更識の名を継ぐこと、そして   作:葛城瑠璃

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今回かなり長めです。
後半はかなり急展開になっております。
かなりの期間空けてしまい、申し訳ございません。


更識の当主

デパートに着いてから30分ぐらいたったが、僕は未だにプレゼントを買うどころか決めることすらできていなかった。

いろいろなところを見て回ったが、母が好きなそうな服やぬいぐるみなどはあるのだが、一つだけならまだ買えなくもないのだが、妹の分も買うとなるとさすがに金額がオーバーしてしまうので買うことができない状態なのである。

僕が迷っている間に、布仏さんはもうプレゼントを決まり終えて、今は会計を済ましているところだ。

おこずかいは父から毎月1,000円もらっていたが、好きな小説を買うことにしか使っていなかったため、お金が足りないことはないと思っていたのだが、前もって下調べしなかったのはまずかったなぁ...

所持金は5,000円あるが、デパートだからなのか、ぬいぐるみは大きいものしかなく、一番安いやつでも値段が2,600円でぎりぎり2つ買えない値段なのだ。

一応ほかのものも見たのだが、妹に渡せるものとしたら、ぬいぐるみ以外思いつかなかった。

母の場合はかわいいものであればいいのだが、こっちもかわいいものと言ったらぬいぐるみぐらいしか思いつかなかった。ハンカチやスカーフなどもあるのだがそれは去年の母の誕生日に渡してしまったものだから選べなかった。

理由としては一度プレゼントとして渡したものをまたプレゼントとして渡したくはないからである。

服に関しては一着の値段で所持金を超えてしまう服が多いため買うことすらできなかった。

 

 

 

 

「おーい、る~君」

布仏さんは会計が終わったらしく、こっちに小走りで近づいてきた。体弱いのに走って大丈夫なのだろうかと思い、こちらからも布仏さんのほうに近づいた。なぜ走ったのか理由を聞くと、布仏さんはさっきから僕が悩んでいたのがさっきから気になってしまいどうしたのかを思い走ったと言っていた。

気持ちはうれしいけど、少しは自分の体のことを考えてくださいと注意したら、またごめんなさいと言いながら泣きそうになっていた。

これはやばい!、何とか布仏さんを宥めて泣かれることは回避した。

てか、子供に泣かされる大人ってどうなんだろう?、と思いながらも、僕は布仏さんにプレゼントのことを相談した。

お金が足りず、二人分のプレゼントが買えないことを伝え、ほかに所持金で買える範囲で女性が好きそうなものがないか聞いた。

最初はお金を貸そうか?と言われたがお金の貸し借りはしてはいけないと父に言われていたため、それはすぐに断った。

そのあとにいろいろ女性が好きそうなものを布仏さんに言ってもらったが、どれもこれも、所持金で買うことができないものばかりだった。

布仏さんと悩みに悩んで出した結論が自分でプレゼントを作るということだった。そして作るのならぬいぐるみが一番喜ぶかもと言われた。

それだったら二人分作れるし、費用もそこまでかからないとも言われたので、僕は買うことをやめて作ることにした。

ただ僕は一回も裁縫をやったことがないため、お店に並んでいるようなぬいぐるみが作れるはずがない。

布仏さんは私も少しは手伝うし、教えながら作ればできると言ってくれたが、正直不安しかなかった。

だけどここで悩んで結局買わずに終わるよりいいと思い、僕は裁縫道具一式とぬいぐるみの材料を購入した。

会計の金額は、合計で4572円だった。意外と裁縫道具が高くて驚いたが、それよりも材料費の安さに驚いた。

金額が裁縫道具の約二分の一だったのである、布仏さんはこれくらいが普通だよ~と言っていたが、初めて目にする僕にとってはかなりの衝撃であった。

 

 

 

 

家に帰りつき、僕は家に入ってすぐに裁縫セットと材料を持って布仏さんとともに部屋に向かった。

部屋に入り、早速僕は布仏さんに教えてもらいながら、ぬいぐるみ作りに取り掛かった。

小学校でも裁縫の授業はあまりないため、やり方がわからなかった僕は最初の基本から教えてもらっていった。

 

