インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第147話

「……困ったわね」

 

 あれから数時間後、此処は生徒会室。そこには楯無と布仏姉妹、一夏の四人が居た。が、室内は今、重苦しい空気に包まれていた。理由は簡単、ジェイソンがアリーナに現れ、そしてそれが原因で学園は警察や政府が依頼したSPの監視の元で過ごす事になったのだ。

 何れも全員、女性であるが女子校である事も配慮した事でもある。これには学園側も文句を言われないが苦渋の決断でもあり、今の所で言う、最善な決断でもある。

 楯無達が此処にいるのは生徒会の面々と、部外者でもある一夏は従者である事から、此処にいる事を楯無の許可の元、赦されたのだ。

 しかし、楯無は頭を抱えていた。ジェイソンが多くの生徒に目撃された事にだ。あれは一夏の部下でもあるが独断で動くような者ではない。否、簪の時に現れたから矛盾しているだろう。

 同時にある問題も抱えているのだ。それは……刹那、虚が訊ねる。

 

「お嬢様、あまり自分を責めないで下さい」

「そうだよ〜〜お嬢様が悪い訳じゃないよ〜〜」

 

 虚に続いて本音も彼女を慰める。生徒会のメンバーとしてではなく、従者としてでもない、親友として心配していた。一時の効果でしかないが楯無は哀しそうに微笑む。

 

「ありがとう……でも、一夏君」

 

 楯無は辛そうに彼に訊ねる。ジェイソンが来た事を訊こうとした。

 

「織斑君、貴方が奴を呼んだの?」

「……否、俺は奴を呼んでいない。それにあいつが何故、あそこに現れたのかは、俺にも判らない」

「そう……」

 

 楯無は更に頭を抱える。彼も知らない。それだけでも楯無は困惑と重い難題を突きつけられているようにも感じた。彼でも奴の行動が詠めない。

 自分も詠めないのはそうだが奴がまた、学園に現れたら問題となる。どうすれば良いのか? 楯無は解決策を見出そうと思考を巡らせる。結論は辿り着けなかった。

 やはり詠めない、そう思ったのだ。そんな彼女に一夏は舌打ちすると、答えた。

 

「兎に角後で、奴には訊ねてみる……それよりも」

 

 一夏は何かに気づき、訊ねた。

 

「それよりも何故俺達を呼んだ? 何か困った事でもあるのか? その件以外で?」

 

 一夏の言葉に楯無は何も応えない。彼の言葉に言い返す事が出来ない訳ではない、彼の言葉は正解にも近かったのだ。彼等を呼んだのは家の事ではない、ある事で呼んだからだ。

 それは重要な事であり、生徒会でも問題視される事だ。この面々もそうであるがそれを伝える為に呼んだのである。

 彼の言葉に周りは固唾を呑んで見据えている。彼女、楯無の言葉を待っているのだ。

 

「ええ……別な問題があるのよ……」

「別の問題?」

 

 虚が聞き返すと、楯無は頷くと、その事を周りに言う。

 

「ええ、実は一週間後に全学年のに生徒達全員参加の大きな行事があるのよ……」

「大きな行事……あっ」

 

 虚は何かに気づき声を上げる。本音、簪は虚に反応し、一夏は彼女を見る。すると、虚はそれを言った。

 

「確かそれって、全校生徒が実力を試される行事ですよね?」

「……ええ,でも、今年はルールが変わったのよ」

「えっ!?」

 

 楯無の言葉に虚は驚く。彼女は三年生であるが行事の事を楯無よりも良く知っているからだ。その行事とは、生徒達が学んだ事を発揮する為の、月末に行なわれる学年別トーナメント。

 一年は学んで間もないが二、三年は今までの知識と実力が試される場所でもある。特にそれには各国の大物が自分達が国から、この日本へと送った生徒達の実力を知り、次にスカウト出来る人材がいるかどうかも知るチャンスがあるからだ。

 知勇に富む者は将来を約束され、逆に乏しい者はダメであるのだ。

 が、ルールが変わったのは想定外かつ、驚愕としかない。どんなルールになるのか? 困惑しながらも訊いた。

 

「あ、あの、どんなルールですか?」

「……今度は、生徒達の二人一組みによるタッグマッチになったのよ……」

「タッグマッチ?」

 

 今度は一夏が答えた。楯無は彼の言葉を聞くと言葉を続ける。

 

「ええ、最近襲撃された事をIS委員会は重く受け止め、今後の対策としても、生徒達の安否を気にする意味でもタッグマッチをする事になった」

「待て。後者の言葉は明らかに可笑しい。生徒達で襲撃者を倒せと言うのか?」

 

 一夏は楯無の言葉に不信感を抱く。最近起きた事、それは襲撃者である事には気づいた。昼間と夜中に起きた事であるがIS委員会から見れば問題なのだろう。

 ISの存在を絶やす訳にもいかないのだろう。しかし、後者の意味は何なのか? 一夏はそれを楯無に指摘する。

 

