インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第120話

「織斑さん……」

「オリム〜〜……」

 

 あれから一時間後の休憩時間、簪と本音は一夏の近くにいた。彼女等は心配そうなのか表情は暗い。一夏が無事である事を喜ぶ筈なのに、何故か喜べないでいた。

 理由は簡単、一夏は千冬を慕う少女、ラウラに憎悪の対象として認識されていたからだ。彼が悪い訳でもないがラウラから見れば、千冬があんなに困っているのは彼がいるからだと思っていた。

 ラウラは一夏をコテンパンにしなきゃ気が済まないと思っているが彼女はどのくらい強いのかは判断出来ない。簪と本音はそれに気づきながらも一夏の前では言わない。

 言えば一夏を不安にさせる事にもなりかねない。いや、一夏はそう言った不安や脅しには屈しないのとその程度では怯えないからだ。

 

「…………」

 

 一方で一夏は無いも言わず目を閉じている。彼は気にしていないようにも思えるが思考を走らせていた。夢見一彦や黒峯一也の行動範囲を探る為でもあった。

 彼等はどう動くのかを警戒しいていた。しかし、彼等が同盟したとなれば厄介であった。どちらも、いや、片方はブギーマンを引き連れている。一彦は何を引き連れているのかは判らないがフレディか、もしくはピンヘッドではないかも警戒している。

 が、こちらには同盟したくはなかったが、楓一美と言う使えるかどうかも判らない幼女プレイヤーがいる。彼女はチャッキーとティファニーがいる。

 彼女にはある理由で同盟するように昨晩言ったのだ。それは彼が一時的な行方を晦ませたのもそれが理由であった。彼女にはある事をしてもらい、それをチャッキーとティファニーに命じてもらうよう言ったのだ。

 自分にはジェイソンがいるが彼は今、警察署にいる。彼と意思相通している為に知っているが今頃、彼は警察署から逃げ出している頃だろう。

 一夏はそう考えているが簪と本音の心配事を他所にしている。彼女達の自分へと気遣う不安を無にしている。彼はゲームを制するためとは言え、他人の思いを踏みにじっている。

 いや、そう思えざるをならないだろう、それに周りは一夏を見ている。憎悪や嫉妬と言った視線が大半を占めている。逆に心配している者達は多少いる。

 候補としては箒を含めた非女尊男卑主義者達だろう。しかし、彼女等の思いも彼は無視している。彼はゲームを制するだけの自分勝手な考えしかしていなかった。

 

「ちょっと、良いかな?」

 

 すると、一人の女子生徒が彼に訊ねてきた。これには一夏は瞼を開き、声がした方を見る。簪と本音も声がした方を見やる。その生徒は今朝周りに自己紹介してきた生徒かつ、転校生であるシャルロットであった。

 彼女は一夏達を少し不安そうに見ているが簪も彼女を見ながら不安そうに訊ねる。

 

「ど、どうしたの……デュノア、さん?」

「そんなに畏まらなくても良いよ? 僕はただ、織斑さんに自己紹介していなかったから、彼にも自己紹介しょうと思ってね?」

 

 シャルロットは簪を宥めながら苦笑いする。が、シャルロットの言い分は正しかった。彼女は今朝自己紹介したにも関わらず、一夏にはしていない。

 理由は彼が遅れてきた事と、ラウラに憎悪を向けられた事と彼女の行動で自己紹介する時間を取られてしまったからだ。彼女に非がある訳ではないが、純粋に一夏と仲良くしたいようにも思えたのだ。

 しかし、それは簪と本音から見たらであり、周りもそう思えざるをえないだろう。が、二人だけは違った。

 

「…………」

 

 一人は一夏である。彼はシャルロットを訝しげに見ていた。何か有るようにも思えたのだ。そう思ったのではない、本能がそう直感させているからだ。

 暗部に入ったのが功を奏したと言い替えれば良いが彼の場合、洞察力が高いだけである。プレイヤーを二人も倒したのもそうであるがどうしても不信感が拭いきれないでいた。

 シャルロットは何か別の目的で接触してきた、そう感じていたのだ。彼の様子に簪とシャルは気づかず、何かを話している。

 

「それでデュノアさんは……」

「シャルで良いよ、名字は言いづらいだろうし、シャルロットも長いから」

「シャル……でいいの?」

 

 簪は驚くがシャルは微笑みながら頷く。

 

「良いよ、それにぼ、私は気にしないから」

 

 シャルは突然、何かに気づき訂正する。何かを言い掛けようとしていたが困惑しているようにも思えた。幸いな事に簪と本音には気づかれなかったが彼、一夏だけは違った。

 

「…………」

 