 

 

 

今の時刻は18時前、作り始めたのが16時半前だったため、約1時間半経過していたことになる。

母が帰ってくるのは18時半、までに何とかぬいぐるみは二つとも出来上がった。しかもデパートに売っているような完璧なぬいぐるみが。

布仏さんは驚きを隠せないでいた。それもそのはず、僕は最初は返し縫すらままならなかったのに、約30分、で小さいぬいぐるみぐらいまでは作れるようになった。しかも布仏さんの手伝いなしで。

そこからはプレゼント用のぬいぐるみを作り始めた。無心でやっていたのだからなのかわからないが、約一時間で僕はぬいぐるみを作り終えていたのである、それも二つ。

 

 

 

 

『この時だったのかもしれない、俺が普通じゃなくなっていっていたのは...』

 

 

 

 

そのあとは、布仏さんにすごいいじゃない!、正直完成しないと思ってたのに、プロも超えそうなぬいぐるみを作るなんて...、と言いながら5分ぐらい僕は抱き着かれながら、頭を撫でられた。

撫でられるのは嫌いじゃないけど、正直あまり長時間されるのは勘弁してほしい、と心の中で思った。

撫でられた後は、布仏さんと別れて、ぬいぐるみを別の部屋に移して、メイドさんたちと母と妹を迎える準備や宴会の準備などをした。

 

 

 

 

現在時刻は19時、もうすぐ母と刀奈が帰ってくる時間だ。屋敷のみんなは玄関に集まり、クラッカーやお祝いの花束をもってインターホンが鳴るのをじっと待っていた。もちろん僕も花束をもって皆と一緒に待っている。

まだかなと思いつつも、緊張感が少しずつ膨れていく中で、その時が来た。インターホンが鳴った。

鳴った後に母の声が聞こえ荷物を運ぶのを手伝ってほしいと言ったので、メイドさん二人が玄関から外に出て母の手助けをしに行った。

 

 

 

 

そして玄関の扉が開き、母が入ってくるとともにクラッカーが炸裂した。僕は母に近づきおかえりと言って花束を渡した、

母も最初は驚いてその場で固まっていたのだけれど、花束をもらった後からは笑って、僕を抱きしめて、皆ただいまー!と、大声で叫んだ。

それが決定打となったのか、クラッカーの音でも起きなかった刀奈が起きてしまった。

あやすのがとても大変だった、刀奈を起きてしまうようなことはしないようにしようと僕は心の中で思った。

 

 

 

 

その後は、全員が広間に集まり、改めて刀奈を更識家の家族として迎え入れた。そしてそのまま宴会となった。

刀奈は宴会が始まる前に別室に移し、メイドさんたちが交代でお守りをすることになった。

刀奈を別室に移した理由は、宴会の場にいたら、周りの声がうるさくてまた泣き出してしまうかもしれなかったためだ。

刀奈がいなかったのだからか少し寂しそうにしている人達は多少いたが、それでも宴会は大いに盛り上がっていった。

 

 

 

 

宴会の最中、僕は母に渡したいものがあると言い、刀奈のいる部屋に母と向かった。

刀がいるのは母の部屋だ。プレゼントであるぬいぐるみもそこにある。

部屋につき、母にはベットに座って目をつぶってもらい、クローゼットの奥に隠してた、ぬいぐるみを取り出し、目を開けてもらった。

母が目を開けると同時にぬいぐるみを渡し、「これは僕からの贈り物、...お母さん、刀奈を生んでくれてありがとう」と感謝の言葉を贈った。

母は少し涙目になりながらもプレゼントを受け取ってくれた。そしてありがとうと言って、僕のことを抱きしめてくれた。

 

 

 

 

