インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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今年最後の投稿となりますが、来年もどうぞよろしくお願い致します。


第111話

「……織斑君」

 

 数分後、楯無は一夏を彼が使っているベッドに仰向けに寝かせ、布団を掛けると、彼の左手を両手で包むように掴む。彼は相変わらず気を失っているが楯無から見ればつらいとしか言いようが無い。

 彼は一彦に負け、一也に狙われている。それだけでなく、チャッキーとティファニーにも命を狙われている。彼の回りは敵だらけかつ、守るだけでも精一杯の筈であった。

 同時に自分は彼に守られている、自分の盾となっていた。自分だけではない、簪をも守っている。彼は身も心もボロボロの筈なのに、それさえも気づけなかった。

 楯無はそう思いながらも目に涙を浮かべる。悔しい、何故彼の事を知ってやれなかったのだ、と自分を責めていた。

 

「お姉ちゃん……」

 

 そんな中、楯無に声を掛ける者がいた。楯無は反応すると、声がした方を見る。そこは一夏の使っている机であった。教科書は愚か、私物もある。

 しかし、イスには一人の幼女が座っている。足りないとも言えるように幼女の足は床に突いておらず、浮いているようにも思える。が、幼女は楯無や一夏を哀しそうに見ている。

 不安が拭いきれず、楯無にも同情しているのだ。幼女は楯無に声をかけたのだが楯無や一夏を助けたのは彼女だ。が、チャッキーとティファニーを引き連れているプレイヤーでもあるのだ。

 彼女は何故、敵でもある一夏を助けたのかは判らない。いや、楯無はゲーム自体知らない為、彼女が何者なのかを知らない。楯無は幼女を見て哀しそうに微笑む。

 

「大丈夫よ……彼は死なないわ」

 

 楯無はそう言っているが不安を隠しきれていない、口調も弱々しいのが理由でもあり、この現状を打開出来る手段さえも無いのだ。そんな楯無に幼女は直ぐに気づくが目に涙を浮かべ始める。

 

「あっ、どうしたの!?」

 

 楯無は慌てて幼女に訊くが幼女は首を左右に振る。

 

「なんでもない……なんでも、ない……!」

 

 幼女はつらそうに言う。が、本当はつらいにも関わらず、強がっているだけだろう。楯無はそれに気づくと、一夏を見る。

 

「少しだけ、ごめんね」

 

 楯無は一夏にそう言いながら彼の手をベットの上に置くように放し、幼女に近づく。幼女は驚くが楯無は彼女の方に両手を置くと、そのまましゃがむ。

 幼女と目を合わせる意味でもあった。同時に哀しそうに微笑むが彼女の為にも笑顔になろうとしていた。が、一夏を喪う恐怖が勝り、それが顔に出ている。

 それでも楯無は幼女の為に必死で笑顔を浮かべようとしていた。しかし、それは出来なかった。

 

「お姉ちゃん……つらいの?」

 

 幼女は心配そうに訊ねるが楯無は何も言えなくなり、俯く。が、直ぐに顔を上げ幼女と向き合う。優しい表情を浮かべていた。幼女に対してでもあるがある事にも気づく。

 

「そうだわ……!」

 

 楯無は何かを思い出すように慌てる。幼女はビクッと震えるが楯無は立ち上がると、ある方角を見る。そこは、扉であった。彼女は扉を見るや否や、幼女を見ながらあることを言う。

 

「ごめんね! お姉ちゃん、ちょっとやる事があるから、少し待ってて!」

 

 楯無はそう言った後、幼女を置いて、部屋を飛び出していくように扉を開け、横の方へと向かっていった。

 

「…………」

 

 そんな楯無に幼女は何も言わずにイスから降りると、ふと一夏の方を見る。彼は気を失っているが起きる気配はない、が、幼女は一夏に近づくと彼の顔を覗き込む。

 とても安らかには見えないがつらそうでは無い、何方かと言えば、怒っているようにも思えた。が、彼は自分と同じプレイヤーである事にも変わりは無い。

 しかし、幼女はゲームの内容を知らない、全くの素人である。無理も無い、彼女は元々、ある理由でプレイヤーとなったからだ。その経緯は彼女の朽ち方はなさない限り、誰も知らない。幼女は一夏を見続ける中、走る音が幾つも聴こえた。

 楯無が戻ってきたのだ。それも、ある者達を連れて来て……。幼女は音に反応した後に振り返る。刹那、誰かの声が響く。

 

「織む! 誰なのですかその娘は!?」

「って、誰なの〜!?」

 

 その者達は布仏姉妹であった。彼女等は楯無に一夏がここにいる事を伝えたのだ。驚いた物の、彼女等は楯無と共に部屋へと来たのだ。が、幼女を見て驚いていた。

 何も知らない彼女等では無理も無いが、この娘は一夏と楯無を助けた者である事も知らない。

 

「うっ……!」

 

 幼女は布仏姉妹を見て声を上げながら震える。叫び声に怯えているのだろう。布仏姉妹は幼女を見て驚きを隠せない中、幼女は震え続けている。

 

