インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「ふぅ……」
あれから数分後、一夏は呆れながら窓の外を眺めていた。外は戦火になっている。戦争を物語っているがその最中でもある。否、一方的な物であった。
辺りが煙に巻かれながらも上空には十機のISが激しい戦闘を繰り広げている。が、九対一と言う圧倒的有利かつ、不利な状況であった。
一機は黒峯一也、後の九機はクラリッサ率いるシュヴァルツェ・ハーゼ隊。結果は既に見えていた。
「ぐっ!?」
一也は今、苦戦を強いられていた。それは一人で九機を相手にしていた。しかし、数では圧倒的に不利であり、戦闘のプロ集団だ。自分は素人であり、勝ち目は無い。
が、それでも一也は抗う。勝とうとしていた。否、勝たなければならなかった。自分はゲームを制する。それだけの為に抗っている。彼を駆り立てているのは憎悪と願望。
その二つが彼の心を支配し、我を忘れさせている。にも関わらず、彼は銃弾の雨を浴びていた。周りにいるのはシュヴァルツェ・ハーゼ部隊の面々と他の者達。
周りは一也を追い詰めているが表情は険しい。憤怒……そして、驚愕しているのだ。
「何なんだ!? あれは男ではないか!?」
「それにあのISは何所で!?」
「無駄口を叩いてはダメだ! 兎に角奴を倒せ!」
クラリッサを除いた女性達は一也に対してそう漏らす。一也が男性である事とISの出所を気にしているからだ。それだけでない、男性操縦者は一夏を入れて他は居ない。
一也が二人目……否、世間は知らないが彼は三人目だ。二人目は夢見一彦であり、そのISはジルドレ。この世界には三人の男性操縦者がいる。
それは衝撃を与える物であり、男性からは希望、女性からは憎悪と絶望でしかない。が、女性達の中には希望を抱く者達も少なからずいる。
女尊男卑と言う風潮を嫌い、平等社会を強く望んでいるからだ。が、今はそれどころでは無い、一也はドイツ軍の基地を夜襲したのだ。多くの兵器を破壊し、多くのドイツ軍人の死傷者を出したのだ。
中には恋人や家族がいる者達もいる。一也はそれに気づいていないが彼の目的は織斑一夏、ただ一人であり他の犠牲は気にもしないのだ。 彼は犯罪者であるが犠牲はつきものだとしか認識していないだろう。しかし、今は何とかしなければならない状況である。彼は歯を食い縛るが身体を震わせると、反撃を試みる。
「こなくそがっ!!」
一也は大砲を近くにいるラファールへと向けると、砲弾を放った。が、そのラファールを扱っている女性隊員は難なく躱す。刹那、彼の背後を突くかのように、彼の後ろにいた別のラファールを纏っている女性が手に持っているショットガンで狙い撃ちした。
「あぐっ!?」
一也は背中に微かに痛みを感じるが振りかえようとした。しかし、今度は左右から十数発の銃弾を浴びる。左右にはさっきの奴とは、攻撃した奴とは全く別の女性達であった。
彼女等はアサルトライフルで彼を撃ち続けている。一也は完全に不利であった。しかし、彼は負けると言う事を理解したのか、歯を食い縛ると、再び反撃しょうとした。
「攻撃の手を休めるな!」
クラリッサが周りに対して叫ぶ。彼女の言葉を理解した瞬間、彼女達は攻撃する。一也を倒すのが第一の使命であった。しかし、中には戸惑いがある。
彼が男性操縦者。それだけであるが彼女達は軍人として、夜襲を仕掛けてきた者を倒す為に行動している。葛藤さえもあるが今は倒すのが先決だった。
「俺達も援護するぞ! 撃てぇぇっ!」
それだけではない、地上には生き残った男性隊員達もアサルトライフルや狙撃銃で彼女達を援護する意味で、一也を撃つ。仲間達の仇であり、倒そうとしていた。
「っ……!」
一方で一也はじりじりと押されていた。 上空と地上からの攻撃に手も足も出ない、が、彼は歯を食い縛ると軽く目を附せる。このままでは負ける。そう理解していた。負ける訳にはいかない、そう気付きながらも彼は舌打ちすると、
「……あ、あぁぁーーーーーーっ!!!」
彼は唐突に叫んだ。咆哮にも近いが怒りが孕んでいる。
「っ!?」
クラリッサ達は驚く。が、攻撃の手を止めた。彼の怒号が彼女達の行動を止めたのだ。刹那、彼の周りに赤い火花が走る。壊れたのではない、彼の怒りと憎しみがISに伝わったのだ。
が、それはIS自身が彼に応えるように火花を走らせたのだ。それだけではない、IS、ゾディアックは彼の気持ちを更に応えるように機体に刻まれている紅く描かれた魔方陣が真っ赤に光出す。
