インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第137話

「…………」

 

 その頃、一夏は日本にあるIS学園近くにある学生寮の自分と楯無の部屋に戻っていた。が、室内には彼女は居ない。その代わり、幼女、一美が居た。

 

「あっ……」

 

 一美はベッドの上で枕を抱き締めながら座っていたが一夏が戻ってきた事に気付き驚いていた。一方で彼女を見た彼は眉を顰める。

 

「……何故、此処に居る?」

 

 一夏は一美がいる事に不信感を抱いている。別に居るなとは言ってないが彼女が何時も居るとは限らない。それに彼女は、自分と楯無がいる、この部屋を実家のようにも思っているのだ。

 彼女がいるだけで、大きな騒ぎになる。同時に彼女がいるだけでも家族だと誤解される。自分が父親で、楯無が母親、一美が長女……が、一夏は首を左右に振る。脳裏に過った、自分達が家族の場合の妄想や幻想を払おうとしていた。

 有り得ない、それは有り得ない、と。楯無が自分の生涯の伴侶等納得いかないのと、それを認めるつもりも無いからだ。一夏は舌打ちした。何故そんな事を考えたのだろうか? 一美の存在が自分に何かを考えさせようとしていると、勝手に思ってしまった。

 彼女が悪い訳ではないが一応、同盟と言う名で手を組んでいる。何か遭った場合……大抵は裏切り行為を起こした場合は殺す。一夏はそう考え、自分にそう言い聞かせている。

 幼女とは言え、情けは無用。殺すか殺されるかの立場だからだ。一夏は一美を無言で見ているが彼女は一夏の視線に驚き、怯えている。良い印象は無い、それだけでも、幼女である彼女でも理解出来る。

 一美は一夏の視線に何も言えない中、一夏は溜息を漏らす。

 

「……それよりも、あの人形共は?」

「えっ……チャッキー達の事?」

「……そうだ。あの人形達はどうした?」

 

 一夏は一美に訊ねる。彼の言うように、あの人形達だ。一美の引き連れている二体の人形だからだ。自分には好感を抱いていないのは彼等の行動や嫌悪感だけでも判断出来る。

 勿論、彼も人形達は嫌いだ。敵同士である事に変わりは無い。が、一美の存在が彼等の間を取り持つ立場にもなっているからだ。彼の話を聞くのは彼女であり、人形達に言うのも彼女だ。

 彼女がいない限り、同盟は破棄されていたのだろう。一夏はそう気付くが完全に信頼した訳ではない為、そう思考を走らせたに過ぎない。

 

「……ふ、二人は玩具屋さんで待機している」

「玩具屋だと?」

 

 一夏の言葉に一美は頷く。

 

「う、うん……い、一応言っとくね、わ、私達が拠点にしている場所は玩具屋なの……」

「そうか……」

 

 一夏は納得するが不意に思考を走らせる。この娘と奴等の拠点が玩具屋である事に驚きはしないが納得出来る。あの人形達の事だからだ玩具屋ではないかと思ったからだ。

 シュールと言うのか、或いは何かの理由で……刹那、一夏は何かに気づき、一美に訊ねた。

 

「そう言えばお前、何故プレイヤーになった?」

「えっ……?」

 

 一夏の言葉に一美は目を見開く。が、一夏は一美に訊ねていた。彼女の生い立ちではなく、彼女がプレイヤーになった経緯を知りたいからだ。

 ドイツ軍の基地で起きた事、一也が主催者に教えられたISを手に入れ、更にはパワーアップした事。他の大男、殺人鬼らしき存在の事もあるが今は一美の事を知るのが先であった。

 生憎、今は平日なのか生徒は全員、学園で授業を受けている。楯無も例外ではないが一応、此処には自分と一美のゲーム関係者しかいない。他の者達に訊かれたらそれこそややこしいがチャンスでもある。

 この前訊けたのだが誰かが来る事も予想したからだ。今は正午前でもあるから大丈夫だろうと安心はしているが、警戒もしている。一夏はそう考えている中、一美は一夏の言葉のせいか、哀しそうに項垂れる。

 余程の訳があるのかもしれない。が、一夏には関係ない。彼は楓一美という幼女を正体を知りたいのだ。理由が何であれ、知るチャンスでもあるのだ。

 

「……応えろ、それ相応の理由ならば兎も角、俺が納得するような事なら俺は何も言わない……」

「…………」

「無論、俺はお前が何者であろうが関係ない。が、互いの素姓も知らないようでは、互いを信頼出来るとは思えない」

「…………」

「あの時言わなかったのも無駄な時間もそうだが、あの時は独断でもあるが、他に関係ない奴等がいたからだ、が、今は俺達しかいない。お前が言わない限り、何も始まらない。同時にお前は近い内に脱落する、自らの迷いで身を滅ぼす」

 

 一夏一美に対して淡々と語る。説得とも言えるが一美の正体を知りたいが故だ。彼女が何者で、何の為に参加したのかを、だ。

 

