アーサー王の息子に生まれたが救いが無い件について   作:蕎麦饂飩

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こんなのじゃ、ガレスちゃんが、皆が救われない。
悲しいだけの世界じゃ、それ以外の何もない世界じゃ幸せも楽しみも無い。
さあ、誰もが笑って救われる、そんな誰もが喜ぶハッピーエンドを迎えようじゃないか。
行こう。彼女が、誰もが美しい結末を掴める夢の様な未来へ。




※大丈夫、此処はブリテンじゃないよ!!
尚、このお話はオールフィクションであり、本編の出来事、登場人物とは、一切関係がありません。


(仮サブタイトル)騎士メン☆パラダイス~ライバル令嬢ガレスちゃんが語る素敵で無敵な学園生活♪~

私立ヴリテン円卓学園

 

 

この学園には円卓の騎士(ナイツオブラウンズ)、通称『騎士メン』と呼ばれるイケメン達がいる。

そして、彼らを上回る更なるイケメンがこの学園には存在している。

その人はあまりの完璧具合に『王子様』と呼ばれているの。

 

 

あっ、いっけないいけない。自己紹介もしてなかった。

始めまして、私はガレス。ガレス・コーンウォール。

この学園の1年生。

趣味は料理とお花を眺める事。密かに自慢なのは白い肌。

体重とスタイルに関してはここではヒミツ。

 

 

私の事はこのくらいにして、今この学園はピンチに陥っているの。

いえ、正しくはピンチに陥っていたが正解ね。

 

 

近年の少子化問題に伴い年々在校生が減るという危機的状況の中、

遂に生徒会長であり、理事長の息子である王子様ことロホルトさんは学園アイドル部を立ち上げたの。

数々の学校のアイドルの頂点を決める大会にて優勝して生きた宣伝材料となる為に。

聞いたことがある話かも知れないけれど、この界隈では良くある話だからね。

 

 

じゃあ、アイドル部のメンバーの紹介をするね。

 

 

1人目は王子様ことロホルトさん。

他のメンバーはそのカッコ良さに『騎士』と呼ばれているけれど、ロホルトさんは別格だから『王子』って呼ばれているの。

実は私と家が近所で両親の仕事の関係で昔から交流がある幼馴染。

笑顔が君にはやっぱり似合ってるという言葉と共に彼がくれた赤いリボンは今でも私の大切な宝物。

父親のアルトリアさんは十数年前にできた同性婚認可法案に伴い、

マーリン博士が発明したSTAF細胞による同性間の子供を作った第一号。

そしてヴリテン学園の理事長をしているの。

ロホルトさんは文武両道容姿端麗品行方正で非の打ちどころの無い完璧超人。

そして、えと…うん私の好…憧れの人なの。

将来は美しい花を咲かせる仕事をしたいんだって。

私もその時は頑張りたいな…えへへ。

 

 

2人目はランスロットさん。

実はこの人は学園の先生。教職員がアイドルなんかやっていいのかって質問はしないでくれると嬉しいな。

学園の生徒に子供であるギャラハッドくんとマシュちゃんという双子の兄弟がいるんだけど、

少々父親がファンの女の子に手を出したりしないかとか、

保護者のお母さんに手を出したりしないかとか信用されて無いようで、毒舌気味に言われているみたい。

 

 

3人目も教職員。但し臨時の保険医。

トリスタン先生は基本的にエロいと評判。それは見た目の事なのか発言の事なのか、

それとも別の何かなのかは聞いてないから解らないし解りたい訳でもないかな。

いつも二言目には「悲しい悲しい」と言っている変な人だよ。

何時も女子生徒を口説いては、金髪の方のイゾルデ先生と色白の方のイゾルデ先生に怒られてる。

実はわざとやってるんじゃないかって思う。

大体学園内ではエロい方の保険医で通じるよ。

 

 

4人目はもう一人の保険のアグラヴェイン先生。

このメンバーは実は私の兄さんで、しかもこの後にも紹介するけれど、私の兄さんたちは全員メンバーに入ってるの。

そのおかげで役得があったんだけど、その事はメンバー紹介の後で話すね。

アグラヴェイン兄さんは、

「何で俺みたいなのがメンバーに入ってるんだ。

ああ、母さんの策略に違いない。

共同出資者としてアルトリア理事長と同等の立場から、影響力で上に立つために俺まで巻き込んだんだ。

そうに違いない」

 

って言ってるけれど、私はそんなことないと思うな。

アグラヴェイン兄さんが渋くて素敵だって言ってる女子、私の周りにも結構いるんだよ?