抱きしめられた後、渡したぬいぐるみのことについて聞かれた。

買ってきたのかと聞かれたが、布仏さんに教えてもらいながら作ったことを伝えたら、母は驚きを隠せず、ぬいぐるみを凝視していた。

さらには、これをるーくんが?とぶつぶつ言いながら固まってしまい、自分の世界に入り込んでしまったので、体を思いっきりゆすって何とか現実に戻した。

その後、母はまだ驚きを隠せないでいたが、プレゼントありがとうと言って、ぬいぐるみをベットの上に置いて、メイドさんを呼びに部屋を出ていった。

その間にもう一つのぬいぐるみを刀奈の寝ているベットの隣に置き、おやすみと言って、僕は部屋を出て自室へ向かった。

 

 

 

 

自室に戻った僕は、改めて自分自身について考えてみることにした。

理由としては一回もやったこともなかった裁縫が少し教わっただけでできるようになったのか自分でも不思議に思ったからだ。

あの時は無意識にやっていたからだと思い、誤魔化していたが、今考えてみると普通じゃありえないことをやってしまったのだと改めて思った。

しかし、いくら考えてもそれに当てはまるような解答は見つからなかった。誰かに相談しようとも思ったが父と母には心配をかけてしまいそうだし、屋敷のメイドさんたちなんかはまず信じてくれそうになかったので相談をすることはできない。

そうなると、誰に相談しようか考えたが、屋敷以外の人に僕の相談に乗ってくれそうな人がいないことに気づいた。

僕はそもそも学校で誰かと会話をすることがなかった、というか僕自身が周りの連中を好きになることができなかったため、学校ではいつも一人なのだ。

結果相談できる人もいない、いくら自分で考えても解答になるようなものは見つからない。

もう考えても無駄なのかもしれないと思い、そのままベットに横になり眠りについた。

 

 

 

 

今日は目覚ましが鳴る前に起きた。いつもは五時半に目覚ましをセットしているのだが、昨日いつもより早く寝てしまったからか、5時前に起きた。

いつもなら道場に向かうのだが、たまにはゆっくりするのもいいかなと思い、自室の電気をつけ、目覚ましが鳴るまで小説を読んで時間をつぶすことにした。

そういえば、この小説、新巻が出てたなぁ、今度学校が終わった後こっそり買いに行こう。

昨日は別な小説の新刊を買おうとしたのだが、布仏さんがいたため買うことができなかったからな。

それに、プレゼントだけで所持金がなくなってしまったから、どうせ買うことはできなかったか...

僕が読んでいる小説は俗にいう恋愛小説である。今読んでいるのは学園に閉じ込められた男女二人が絆を深めながら脱出するという内容の小説だ。

意外と学校や二人の秘密や関係などがかなり深く設定されてるため、個人的にはかなり面白いと思っている。

だが、この小説はやっと単行本になったばかりなので今のところ新刊と合わせても二巻しかないのである。

新刊がどのような展開になるのかを想像しながら読んでいたら、いつの間にか時間が来てしまい、目覚ましが鳴った。

集中してると時間が早く感じるのは本当なんだなぁと思いながら、僕はベットから体を起こし胴着に着替え、道場へ向かった。

 

 

 

 

いつもと同じ時間に稽古を終えた後、シャワーで汗を流し、メイドさんと母が作ってくれた朝食を食べ学校へ登校した。

そして学校が終わり、帰宅した。帰宅した後は授業で出された課題などを自室で済まし、刀奈がいる母の部屋へ向かった。

 

 

 

 

母は夕方はメイドさん達と一緒に夕飯の支度をするため作り終わるまでは僕が刀奈の世話をすることになった。

というか、母に頼まれたのだ。夕方はメイドさんたちも屋敷にいる全員分の食事を作ったり、朝終わらなかったことを終わらせたりと忙しいのである。それは俺が生まれてくる前からだったと聞いているから、俺が生まれてきたときはたいへんだったと聞いた。どう大変だったのかは深くは聞かなかったけど...

それはそれとして、つまらない学校でたまった疲れを癒してくれるのは刀奈だけだなぁ、と思いながら刀奈の世話をしたのだ。

その後は、屋敷のみんなで夕食を取り、片づけをした後僕は風呂に入り、上がった後自室に戻って寝むりについた。

そして、そんな日常が1年続いた...

