インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「タアッ!」
数分後、一夏は全身包帯姿と縫い合わされている布を被っている大男と戦っていた。一進一退の後方であったが不利である事に変わりは無かった。
が、一夏は何とか抗おうとしてランスを展開していたが、大男目掛けて突く。が、大男はそれを軽くいなすと、姿を消す。一夏は眉を顰めるとランスを身構える。
敵は近くにいる、それだけは気づいていた。逃げたという線も濃厚であるがそれは無い。見られたか、或いは自分を抹殺する為に……刹那、一夏は横から鐘の音と気配を感じ風のように消えた。
刹那、一夏が消えた直後に、大男の武器が振り下ろされる。間一髪とも言えるが一夏は鐘の音に反応したからだ。当の本人である一夏は大男の少し離れた場所へと移動した後、風のよう現れると、ランスを持ちながら構える。
その間に大男は武器を軽く下ろすと、一夏を見る。不気味としか思えなかったが一夏はジェイソンを何時も見ている為に気にもしていない。反面、あの大男が何者なのかを気にし、警戒している。
何の理由で自分に迫り、殺そうとしたのか、と。一夏は味方ではないと気づいていた。コミニュケーションは取るどころか、それさえも出来るかどうかも怪しいのだ。
相手は何も言わない。それだけでも、警戒している。一夏はそう考えている中、大男は突然、姿を消した。
「……!」
一夏は更に構える。今度は何所から来るのか、そう思った。相手は気配を消すが鐘の悪露まで消せない。音が鳴ったら何時でも臨戦態勢に望めるようにする為でもあった。
彼は大男が何所から来るのかを警戒する。いざという時はジェイソンを呼ぶ事が出来る。彼は中国政府の役人を惨殺したばかりであるが心強い存在だ。
彼ならあの大男と対等に渡り合える。そう思っていた。
「…………」
しかし、大男は攻めて来る気配はない、一夏は舌打ちした。まさか、逃げたのか? と。それが本当ならば腰抜けとしか言いようが無い。同時に彼が何者なのかも気になる。
奴の目的は愚か、自分には目的があった。が、窓の外から轟音が響く。一夏は視線を窓の方へと向けた。戦渦が広がっているのは誰の目から見ても明らかだ。
しかし、あれは自分とは別のプレイヤーが起こした物である。自分を殺しにきた事だけは明白であるが生憎、自分は彼と戦っている暇はない、自分はレクター博士が推した。右腕を造れる存在に関する資料を探しにきたのだ。
それを良い意味で裏切ったのは彼だ。彼は何所からISを調達してきたのかは判らない。判るとすれば、脅威という事だ。が、一夏は何かを思ったのか舌打ちすると、風のように消えた。
最早、此処には用はない、資料は別の意味で今度探すしか無いと感じたからだ。今はこの状況から退いた方が良い、即断でもあるが懸命な判断でもあるだろう……。
「アァっ!」
その頃、軍事基地内は激しい音と多数の悲鳴が木霊する。それはISを纏っている女性隊員達と地上にいる男性隊員達の物である。彼女等、彼等が戦っているのはISを纏っている一也だ。
相手は一人であるにも拘らず、苦戦を強いられていた。さっきまでの善戦が嘘のようにだが相手がパワーアップした事が原因でもある。その後で戦況を覆させられたのだ。
彼のISは並の、否、それ以上に強大となっている。軍人である彼女等、彼等には歯が立たない。
「くたばれ……!」
一也は両肩にある二門の戦車の砲身を一機のISへと向けながらそう呟く。刹那、砲口から砲弾が放たれ、ISへと突き進む。
「っ!?」
女性は慌てて躱すが、砲弾は彼女の横を通り過ぎると、そのまま奥へと消えて行った。が、それは女性にとって負の連鎖でしかなかった。一也はそれを狙っていたのだ。
刹那、一也は瞬時に加速した。それは、女性の気を逸らさせる意味でもあったからだ。彼が止まったのは、女性の直ぐ間近、否、目の前であった。
「あぁっ!」
女性は驚くが、彼は無言で両肩にある砲身の砲口を女性へと向ける。刹那、轟音が二人の間に響き渡る。更には爆発した。これには周りも驚くが煙も発生し、それは二人を包んでいる。
が、煙の中から追い出される意味で女性が出てきた。彼女は気を失っている。ISからは火花が飛び散っている。そして、地上へと落下していく。
