インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「ふう……」
一夏は束に一通り言った後、家に戻ると、リビングのイスにふんぞり返る様に座っていた。近くにはジェイソンが立っていたが彼は一夏を見据えている。
一方、一夏は溜め息を吐く。彼は眉間に皺を寄せているが怒りに満ちていた。束との再会は束から見れば嬉しいが一夏から見れば不機嫌にしか思えなかった。
ISを憎み、その元凶でもあり、創造者でもある束を許せる筈も無い。あの時、束から逃げたのは警察の捜索の手から逃げる為であった。地上ばかりではなく、上空からも捜索の手を始めると思ったからであった。
束が逃げたのもそれであるが今は別の事を考えているのか、彼は瞑目すると思考を走らせている。
(先ずはどうすれば良い……)
一夏は思考を走らせていた。束との再会は終わったとしてISを起動した事での問題は終わってない。今も警察の捜査の手は休んでいない。
それ以上に捜索範囲は拡大しつつあり、それを防ぐ手も無い。一夏は出来る限りの思考を走らせる。先ずはどうすればいい? IS関連の者達に捕まれば何かをされ、最悪殺される危険も遭った。
後者は何とか出来るが殺す事さえも出来る――しかし、正当防衛と言う名目で何とかなるが一般人を殺すのは自分の利に反する行為だ。
一夏は問題を片付けるには色々と有る。それらを全て片付けるには先ずIS問題を先である。逃げ場は此所しか無いが何時でも逃げられる場所とは限らない。
では……刹那、一夏は目を開けると微かに頷いた。そうだ……彼処ならどの国からも干渉は出来ない上、政府も迂闊に手を出せないだろう。
一夏はある事を思い出すと立ち上がり、ジェイソンの方を見る。ジェイソンは一夏が見てきた事に驚きはしていないが首を傾げる。自分を見る彼の表情は険しい――当たり前の事であるが彼が色んな表情を浮かべていた記憶は微かに消えて行く様にも感じていた。
最初はそりが合わなかったが彼は色んな表情を浮かべていた。
怒りや嬉しさ、時には寂しそうに笑っていた事も遭ったがそれらは全て忘れ去ってしまった様に無くしてしまった。今の彼は眉間に皺を寄せるのと感情が無い様に無表情でいる事が多い。
彼は涙を忘れたのか、それとも枯れてしまったのかは判らない――ジェイソンはそう思いながらも彼に声を掛けようとはしなかった。否、自分は彼に気遣う様な言葉を出せない――それ以前に、自分は喋る事が出来ないのだ。
ジェイソンは一夏に複雑な感情を抱くが一夏はジェイソンを見た後、彼の横を通り過ぎるように歩くが不意に隣に立ち止まると、彼の方を見る。
「また出掛けて来る――大丈夫だ、直ぐに終わらせて来る……多分、遅くなる」
一夏はそう言うと、家を出るやいなや風の様に姿を消した。ジェイソンはその場を動かなかったが彼は視線をテーブルの方へと向け続けていた。
さっきまでは一夏が座っていたがジェイソンは其処を見続けていた。何かを思っている様にも思えるが彼はずっと一夏がいたであろう場所を見続けていた。
彼が何処に行くのかは判らないが何時でも駆けつけられる様にしょう――ジェイソンはそう考えると、二階にある自分の愛用している武器である鉈を取りに階段の方へと向かった。
その頃、此所は日本の本州近くにある孤島に立てられている場所があった。そこは学校であるが近くには色んな施設が備えられており、緑が多く見られる場所でもあった。
そこは只の学校ではない――そこは一流のIS操縦者や研究者――或いは就職等で優位に立てる様に世界各国か一般の者達が集うIS学園であった。
最近出来たばかりではない。真新しい様にも思えるが設立して数年しか経っていない。が、IS学園は今、慌ただしかった。
「男性操縦者の存在ですか!? 今の所その報告は、まだ未定です!」
「それらの情報は、まだです!!」
職員室には数人の女性職員達が電話の対応に追われていた。主な原因は男性操縦者の存在だろう。電話してきたのはマスコミか、海外からのメディアからも珍しくはない。
彼等は男性操縦者の情報を今か今かと手に入れようと奮起していた。何処に居るのか、何処に匿っているのか等をあれこれと質問して来るが女性職員達は対応に対処している。