「恐らく、襲撃者が来た際の対策か、それとも実戦に近い意味で戦闘させる為に二人一組みにするか……いえ、後者が正しいわね」

「……どう言う事だ?」

「……各国の大物政治家が来るからよ。それの意味でも時間を節約させる為かしらね?」

 

 楯無の言葉に一夏は舌打ちした。IS委員会は何を考えている? そう思ったのだ。襲撃者がまた来たらどうするのか? 生徒達だけでどうこう出来る相手かどうかも怪しいのと、政治家達にももしもの事があったらどうするのか、だ。

 専用気持ちなら兎も角、一般人でもある彼女等がどうこう出来る訳でもないのだ。一夏はその事で怒りもあり、呆れさえもあった。しかし、それが効果があるのかは誰にも判らないのと、再び事件が起こらないとは限らないのだ。

 一夏はIS委員会の思惑に困惑する中、本音はある事に気づく。

 

「それよりも、それはどうするの〜〜?」

 

 本音の言葉に周りは見やる。

 

「どうしたの本音?」

 

 虚が訊ねると、本音は答えた。

 

「どうしたって、オリムーは誰と組むの〜〜?」

「…………」

 

 本音の言葉に周りは吸い寄せられるように一夏を見やる。彼は眉を顰めているが困惑してはいない。逆に疑問を抱いているのだ。が、確かに彼が誰と組むのかまでは判断出来ない。

 と言うよりも、彼と組みたいと言う者はいるのだろうか? 否、無いに等しい。彼の性格上、更には誰も彼に話しかけられないからだ。恐怖の対象として見られているからだ。

 彼が誰と組むのかは誰にも判らないのだ。

 

「……それが何だ?」

 

 一夏は本音に訊ねると、本音は怯え、虚の後ろへと隠れる。

 

「だ、だってオリムー、誰と組みそうにも無いし……それに……う〜〜」

 

 本音は怯えながら虚の背中に顔を埋める。これには虚も困惑するが楯無が代わりに訊ねた。

 

「そう言えばそうね……織斑君、貴方、誰と組むの?」

 

 楯無は彼に訊いた。彼女も気になっているのだ。タッグマッチと言っても相棒が必要であるのだ。二人一組であるが彼の場合、誰が組むのかは誰にも判らないのと、彼が誰を推すのかも判らないのだ。

 しかし、楯無はもう一つ、ある問題を指摘した。それは辛くも、彼に尋ねる事が正解かも判らない。が、楯無は頷くと、その事を指摘した。

 

「それに織斑君……私、出来る事なら、貴方には辞退して欲しいの」

「……何故だ?」

 

 一夏は眉を顰める。布仏姉妹は楯無の言葉に驚くが楯無は辛くも哀しそうに言葉を続ける。

 

「織斑君……貴方、右腕のない状態で戦えるの? それに貴方と組む人は貴方を上手くサポート出来るの?」

 

 楯無は言葉を続ける。その口調には彼女自身の後悔が孕んでいた。彼は右腕を失っている。あの時、自分を守る為に未知の機体から庇い、代償として失ったのだ。

 それは謝っても、何度誤っても赦される事ではない。楯無はそれに気づきながらもそれを訊ねるのは少し躊躇していた。出来る事なら言いたく無かった、参加させたく無かった。

 しかし、彼を気遣う為にも、彼の命を守る為にも苦渋の決断でもあるのだ。楯無は一夏に対して辞退するよう勧める。布仏姉妹は固唾を呑んで見守っている。口を挟む事は出来ないと感じたからだ。

 一夏の怒りに触れたく無い、それが本音かつ、楯無と同じように一夏には辞退を勧めたい思いで一杯だった。彼女等は一夏に対してそう感じる中、当の本人である彼は何も言わない。

 が、静かに口を開いた。

 

「……断る」

 

 刹那、楯無と布仏姉妹は彼の言葉に身体を震わせる。予想していたとは言え、彼は否定した。彼は誰かに指図される事を嫌っている訳ではない。

 彼はある理由がない限り逆らう事はしないのだ。しかし、さっきの楯無のお願いは辞退を勧める事だが、一夏から見れば拒否しかないだろう。

 否、彼の場合は別の理由があるからだ。それは、彼自身が答えた。

 

「……俺は右腕がなくたって、戦える。それに左腕をも失っている訳ではない……」

「お、織斑君……!

 

 楯無は一夏の言葉に驚くが彼は身を翻すと、生徒会室を出ようとした。が、扉に手を伸ばした後、ふと足を止め、肩越しで彼女等を見る。全員困惑しているが一夏は言った。

 

「俺は一人でも戦う……相棒等、ISの相棒等、ジャックだけで充分だ」

 

 一夏はそう言った後、生徒会室を出た。室内には生徒会のメンバーしかいないが全員、一夏を心配している。

 

「織斑君……」

 

 楯無は一夏を心配し呟いた。が、それは彼には届いていない。そして彼は辞退する事を拒んだ。それは吉と出るか凶と出るか彼女等には判らない。

 そして、彼は誰特務かまでは判断出来ない。彼は誰とも組む気はない。が、彼は意外な人物と組む事を誰も知らない……。

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