異世界異聞録~生き残る努力をしたらチート化しました~ 作:閃狼姫
今回は長くなりそうだったので分けてみました。
後半部分を大幅に修正しました。
空が青いなー・・・
思わず見上げて呆けてしまう。そんな俺を心配したのかシュテルが近くまでやってきた。
「どうしました?体調でも悪いのですか?」
いや、そうじゃないんだよ。シュテルさんや。ただ、昨日の自分をちょっとぶん殴りたくなったんだよ。
「・・・まあいいや。じゃあ始めようか」
「ええ。始めましょう」
気持ちを切り替えるように左手に持つ刀を抜刀できるように構える。それを見て対峙するシュテルがデバイスをしっかりと握りしめた。
『じゃあ、二人ともいいかな?』
投影されたモニターに映るグランツさんに頷き四肢に力を込めていく。
『では・・・初め!!』
開始の合図と共に俺は飛び出した。
――なんでこうなったのかは昨日の夕食まで時間が戻る――
「「「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」」」
正直、ディアーチェの腕を甘く見ていた。彼女の作るカレーはとてもおいしかった。一口食べた時に感じる各種スパイスの風味と辛さ。それらは絶妙な加減で調節されていて白飯と一緒に食べることでご飯の甘みを加えて完成形となる。一口頬張る事に二口、三口と手が動き気が付くとあっという間に食べてしまった。
「ふふ。その食べっぷりを見る限り満足いったようだな?」
俺の顔を見て笑うディアーチェに頷きながら。
「ああ、とても美味かった。正直、俺もカレー作りには自信があったほうだけど完敗だ」
とても満足のいく食事だった。素直に負けを認めよう。むしろこのレシピを教えてほしいくらいだ。
「む?そ、そうか?ちなみにこれがレシピだ。貴様なら再現も簡単だろう」
シュビッといつの間にか指に挟んでいたレシピを顔を赤くしながら渡してくれた。
「おお!ありがとう!!」
「美味しかったでしょう?ママがいない時は王様がうちのコック長だからね」
「世話になっておる故な。まだまだ母上殿には及ばぬが・・・」
キリエさんの言葉に目を細め呟くディアーチェ。マジか?!この上を行くんだ・・・どんな人なんだろう。フローリアン夫人って・・・
「さて、ユウ君。君は一週間、ミッドにいるんだったね?」
「あ、はい」
グランツさんにそう返した俺は改めて今後の事を考えていなかったことを思い出した。
「もう、娘たちから聞いているかもしれないけど、僕は今、新型のゲームを開発していてね。できれば君にも協力してほしいんだ」
「?俺なんかで役に立つんですか?」
「もちろん!今、僕が開発しているゲームは体感シミュレーションゲームでね。プレイヤー自身が体を動かし3Dのキャラクターを操作するんだけど、そのゲーム内で使うスキルデータを集めているんだ」
「ユウさんはミッドとも古代・近代ベルカとも違う魔法や武術を使うと聞いたのでぜひ協力していただけませんか!」
グランツさんの後をついで話したのは八歳くらいの少女。ユーリ・エーベルヴァイン。食事前に紹介されたんだがこの子もディアーチェたちと同じ留学生でこの年で新型ゲーム開発チームの一員らしい。なんというかミッドにいる子供って皆おかしいくらいに逸材揃ってるよね?
「あ~確かに話しましたね・・・でも再現できるんですか?」
「それらを踏まえてね。データを取りたいんだけどいいかな?」
「別にいいですよ?秘匿するほどでもないですし」
ゲームで使うとなるとマハシリーズ、メギドラオンやミーティアストリームなどの全体魔法は控えたほうが良いな。身体強化魔法は構わないし、防御系だとディメンションウォールやテトラカーン、マハラカーンなどの反射系もやめとこう。敵の攻撃魔法や射撃系攻撃を吸い取るボイドスフィアや周囲に小型のブラックホールを作るマイクロブラックホールもやめとこうか。
あれ?こうして考えてみると結構限られてくる?
「そうかい!いやー助かるよ!!これでまた子供たちが楽しめるゲームに一歩近づく!!」
嬉しそうに語るグランツさん。死ぬ前は自分もゲームが好きだったのでこういうのはうれしい。
「そうだ。もし君さえよければこの一週間は研究所に泊まるといい。データ取りに協力してくれるお礼として」
「いいんですか?」
「もちろん!」
その申し出はありがたいけど本当にいいんだろうか?
「気にしなくてもいいんですよ?ここには研究員の為の宿泊施設がありますから」
「うむ。家に帰らず泊まっている職員も多いからな」
アミタさんやディアーチェがそういってくれる。そういうことなら。
「では、お世話になります」
頭を下げてお礼を言う。こういうのは大事だからね。
「じゃあ、さっそく明日からデータ取りを始めるよ」
「では博士、相手は我が・・・」
「王。その役目、私に任せて頂けませんか?」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
「ん?・・・ふむ・・・よかろう。シュテル。貴様の槍。存分に見せてやれ」
「はい」
うん。やり取りを見てると王とその臣下って感じでいいんだけど・・・え?シュテルと戦うの?
