インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「取り敢えず、俺達は奴等の動きが有るまで、暫くは行動を控えるしか無い」
あれから数分後、一夏は一美と共に話をしていた。それ自体は終わった物の、内容は相手の動きを待つ事になったのだ。相手がどう動くのかは相手にしか判らない。
逆にまた、相手がどう動くのかを察知するしか無いのだ。軍師ではないが戦略家でもない。彼は暫くは動かない事を一美に言ったのだ。この状況では仕方ないがムダな時間を使うだけであり、ムダな生活は過ごすだけであり、ムダな行動をするしか無い。
彼から見れば苦痛でしかない。しかし、今はどうする事も出来ないのを理解している。ジェイソンには暫くの間、待機するよう言うしか無いのと、一美には殺されぬよう、言うしか無いのだ。
因みにチャッキーとティフアニーは一美の命令で退いた為に、ここにはいない。
「小娘、俺はお前を助ける義理は無い」
「っ……」
一夏の言葉に彼のベッドの上で座っている一美は言葉を詰まらせる。困惑しているが一夏は畳み掛けるように言葉を続ける。
「自分の身は自分で守れ、それに俺も何度かは判らないが窮地に立たされた時には自分で潜り抜けた」
「……」
「自慢じゃねえが俺はゲームで生き残る為には即断を必然とし、冷静さも必要と思っている。そこだけを理解すれば必ず勝機が見え、負けそうになった場合は撤退の道を見つけ、次に闘う時には相手の動きを見切る必要も有るのだと言い聞かせている。それに、相手の泣き所を見つければ致命傷を負わす事も出来る」
一夏は一美に対して戦いの事を教えていた。しかし、それは経験の浅い一美に対して基礎を教えているようにも思えた。彼はそんなつもりではないが身近に起こった事を話しているに過ぎない。
それに彼はハリー・ウォーデン、レザーフェイス、ブギーマン、チャッキーと言った殺人鬼を引き連れている者達と遭遇し、中には倒し、返り討ちにした者達もいる。
前者は兎も角、後者は倒してはいないが彼は他の者達よりも二人を倒している。それは自慢ではない、彼は危機に陥りながらも何とか戦い抜いた。
善戦でもあるが苦戦もした。しかし、夢見一彦に負けた事もある。それは過ぎた事であるが一夏は次は負けないと言う意味でも片付けている。
それは報復と言う意味もあり、復讐でもあったのだ。一夏はそれを言わないでいるが彼は一美に対して訊ねた。
「お前がどうなろうが知った事ではない……が、お前に問う」
「……何を?」
一美は怯えながら聞き返すと一夏は軽く頷く。
「ああ、貴様は何故、プレイヤーになった?」
「えっ?』
一夏の言葉に一美は目を見開く。が、一夏は一美がプレイヤーになった事を不審でしかないのだ。自分達は大抵は復讐を目的に集められた者達ばかり。
何かの目的を果たし、誰かか、それに周りに報復をもするのがそうである。なのに、一美からは復讐をしたいようにも感じられないのだ。
一夏がそう思うのも無理は無いが彼は今まで闘ってきた者達が皆、復讐の為に闘っていた。同じ匂いをしていた。それだけでなく、闘う時も死をも覚悟しているのだ。死ぬ気で闘っているのだ。
それなのに、一美からは何も感じられない。戦いに躊躇しているようにも思えたのだ。本当はあの時聞くべきだったがそれをしなかったのは楯無が近くにいたからでもある。ゲームの事を知られるわけにはいかないからであった。
今は楯無は居ない為、ここには自分と幼女しかいない。疾しい事をするつもりでもないのと、自分はそう言った趣味は無いのだ。一夏は一美に訊ねるが彼女は何故か困惑している。
後ろめたい事が有るようにも感じるが生憎、何も言えず戸惑っている。そんな彼女が何も言わない事に対し、一夏は舌打ちした。
「……もう良い」
一夏はそう言うと瞼を閉じる。これには一美は更に目を見開くが彼は歯を食い縛ると左手を腰に当てる。
「お前は何も言わないでいる。それは時間のムダだ。それに俺はお前と話をするのもムダと言いたい程、時間が惜しいと思っている」
一夏はそう言いながら浴室の方へと向かう。理由は今日の疲れを取る為でもあった。一美は一夏が浴室へと向かう理由を知らないが一夏は不意に彼女を見る。
彼の表情は険しいが一美に何かを言う意味であった。一美はそれに気づくが怯えてしまう。が、一夏は口を開く。
「一応、お前に警告しておく」
「えっ……!?」
