異世界異聞録~生き残る努力をしたらチート化しました~ 作:閃狼姫
リミウスが作った扉から出るとそこに広がる光景は見慣れた格納庫。その格納庫には三メートル台の人型兵器が五体ハンガーに収められていた。その五体はどれもが深界(あのクソ女神がそういってた)で自分に襲い掛かってきたものを倒した後、もったいなかったので工房へと持ち込み修理ついでに魔改造したものだ。まあ修理したものの一回も起動させていない。理由は修理に満足してしまい忘れていただけなんだが・・・すまない。転生した暁にはしっかりと働いてもらうとしよう。
「?」
その内の一機。青色の装甲に頭部には大型の角、両肩には大型のコンテナユニット、右腕に大型の杭打機、左腕には五連チェーンガンがついた盾を搭載した機体。一見するとバランスどうなってるの?と言いたい機体。コードネーム“ナハト”と呼ばれる機体がツインアイに光を灯しこちらを見ていた。
ただいま!
片手をあげ挨拶するとナハトはわずかに首肯し再び正面を向くとツインアイから光を消した。残る四体の機体にも挨拶をしてからクーリアとアリスを伴ってブリッジを目指して進む。深界で安心して休むために作り上げた船だったが快適さ、便利さなどを求め改造を続けた結果、自慢の一品に仕上がったと自負している。というか空間歪曲フィールドとか使用してもダメージを与えてくる奴がいるから安心できなかったわ!特に勇者王と黒い堕天使がしつこかったです。まあ、あらゆる科学知識を収めている黒の書の管制管理人格のクーリアがほとんどやってくれたおかげで完成にこぎつけたわけだが・・・・・・
「マスターの無茶ぶりに答えるのも大変でしたがとても有意義な時間でした」
とはクーリアの言葉だ。とてもいい笑顔でそのままベッドに倒れこんだのを見て本当に申し訳なかったと思う。一応俺も手伝っていたけど動力炉とかは流石に技術が追いつかずクーリア任せでした。
さてブリッジに入るとそこには一人の少女がコンソールをいじって作業していた。
「あ、お帰りなさい。マスター、クーリアさん、アリスさん」
「ただ今戻りました。雪華さん」
「ただいまー!せっちゃん!!」
クーリア、アリスが挨拶しながら抱きついているのはこの船『スノードロップ』の管制管理をしているヒューマノイド『雪華』。外見は緑色のツインテールに青を基調とした制服を着た少女。制作時のモデルはクーリアがしていたのだがなんか初音ミクに似てない?まあいいけどさ・・・ちなみに彼女は戦闘用ではないので戦闘能力はないがスノードロップを一人で動かすことができる。そんなワンマンオペレーションシステムを完成させるほどの知識を得られる黒の書。死にまくって読み上げたかいがあるってものだ。
「ところでどうしたんですか?もう戻ってこないかと思っていたのですが?」
いやいや、雪華がいるしクソ女神に復讐したら戻ってくるつもりだったよ。
「えへへ。そう言ってもらえると嬉しいですね!じゃあちょっとだけ待っててください。今、仕上げの作業をしてますから」
仕上げ?
「はい!実は皆さんがあの世界から出て行ったあと、崩壊を始めまして・・・とっさに空間転移をしてみたんですが気が付いたら謎の空間に固定されていたんです。ついさっき漸く船の制御が戻ってきたので異常がないか調べていました。っとこれで終わりです!スノードロップの全システム問題なし。クーリアさん。設定をいじったので工房の様子も見てきてくださいね。アリスさんは食堂に医務室のほうをお願いします」
「ええ」
「了解!」
雪華の指示に二人は頷くとブリッジから出て行った。
雪華さん?俺は?
「マスターは・・・えっと・・・その・・・」
目を泳がせながら必死に考える雪華。いや、ないならないって言ってくれていいんだよ?そんなに必死になられると俺がへこむ。
まあいいや。俺は部屋にでも行くわ。
「あ、そうしてください!何かあったら呼びますから!!」
雪華の言葉に力なく手を振りブリッジを後にした。
さて・・・そういえば新しい世界に行くってどうやるんだろ?
『我が半身よ』
そんなことを考えていた時に頭の中に響いてきた声は・・・創星龍?あれ?お前喋れたの?今までは感情が流れ込んできたから気持ちが理解できたけど。
『うむ。完全に力を取り戻したおかげでな。そこでだ、我はしばらくお主の深層にてお主に合うように力を調整してくる』
調整?そんなの必要なのか?
