インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第116話

「お前……まさか」

 

 一夏は今、目の前にいる幼女、一美を見て眉をひそめながら訝しげに見ていた。一方、一美は一夏を見て微かに震える。彼は自分と同じプレイヤーである事に気づいたが自分よりも強いと感じてしまったのだ。

 風格は愚か、醸し出される雰囲気は自分よりも凄く感じていた。相手は一回り年上であるが右腕を失っているにも関わらず、自分を睨むくらいの力はあり、それは震えるくらいであった。

 自分と同い年なら泣くだろうし、だじろぐだろう。しかし、一美にはやる事があった。それは……が、楯無がそれを瀬切らせてしまう。

 

「そうだわ織斑君、この娘なんだけど……」

 

 楯無はぎこちない笑みを浮かべながら一夏を見る。知り合ったばかりとは言え、紹介するべきだと判断した。彼女は何者かはまだ知らない、だが自分達を助けてくれた為に恩人でもあるのだ。

 

「この娘は……」

「あ、あの!」

 

 刹那、楯無が何かを言う前に一美が怯えながら口を開いた。これには楯無は驚きながら一美を見るが彼女は言葉を続けた。

 

「わ、私と手を組んで闘ってくれませんか!!」

「えっ!?」

 

 一美の言葉に楯無は驚く。しかし、一美が一夏を助けたのは一夏と共闘を申し立てる為でもあった。それにも理由があるが一美は純粋に一夏との共闘、つまり、同盟をしたいと彼に懇願してきたのだ。

 そんな一美の言葉に一夏は口を開く。

 

「俺と、同盟したい……?」

 

 一夏は一美の切願が孕む言葉に不信感を表すように眉を顰める。自分が一回りも年が離れた幼女と手を組む。それは一夏にとって何の意味も無い願いでもあった。

 ゲームとは言え、プレイヤー達が生き残りを掛けて殺し合う最悪なゲームだ。そんな危険な状況中で同盟等、天地が引っ繰り返されるくらい、仰天としかない。

 一夏は一美の言葉を鵜呑みにしている訳ではないが彼の応えは決まっていた。彼は左手を腰に当てながら口を開いた。

 

「断る、何故俺がお前みたいな小娘と同盟しなければならない?」

「っ!?」

「お、織斑君!?」

 

 一夏の言葉に一美は肩を震わせると目尻に涙を浮かべる。そんな彼女に楯無は驚きつつも一美の背中を擦りながら一夏に怒る。

 

「織斑君! 何て事を言うの!? 一美ちゃんは私達を助けてくれたのよ!?」

「……何だと?」

 

 楯無の言葉に一夏は片方の眉だけを顰める。疑問を抱いているからでもあった。が、楯無は自分達の間に何が遭ったのかを自分が知っている限り、一通り教えてた。

 自分達は数時間前に一美に助けられた事、一美からあの二体の人形は何者なのかを教えてくれなかったが彼女は自分達にとって命の恩人だ。

 反面、大半であるがゲームが何かを知らないのと、それが何を意味するかまでも知らない。しかし、自分は既に戻れない所まで言っている事だけは知っている。

 楯無はそれを自覚しつつも一夏に怒り続ける。

 

「織斑君、私は貴方や一美ちゃんが何者かは知らない……でも、私は少しは知っているのよ」

「…………」

 

 楯無の言葉に一夏は何も言わない。それでも楯無は無言になると、一美から離れ、一夏の前に立つ。

 楯無の視線は鋭いが目の前にいる一夏を捉えている。ピリピリとした空気が流れ始めているが楯無は全てを知りたいが故の事でもあった。

 一夏は楯無を見て何も言わないが黙秘を通そうとしている。が、楯無はそれを赦さない。楯無は再び口を開いた。

 

「織斑君、全てを教えてよ……! ……貴方や奴の事、一美ちゃんや二体の人形、それに、この前の奴と、数時間前に学園を襲撃してきた二人の男の子達に奴と同じ巨漢の奴、全てを……!」

 

 楯無はつらそうに懇願した。自分はもう何もかも嫌になっていた。当主とか生徒会長とかそう言った地位を使う訳ではない、一人の少女として彼にお願いしていた。

 解らない事だらけであり、どれが正しいのかも判らないでいた。出来る事なら知りたい、どれが正しく、どれが間違っているのかを、と。が、楯無の願いも虚しく、一夏は目を閉じると、口を開いた。

 

「断る」

「っ……!」

 

 一夏の言葉に楯無は目を見開く。が、一夏は先を続ける。

 

「これは俺とそこの小娘の使命だ。それに他の奴等もそうだが全て俺達に関係する事だ」

「そ、そんなのって……!」

「だが、お前達一般人には到底理解出来ない。俺達の目的は……な」

 

 一夏はそう言うと、楯無を退かす。楯無は驚くが一夏は一美に近づいていく。彼を見た一美は肩を震わすが思わず後退る。

 

「逃げるなよ、俺はお前を殺す」

「ひっ!?」

 

