読み切っただけ。その筈なのに背筋を悪寒が奔った。
私は侮りすぎたのかもしれない。彼がこれからどれだけ強くなるのか正直わからない。これは設定を変えてもっと敵を強くしないと。彼が手に負えない存在になる前に。
結論。遅かった。なんかとんでもない物を作り始めましたよ?!あのアホ!?なんでスクラップからデモンベインを直せるの?!まずい。もっと強化しとかないと、こうなったら本気で殺す気で行かないといけない・・・・・そうだ!グランゾンやゼオライマーも追加しておこう。もし倒されたらネオやグレートになるように設定しといてっと。
ふう。これで安心して休めますね。
そう思っていた時期がありました。倒しちゃいましたよ・・・二体とも。しかも持って帰ってイイ笑顔で改造しているし・・・結論その二。どうしよう?・・・・・・完全に手遅れだ。黒の書の片割れの赤の書を見つけた上に読んだら即死級の魔導書をまた読み切りましたよ。あのキチガイ!?くっ!やりきった顔がすごく腹が立つ。今度は何を作るんですか!?また鬼械神?あぁ、赤の書の・・・どうしてこうなったんでしょうか?いいでしょう・・・こうなったらとことんやってあげますよ!!最初は楽しもうかと思いましたがもう貴方はいりません。さあ、覚悟しなさい!私の揮える権限を極限まで使って始末してあげます!
◆◆◆◆◆◆
自分の椅子に腰かけ私はいつものように新たな駒の選定をしていた。
「冥界の神たちに言い訳が付いて私の玩具になるような面白い人間はいませんかね~?」
仕事(新しく作った星の管理)の片手間に冥界から送られたリストをめくるがめぼしい人物はいない。
「そういえば彼はどうなったんですかね~?あれから覗くのをやめちゃいましたし・・・」
ふと思い出したのはこれ以上ないほど出現する敵のレベルを上げた深界にいる彼。さすがにもう死んでるでしょう。
「電話は来ませんけど精神が壊れたら消滅ですし、さすがにあそこまでレベルを上げた深界で生き抜くのは私ですら厳しいですしね。まあ私は戦闘要員ではないから仕方ないですけど」
独り言が多くなってしまうのは仕事場のせいです。けっして私がボッチなわけじゃないんですよ?誰に対する言い訳か分からないのを内心で言いつつカップを取ると
「おや?飲み切っていたようですね・・・新しく淹れますか」
手をさっとふるだけで新しい飲み物が入ったポットが現れる。さすが全能神な私。自画自賛しながらポットを掴もうとすると自分の手が震えているのに気が付いた。
あれ?なんで私の手は震えているのでしょうか?お、おかしいですね・・・悪寒も感じます。息切れもしてきましたし・・・・・・
「汗?ここは常に快適な空間にしているのに?」
いや、これは冷や汗?この私が冷や汗?!そんなはずは、この私が危機感を感じていると?
「ありえない・・・」
必死に自分に言い聞かせるが動悸は収まらない。しかもさっきからこの部屋のドアが気になって仕方がない。神としての勘が告げる。
とんでもなくヤバい者がこっちに向かっていると。
その時、ドアが大きく開かれた。否、轟音と共に蹴破られた。
「な、なななななな・・・」
そこにいたのは・・・・・・
「やあ」
片手をあげて私が深界へ送った時と変わらない姿で満面の笑みを浮かべるあの男だった。ただその身に纏う雰囲気は違う。アレは神をも殺せる者だ。
あ・・・私、死ぬかもしれません。
投稿二話目。この章は四話で終わりなのでそこまで投稿します。