「ええ。初めて会った時から貴方からは強者の匂いがしましたが噂に名高き『黒の破壊者』となれば、ぜひ手合せを・・・」
シュテルがまっすぐに見てくる。そんな目をされたら断れないよね・・・
「わかった。相手をお願いするよ」
「ありがとうございます」
そう言ってほほ笑むシュテルはすごく可愛いんだけど・・・目がな~。なんかサモナーさんを彷彿とさせる。あそこまで狂気は宿ってないけど・・・これはちょっと早まったかもしれない。
「では、シュテルの後は我が相手をしよう」
「え?」
「あ、ずる~い!ボクもやる~!」
「マジっすか・・・」
頭を抱える俺をグランツさんたちが微笑ましそうに見ていた。こうして俺は三人とバトルすることが決まった。・・・・・・決まっちゃったのである。
――冒頭に戻る――
シュテルに向かって一気に駆けるが相手は魔導師。宙へ舞うとすぐに真紅のスフィアを生成。こちらへと向かって放つ。数は十。それらの中でも自身に当たりそうなものだけを切り払う。
「やはり見切られますか」
「悪いね。この数じゃ足止めにもならないよ」
足止めにはならないが相手が空中にいるのでは俺は魔法を使っての攻撃しか手はない・・・わけではないがまずは相手と同じ舞台に立ちますか。
「フライ!」
別に呪文名を叫ぶ必要はないんだが今回はデータを取るのが目的なので使う魔法は一応伝えておかないとね。さて久しぶりに使う浮遊魔法だからうまくできるかな?一気に飛行速度を上げシュテルへと向かうがシュテルは慌てていない。冷静にデバイスをこちらに向けその瞳はしっかりと俺を射抜いている。
「ルシフェリオン」
『委細承知』
「屠れ。灼熱の尖角。ブラストファイア」
静かな声音とは真逆の猛る真紅の直射砲撃。その威力も速度も先ほどとは比較にならないものだが。
「しっ!」
「な!?」
刀を鞘から勢いよく抜刀。所謂居合切りでブラストファイアを切り裂いた。これにはさすがのシュテルも驚きを隠せないようだった。その隙をついてさらに加速。返す刀で斬りつけるがシュテルはデバイスで刀を受け止める。今回、刃引きしたものを使っているので流石にデバイスは斬れない。このまま力任せに押してもいいのだが・・・
「ッ!驚きました・・・まさか一閃されるとは・・・」
「今度はこちらの番だ!」
「!!」
横腹に蹴りを入れ、距離を取ると左手を向け。
「フォースバレット!」
青白く輝く魔力弾が放たれる。
『パイロシューター』
デバイスの声と同時に真紅の弾丸が放たれるがそれ一発で相殺できるほど威力が低い魔法ではない。しかしシュテルはそれで十分とばかりにデバイスでフォースバレットを叩き落とした。
「なるほど・・・だいたい分かりました」
顎に手をやり何か考えているシュテルに俺は刀を一旦収める。
「やはり、簡単にはいきませんか。それは分かっていましたが今までのやり取りで分かったことはもう一つ。今までの戦いは貴方の本来のスタイルではありませんね?」
「バレたか」
「データ取りを優先するためにあえて手加減しているという事でしょうか?」
「うん。まあそういうこと」
そりゃそうだ。俺の本来の戦い方なんて相手を完全に破壊する為だ。今回みたいな試合でやるわけにはいかない。
「・・・舐められてますね。博士。本気でやらせて頂きますがよろしいですか?」
下を向き肩を震わせながらシュテルはそう言った。
『・・・・・・できればやめて欲しいのだけど無理みたいかな?』
「はい。久しぶりに心が躍ります。むしろ燃え滾っていると言ってもいいでしょう」
うつむいているから表情は見えないが・・・俺には分かる。彼女は今・・・
「貴方なら私を満足させてくれますか?」
笑っている。
「・・・グランツさん。安心してください。どんな怪我でも俺が必ず治しますから」
『分かった。でも気を付けてくれよ?もしこれ以上は、と判断したら止めるからね?』
それだけは譲れないという意思が込められたグランツさんの声に俺もシュテルも頷く。
「シュテル。お前が満足できるか分からないが・・・俺も本気でやる」
「ええ。ぜひそうしてください」
刀を捨てると拳を構える。
「行くぞ」
ショートジャンプを使って背後へ跳ぶ。そして右拳を繰り出すが。
「甘い」
『ディザスターヒート』
いつの間にか俺の腹部に向けられていたデバイスのヘッド部分から三発の直射砲を撃ち出された。さすがにこれには反応できず直撃を受ける。だが!
「機神覇皇流・・・」
「!?」
こっちのタフさをなめるな!