クラリッサ達はそれを見て驚くが
「は、離れろ!!」
クラリッサは何かに気づき命令する。これには周りも頷き後退するが地上の男性隊員達も離れる。が、中には恐怖を感じている者達もいた。それだけでなく、地上に居た男性隊員達も驚きと恐怖を感じていた。
一也の身に何か起きている。それだけは、この場にいる全員、理解出来た。そんな幾つも視線を浴びるように見られている当の本人、一也は叫び続ける。
紅い火花は徐々に多くなっていく。そして、地上に異変が起きた。それは、破壊された戦車や戦闘機の部品の一部が彼の方へと吸い寄せられていく。
まるで磁石のように吸い寄せられていく。が、それは彼のISの背中部分へと集中していく。徐々に集まるが勝手に組み立てられていく。
「な、何だ!?」
クラリッサは驚くが部品は、ある形へと変化していく。それはコウモリの両翼。禍々しくも漆黒に染まっている。が、四肢や胴体にも集中していく。
それはIS自体を強化しているようにも思えた。が、軍事基地にあった部品の、否、極一部が彼のISとして修復不能になるまで、彼が死ぬまでの間と新たなる操縦者が現れるまでの間、ISの部品となっていく。
そして、二門の戦車の砲身が彼の両肩に浮くように装着される。が、それがISの強化を終える役目をした。
「っ……!?」
クラリッサと女性隊員達、地上にいる男性隊員達も戦慄した。それは、一也を見たからである。一也の、否、彼はISを纏っているがISは違う。
そのISは黒く禍々しい。が、背中にはコウモリの両翼、両肩には二門の砲身が備えられている。身体には紅い魔方陣が画かれているが血が滴り落ちているが不気味とも思えた。そして、戦慄させるにも充分過ぎる物であった。
誰もが驚く中、一番驚いている者がいた。一也である。彼は自分の両手を見る。
「……これは……!?」
彼は両手や身体を見る。ISが変わった事に驚いていた。否、専用機持ちとなってからは日が浅いからだ。ISの性能を良く知らないのも無理は無いが驚きを隠せないでいる。
しかし、これだけは理解出来る。パワーアップした、それだけは判断出来る。彼は驚く中、周りを見る。周りは驚いているが無理も無い。が、一也は眉間に皺を寄せると、歯を食い縛ると。
「……再戦だ」
一也はそう言った。が、さっきの逆襲という意味でもあった。周りもそれに気づくが構える。危険を感じながらも逃げる素振りは無い、襲撃者を逃がさない意味でもあるからだ。
そして、第二回戦の始まりを告げる。それは一也の晴れ舞台かつ、軍人達の終焉を意味しているようにも思えた……。
「……ちっ」
そんな彼を建物の窓から見ていた一夏は舌打ちした。彼がパワーアップした事に怒りを感じているからだ。あれは夢見一彦よりも更にタチが悪い……そう思ったからだ。
あの男の名前は、まだ知らない。が、脅威になる事は知った。
「……!?」
刹那、一夏は後ろから気配を感じ、同時に鐘の音に反応し、素早く屈む。更に刹那、何かが彼の頭を横切る。髪を切る事は無かったが一夏は頭上に違和感を覚え、舌打ちすると直ぐに風のように消えた。
そして、彼はその場から少し離れた場所で風のように現れる。彼は屈んだままではない。立ち上がっている。しかし、彼は眉間に皺を寄せる。
彼の視線の先には、一人の体格の良い男がいたからだ。しかし、頭部や全身が包帯だらけかつ血に染まっている。縫い合わせたような布を身に着けている。手には少し真っ赤な人間の頭蓋骨と脊髄を加工した物を持っている。否、武器とも言えた。
それだけでも、否、不気味な男でもあった。
「誰だ……!」
一夏はそう訊ねる。しかし、男は何も言わない。が、彼は壱夏の問いに何も言わず、姿を消した。一夏は舌打ちする。消えた……それだけは理解出来るが近くにいる事だけは判断出来る。
一夏は辺りを警戒する。刹那、一夏はIS、ジャック・ザ・リッパーを左腕だけ展開した。が、鐘の音が耳に響く。一夏は後ろからと気づき、振り返る。刹那、何かのぶつかる音がした。
それは、一夏のISと謎の男の武器がぶつかった音でもある。そして、一夏の前にはさっきの大男がいた。大男は彼を殺そうとしていた。
その証拠に、武器を持っている手に力を入れていた。それだけでも、一夏を殺害する事を物語っていた。
「貴様……!」
一夏は大男を睨みながら舌打ちする。鍔競り合う音がしたがそれは窓の外から何度も轟く爆発音に掻き消されていた……。
そして、ドイツの夜明けは、まだ来ない……。