インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第101話

 

「貴女達は教師として以前に、人として恥ずかしくないのですか!!」

 

 その頃、学園の職員室では十蔵の怒号が響き渡る。十蔵の声に女性教師達は肩を震わせる。彼女等はクラス代表決定戦の時に我先へと逃げた者達である。

 自分が可愛いだけでなく、教師として、生徒達を見捨てて逃げたからだ。それは教師にとってあるまじき行動であり、生徒達の避難を最優先にする筈だ。

 彼女達はそれを怠り、冷静さを欠いた生徒達と共に逃げたのだ。しかし、そんな教師達をよそに、虚を含めた数名の生徒達は避難誘導をしていたのだ。

 それは功績を称える行動に等しく、立派とも言える。そんな彼女達は、ここにいる逃げた教員達よりも何倍も優れているのだ。怖い思いをしながらも避難誘導をしていたのだ。

 十蔵はそれを指摘しつつも、逃げた教師達に説教している。学園長としての使命かつ、義務でもあるからだ。そんな中、千冬は兎も角、真耶、放送室にいた教師達は避難誘導している。

 彼女達は教師としての使命を果たしているにも関わらず、説教の対象外であるにも関わらず、自分達も怒られている気分を感じ、たじろいでいる。

 十蔵の怒号が、悪い事をした子供に怒る父親にも近いからであった。それに気づくのは遅くもないが、懐かしさをも感じる。しかし、十蔵がいまだ怒っている事に変わりは無い。

 彼の怒号は子供が泣くくらいであり、腰を抜かすくらいだろう。が、いまだ怒っている事に変わりはない。

 

「貴女達は教師の風上にも置けません! 教師として一からやり直して貰いたいくらいです!」

 

 十蔵はいまだ怒るが胃薬が必要かもしれない。が、今の十蔵には欲しいくらいだろう。そんな十蔵に真耶が訊ねる。

 

「あ、あの学園長!」

 

 真耶の声に十蔵が我に返ると、真耶を見る。

 

「どうかなされましたか?」

 

 十蔵は彼女を見る。平常心を装っているようにも思えるが真耶は対象外であり、彼女は避難誘導を最優先に行なったからだ。そんな彼女の指摘に十蔵は聞き返す。

 同時に怒られている職員達は微かに安堵しているが再開すれば同じであり、変わりは無いだろう。

 

「あ、あの、機体の事なんですか……」

「機体の事ですか?」

 

 十蔵の指摘に真耶は頷く。彼女は機体の事を聞いたのは、これからの学園の警備での事だろう。

 

「はい、あの機体……赤、青、黒の三つの機体なのですが……」

「それは襲撃した機体の事ですね」

「はい、今は整備班に調べてもらい、見てもらっているのですが……」

 

 真耶はつらそうに俯く。

 

「どうかなされましたか?」

 

 十蔵が訊ねると、真耶は顔を上げ顔を引き攣らす。

 

「実は……あの機体はどこの国で造られたのかが判らないのです」

「なっ!?」

 

 真耶の言葉に十蔵や周りの職員達は愕然した。あの機体達はどこの国で造られたのかも判らない? それは衝撃の事実でもあり、愕然する筈だ。

 彼女等が知らないのも、それが表情で表されている。さっきの重苦しい空気が一瞬で別の意味での重苦しい空気に変わった、と言い替えればいいだろう。

 十蔵達が驚くのをよそに真耶は言葉を続ける。

 

「あの機体達はどこの国にも問い合わせようと思ったんですか、時差の影響もあり、連絡するのは時間が掛かります。ですが、機体の部品は同じ物もあれば違う物もありました」

「そ、それはどういう?」

「私にも判断できませんが整備班の娘達も判らないと言っています。でも、あの機体を造れる国はあっても、なんのために学園へと襲撃させたのかは判りません……」

 

 真耶はそう言いながら再び俯く。そうだろう、もしも襲撃したとなればバッシングは愚か、批判も浴びる。最悪、戦争になりかねないからだ。理由があっても、赦される事ではない。

 真耶の言葉に十蔵達は驚くが更なる事実を突きつけられる。それは、真耶の言葉から始まった。

 

「実は、もう一つ、あるのですが……」

「なんですと?」

 

 十蔵は驚くが真耶は顔を上げると、真耶は応えた。

 

「三つの機体のうち、赤い機体もありましたがそれだけはおかしかったのです」

「おかしかった、と言うのは?」

 

 真耶は頷くと、理由を述べる。

 

「はい、あの機体だけは物凄い凹みがありました」

「それは織斑君と生徒会長がやったのでは?」

「それも一理ありますが、あの機体は織斑君のピットに居たのです。それに……あの機体は、腕や頭を引き千切られていたのです」

「引き千切られていた?」

「はい、いくら織斑君や更識生徒会長は出来ないのと、その場にはおりません。二人は後から来た二体の機体と戦っていたのです」

「では、誰かがそれをしたと?」

「そう思われても仕方がありません。ですが、あの場に他に居たのは……更識さんです、妹の方の、私と織斑先生が受け持つクラスの娘です」

「彼女が?」

「はい……ですが、妙なのです」

「妙?」

 