「機神雷光拳!」
電撃を纏い光速で放たれるストレートを横っ面に叩き込む。吹き飛ばされるシュテルをショートジャンプで先回りし。
「覇皇紅蓮脚!」
炎を纏った右足から繰り出す三連蹴りを叩き込み上空へと打ち上げる。三度ショートジャンプを使おうとして、背中を奔る嫌な気配を感じ中断。代わりにと右手を挙げ思いっきり振りかぶり。
「ディストーションジャベリン!」
槍の形に歪んだ空間を投擲する。この魔法は相手の防御を無視し貫通。さらに射程距離限界までどれだけ敵がいても貫通しつ続けるという特性を持つ。速度もある為、追撃用呪文としては重宝している。そんなディストーションジャベリンはシュテルを捉え貫いていった。
さすがにやりすぎたか?
構えは解かないが確実にダメージは入っているはず。仕留めるつもりで攻撃したんだが・・・
「さすがに効きました・・・」
シュテルは口元をぬぐい、血を吐きだす。その身にまとう黒と赤のバリアジャケットも腹の部分が破れ、その下にのぞく肌にもダメージの跡が見られるがシュテルは表情を変えることなくこちらを見ていた。その目にはしっかりと光が宿っている。
「私を仕留めるにはまだ足りませんよ」
「・・・みたいだな」
マジか。アレを耐えるのか・・・
「行きます」
つぶやきと同時にシュテルが消えた。とっさに背後に向かって拳を繰り出すがそこにあったのは二十もの真紅の魔弾。とっさに腕をクロスし防御を取るが二十ものの魔力弾は最初の物と違い威力も速度も上がっていた。どうやら彼女もこちらを図るために加減していたのだろう。
「ぐ!?」
対してダメージを受けてはいないが気分的には“やられた”の一言だ。いつも自分がやっている手だけにてっきり背後に回っているのかと思ったらそこにあったのはまるで御見通しとばかりに張られていた魔力弾のトラップ。
じゃあ本体はどこに?
上?
見上げるがそこには居ない。
下?
いや、いない。気配をとらえようとしたその時。
“ルべライト”
「!!」
そう聞こえた瞬間。俺の体は炎の環状魔法陣に捕えられていた。
「バインド?!」
たった一つのバインドなら簡単に突破できると破る為に魔力を集中させるがそれが仇となった。
「行きますよ。ロードカートリッジ」
『承知。見敵粉砕』
ガシュン!ガシュン!ガシュン!と連続で音が聞こえた時にはデバイスを今までの杖や槍のような形態ではなく右手を覆う鉤爪のような形態に変化させ、さらにその身の半分はあろうかという炎を右腕に纏わせたシュテルがまるで陽炎のように俺の前に現れた。
『ヴォルカニックブロー』
顎下から撃ち抜かれ身を焼かれながら先ほどとは逆にこちらが打ち上げられる。顎下から強力な一撃を受けたせいで脳が揺さぶられたのか意識が持って行かれそうになる。必死に意識をつなげとめようとすると。
「これはおまけです」
「!」
現れたシュテルに頭部をつかまれ、眼前に真紅の魔力光が集まっていく。
「打ち抜きます」
『イグニッションバンカー』
その名の通り集束された魔力がまるで杭のようになり顔に叩き込まれる。それも連続で。さすがにこれはやりすぎなんじゃないの?!
「がはっ?!」
地面へと叩き落された俺は衝撃で咳き込んでしまう。久しぶりに受けたダメージ。深界でセットしていた『物理無効化』や『十二の試練』などの防御系スキルを解除していたのがいけなかった。
いや、今回は解除していて正解だったのかもしれない。
槍の形態に変化させたデバイスをこちらに向けているシュテルが見える。今が好機とみているのだろう。デバイスの先端に高密度の魔力が収束していくをがわかる。
なんて強い少女なんだろう。あれだけのダメージを受けてなお立ち上がり敵を倒そうとするその姿勢。そこにあるのはまっすぐな信念。まさしく槍。
おかげで思い出した。俺は強くなんてない。思い出せ。あの頃を。命なんて軽い世界を。
「これで終わりです」
『ルシフェリオンブレイカー』
迫りくる極大の砲撃。これを喰らえば負ける。別に死にはしない。死なない?だから負けてもいいのか?
「・・・いいわけないよな」
体は動くし魔力なんてほとんど減っていない。じゃあなんで寝ている?勝負はついていないだろ?強者とはなんなのかを教えてくれた彼女に、この戦いを見ている彼女たちにこれ以上無様な姿をさらしてなるものか!
「そうだ・・・俺はまだ・・・」
そこで俺は真紅の光に飲まれていった。
勢いで書き上げた結果、文章がとても雑になってしまい書き直しました。主人公は最強ですが慢心していました。慢心よくない。
ここから彼がどう立ち上がっていくのか、さらなる成長が伝わるような作品に仕上がればと思います
ご意見、ご感想お待ちしています。