 

 

 

1年後、僕は11歳にになり、刀奈も1歳になった。そして、僕たちには、もう一人妹が出来た。

名前は更識 簪、刀奈の一つ下、僕とは10も年が離れた妹ができた。

刀奈もかわいいが、簪もかわいいな、と思いながら僕はいつも通り課題を終わらせた後、母の部屋で二人に世話をしたのだ。

 

 

 

 

5人家族になってから父の仕事はさらに忙しくなったが、そんな中でも時間を作って、家族で過ごす時間を作ってくれた。

僕にとって父の存在はかけがえのないものだった。

優しくも厳しくもある父を僕は心の底から尊敬していたからである。

だが、父は刀奈や簪を溺愛しており、刀奈と簪の事になると仕事をほったからしにして駆けつけてくれるほどだった。

その度に母に怒られているので、その姿を見るたびに僕は苦笑いをし、しょうがない父だな、と思っていた。

僕の場合はそんな問題になるようなことが無かったし、逆に問題を解決する側だったため、父からの信頼が厚かった。

だからなのか、父と会うたびに何度も「俺が死んだら家族を頼んだぞ」、と言われていた。

まるで自分はもうすぐいなくなると言っているかのように聞こえた。

僕はそれが冗談だと思い、いつも適当に流していた。

父が僕達の前からいなくなることはないなと思っていたからである。

 

 

 

だがそれから二年後の夏、父は僕達の目の前からいなくなった。

理由は日本政府の命令で麻薬を密輸している奴らの主な取引場所を調べるという仕事だった。

父はこの任務を1人でやった。本当ならば部下にやらせるのが普通なのだが、部下の人たちはほかの任務を受け持っていたため、父がやることになったのだ。

それが凶と出たのか、日本政府には密輸組織のスパイがおり、その事が密輸船に伝わっており、待ち伏せされた父は殺されたのである。

その事を聞いた母は、その場で泣き崩れてしまったらしい。

僕も聞かされた時は現実を直視出来なかった、すぐに父から言われ続けた言葉を思い出した。

「家族を頼んだぞ」、ここからだ、僕が更識の長男として、父の代わりを務めなければならないのは...

父の代わり、それは楯無の名を継ぎ、更識家の当主となることだ。

 

 

 

 

後日、更識の関係者が集まり、新しい当主を決めた。

当主に選ばれたのは先代楯無の息子であり長男である、この僕であった。実力もあるからか、関係者のほとんどは了承した。

だが反発した者もいたため、そこは僕との決闘で決めることなった。

そこから道場に移動し、決闘のルールを聞いた。

ルールは簡単で単純であった。相手が降参するか、気絶するまで続けるということ、武器も刃物や重火器以外なら使用していいこと、そして相手を死なせてはいけないことだった。

ルールを聞いた後、お互い武器を取り、向き合った。相手が持っているのは木刀、僕が持っているのは木で作られたナイフが二本、相手は父の右腕だった人の息子で剣道の大会でも優勝しているらしく木刀も使い慣れてるようだった。歳もあっちのほうが10も上だ。

だからなのか、僕と相手が別々の更衣室で着替えているとき思った。関係者たちも僕に勝ち目がないと思っている人がほとんどだろう。

そんなことを考えていたら、部屋に母と刀奈そして簪が入ってきた。そして僕に近づき、母は僕に抱き着いて、「無理しないでね」といい、刀奈たちは「お兄ちゃん、負けないでね」と言ってくれた。

母と刀奈そして簪は、家族であり兄である僕のことを信じていてくれた。家族の思いを裏切ることは絶対にしないと伝え、更衣室を出て相手と向き合った。そして、決闘が始まった。

 

 

 

 

決闘はすぐに決着がついた。決闘を見ていた関係者たちが全員固まっていた。理由としては予想していた結果とはかけ離れたことになったからだろう。

結果を言うと、僕が相手を一方的に叩き潰し、降参する暇を与えず気絶させたからである。

審判は声を震わせながら、勝者、更識 瑠璃夏、と言い、決闘が終わった。

後日、僕は更識家当主、更識楯無となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とるべりあさん、誤字報告ありがとうございます。
次回もかなり急展開です。
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