『お主・・・今の状態が理解できていないようだな。今のお主は肉体がない。そうだな。一番近いのは深界にいた英霊たちと同じ状態だ。お前が深界で力を増しても平気だったのは肉体がなかったからだな。だが転生し肉体を得るとなれば話は別だ。肉体が力について来れず崩壊する。そうならない為、我はいくつかの神器を作ろうと思う。そうすれば今の強大な力も分散され扱いやすくなる筈だ』
あ~そういうことか。ありがとうな。心配してくれて。
『気にするな。お前と共に旅に出られる。それだけで我は楽しみなのだ。あの退屈な深界でただ世界を支えるだけの日々を考えればこれくらい造作もない。楽しみにしておくがいい』
そういって沈黙してしまった創星龍。そういうことなら俺も準備しておくかな。
部屋に戻るのをやめ、準備のためにやってきたのはクーリアが管理している工房。ちょうど点検中だったクーリアが俺に気が付きタブレットから目を離した。
「マスター?何か作られるのですか?」
うん。属性付加剣をいくつかね。
「そうですか。何かありましたら呼んでください」
ああ。その時は頼むよ。
黒の書を読み切った時に手に入れた工房は広く愛機であるデモンベイン・レギウディアやこのスノードロップを作れたほど。スノードロップが完成した後はここの一室から工房へ繋げ、完成した物は格納庫へ出せるようになっている。この辺は魔術関連の知識を手に入れられた赤の書のおかげである。こっちも死にかけながら読んでおいてよかった。
さて、さっそく始めますか!
工房の一か所で作るのは属性付加した魔剣。この技術は赤の書と赤い英霊の持つ魔術のおかげである。あの英霊の使う魔術便利。ゲットアビリティで手に入れてからスキルアップの為に何度も戦う羽目になったがあの人にも色々教えられたものだ。さて感傷に浸ってる場合じゃない。作業をせねば。
まずは普通に西洋剣を作る。材料は貯蔵庫に大量にあるので問題ない。いつの間にか手に入れていた鍛冶スキルで一本完成させるとそこに属性付加魔術を使って無属性の西洋剣に腐蝕属性を付加する。なおこの腐蝕属性は前に使ったデスサイズの腐食効果とは全くの別物。デスサイズの方は斬り付けた個所から相手を腐らせていくがこっちは当たった瞬間に全身が一気に腐蝕し崩れ去る。何故か攻撃した方も・・・なのでこの剣で斬り付けた場合、相手も死ぬが剣も壊れる。なので完成したこの剣を次に投影魔術で一気に生産。後は戦闘時に取り出し攻撃とか周囲に展開し撃ち出し攻撃してもいい。便利だよね。投影魔術って魔剣とかでも作り出せるんだから。
次は短剣だな。
同じように作り上げると今度は護りを意識した呪文を付加しアイテムボックス内に入れておく。転生した後どのくらいの時間で力が戻るかわからないしね。持っているだけで各種状態異常を防げたり回復効果があったりするのは助かる。他に作っておきたいのは・・・薬品関係か。貯蔵庫から薬草などを持ってくると早速作業していく。効果が違う回復用のポーション、状態異常を回復するポーションを作っては保存していく。作業は一工程を丁寧にやっていく。それが高品質の物を作るコツだ。今までは魔法とかスキルで勝手に回復していたがこれらもあって困るわけではない。高品質のを作り上げたら錬金術にあたるメイキングという魔法で工程短縮を行い量産していく。この魔法は材料と作った経験があればその工程を無視して作成できるという魔法で簡単なのだがコレの弱点は品質が下がる。Sランクの物がBランクまで下がってしまう。この辺は投影魔術と似ている。それから時間をかけてそれらを作り終えた時だった。あの世界でずっとお世話になったスマホからメールの着信音が鳴った。取り出し見てみると。
『転生の準備が整いました。転生をされる場合は・・・』
思ったよりも早かったな。転生するには専用のポッドに入ればいいのか・・・ってなんで科学技術やねん。魔法とか神の御業とかじゃないんかい。思わず突っ込んでしまった俺は悪くないと思うんだ。でも高度に発展した科学技術は魔法と変わらないとかなんとか聞いた気がする。納得できるかどうかは別として。
メールに添付されていた場所はスノードロップの一角。元々物置に使っていた部屋だった。個人的にはもう少し準備をしてからだな。深界では準備なんて出来なかったから今度はしっかりと準備をしておかないと。そういえばあまり気にしなかったけどこのスマホってそのまま使っていていいのか?スマホを眺め少し考えるが結論としていいと思う。ついでだから色々弄り回そうか。今の俺ならこれくらいなら出来るしね。さて始めようか。
◆◆◆◆◆◆
「・・・マスターが何か始めた気がしますね?」
弄っていたタブレットから目を離しマスターの方へ視線を向けながらため息をつく。
「また、思いつきで動いてなければいいんですが」
そうは思うがきっとそれは期待するだけ無駄な事でしょう。なにせ読めない筈の書を死にながらも読み続けるという力技で二冊読み切った“バケモノ”なのですから。マスターはどう思っているのか分かりませんが私は目覚めた当初は誰かの所有物になるということは我慢できませんでした。これがそれ相応の存在ならまだ許せたかもしれませんが何せ只の人間が読み切ったのですから。故に何度も殺そうとしたのですが、あのお方は私が手を出さずとも勝手に死んでいきました。そして蘇るたびにそれを反省点として考察、乗り越えてきました。普通なら精神が持たず魂が擦り減り消滅に至るのにその魂が擦り減ることはなくむしろ輝いていった。
いや、どこの戦闘民族ですか?おかしいでしょ?本当に人間ですか?
