桔梗SIDE
ある日のこと、僕はとある事を海、美森、千景の三人に問いかけた。
「なぁ、三人共、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「どうしたんですか?」
「聞きたいことって?」
「貴方が私たちに何か聞くなんて珍しいわね」
いや、珍しいことなのか?でも僕が今悩んでいることを考えるとこの三人には丁度いいかもしれない。
「お前らどうやって友奈を見分けてるんだ?」
「「「…………」」」
僕の問いかけに三人が黙りこくった。こっちに来てから大分経っているけど、未だに僕は二人の友奈の見分けがついてない。いや見分けが全くつかないことはない。勇者の時の服装や髪留めとかで何とか見分けているけど、後ろ姿とか見ると全然見分けがつかなくて、ちょっと苦労している。
他の皆に聞いてみたけど、他の皆も僕と同じ感じだった。
「友奈と友奈さんの見分けですか?」
「多分だけど桔梗くんが求めている答えは出てこないと思うわ」
「……ここ最近悩んでいたのは、そのことだったの?」
「千景、僕としてはかなり重大な悩みなんだぞ。それでどうやって見分けてるんだ?」
「「「なんとなくだけど………」」」
全く参考にならなかった。この三人ならそれなりに良い答えが出るとは思っていたのに……
「まぁ、僕は最初友奈さんと会った時は本当に見分けつかなかったですし、それで色々と千景さんと一悶着あったくらいだし……」
「貴方がいた世界の私と?」
「本当にあの時はちょっと怖かったですけど……」
海は遠い目をしながら、その時のことを思い出していた。一体何があったんだ?
「付き合いが長くなればそれなりに分かると思うわよ」
「そうだろうけど………」
何だか答えらしい答えを聞けなかった。これは時間が解決するのを待ったほうがいいのかな?
僕は三人と別れ、一人、趣味であるスケッチを公園でやっていた。僕の絵は風景画が多く、あんまり人を描くことはしない。まぁ何度か人を書く機会はあったけど……
「あれ?桔梗くん?」
聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くとそこには友奈がいたが……この友奈はどっちだ?
「えっと……悪い、どっちの友奈だ?」
「あっ、高嶋友奈だよ。桔梗くん、結城ちゃんと見分けつかないの?」
「あの特殊な三人と同じにするな」
「あはは、グンちゃんと東郷さん、海くんのことだよね。若葉ちゃんたちもたまに間違えるのに、あの三人は本当にすごいよね」
友奈はそう言いながら、僕の隣に座り込んだ。本当に友奈と性格も似てるよな………ちょっとこの二人の関係が気になってしょうがない。
「桔梗くん、絵が描くのが得意なんだよね。見せてもらっていい?」
「あぁ、いいぞ」
僕は友奈にスケッチブックを渡すと、友奈は楽しそうに絵を見ていた。何だか絵を見てもらうのって、ちょっと恥ずかしいようで嬉しかったりする。
「桔梗くんって絵を描くの本当に好きなんだね。この間東郷さんから貰ったスケッチブックがもう少しでいっぱいになりそうだよ」
「最初は右腕のリハビリで始めたんだけど、描いているうちにな…………」
「それじゃ将来は絵描きさんになるの?」
「将来か………」
将来のことなんて考えたことはなかったな。というか考える暇なんて無かった。勇者部のみんなと一緒にバーテックスと戦ったり、戦いが終わった後は神樹様と天の神との間をつなぐ境界の勇者としての使命もあって、考える時間はなかったな。
「まぁ、絵を描くのは趣味だから……将来なるっていうのは考えてないけど、候補のひとつにしておくか」
「そうだね。楽しみにしておくね」
楽しみにか……友奈は自分が来たのが僕がいる時代よりはるか遠くの過去からだということを忘れてないか?
「あと、もし私と結城ちゃんの見分けがつかないなら、桔梗くん、私に何かあだ名着けたら?そうしたら、呼ばれた時すぐにどっちがどっちなのか分かるしね」
「あだ名か……それじゃ高嶋友奈だから、高奈で」
我ながら簡単なあだ名をつけてしまったな。高奈はしばらく考え込み、すぐに笑顔で……
「うん、何だか新鮮でいいよ。それじゃ今度からそう呼んでね」
「あぁ……」
「それで結局見分けの話はどうしたんですか?」
その日の夜、寮の部屋に戻ると海にそんな事を聞かれた。
「まぁ、時間が経てばそのうちにな……今は呼び方を変えるくらいにしておくよ」
「桔梗さんがそう言うのであればですけど……僕らっていつまでこっちにいるんですかね?」
いつまでか……そうだよな。いつかは元の世界に戻らないといけないんだよな。それはこの世界にいる勇者全員にも言えることだ。だけど……
「まぁ離れていても、いつかはまた会えるから大丈夫だろう」
「そうですね」
次回も日常回になります