インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「……っ」
その頃、ここは学園の地下室にある独房。そこは犯罪を犯した者や規則を何度も破る生徒や職員が収監される所でもあった。しかし、その独房内には一人の大男がいた。
気を失っているのか、俯せに倒れている。が、その大男の正体はジェイソンであった。彼は更識姉妹を守る為とは言え、千冬に敵と誤解されて殴られてしまったのだ。
今は気を失っているが鉄格子の向こうには一人の女教師であり一夏が所属しているクラスの副担任・真耶と、この学園を総べる者である学園長・十蔵がいた。
二人は鉄格子の向こう側にいるジェイソンを警戒していた。この大男が学園に現れた。それだけでも危険な筈なのに、学園その物が危険に晒されているようにも思えたのだ。
彼を運んだのは千冬であるが今はそれどころではないのだ。二人はジェイソンがいつ起きるかどうかも判らないのと、真耶と十蔵はジェイソンの目的が何かを知りたいからでもあった。
二人は何も言わない中、十蔵が口を開く。
「この者は、一体……」
十蔵はジェイソンを危険視する。何所からどう見ても怪しい巨漢だ。マスクを着けているから尚更不気味にも思える。彼がなんの為に学園に来たのかは判らない、同時に色んなことで対応を追われている。
教師達のあるまじき敵前逃亡、学園で起きた惨劇になんの警告も起きなかった事や教師達の行動。何方も学園の教師でありながら避難誘導を怒った事である。
彼女等には重い処分が下されるが胃が痛むくらいだ。十蔵は学園の教師の行動に悲観し頭を抱える中、ある問題も抱えているのだ。
「それに、明日はフランスとドイツから二名のIS操縦者が学園へと来るのに、それに織斑君が瀕死の重傷かつ、右腕を何者かに奪われているのですぞ……」
十蔵はその問題で悩む。実は明日、二人の転校生が来るのだ。それは二国の大切な専用機持ちでもあり、身の安全さえも要求されている。更には一夏の右腕が何者かに奪われると言う事件も発生しているのだ。
何方も新たなる問題であり、十蔵は更に胃が痛む感覚に陥る。学園長としての使命でもあるがつらいとしか言いようが無い。そんな十蔵に真耶が心配そうに訊ねる。
「が、学園長、大丈夫ですか?」
「え、ええ……それよりも織斑先生は?」
「……織斑先生なら、織斑君を看ています……」
真耶はそう言うと、つらそうに俯いた。彼女の言葉に十蔵が「そうですか……」と納得しているが彼もつらそうに歯を食い縛った……。
しかし、二人も一夏を心配していることに変わりは無かった……。が、明日、二人の転校生が来る事や、一夏は右腕を失いながらも、これから先どうするのかも気にしていた……。
「……一夏」
その頃、一夏がいる集中治療室では千冬が彼を見ながら心配そうに呟く。近くには俯いている箒がおり、向かい側には布仏姉妹もいるが心配そうに見ていた。一夏は目を閉じている。心電図から、ピッ、ピッ、と小刻みな音が室内に響いている。
それだけならまだしも、重苦しい雰囲気に包まれている。彼が目覚める事を願っているようにも思えるが目覚めない事でつらい思いをしている。
彼はずっとこのままだろうか? 誰もがそう思った。刹那、彼の瞼が微かに動く。
「一夏!?」
「っ!?」
「オリム〜!」
「織斑さん!?」
千冬は彼を見て驚き、箒は俯いているが目を見開きながら顔を上げ、布仏姉妹は驚きながらも彼を見続ける。すると、一夏は瞼をゆっくりと開けた。
「い、一夏……!」
「一夏!」
千冬と箒は驚きを隠せないが少し安堵していた。布仏姉妹は驚きつつも彼女等同様、安堵している。刹那、一夏は目を見開きながら起き上がる。
「っ……」
が、起き上がった直後に身体に激痛を感じ、胸を抑える。
「い、一夏!」
「一夏!」
「オリム〜!」
「織斑さん!」
千冬、箒、布仏姉妹が心配する中、千冬は彼を支える。が、一夏蜂冬の行動に気づくや否や、手を叩き落とす。彼の行動に千冬は目を見開くが彼女は一夏を見た。
彼は憎悪が籠った視線を送っている。それは紛れもなく、自分へと、だった。千冬はそれに気づくが何も言わず俯く。ツケが回った事に気づいていた。
それでも、千冬は自らの過ちに気づいている。彼女は一夏を見ていなかった分を取り戻す為に彼を見る。険しくも何処か哀しそうな視線を彼に向ける。
姉としての心配と、勝手な行動をした事に寄る憤りを抑えようとしていた。すると、一夏は姉の視線に気づきながらも顔を引き攣らせながら周りを見る。
「ここは……」
「集中治療室です」
