インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「夢見……貴様!」
一夏は顔を引き攣らせつつ歯を食い縛りながら、自分と一美を見てニッコリと笑う青年、一彦を睨む。一美は自分の後ろに隠れているが怯えている。
一彦は笑みを崩さないが一夏は腹が立ってくるのを感じた。あの笑みが余計にイライラする。同時にあの時の事が鮮明かつ、昨日のように思えるのだ。
一夏はそれに気づきながらも自分を抑える気はない。彼は一彦を倒そうとし、IS、ジャック・ザ・リッパーの主要武器であるナイフを展開する。
「おっと、僕は君と戦いにきたんじゃないよ?」
一彦は一夏の行動にキョトンとするが、一夏はナイフを構えながら舌打ちする。彼の言葉が彼を制止させていたのだ。同時に疑問や不信感を抱かせる。
一夏は一彦の言葉に警戒するが一美は怯え続けている。何方も互いが的である事を認識しているが第三者である彼も的である事を認識している。
彼が何の為に此処に来たのかは判らない。自分達を倒す事ならまだしも、話し合いにきたとは思えないからだ。一夏は一度敗北を味わった相手に対して怒りと憎しみを抱き、一美は畏怖している。
二人は一彦に対してそれぞれの感情があるが当の本人、一彦は軽く笑う。
「本当だよ? 僕は君達と戦いにきた訳じゃないよ?」
「……だったら何故、俺達の前に姿を現した?」
一夏が聞き返すと、一彦は仰ぎながら右手の人差し指を顎に当てる。考えている、そう言った仕草でもあった。一夏は更に睨むが歯を食い縛っている。
が、一彦に警戒しながらも彼は動けないでいた。戦えるのは兎も角、右腕が無いのは兎も角、騒ぎを起こせないでいる。騒ぎになれば学園に襲撃者が現れる事になる。
それは学園に大きな打撃を与え、全世界かバッシングを喰らうからだ。そうなれば自分は愚か、他のプレイヤー達に命を狙われる危険もあるからだ。
学園は色んなことで対応に追われており、これ以上の事に対処しきれない。楯無や簪の事もあるが学園にいる間は自分は動けない。調べ事で離れている間は、此処を離れる事は出来ない。
奴等は一度、現に攻めてきている。それは学園その物に危機感を抱いていないからだ。ISと言う強力な武器を持っていないからだ。が、一彦はISを持っている。少し後に一也も主催者の教えにより、ISを手に入れた。
何方も現段階での危険視しているプレイヤー達でもある。が、一夏はその内の一人、一彦を警戒する中、一美は怯え続けている中、一彦は何かを考え事をしている。
刹那、一彦は何かを思うように微笑みながら頷くと、口を開いた。
「勿論、君達に良い事を教えようと思ってね?」
彼の言葉に一夏は舌打ちし、一美は更に怯える。が、警戒している為でもあるが一彦は何か良からぬ事を考えている、そう感じたのだ。一夏はゲームを制するが為であり、一美は幼いながらも女の勘でだった。
が、一彦はそれを教えた。
「僕達は……もうすぐ、大きな事を起こすよ?」
刹那、二人の間に電流が走る。一彦の言葉が彼等の間に驚愕や戦慄を走らせるのだった。一彦が何かをする? それは二人にとって警戒しか無いのだ。
しかし、それは一彦にしか判らない。彼が何をするのか、何の為に問題を起こすのかも知らない。が、一彦は笑いながら先を続ける。
「僕達は六日後、日本全土に大きな衝撃を走らせる。それは僕が考えた壮大な計画かつ、偉大な計画」
一彦はそう言いながら空を指差す。
「それには多くの生贄が必要。それは大きな衝撃かつ、悲哀に憎悪、悪報、憤怒でしかなく、同情も無い……」
一彦はそう言いながら一夏達を指差す。ウィンクしたが一夏達はそれを咎める様子も無く、言い返す気もない。彼の行動が不気味かつ、不信感を募らせているのだ。
しかし、一彦は更に言葉を続ける。
「勿論、僕が殺すべき奴等は同情の余地もなく、生きる価値もない……けど、織斑一夏、君は同情しないみたいだし?」
「……何だと?