因みに、色気がある方の保険医で名前が通ってます。

 

 

5人目はガウェイン兄さん。

ガウェイン兄さんは、王子様を除く騎士メンの中でも凄い人気を誇っているけど、実際は喋ると残念な人。

妹の私には優しい素敵な兄さんだけれどね。

時折まともに見えて普通にアウトな発言をしているから、19時のニュースに使われるっていうテレビ局の取材の時には苦労したんだから。

リラックスしてインタビューには答えてねって言ったけど、ウルトラリラックスしても人としてのモラルは忘れないで欲しい。

あの発言は、紫の髪をしたインタビュアーのお姉さん達へのセクハラだからね?

 

 

6人目のガヘリス兄さんは…そう、もうデリカシーを無くした様な、そんな少年漫画の主人公みたいな人。

無論、悪い意味で。

まあ優しいし、素直に熱血ではあるんだけど、ロホルトさんに私の気持ちを勝手に伝えようとしたり…、

もう黙ってて兄さんとしか言えないかな。悪気はないんだろうけれど、はぁ。

 

 

気を取り直して7人目はさっき出てきたランスロット先生の息子、ギャラハッド君。

私と同じクラスなんだけど、いつも彼の周りには女の子が集まってる。

でも、彼曰くナンパな父親のようにはなりたくないと誠実にあろうとしている所がクールで魅力的だって評判だよ。

ナンパな父親と鉄壁の息子として有名なの。…シスコンなのが玉に傷だけど。

 

 

そして8人目はケイさん。

この人は全く謎の人で、どうしてこの学園にいるのか何をしているか全てが不透明。

取り敢えず何か困ったら頼るべき用務員的なポジションで、洗濯物を5m程の高さの物干しざおに干して、

しかも一時間もせずに取り込んでいる。

でも、そもそも此処は学園なので、洗濯するものは保健室のシーツ位しかないんだけれどね。

因みに生乾き臭はしないんだって、いったい何者なんだろう。

 

そして時間が無いからあと二人にするけれど9人目は私の親友モードレッド。

実は彼女は性同一性障害で男性として振る舞っているの。

だから女性扱いしたらダメなの。ユリテンエンド?何それ、わかんない。

イケメンならオレ様系が好きな女子に人気みたいだね。

 

最後はまさかの理事長アルトリアさん。

ロホルトさんのお父様で、アーサーと言う偽名を使ってアイドル部名誉顧問兼ねて部員の生徒として参加してます。

若く見えすぎて違和感がありません。昔から肉体が老化していないという噂がある位。

昔からの知り合いですが、ケイさん同様不思議な人です。

 

 

 

 

 

 

 

で、そんなアイドルメンバー達がいる以上、そのマネージャーとかも必要になってくるわけで、

それはもう激戦区だったんだけれど、結局、メンバーの半数を家族にもつ私が後腐れ無いだろうと選ばれました。いぇい!!

実家のアグリビジネスを売りに王子様に推薦を依頼してきたサジョー姉妹は強敵でしたが、結果は私の勝ちです。

 

 

これでロホルトさんといつも一緒。1000%の感情がドキドキで壊れそう。えへへ。

 

…だったのですが、何故かアルトリアさんの推薦でもう一人マネージャーが追加されました。

私一人だと大変という理由だそうです。

 

そのマネージャーの名前はリツカ・フジマルさん。

アルトリアさんのお世話になったお医者様と芸術家の御夫婦の娘さんだとか。

 

それで、彼女とは同じマネージャー同士話も色々するわけです。

――――例えばですね、

 

 

 

 

「ナイツオブラウンズカッコいいよね。ガレスちゃんもそう思うでしょ?

っていうか、そもそもそうじゃないならマネージャーしてないか」

 

「そうですね。リツカさんはこの学校に編入してくる前からご存じだったのですか?」

 

「そうだよ? 特に王子様なんて最高だよね~」

 

そう、ですね…? ええ、その通りなんですが。

 

む、むむ。

 

もしかして―――――――

 

 

「もしかして、王子様のこと…」

 

 

「うん…、一目惚れってやつかな、あはは」

 

そ、そんな。兄さん、ピンチです。

 

こんな、感じの会話です。

ガレスは負けません。

 

勿論ガヘリス兄さんのアシストだけはノーセンキューですが、

私、負けませんから。

 

 

 

私たちのヴリテン学園生活はまだまだ終わらない。




※この先を覗く者は、一切の希望を棄てよ。

真サブタイトル“終局特異点 永遠救済輪舞ガレス”










