インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第125話

「……成る程、中国政府がな?」

 

 数分後、一夏はジェイソンと共に鈴に尋問していた。それは呆気ない物であった。鈴は最初は頑に口を閉ざしていたがジェイソンが指を鳴らすとと直ぐに口を割った。

 彼女は今、イスに座りながら俯きながら言葉を続ける。その口調には哀しみが孕まれている。彼女の悲痛な叫びや辛さを教えていた。誰かに助けを求めているようにも思えるが全て終わったと悲観していた。

 一方で、一夏は鈴の言葉に納得しているようにも思えるが何故か怒っているようにも思えた。中国政府が自分に接触する。それは死をも意味しているが鈴を飼い狗のように扱っている事に怒りをも感じていた。

 自分に近づく為には鈴の貞操を気にもせず、死んでも関係ない。彼女や、その両親がどうなろうが気にもしないだろう。

 鈴に同情している訳ではない、彼は中国政府もまた、この世界に蔓延る腐った人間共である事に気づいたのだ。この前の倉持技研や前の日本政府もそうであり、彼等は金の為に、名誉の為に誇りを捨てた。

 生きている価値もないが中国政府もまた、それと同じである事に憤怒している。最早、慈悲は無い。一夏はそう思いながらも中国には良い印象はない。

 全てとは限らないが問題を起こしてばかりであった。観光が殆どであるが今はそれどころでは無いだろう。一夏はそう思いながらも鈴の話に耳を傾けていた。軽く相槌を打つだけであるが……。

 

「それで政府は私が一夏と親しいのを知って、私に一夏に近づくよう言った……入学式に出られなかったのも、一夏に接する際の警告だった……」

 

 鈴は辛そうに言葉を続けるが一夏は眉を顰める。しかし、鈴は言葉を続ける。

 

「政府の奴等は一夏に携わる重要なデータを調べ、送れと言った。でも、私はそれをしたくなかった。なのに……!」

 

 鈴は目尻に涙を溜める。

 

「奴等は私の両親を殺すと脅してきた! 奴等はアンタのデータが早く欲しいからそうしてきた! それに貴方に近づいたのも、お父さんやお母さんの身の安全を思っての事だった!」

 

 鈴は泣きながら叫んだ。これには一夏は驚かなかったが眉を顰め続けている。が、鈴は辛かったのだ。政府の飼い狗にされている事に。一夏に無理矢理接したりしたのもそれが理由であった。

 しかし、それだけならまだしも、一夏の変わりように驚きと哀しみで一杯だった。データよりも彼が変わった事を知りたかった。同時に政府の奴等もそろそろ我慢の限界だったのだ。

 鈴はそれで葛藤し、疲弊しつつあった。友情か、利益の何方をとれば良いのかを。一夏との友情ならばそれで良い、が、中国を繁栄する為に彼を犠牲には出来ない。

 彼女は純粋な心を持ちつつもそれが汚れつつあった。いや、既に中国のスパイになってしまっている為に汚れているだろう。鈴は自分の立場を理解しつつも罪悪感で一杯だった。

 普通に青春を謳歌したかった。なのに、それが出来ないでいる。同時に彼に全てを話してしまった。最悪、学園を追放されるだろう。同時に中国政府も憤怒し、自分や両親を死刑にするだろう。

 鈴は恐怖した。死にたくない、が、どうすれば良いのかも判らないでいたのだ。後の事を想像したくもないでいた。祖国からの誹謗中傷の嵐に最悪な人物として歴史に残る。末代にまで続くのかもしれないが子孫がいるかどうかも判らない。

 しかし、今は泣く事しか出来なかった。同時に何度も謝る。

 

「ごめん一夏……ごめんな、さい……! 本当に、ごめんなさい……!」

 

 鈴は大粒の涙を流しながら一夏に謝る。友情を踏みにじった自分が出来る事が無い意味での涙でもあった。赦して欲しい、チャンスをくれと言ってもいない。

 ただ、ただ、彼への後悔の意味での謝罪でもあった。

 

「…………」

 

 そんな彼女を一夏は冷ややかな目で見ていた。しかし、彼は同情していないのも事実だ。彼は彼女の言葉を理解しつつも、泣いている意味を知らない。

 が、同時にある考えを浮かぶ。それが出来れば……刹那、一夏は鈴の首元に手刀を落とす。

 

「っ……!?」

 

 鈴は突然の事で目を見開くが徐々に意識が遠退いていくのを感じた。そして、彼女はイスから転げ落ち、俯せに倒れる。が、一夏は彼女を助ける事は愚か、支えようともしなかった。

 彼女を気絶されたのは彼自身なのだ。それが理由だろうし手を差し伸べる事もしない。しかし、そうしたのも,ある事が理由でもあった。一夏は鈴を見下ろしているが不意に視線をジェイソンへと向ける。

 

「…………」

 

 ジェイソンは何も言わないが一夏の視線に気づき、彼を見る。一夏は表情を険しくしているが何かを訴えている。それは合図でもあったが一夏は何かを呟いた。とても長いが命令であった。彼の言葉をジェイソンは理解し、頷く。