一美は驚くが一夏は先を続ける。
「お前、そんなに怯えるのは止めろ、それでは相手を油断させるか、最悪の場合、隙を作らせる。そうなれば、お前は脱落する」
「っ……そ、そんなつもりは……」
「それだ。それにお前がこのゲームに参加した理由を俺は知らない。が、お前は困惑や恐怖に打ち勝て、そうすれば自ずと成長出来る……」
「…………」
「俺はお前の先生ではない、俺達は同盟しているとは言え、破棄すれば俺達は敵だ。さっきの助言もお前が俺に立ち向かう存在かを試している。もしもそれに値する奴になれば、俺も全力でお前と闘う。ゲームで生き残れるのは……一人だからな」
一夏はそう言うと、浴室の扉を開け、そのまま浴室の中へと消えて行った。しかし、室内には一美しかいなかった。が、彼女は一夏の言葉に耳を傾けていたが何故か俯いてしまう。
「恐怖に……打ち勝、て?」
一美は一夏の言葉を理解しているが解らないでいた。理由はまだ幼いが故でもあるが一夏の言葉に重みを感じていた。しかし、何故かそれを恐怖でしか感じれなかった。
ゲームで生き残れるのは一人、それだけは理解している。なのにそれを彼女を怖がらせている。一美は目に涙を溜める。
「そんなの解んない……解んない、よ……」
一美は泣いた。幾らプレイヤーとは言え、まだ四歳。つらい現状でもあるが避けられぬ宿命だ。一美はそれに気づくのは彼女自身が成長すれば自然と解る事だ。
一美はそれに気づかぬまま、誰もいない室内で一人泣いた。浴室には一夏がいるが彼は何をしているのかは彼女にも判らないだろう、判るのは湯船に浸っている事くらいだろう。
「…………」
その頃、一夏は浴室で一人、シャワーを頭から浴びていた。無数に流れるお湯の雨が自分の頭を打つが彼は俯いている。何を考えているのかは彼にしか判らない。
「……っ」
刹那、一夏は歯軋りした。彼は有る事を思い出していた。それは夢見一彦との戦いであった。結果は自分の敗北、最初の敗北。
一夏から見れば屈辱的かつやるせない思いを自分でも判るように感じている。
出来る事なら復讐したい、夢見一彦だけは赦さない。そう自分に言い聞かせていた。
「クソが……クソ!」
一夏はそう吐き捨てた。この怒りを誰にもぶつけられないでいた。本当は八つ当たりしたい気分であるがそれも出来ない。一夏は自分の無力さに怒りを覚えつつもそれを吐き出す事が出来ないでいた。
「クソ……クソ!」
一夏はぶつぶつと呟く。夢見一彦への怒りが沸いてくる。奴だけは赦せない、奴だけは絶対、殺すと決意していた。しかし今は迂闊に動けないでいる。
奴等の動きが有るまでの間、大人しくする他、方法は無い。一夏はそれに気づくと、膝を突く。歯軋りしながらであるが俯き続けていた。
彼は泣きたかった。なのに、それが出来ないでいた。涙は既に枯れた、彼は人が変わりながらも、慈悲や寛厚と言う善の心を失った。今の彼には優しさは不要である事を意味している。
彼はそれに気づく事は無かった。しかし、彼を何時もの彼に変える存在は現れるのは何時になるのかは判らない。が、一夏は敗北したと言う事実を重く受け止め、悔しい思いをしている。
彼はその弱い部分を誰にも見せないでいた。彼は歯軋りしながらもその場を動かないでいた。お湯の雨に打たれながらも、身体の疲れを取るつもりか怒りが彼を支配していた…………。
「……判りました。絶対に織斑一夏に接触するようにします。ですが今は交友を深めるのが先だと判断しています」
そんな中、ここは一年寮の、とある部屋。室内には一人の女子生徒がいた。彼女は電話をしているが何所にかけているのかは彼女にしか判らない。
が、表情は哀しく、つらそうである。にも関わらず、電話の向こう側は何かを少女に言っている。
『国は何としてでも織斑一夏のデータが欲しいらしい、その為にはお前を学園に送った』
「…………」
『お前はその者と接触する為に何をしてでも彼と接触しろ、出来る事ならお前を……済まない』
「……別に良いよ」
『頼むぞ、シャルロット』
その者は少女をシャルロットと言うが彼女、シャルはつらそうに俯くと、手で顔を覆い隠す。が、彼女は泣いていた。
自分の境遇に怒りを覚えていた。が、今は逆らう事が出来ない、その哀しい現実を突きつけられているのを理解しつつも泣いていたのだ。
シャルは泣いているが誰も彼女を慰める事は出来なかった……。
次回、土曜日の投稿はお休み致します、次回は日曜日からの投稿となります。