「止めなさい、今はそれどころではないでしょう!?」

 

 刹那、幼女を背中に隠す者がいた、楯無だ。彼女は幼女を背中に隠しながら布仏姉妹に言う。が、ムダであるかのように虚が訊ねる。

 

「お嬢様! その娘は!?」

「今はいいわ! それよりも虚ちゃんは簪ちゃんに連絡して、織斑先生達に救護班を呼ぶよう頼んでもらって!」

「えっ……」

「早くして! 織斑先生達が近くにいるかもしれないし、今すぐにでも診てもらわなきゃ織斑君は死ぬかもしれないのよ!?」

「は、はい!」

「それと、IS学園には私達と同い年ぐらいの男がいるから、教員達に捕えるように言って!」

「わ、判りました!」

 

 虚は楯無の命で慌てながら懐からスマートフォンを取り出すと、簪に連絡し始める。楯無に言われた通りの事を話し始める。すると、近くには別の誰かがいたが誰かは予想出来、容易である。

 隣いにる本音はオロオロしているが何も出来ないでいる。

 その間に楯無は虚を見た後、後ろを振り返り、幼女を見下ろす。幼女は楯無を見て微かに震えるが楯無は優しく微笑むと、幼女と目を逢わせるようにしゃがむ。

 

「大丈夫よ、私達は貴女を傷付けない」

「えっ……」

 

 幼女は目を見開くが楯無は言葉を続ける。

 

「大丈夫、何もしないわよ? それに貴女のお名前は?」

「…………」

「あっ、ごめんなさい、名乗る時は自分からだったわね? 私は楯無、更識楯無。この学園の二年生で生徒会長をしているわ」

 

 楯無は自分の事を幼女に明かす。礼儀でもあるが幼女を傷付けず、優しく論しているのだ。怖がらせたら逆効果であるのと、同じ女の子なら安心すると思わせる為でもあった。

 尋問している訳ではない、幼女の素姓を知りたかっただけでもあった。そんな楯無に虚は連絡を終えているが心配そうに見ている。本音も同じであるが何方も横槍を入れない。見守っているのだ。

 そして、楯無の言葉に幼女は微かに哀しそうであった。刹那、幼女はポッリと口を開く。

 

「楓……楓、一美」

「楓、一美、ちゃん?」

「うん……四歳」

「四歳なの?」

 

 楯無は幼女、一美に訊ねると一美は小さく頷いた。幼女の名は楓一美。チャッキーとティファニーを引き連れている四歳の女の子だ。しかし、こんな幼子がプレイヤーである事を一夏達は知らないがそれには理由がある。

 しかし今は一美にはやる事があった。それは、楯無の質問に答える為でもあった。楯無の方は一美を怖がらせないように今も優しく訊ねている。

 

「一美、ちゃんでいいかな?」

「……うん」

「一美ちゃんは何所から来たの? 住所とかは別にいいわ」

「……東京」

「東京から来たの? それにお父さんやお母さんは? 兄弟とかはいるの?」

「…………」

 

 一美は何故か黙るとつらそうに俯く。楯無は一美の様子に気づくが彼女は肩を震わせ始める。刹那、微かに嗚咽が聞こえる。

 

「一美ちゃん!?」

 

 楯無は一美の様子に気づき、慌てる。布仏姉妹も一美の様子に気づき、駆け寄ると、一美を宥める。しかし、三人の少女に囲まれながらも一美は泣き続けていた。

 それには理由があった。家族での話でもあるが一美にはつらかったのだ。一美の様子に気づいているが三人には宥める事しか出来ない。一美は今でも泣き続けているが楯無に抱き着く。

 

「一美ちゃん……!?」

 

 楯無は一美の様子に気づくが楯無は胸の中で泣きじゃくる。楯無は戸惑いつつも一美の背中を擦る。何か遭った。それだけは気づいた。しかし、今は宥めるのが先であった。これからの事はその後でいい。そう思ったのだ。一方で一美は楯無に甘えていた。

 そんな一美に楯無は宥め、布仏姉妹は戸惑う中、一夏は気を失い続けている。周りからほったらかしにされていた。

 それでも、この状況は変わらない、一美の泣く声だけが室内に響き渡っていた。そして、窓の外の景色には明かりが見え始める。いや、日が昇りはじめたのだ。

 新たなる日を告げ、昨夜の出来事を語らせる事にもなるだろう。そして、授業の始まりでもあり、仕事の始まりでもあった、

 

 一方で、誰も知らないが一夏の右腕が何者かに盗まれていた。その盗んだ者は、いや、盗んだ者達は一彦とフレディであった。そして更に一也も逃げたのだ。

 学園での一夜は静かに幕を閉じるが、新たなる火種の幕開けでもあったのだった……。プレイヤー達の戦いは誰も死なないで終わった。が、彼等は知らない。

 実は最後の一人、ピンヘッドのプレイヤーが遠くから極秘で活動していた事を……

 

 

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