「…………言わなきゃ、ダメ?」

 

 すると、彼の言葉に一美は反応するかのように呟いた。一夏はそれを聞き逃さないが深く頷く。

 

「ああ、言わなければ、お前の為にもならない。ましてや同盟は破棄だ」

「……っ……」

 

 一夏の言葉に一美は辛そうに顔を上げる。表情はあまり辛そうには見えないが彼女は困惑しているのだろう。知られたくないと言う幼子の我が儘か、或いは知るのを恐れているのかは判らない。

 一夏から見れば関係ないが彼は一美の言葉を静かに待つ。ここから先は彼女が言うべき事だ。彼女の過去を知っている訳ではないのと、過去を知っているのか彼女自身だからだ。

 彼はそう考えているが一美は一瞬だけ戸惑うと、何かを思うように頷いた。

 

「……言うね」

 

 刹那、彼女はそう言った。戸惑いがあるが一夏に言わなければ同盟は破棄される。脱落する恐怖と他のプレイヤーへの恐怖、それに一夏に畏怖しているからだろう。彼女の言葉に一夏は何も言わない。

 彼女の過去話を静かに聞くだけであるからだ。一方で一美は深く頷くと、一夏を見ながら口を開いた。全てを話すつもりであった。が、それは一美自身に関わる事であるが、幼女は静かに語りだした。

 

 

 

 

「……成る程、貴様、本来はプレイヤーではなかった、のか?」

 

 数分後、一夏は一美から彼女自身の事を聞いて、納得していた。同時に呆れてもいた。何故なら、一美はプレイヤーではなかったからだ。否、元々はプレイヤー関係者であったからだ。

 彼女の、否、一美の前のプレイヤーは一美の父であった。チャッキーとティファニーを引き連れているのは一美の父であり、プレイヤーだったのだ。

 しかし、その父は一ヶ月前に交通事故に遭って帰らぬ人となり、プレイヤーではなくなったのだ。その為、急遽、別のプレイヤーを選ぶ事にしたのだ。それは楓一美、四歳の幼女だ。

 彼女は亡くなった父の娘と言う理由で選ばれたのだ。そして、それを選んだのは。

 

「まさか……あの野郎がな?」

 

 一夏は呆れながらも、ある人物を思い出す。それは、このゲームの管理を任されている主催者であった。彼は一美を選んだのは良い物の、身内であるからでもあり、ゲームを面白くするのと、彼女なら面白くなると言う理由でも選んだからだ。

 

「……パパと私はママに捨てられた。それにパパはママ……ううん、パパはあの人を憎むようになった……」

 

 一美はそう言った後、辛そうに俯く。身体を震わせているが辛いのだ。

 

「パパはママや、他の女性達に復讐する為にプレイヤーになった。でも……でも」

 

 刹那、一美は嗚咽を上げる。父親が死んだ事と独りぽっちになった事で哀しいと感じているからだ。四歳とは言え、親の愛情がまだ欲しい年頃だ。

 彼女から見ればだが、一夏から見ればどうって事ないだろう。

 

「私はパパを生き返らせたい……! パパは私の為に、うぐっ、自分を、えぐっ、犠牲にしていた……」

 

 一美は泣きながら言葉を続ける。彼女は気づいていたのだ。が、一夏は直ぐに気づいた。女性とは恐らく、女尊男卑主義者達だろう。彼女達はISの影響で人が変わったのだ。

 それは全世界にいる女性全てとは言えないがその所為で多くの男性とそれに染まっていない女性達が哀しんでいる。一夏はそれに気づいているが、まさか、自分の他にもその理由で復讐者になり、主催者に目を付けられたのは想定外であった。

 しかし、自分達だけではない事には気づいているが一夏はそれを言おうとはしない。同時に腸が煮え返る思いで一杯だった。やはりソイツ等が全てを変えた。多くの腐った人間が蔓延る原因でもあると気づいていた。

 否、全ての元凶はISが開発されたからだ。あの兵器のせいで自分の人生は変わった。普通の生活をしたかったのに、それを全て変えてしまったのは、ISと言う最悪な兵器であると、改めて知った。

 一夏はISは愚か、束や女尊男卑主義者達、更には腐った人間達に怒りを覚える。最初からあったとは言え、赦せないと思っていた。近くには一美が嗚咽を上げているが父を喪った哀しみを吐き出し、再び逢いたいと言う願望を吐き出す意味でも泣いていると知った。

 が、一夏は一美を慰める気配はない。が、ISを憎み、腐った人間達に再び憎悪を抱いている。

 片方はISを憎み、もう片方はISのせいで哀しんでいる。何方も同盟しているが、何方も敵対している。しかし、ISのせいで人生をめちゃくちゃにされた事には共通しているだろう……。

 そして、一美が泣き終えるまで、室内には彼女の泣く声が木霊し続けていた……。

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