」
一彦の言葉に一夏は眉を顰める。一彦が自分は同情しない? それはどう言う意味なのかを一夏は判断出来ない。奴等は自分さえも同情しない存在? 生きる価値がないと思う存在? それは一体誰の事を言っているのかは一夏は理解出来ないでいた。
しかし、それを知っているのは一彦である、計画を考えたのは、実行するのは彼なのだ。が、一彦は何を言っているのだ? 一夏は一彦に対して不信感を更に募らせる中、彼はクスッと笑う。
「勿論、君自身がどう行動しようが僕は干渉するつもりも無い。君が、否、君達が僕を止めるか止めないかは自由だ。僕を止める事が来出るのは、僕と同じ君達プレイヤーだけ」
「……止める……私達が?」
一彦の言葉に一美は答えた。そんな彼女の言葉に一彦は頷く。
「そうだよ? それに僕はソイツ等に怒りを沸かせるし……何より」
一彦は一夏を見ると、ニヤリと笑う。
「君はあの事件を何よりも気にしているんだよね? 青年の変死事件」
「…………」
一彦の言葉に一夏は無言で彼を見ていた。が、彼の言葉に少し動揺したのだ。あの事件は知っている。あれは戦慄かつ、恐怖でしかないのだ。
あれは世間からは見ればだが一夏はあの事件を気にしている。同時に自分が調べようとしたが更識家に邪魔をされ、尚且つ、動きを監視されているからだ。
しかし、彼が気になるのはもう一つ、女子生徒の自殺した事件も気になっているのだ。が、一彦は何故それを知っているのかを気にしている。
奴は何の為に自分達に接してきたのか、何の為に計画を教えてのかを気にしている。そんな彼の考えを一彦は気づいたように笑う。
「勿論、あの事件はある事件に繋がっている……それも胸糞悪く、泣き寝入りするような事件」
「……何を言ってる?」
「う〜〜ん、僕は君に重要な事を教えたんだけどな〜〜まあ、君もまた、あの事件を知るにはチャンスでもあるんだよ?」
「……つまりどう言う事だ? それにお前は何故、自分が考えた事を俺達に教える? 何の得にもならない事を?」
一夏は一彦に訊ねる。その内容は彼の行動と計画を教えてきた事だ。それは守秘義務にも等しく、教える方は自殺行為にも等しいのだ。その計画を自分達は止める事が出来るのかを賭けているようにも思える。
彼は何が目的なのかを一夏は気にする。が、一彦はそれを応える。
「そうだね……愉しむ事かな?」
「愉しむ?」
一彦は頷くと彼等に背を向け、両手を横に広げる。
「僕は愉しみたいんだ、このゲームを、命を賭けるゲームを」
「……それがお前の目的か?」
「そうだよ? 僕はゲームを愉しみたい。その為には多くの人が殺す事を赦されるこのゲームを……ね?」
「……計画は何の為に俺達に?」
一彦は両手を後ろの腰に当てると、彼等と向き合うように身を翻す。表情は喜びその物であった。笑顔であったのだ。不気味としか思えないが彼の性格でもあるのと、怒りや恐怖、哀しみと言った感情がないようにも思える。
しかし、それは一夏と正反対のようにも思えるが当の本人達はそれに気づいていない。それでも一彦は先を続ける。
「僕と賭け事をして欲しいんだ」
「……それだけか?」
「うん。僕は誰かに計画を止めて欲しいと思う。でも、君達の自由だと言ったでしょう? 君達が止めるかどうかは君達次第だし、それにゲーム自体の、生き残りとかもそうだけど、僕はそれに興味は無い」
一彦は空を仰ぐ。空は青くなり始めているが時間が少し経っている事を意味していた。それでも彼は話を続ける。
「僕は愉しむ。それだけ……君達と何れ本当の殺し合いが来るまで、愉しむ……」
一彦は彼等を見る。彼等は彼の行動に驚きはしないが警戒する。
「僕のやる事は狂っているようにも思えるけど、僕は腐った塵共を掃除する。でも、塵芥の山にもなるけど、骨だけは残るけど僕は気にもしない……ソイツ等を一人残らず……ううん、ゲームで脱落するまでの間、ね? ……バイバイ〜〜」
一彦は二人に対して笑顔で手を振る。刹那、彼は風のように消えた。が、彼は既に其処から離れていた。話しにきただけである事は本当であった。
「……ちっ」
一夏は舌打ちした。それに気づいたからだ。が、一彦の目的とその計画に疑問を感じていた。自分に関する事? それは何かまでは判断出来なかった。
一彦は何をするのだろうか? それだけが心残りであった。一夏はその事に気づくがISを解除すると、一美を見る。彼女は一夏を見て怯えるが一夏は何も言わず溜め息を吐くと、不意にある方角を見る。
そこは太陽があった。昇り始めているがそれは一日の始まりを告げる意味にも近いだろう。しかし、六日後が気になる。一彦は何をするのかはそれだけが気になるのだった。
しかし、彼を止められるのは一夏と一美だけである事を、二人は知らない……。