 十蔵の言葉に真耶は頷く。

 

「はい、更識さんはISを持っていません。それに、赤い機体は更識さんを狙ったとなれば、彼女が太刀打ち出来ないのです」

 

 真耶は十蔵に教えた。それは、簪の事を思っての事だった。あの時、簪はいつの間にかピットには居なかった。いたのは、学生寮のベッドだった。

 あの時、彼女がなぜその場に居たのかは判らないが、真耶は彼女がピットに居たのを知っているは、簪自身が自ら名乗り出たからだ。真耶は赤い機体の事、簪がベットに横になっているのも判らない。

 しかし、赤い機体の事があるのと、赤い機体を倒したのは簪ではない事にも気づいている。真耶はその事を十蔵に言った。真耶の言葉に十蔵は訝しげに感じながら腕を組む。

 

「確かにそうですね……彼女には相手に出来ませんね」

「はい、更識さんが挑んでも、太刀打ちできません。赤い機体を相手にしても、あれだけの荒技をやる事も出来ません」

「……ふむ……」

 

 十蔵は微かに思考を走らせる。が、どんなに考えても判らない。思い浮かばないからだ。

 

「あ、あの……」

 

 そんな十蔵に真耶は訊ねる。

 

「どうかしましたか?」

「いえ、一つ気になる事があるのですが……」

「気になる事?」

「はい……実は、あの時の事件を覚えていますか?」

「あの時の事件?」

 

 十蔵の言葉に真耶は頷くと、それを教えた。それは入学初日に起きたセシリアの襲撃事件。それはセシリアがマスクを着けた大男に襲われそうになった事件である。 

 それはセシリアを怖がらせ、女子生徒達の間にも動揺を走らせた。が、セシリアが目撃した以外、誰も目撃していないため、セシリアの自作自演ではないかとも思われたのだ。

 セシリアは頑に嘘ではないと否定していたが真耶は十蔵にそれを教えた。

 

「オルコットさんが目撃した大男、では、ないでしょうか……?」

「どうして、そう思ったのですか?」

 

 真耶の言葉に十蔵は訊ねる。疑っている訳ではないが、一応理由を知りたかったからだ。周りの職員達も知りたそうであった。が、中には不信感を抱く者達もいるが知りたいのも事実であった。

 

「私……オルコットさんが嘘を言ってるようにも思えないのです、女の感とも思われるのかもしれませんが、あの大男の仕業だと思うのです」

「その根拠は?」

 

 真耶は首を左右に振る。

 

「ありません、ですがあの大男ならば、赤い機体を簡単に倒せるのではないか、と思っただけです……出過ぎた発言ですが、申し訳ありません」

 

 真耶は頭を下げる。自分は単に想像だけで言っただけであった。しかし、あの機体を倒せるのは、大男ではないかとも思っていたのだ。腕や頭を引き千切る怪力があると思ったのも、セシリアが泣きながら、うろ覚えで特徴を教えてくれたのだ。

 マスクは愚か、屈強な体格でヨレヨレの服。強化ガラスを使用した窓を足蹴りで簡単に割ったのもそうではないかとも思ったのだ。そう考えていたのは、赤い機体があの状態であった事からだった。

 もしも、その大男がやったとなれば、セシリアの話が真実ならば、全てが当てはまる。しかし、推測だけであり、確証ではない。もし確証ならば、あの大男が学園に居るのは、危機でもあるからだ。

 真耶はそれを言えないでいた。言えば自分は愚か、受け持つクラスが何かをされると思ったかだ。自分はどうなってもいい、だが、クラスの生徒達は、生死の境を彷徨っている一夏にはそうなってほしくない、迫害されてほしくない。

 真耶は教師として、そう願っていたからだ。そんな真耶に十蔵は何かに気づくが、不意に、窓の方を見る。そこには、さっきから窓の外を見ている千冬がいた。

 彼女は窓の外の景色を眺めている。とても寂しそうであった。哀愁漂うようにも想えるが言葉も無く、加わる気配もない。が、千冬はそれ以上に一夏を心配しているからであった。

 今の彼女は一夏を思っている。姉としての贖罪を果たそうとしていた。白式を専用機にしたのも、彼女の贖罪の一つであった。が、今の彼女は生きる事に意味がないようにも思えた。一夏を喪う恐怖が彼女を襲っていたからだ。

 今は落ち着いているが、いつまでもそうしていても、この時は変わらない。十蔵はそう思いながらも目を閉じる。彼もまた、一夏の安否を気にしていた。

 彼もまた、教師の一人としてであったからだ、同時に生徒を想う教師でもあるからだった……。

 

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