 刹那、ジェイソンは風のように消えた。一夏の命令を遂行する為でもあった。が、一夏はジェイソンの様子には気づいていた。彼は最近、様子がおかしい。

 そんな彼に気づかない一夏ではない。彼はジェイソンが近頃、人を殺していない事に苛立っているのだ。相当鬱憤も溜まっているだろう。最悪、暴れる危険もある。

 しかし、鈴の言葉とその背後の存在を聞いて、思い出したのだ。彼の八つ当たりとして標的にしたのだ。奴等は腐った人間共だ。殺されても可笑しくないのと、何もしないで高みの見物をしている奴等ならば尚更だ。

 向こうは何人いるのかは判らない。が、ジェイソンの相手に相応しいかどうかも判らない。いや、無理だろう。一夏はそう思いながらもジェイソンに、こう、命令していたのだ。

 ジェイソン、中国の腐った政府の野郎共を殺れ、と。それは殺害と言う意味での彼の命令。ジェイソンは殺人鬼であるが喜ぶだろう。が、一夏は殺害は彼に任せるとして、自分はやる事があった。

 彼は視線を鈴の方へと向ける。彼女は気を失い続けていた。しかし、彼は彼女を冷ややかな目で見た後、何も言わずに風のように消えた。やる事は鈴にではない、彼は片付けるべき問題があったからだ。それに今頃、効いてくる頃だろう……。が、彼の目的は、ある人物に逢う為でもあった。

 

 

「…………」

 

 その頃、此処は一夏と楯無の部屋。その部屋には楯無と一美……いや、虚がいた。一美は彼女等の妹である簪や本音と共に彼女等の部屋で何かのお話をしている

。少し愉しそうであるが簪と本音はまだ幼い一美を気遣い、愉しいお話をしているのだ。

 一方で楯無は虚と、ある話をしていた。それは今後の事であった。

 

「そうですか……暗部の事が」

 

 虚は楯無から、ある事を話されていた。それは一夏が暗部の事で千冬にバレたからだ。それは一夏から言った事であるが二人は,この状況を何とかするのが先であった。

 

「お父さんに連絡したけど、酷く驚いていた……でも、今は織斑君を何とかするのが先よ……」

 

 楯無はそう言いながら俯く。辛そうであった。しかし、そんな楯無を虚は心配そうに訊ねる。

 

「お嬢様、どうかなされましたか?」

「いえ……ちょっと、ね?」

 

 楯無は哀しそうに微笑む。が、虚は彼女の様子がおかしい事に気づいた。何時もの彼女ではない事に気づいていた。いや、それ以前にそうなっている。一夏の事で疲れていると思った。

 気遣う事でしか出来ないとも感じていたが虚は先を続ける。

 

「お嬢様……まさか……!」

 

 虚はその先を言おうとした。しかし、何故か出て来ない、言葉を詰まらせていた。理由は言わなくても判るが彼女は何とか、先を言おうとしていた。

 が、楯無がそれを止める。

 

「大丈夫よ……私は」

「ですが……!」

「大丈夫だから!」

 

 虚の言葉を遮るように楯無が叫んだ。これには虚も肩を震わすが楯無は言葉を続ける。

 

「大丈夫だから……私は大丈夫だから……!」

 

 楯無はそう言いながら肩を震わせ始める。彼の事や暗部の事、生徒会長としての責任に重みを感じ始めていたのだ。最初は何ともなかった、同時にそれを重く受け止めていた。

 しかし、一夏の、彼の周りに起きた事はそれ以上に重いのだ。殺し合いが当たり前かつ、彼は人を殺す事に違和感や罪悪感を微塵も思っていない。

 それが楯無を追い詰めていた。自分よりも彼の方が当主や生徒会長に相応しい器だ。そう感じると共に譲りたい気分であった。全てに逃げ出したい気分であった。

 それが出来れば問題ないが今は暗部の事を何とかしなければならない。そう自分に言い聞かせていた。

 刹那、扉の叩く音が聴こえた。声には虚が反応するが声を掛ける。

 

「誰ですか?」

「本音だよ〜〜」

 

 虚が対応すると、扉の向こう側から一人の少女の声が聴こえた。彼女の妹である本音であった。

 

「どうしたのかしら……?」

 

 虚は疑問に思いながらも扉の方へと向かうと、扉を開けた。そこに居たのは本音であった。しかし、彼女は何処か安心している。

 

「どうしたの本音?」

 

 彼女は妹に対して訊ねる。そして本音は姉に言った。

 

「寝ちゃったよ、一美ちゃん〜」

「えっ?」

 

 本音の言葉に虚は目を見開く。が、一美は寝てしまったのだ。今は簪が見てくれているがそれには理由がある。それも彼女達は知らないだろうが一美が寝たのは一夏の仕業である。

 彼は一美を眠らせたのだ。それも睡眠薬で。それも少量であるがサンドイッチに入れたのだ……。

 

 そして、一夏は今、ある人物へ逢いにアメリカへと行ってる。

 そして,ジェイソンもまた、一夏の命で中国へと行ってる。それは中国政府の役人達を殺す為であった……。

 

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