 彼は無言で見ているがそれに気づいたのだ。彼女は何かを隠している、それも自分に関わる事だと。しかし、一夏は彼女がプレイヤーとは思えなかった。

 自分と同じ匂いをしないからでもあった。もしも同じならば気安く話し掛ける筈も無いからだ。一夏はシャルに対して不信感を抱く。が、

シャルは一夏を見る。

 何にも疑問を持たない訳ではないがシャルは微かに怯える。

 

「ど、どうしたの?」

「……別に」

 

 一夏はそう言いながら目を逸らす。が、シャルは言葉を続ける。

 

「そ、それよりも貴方が織斑一夏なの?」

「……それが何だ?」

「あっ、ぼ……私はシャルロット・デュノア、フランスから来たんだ」

「……それで?」

「な、仲良く出来ないかな、と思ってさ。その為には先ず、交友を深めたいと思って、ね」

 

 シャルは一夏にそう言う。純粋にそう思っているのかもしれないが彼女の口調には何処かつらそうにも感じられる。が、それは誰にも解らない、誰も彼女の境遇を知らず、ある事に巻き込まれている事にも判ってもらえないでいる。

 が、一夏は目を逸らしながらもそれに気づきながらも干渉しないでいる。関わればムダだと思っているからだ。彼女がどうなろうと、知った事ではないのだ。

 

「織斑さん……シャルに失礼だよ?」

「そうだよオリム〜〜シャルルに失礼だよ?」

 

 簪と本音は一夏の相槌的な言葉に少し怒る。が、シャルは本音の言葉に少し驚く。

 

「シャルルって?」

「シャルルは私が付けたあだ名だよ〜?」

「ああ、そう言う意味なんだ……」

 

 シャルは少し表情を暗くする。しかし、簪と本音は彼女の様子に気づく。

 

「どうしたの……シャル?」

 

 簪はシャルに訊ねる。が、シャルはそれに気づき慌てて顔を上げる。

 

 

「あっ、ご、ごめん、ちょっと日本とフランスの時差が違うから、困惑してたんだ」

 

 シャルはそう言うが簪と本音はシャルの様子に納得していた。が、一夏は目を逸らしているが彼女の様子が少し変である事に警戒しながらも何者かを調べようと思っていた。

 彼はシャルに対して不信感を抱いているが、もう一人、シャルを快く思わない者がいた。

 

「(何だ、あの女……!)」

 

 箒だ。彼女は一夏に気安く話しかけているシャルに対して嫉妬していた。更識姉妹や布仏姉妹だけでなく、シャルまでもが一夏に話しかけている事を快く思っていない。

 それに自分は一夏に嫌われているのと、一夏が変わった事に驚愕と悲哀している。出来る事なら何時もの彼に戻って欲しい、そう思っていた。

 しかし、今はシャルに対しても怒りが沸いてくる。自己紹介ならまだしも、簪と本音とも親しくなっている。別に気にもしないが二人に仲介して貰って、一夏と仲良くなろうと思っている、そう、思っていた。

 箒はシャルに対して憎悪を抱くがそれは周りも気づき、近寄り難くなっている事に彼女は気づいていない。が、箒は彼女とは別にもう一人、ある少女にも憎悪を抱いていた。

 彼女は今、千冬といる為にここには居ないが箒は憎悪を抱いている。それはラウラである。彼女はドイツから来たが一夏に対して何か因縁がある事に気づいていた。

 

「(あの小娘もそうだ! 何故一夏に怒るのだ!?)」

 

 箒はラウラに対して辛辣な言葉を投げようとしていた。彼女はシャルだけでなくラウラにも怒りを沸かせている。何方も一夏とは何か縁を結ぼうとしている。

 それだけは嫌であった。更識姉妹や布仏姉妹だけでなく、あの二人までもが入ったら彼との接触は益々難しくなる。それだけは避けたかった。

 同時にジェイソンを目撃したが箒は何故か安心していない訳ではない。彼女もジェイソンに怯えているが一夏の周りにいる女子生徒達に嫉妬の視線を送っていた。

 

「…………」

 

 しかし、一夏はその視線に気づいていた。窓側の方から殺意に近い視線に。それも箒が放っている事に気づいているが彼は無視していた。今は他のプレイヤーの動きを察知するのが先であり、関わっている暇はないからでもあった。

 一夏は箒からの視線と、簪と本音とシャルの会話を鬱陶しく思いながらも休憩時間が終わるまで、何もしなかった。

 

 

「た、大変だーーっ! に、逃げたぞーーっ!」

 

 その頃、警察ではジェイソンが警察の監視の目を潜り抜ける意味で風のように消え、彼が逃げた事で警察署内は慌てていた……。

 

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