思わず何度そう口から出そうになったことか。今ではそこが頼もしくも危ういから傍にいたいとは思うようになったのですが。
「まさか、これが恋とかそういう感情ではないでしょうね?」
“黒の書”の管理人格である私ですがそういった感情はないわけではありません。ですがあまり認めたくないものであるのは確かです。所詮、私たちは道具ですから。それでもあの人についていきたいと思うようになりました。そう思うようになるほどの時間を共に過ごしてしまった。そうですね・・・良き相棒でありたいと思いますが。
「これでたまには振り返ったり立ち止まったりしてくれればいいんですけどね」
やれやれと頭を振りながらも私は思います。折角、目が覚めたのだからせいぜい楽しむとしましょう。少なくとも“黒の叡智”が一つにして“全ての罪”を修めたこの私を読み切った人物の行く末を見守りながら。そう感傷に浸りながら残った作業を片付けようとした時です。
クーリア!ごめん!なんか壊したっぽい!!
スマホを片手に大慌てで騒ぐマスターに対して思わず近くに置いてあったスパナを投げた私は悪くない筈。
◆◆◆◆◆◆
お兄ちゃんは面白いマスターだとは思う。お兄ちゃんが持つ黒の書の片割れ、お兄ちゃん曰く“赤の書”の管理人格。それが私。クーリアではないけど私もまさか赤の書を読み切る人間がいるとは思わなかった。人間の脳では膨大な情報は処理できない筈なのに・・・そんな理不尽な存在だけどまあ悪い人ではないとは思う。変な人間なのは認めるけど。
さて、そんなお兄ちゃんは現在、医務室で治療中。なんでもクーリアにスパナを投げつけられたのだとか・・・どうせお兄ちゃんが変なことをやらかしたに違いない。
「いや、お兄ちゃん。『物理無効化』に『十二の試練』のスキル持ってるからダメージ受けない筈だよね!?」
そんな問いに不思議そうに首をかしげるこの人は本当になんだろう?まさか無意識でオンオフしているの?いや、やっぱりおかしい。うん、おかしい。でも一緒にいて楽しい。
「ほら、貸して」
お兄ちゃんから薬を取るとそれは片付け、絆創膏を貼ってやる。もともと傷もないし必要はないけどそうしてあげると嬉しそうにお礼を言ってくる。ついでにとお兄ちゃんは空間を歪ませ(本人はアイテムボックスと名づけている)異空間に格納している各種ポーションを取り出し棚に並べるようにお願いしてきた。どうやら赤の書で得た知識で作ったらしい。
「うん。確かに預かるよ」
鑑定してみると出来は悪くない。これなら余程のことがない限り治療に問題はないだろう。それにしても医務室なんて誰が使うのか?そう思って聞いてみると。
え?在っても困らないでしょ?
そう返ってきた。まあそうだけど・・・本当におかしい人間だ。“黒の叡智”の一つにして“全ての罰”を修めたこの私をどう扱うのか。いや私たちが目覚めてから物扱いをしてこないから道具なんて思っていないんだろうけど、それでも大きな力を手に入れたこの人間がどうなっていくのか。それをこれからもずっと傍で見続けるからね?お兄ちゃん?
え?寒気を感じた?失礼な!
◆◆◆◆◆◆
さて、漸く自分でも納得のいく準備ができたと思う。これから旅立つ旨を伝えると三人が見送るというので用意された部屋に向かう。
「マスター。向こうでお会いしましょう」
「お兄ちゃん!待っててね!私もすぐに行くから!」
「私はスノードロップごと追いかけるので時間がかかるかもしれませんが・・・今度は力になります!なって見せますから!!」
三人に見送られながら、いつの間にか部屋の中央に設置されていたポッドを見た。
うん。なんというかSFで見かけるような、中にアンドロイドとか入ってそうなタイプだ。近づくと自動でハッチが開いたので横たわる様にポッドにはいる。
なんか不安になるわ・・・この状態。
ハッチが閉じると液体がポッド内に満ちてきた。液体が満ちると今度は自分の体が徐々にとけるように分解されていく。それと同時に意識も遠くなっていき完全に意識は闇に落ちて行った・・・つか、ちゃんと目が覚めるよね?最後までそれだけが心配だった。
これにて主人公は新たな世界へ行きます。二冊の魔導書についてはこんな感じの設定ですがあまり深く考えないでくださいw
さて本日の投稿はこれで終了です。