しかし、中には男性操縦者を殺せ、此方に渡せ、等の誹謗中傷等が僅かにあった。女尊男卑主義者かもしくは研究対処として解剖する等の目的だろう。
それでも職員達は一つ一つ対応していた。学園に居る者としての役目か教師としての役目か、それは誰にも判らないが中立の立場だろう。
「まずいですね……これでは職員達では対処しきれませんね」
此所は職員室の隣にある学園長室。其処は少し広めであるが少し高級感溢れる机に中央には来賓用のソファーはテーブル、難しい書類等が収められている本棚が二つも設けられていた。
其処は学園長室と言うだけであって他とは違う。この学園を統べる者への相応しく、責任者としての威厳と覚悟を併せる様にも用意されているとしか思えなかった。
そして、その室内は今、重苦しい雰囲気に包まれていた。学園長室には一人の壮年の男性が机近くのイスに座りながら机に肘を突いていた。
彼はこの学園の責任者である学園長であった。灰色のスーツを着ているが逆に貫禄が有るかどうかも疑う。容貌は悪くはないが優しそうな顔立ちであるがカリスマ性をも併せ持っている様にも思えた。
が、彼は今、問題を抱えていた。言わずとも男性操縦者の事だろう。学園側から見れば不測な事態であり、突然の事で戸惑っている。学園長としての責任はあるが電話の対応には追いつけずにいた。
打開策を練っているが状況は益々悪くなるばかり――このままでは学園はパニックになり、秩序が崩壊する。学園長はそう危惧していた。
男性操縦者は何者で、何故姿を見せないのかも考えていた。御遣ったら何かをされる――そう感じているのだろう。
「このままでは学園も危うい――男性操縦者の命も危険に晒されかねない……」
「そうなれば、後者は女尊男卑主義者共の思う壷」
刹那、後ろから声がし、学園長は後ろを振り返ると、壁に凭れ掛かりながら腕を組んでいる一夏がいた。
「き、君は!? 何処から!?」
学園長は立ち上がる。彼からいれば一夏が室内にいる事は驚きだろう。ノックもしないで入ってきた事は失礼であるが彼は扉から入ってきたのではない。
では何処からか、何時入ってきたのかも判らない。窓からと言う線も有るが音さえも聴こえなく、開けられた形跡さえもなく、外から入ってきた形跡さえもない。
では、彼は何処から入ってきたのだろうか? 学園長は疑問を抱く中、一夏は眉間に皺を寄せる。否、彼は此所へ来たのはあの場所から此所へと来るまでに何度も移動したのだ。
彼が此所へと来たのには理由があった。彼はそれを学園長に言おうとした。刹那、この室内を出入り出来る扉からノックの音が聴こえた。外からであるが学園長と一夏は扉の方を見るが学園長は一旦扉の方を見ると「どうぞ」と答えた。
その声に反応したのか扉が開く――刹那、一夏は眉間に皺を寄せた。彼の視線の先には、一人の女性職員が立っていた。
「……っ!?」
女性職員は彼を見て驚いていた。彼とは一夏の事であった。二十代であるが凛とした顔立ちに黒く澄んだ瞳。髪は腰まで伸びており、それを一つに纏めている。
黒い女性用スーツを纏っているが黒いハイヒールを履いていた。しかし、彼女は何故か驚いていた。
視線は学園長の方にではない。彼女が見ているのは、視線の先には、壁に凭れ掛かりながら腕を組んでいる一夏を見ていた。
「い……一、夏?」
女性職員は一夏を見て微かに震えながら彼の名を言う。学園長は「えっ?」と惚けてしまうが女性職員は一夏を見てかすかに震え続けていた。
震えが止まらない――彼女の気持ちの表れなのだ。何故なら視線の先にいる一夏は死んだと思っていたたった一人の弟なのだ。女性職員は彼の姉であるが姉である彼女から見れば、驚愕の真実を突きつけられた様な物であり、驚かない方が不思議である。
一方、一夏は女性職員を見て眉間に皺を寄せ続けていた。彼は彼女が此処にいる事に驚いているよりも、憎悪を膨らませていた。逢いたくもなく、二度と逢いたくない存在だった。
一夏は女性職員の弟である以前に、姉でもある。たった一人の姉であるが今はもう、憎悪しか沸かなかった。二人の間には会話は無い。室内は重苦しい空気が流れるが更に悪も苦しくなっていく。
それは二人の姉弟、織斑一夏と織斑千冬の最悪かつ嫌な予感しかしない再会が原因でも、あった……。
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