「しまった! 誰か救援に行け!」
クラリッサが近くにいる者達に叫んだ。すると、近くにいた別のISを纏っている女性が「はい!」と応えると落下していく女性を、仲間を助けに向かった。
しかし、さっきやられたのが五機目である。数分も経たない内に四機も撃墜されていた。地上にいる男性隊員達もほぼ全滅している。多くの死傷者を出している。
砲弾により、更には巻き込まれたからだ。クラリッサはそれを見て下唇を噛む。惨い、酷い、と感じていた。今までに無い、凄惨な事態となっている。
相手はたった一機にも関わらず、男性操縦者にも関わらず、数百の隊員は多くの死傷者を出し、ドイツが誇る多くの兵器を破壊したのだ。深夜でもあったからだが彼女は戦慄を感じていた。怒りさえも込み上げてくる。
自分達が何をしたのか? そう思ったが彼女は煙を見る。それは徐々に消えて行くが……。
「なっ!?」
クラリッサは目を見開いた。煙は微かに残っている中、彼はいなかったのだ。さっきまでいたのが嘘のようにだ。彼女は辺りを見回す。
「何所だ!?」
クラリッサはそう言いながら叫ぶ。周りも彼女の言葉に反応するが捜している。すると、一人のISを纏っている女性隊員がISで探知する。が……。
「は、反応はありません!」
「何だと!?」
彼女の言葉にクラリッサは驚きを隠せない。同時に周りも驚きを隠せないが女性隊員は言葉を続ける。
「範囲を拡大し、更には不審なISを捜しているのですが私達以外、反応はありません!」
女性隊員の言葉にクラリッサは目を見開く。自分達以外、誰もいない? それはクラリッサ達には驚きしかなかった。ISは、微弱でありながらもそれにも反応する筈。
それが出来ないのは可笑しいとしか言いようが無かった。ISが壊れている訳ではない、何時も点検しており、何時でも戦闘に参加出来るようにだ。
万全な状態のISから逃げる事は出来ないのだ。範囲外から出たのなら兎も角、直ぐ間近にいるのに逃げる事は出来ない。クラリッサを含む女性隊員達は皆そう思っていた。
が、一也はそれを難なくやってのけた。驚愕としかいいようがないが未知の敵でもあるからだろう。否、彼女達がそう思っているだけである。
何故なら、一也は逃げたのではない、彼は突如、現れたのだ。クラリッサの真後ろへと。
「お姉さ……!」
クラリッサの近くにいた女性隊員が叫ぶ。が、クラリッサは驚きながら振りかえようとした。時既に遅しであった……。一也は険しい表情のまま無言で砲口をクラリッサへと向けると……。
刹那、砲弾が放たれ、轟音が響く。爆発も起きた。
「お姉様ーーーーっ!!!」
女性隊員達が叫ぶ。クラリッサの身に何が起きたのかは一目瞭然であった。同時に彼女は周りのISを纏っている女性隊員達に慕われているからだ。
理由はあるが今はそれどころではない、周りはクラリッサがやられたと思っているからだ。それは恐怖、それは戦慄、それはリーダーを喪った瞬間を目撃したのと、戸惑いでしかないからだ。
爆発は一瞬で終わったが煙も発生しており、周りをも巻き込んだ……。
「ああっ!!」
「うぐっ!!」
女性隊員達は煙に巻き込まれ怯む。しかしそれは、敗北を意味していた……。
「…………」
そんな中、軍事基地内を見渡せる屋上では一人の大男がいた。全身が包帯姿の男であった。彼は上空を静かに眺めているが何を考えているのかは誰にも解らない。
が、解るとすれば彼自身、何かを思っているかだろう。上空は煙で覆われている、地上も兵士達の屍の山とは生かされた戦車と戦闘機の破片の山。何方も山であるがドイツ軍から見れば良くない物だろう。
しかし、大男から見れば関係ない事だろう。事実とは言え、尚更タチが悪い。
「……!」
刹那、大男は何かに反応した。近くから子守唄が聴こえたからだ。大男は辺りを見渡すが何かを思う。否、呼ばれているとこに気づき、そして反応したからだ。
大男は子守唄を静かに聴いた後、姿を消した。呼ばれた、からだ。
同時に一也も一夏を捜す為に暴れ続けていたがいなくなるのも時間の問題だろう。そして……ドイツ軍は一夏が元凶とも言え、一也一人により壊滅的な打撃を受けた。
それはドイツと言う国に戦慄や恐怖に陥れるのには充分過ぎる出来事であった……。