一夏の問いとも言える言葉に虚が答える。彼女の言葉に一夏は彼を見る。虚は彼の視線にたじろぐ。彼は怒っている事には気づいていた。
千冬に向けた物であるが八つ当たりされている感覚さえもする。虚だけではない、彼女の妹の本音も一夏の様子に気づき、涙目になりながら姉の後ろへと隠れながら震える。
布仏姉妹は一夏に怯えているが虚は一夏に訊ねた。
「そ、それよりも織斑さんは、だ、大丈夫ですか?」
「……それよりも」
一夏は何かに気づくと、眉を顰める。
「更識姉妹はどうした? 姿が見えないが……」
「っ!?」
刹那、彼女達の間に電流が走る。いや、訊ねられた事で図星を突かれたのだ。彼は更識姉妹、つまり楯無と簪の事を布仏姉妹に訊ねている。
彼女等はどうしたのか? 何をしているのかを訊ねているのだ。虚は一夏の言葉に何も言えない中、ある少女が口を開く。
「あんな奴等は放っておけ!」
少女が叫んだ。その声に一夏以外は一瞬だけ肩を震わす。怒りが孕んでいるようにも思えるが一夏はその言葉に気づき、振り返る。布仏姉妹や千冬も声がした方を見やる。
声を上げたのは、箒であった。彼女は一夏が更識姉妹を構っている事に対して怒りを隠しきれないでいる。嫉妬でもあるが一夏をこんな目に遭わせたのは更識姉妹だ。
彼女等がいなければ、一夏は右腕を失わずに済んだのだ。箒は更識姉妹に怒る中、一夏に対して言葉を続ける。
「一夏、あんな奴等には近づくな! あいつらがいるとお前が苦しい思いをするんだぞ!?」
箒は一夏に詰め寄るが更に言葉を続ける。
「私はお前が傷付くのは見たくない! お前が死んだら千冬さんや姉さんが哀しむ! だから」
箒はそう言いながら哀しい表情を浮かべる。
「だから私達といてくれ! 私達はお前の味方だ! それにあんな奴等といるより私達といてくれ! それに右腕がないのなら、私が右腕代わりをする!」
箒はそう言いながら懇願した。自分が彼の為に動くと。彼女は一夏に片思いをしているからこそであった。更識姉妹といるよりも、自分達、つまり自分や千冬、束等の身近な人達と一緒にいる方がいいと言っていた。
同時に彼に感情が戻って欲しい事を願っていた。いつもの彼に戻って欲しい、そう願っていた。しかし、そんな箒の願いも虚しく、一夏は箒を見ながら舌打ちした。
これには箒は言葉を失い目を見開く中、一夏は彼女の胸倉を左手だけで掴むと、彼女を自分の方へと引き寄せる。
「ッ!?」
箒は驚くが一夏は彼女に言う。
「いい加減にしろ……何故、お前といなきゃならない?」
「い、一夏……!?」
箒は言葉を詰まらせるが一夏は言葉を続ける。
「俺はお前らといるよりも、更識姉妹といる方がいい……」
「な、何故だ!? 何故あいつらといる方がいい!? それにあいつらはお前の」
「だからなんだ……! お前に更識姉妹の事を馬鹿にする理由や拒絶する理由も無い!」
「い、一夏……!」
箒は驚きを隠せない。一夏は自分達よりも更識姉妹といる方がいいと断言したのだ。それは箒にとって拒絶としか言えなかった。が、一夏は更識姉妹を利用する意味で守っているのだ。
しかし、今の彼はその利用さえも判らなくなっている事に彼自身気づいていない。それでも一夏は箒に対して怒り続ける。
「俺は更識姉妹を守る義務が有る。それは俺自身が決めた事だ……お前にそれを否定される理由は無い……!」
「な、何故だ!? 何故あいつらがいいんだ!? あいつらはお前の事を」
「さっきの話をするな……! それにお前が如何言おうが、そこの女がどう言おうが俺はあいつ等といる!」
「い、一夏……!」
箒は一夏の言葉に絶句し、青褪める。一夏の決意は変わっていない事を意味していた。それは箒にとって聞きたくもない言葉でもあり、自分よりも更識姉妹といる方がいい事を教えていた。
箒は一夏の言葉に泣きそうになるが一夏は舌打ちすると、彼女を突き放す。箒は尻餅を突くが彼を見上げた。彼は険しい表情を浮かべている。しかし、彼は言葉を続ける。
「俺はな……あいつ等といるのは俺自身が決めた事だ……それに俺は、更識家の従者なんだよ!」
「なっ!?」
一夏の言葉に驚く者がいた。それは、彼の姉である千冬であった。同時に布仏姉妹は驚きを隠せないが千冬に黙っていたからだ。これには困惑するが箒は目を見開いている。
「ど、どう言う事だ一夏!?」
千冬は一夏の言葉に驚きながらも彼に訊ねながら詰めよる。彼は千冬を見て眉を顰めるが千冬は困惑しながら彼に詰め寄っている。が、それはバレたのだ。
一夏が更識家に身を置いたのと同時に、暗部の従者となっていた事に……。
次回の木曜日の投稿はお休み致します。次回は金曜日からの投稿となります。