 一夏は一美にそう言い放った。これには一美も身体を震わせながら声を上げてしまう。彼は本気だ、そう気付いた。幼いながらも恐怖を感じた。

 それはあの時以来であるが今でも恐怖はある。同時にこの恐怖は殺されると言う恐怖。生の終わりを意味し、死んでしまう事だ。それはゲームの脱落を意味している。

 一美は幼いながらもそれに気づいていた。彼女は後退りしょうとしたがチャッキーとティファニーを呼ぼうとしたが恐怖で身体が竦み、口元も震わせている。

 一夏は一美に近づくがそれを止めようとする者がいた。

 

「だ、ダメ!」

 

 楯無であった。彼女は一夏が一美を殺す事に驚きを隠せず止めようとして駆け寄ろうとした。刹那、一夏は楯無が迫ってくる事を知り楯無の後ろへと回る。

 彼の行動に楯無は目を見開くが一夏は左腕だけで楯無の腕を捻る。

 

「ああっ!」

 

 楯無は一夏の行動に驚きながらも痛みを感じた。が、楯無は暫くの間忘れていたのだ。彼は後ろを立たれるのを嫌っている。それに忘れ、彼の後ろに迫ってしまっのだ。

 しかし、彼は右腕を失いつつも、気を失っている時間が少し有っただけにも関わらず、力は微かに衰えているだけで、それ以上は衰えていない。

 楯無はそれに気づくが痛みを堪えつつ彼の方を見る。一夏は自分を軽蔑するように見ている。楯無は驚くが一夏は舌打ちした。

 

「貴様、何故俺の後ろに立つ?」

「あ、貴方が一美ちゃんを殺そうとするからでしょう……!」

「それが何だ? 俺はある目的の為にそれを実行しようとしたに過ぎない、お前が出しゃばろうが関係ない」

「そ、それでもダメ……」

「ダメじゃねぇ……それに何だ? それは当主としての命令か? 生徒会長としての命令か?」

 

 一夏の言葉に楯無は何も言えなくなる。一夏は楯無の命令が当主か生徒会長かの権限としか思っていなかった。部屋を同じにしたのもそれを使ったのと、自分を危険視したが故でもある。

 しかし、楯無は一夏の言葉に驚きを隠せないでもいる。自分はそんな目で見られていたのか? そう思ってしまった。そんな彼女を余所に一夏は言葉を続ける。

 

「お前は何時もそうだ。何か有れば生徒会長の権限で黙らせる。エリートで有る事には気づいているがお前は所詮、それしか出来ない」

「違う……違う!」

「違わねぇな? 俺の行動も当主として干渉して来ようとした。この前も多くの従者を喪った時も俺に干渉しょうとしてきた。俺が関わるなと言ったのにも拘らず、それを聞く耳も持たなかった」

「あ、あれは……」

 

 楯無は言葉を詰まらせる。しかし、一夏は慈悲を与えないように更に続ける。

 

「お前は所詮、俺を束縛したいだけだ。俺は誰の干渉も受けたくないが俺はお前達の命を遂行したのもお前達を利用する為だ」

「…………」

「これで判ったろ? 判ったのなら俺の行動にも口出しするな。それに俺達の事を詮索するのは止めろ、命が惜しくばな」

 

 一夏はそう言いながら楯無の手を放す。楯無は一夏に解放されたが彼女は一夏に捻られた腕をもう片方の腕で押さえる。未だに痛みが残っているが楯無はそれとは別に更なる痛みを感じていた。

 自分達は利用されていた、一夏が命を受けたのはそれだけであったのだ。この前、自分の父、源次が利用すれば良いと言ったが正にそれであったのだ。

 楯無は俯きながら肩を震わる。しかし、楯無は肩を震わせているのを余所に一夏は一美を見る。刹那、一美は肩を震わせる。殺される、と。一夏は彼女を見ながら歩き出そうとした。

 

「それでも!」

 

 刹那、楯無が叫んだ。これには一夏は眉を顰め、一美は突然の事でビクッと一瞬だけ肩を震わせると、楯無を見る。楯無は肩を震わせているが一夏を見る為に振り返りながら顔を上げる。

 

「…………」

 

 一夏は楯無を見て何も言わない。が、楯無は彼を見ている。哀しみや怒りが入り混じったように見ていた。一夏に対して色々と言いたいのだろう。

 が、楯無は突然、一夏の胸に顔を埋める。

 

「……何をする?」

 

 一夏は楯無の行動に驚かなかった。が、楯無は一夏の胸に顔を埋めたまま肩を震わせていた。刹那、一夏は何かに気づく。胸部分が濡れている事に。

 自分が濡らした訳ではない事に気づいていた。が、それは何かまでは判断出来た。楯無の涙である事に。理由は楯無から嗚咽が漏れているからだ。

 一夏は何も言わず目を細めているが一美は楯無の様子に気づき戸惑っている。そして、楯無は一夏の胸に顔を埋めながら口を開いた。

 

「それでも良いわよ……それでも、良いわ、よ……!」

 

 楯無はそう言い放った。これには一夏は何も言わないが一美も見守っていながらも何も言わない。そして、楯無は言葉を続ける。

 

「貴方が何て言おうが……今の私には……言い返せる気分や、そんな度胸は無いわ、よ……!」

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