誰もが救われて、誰もが幸せで、誰も悲しまない。
救われない者の無い世界。

「なんて…、なんて夢想的で蠱惑的で甘ったるくて幸せで現実感の無い依存させる理想的な世界。
そうよね、――――――――――――夢世界の悪魔(マーリン)
この悍ましい程完璧な夢を終わらせなさい。
私は早く王子様を助けに行かないといけないの」

「…気が付かれるとはね。流石は僕に届き得る魔の輩になっただけはある。
で、どうだい? お気に召したかい?
気に入ったのならずっと其処に居ればいいんだ。
君がもう苦しむ必要はないし、僕も世界修復の締めの邪魔もさせられない」

ああ、あの外側から来た修復者(侵略者)の彼女ね。
全てを繋げるために全てを破壊する使徒たちの為ね。

「今すぐ此処を醒ましなさい。私から去りなさい。
世界の修正力を壊すあの存在が破壊されたら、王子様を救う可能性がまた遠のく。
世界が破壊されたとしても、ブリテンだけは、王子様だけは何時の日にか存続させてみせる。
…そこには貴方の居場所もあるのよ。
…ねぇ、どうして裏切ったの? 貴方もブリテンの仲間だと思っていたのに」

「終わったはずだよ、全て終わったんだ。
どうあがいても無理だった。ブリテンには崩壊するしか先は無かったんだ。世界がそれを望んでいた。
だから、だからこれから生きる者達に任せようじゃないか。
ブリテンの亡骸が未来を修復する障害になる前に僕が封じる必要があった。
いずれゲーティアに匹敵しかねない獣が最後の最後にまた邪魔しに来るなんて悪夢だよ。
夢魔の僕が言うのも何だけれどね。
君の為にも、彼女達の為にも君は此処で眠り続けるんだ。それが僕にできる優しさであり、償いだから」


「こんな気持ち悪い程美しい世界は私が生きる世界じゃない。早く降参しないと貴方を潰すわ」

「恐いね。本当に君にはそれが出来るというのがまた一段と恐い。

…夢想的で甘ったるくて幸せで現実感の無い理想的で、
悍ましい程完璧で、
気持ち悪い程美しい。

――――――――まるで王子様の様じゃないか。君が気に入ると思ったんだけどなぁ。
それでも君がこの世界を否定するように彼をそう感じた人々も存在したはずだ。
君達があの世界で排除しようとした人々の様に」




「王子様を侮辱しないでっ!!」

あの人は実体の無い夢なんかじゃない。
血の通った、触れ合えて言葉を交わせる人間だ。
そう、あの人は人間だ。理想的な人間に理想を見た私達が神格化した、神に近しいだけの人間だ。
私が恋し、私が愛した王子様だ。

「言い過ぎた、かな。でも事実だ」


…貴方は何処か王子様に似た所がある。でも、私が貴方を愛する事は無い。
私の愛は只一人にだけ向けられている。何時だって、何処だって、何度だって。

「…マーリン。逆に貴方が見せた世界こそ、薄っぺらい完璧でしかなかった。
あの世界にはそれまであの人が紡いで為した、必死に維持したブリテンの苦しみは何処にも存在していなかった」

それに、彼は少し気になる事を言った。
償いとはどういう意味だろう? それは宮廷魔術師としてブリテンを救えなかった事を言っているのなら良い。
だが、もしそうでないのなら―――――

「ところでマーリン。貴方が先ほど言った償いは誰に向けての物なの」

「うん、それはね、理想の王子様に向けてであり、その周辺の人達に向けてであり、そしてブリテンと世界に向けてさ」

彼は随分とあっさりそう言う。
もはや有象無象には執着は無い。ブリテンと世界にも目を瞑ろう。
でも―――――



「貴方、一体王子様に何をしたの?
ロホルト・ペンドラゴンに何をしたの?」


「こうなるとは思わなかった。
僕は彼に祝福を与えたんだ。遥か先を見通せる『眼』という祝福をね。
でも彼は既に類似したものを持っていた。
どちらかが掻き消されればよかった。押さえあってていても良かった。
でも重ね合ってしまった、混じり合ってしまった。故に、このザマだよ。
きっと、それも世界のせいかもしれないけどね」



貴方のせいで…。
いえ、貴方のせいではないのかも知れない。
それでも、そうだとしても―――――――――――


「マーリン、明日の貴方が何処に居るのか占ってみなさい」
まあ、出来るはずは無いわ。絶対にない。
だって、もう何処にもいないのだから(・・・・・・・・・・・)

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