インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第149話

「……お前と組む、だと?」

「ああ! 悪く無い話、だろ?」

 

 一夏の言葉に箒はぎこちない笑みを浮かべながら頷く。が、一夏は彼女を不審者を見る目で怪しんでいた。彼女と組む? それは一夏に摂って苦痛かつ、足手纏いでしかないのだ。

 理由は簡単、彼女のIS知識は皆無に等しい。擬音は愚か、IS=剣道のような試合感覚でしか見ていない。何方も競技としては試合は共通しているが操作は違う。

 剣道は竹刀を握りしめながら四肢をゆっくりと動かすだけ。逆にISは四肢全体は愚か空中で動くのだ。武器も多彩かつそれらを要とする。

 何方も天と地の差ともいえ、良い意味でも同じなのだ。天がIS、地が剣道、と言う意味でだ。一夏はそう考えているが箒は更に口を開く。

 

「私と組めば、優勝出来るのかもしれないのだ! お前の右腕は私が何とかフォローする! サポートする!」

 

 箒はそう言った後、一夏に詰め寄る。

 

「出来る事なら私を選んでくれ! 否、私を選ぶと言ってくれ! 頼む!」

 

 箒は一夏に懇願した。幼馴染みとしてではない、一人の想い人として彼の手助けをしたいのだ。反面、更識家に嫉妬さえもしている。彼は何時も彼女等といる。

 何故かは判らないが箒の心の中では嫉妬の炎が燃えていた。彼といるのは自分だけだ。我が儘でありながらも女性らしく嫉妬しているのもそうだ。

 箒は一夏のパートナーになりたいのだ。トーナメントの間とは言え、彼とは二人三脚で練習し、試合に臨みたいのだ。箒はそう考えていながらも一夏には鬱陶しいとしか思えなかった。

 彼は箒の言葉に返答する意味で口を開く。

 

「……断る」

「なっ!? な、何故だ!?」

 

 一夏の言葉に箒は納得いかず、更に詰め寄るが一夏は眉を顰めながら静かに怒る。

 

「莫迦かてめえは? パートナーにしても足手纏いになるだけだ」

「わ、私はお前を足手纏いだとも……」

「お前の事だ莫迦……!」

「なっ!?」

 

 箒は更に驚く。が、一夏は呆れながら左手を腰に当てる。

 

「俺はお前をパートナーと認めていない……否、それ以上に認める訳もないだろうが……!」

 

 一夏は箒に対して静かに怒る。理由は箒を嫌っている訳ではない、箒が邪魔かつ、妨害でしかないのだ。彼女と手を組んでも負けるのは目に見えている。

 量産機が相手なら兎も角、専用機持ちなら尚更不利になる。右腕があれば何とか対抗出来るが箒がリタイアしたらそこで二対一と言う不利な状況になる。

 トーナメントと言っても、所詮は道場の練習でもあるが彼は殺し合い、つまり野試合を幾度と無く熟して来た、勝利すれば敗北もした。しかし、トーナメントは道場の練習としか認識しておらず、更には参加する義務もあるが誰とも手を組む気はないのだ。

 他は兎も角、箒と組む事だけは絶対に避けたい。否、避ける方を選ぶ。

 

「篠ノ之、お前はISを剣道試合と思っているだろう……だが、それは違う」

「な、何がだ……っ!?」

 

 箒は一夏を見て怯える。彼の言葉には怒りが孕んでいる事に気づいていた。怒っている事にも気づいたのだがそれを咎める事や反論する気配もないのだ。

 彼を怯えながら見ている中、一夏は舌打ちした。

 

「お前はそれを共通としか思っていない……それにお前よりも強い奴は学園に……否、世界中にごまんといる。ソイツ等を全て相手にしても、お前は負ける……」

「い、一夏……な、何を……!?」

 

 箒は驚きつつも彼の言葉を待つ。拒絶だと言う事には気づいているが何故かそれを聞きたく無いと言う我が儘もあった。彼女は耳を塞ごうとしたが一夏は慈悲を与えず、畳み掛けるように言葉を続けた。

 

「俺は半人前、否、それ以下のお前とは組む気はない……真っ平ご免だ」

「っ!?」

 

 一夏の言葉に箒は目尻に涙を浮かべる。はっきりと耳にし、目撃したのだ。彼の自分へと向ける視線は冷ややかであり、言葉は拒絶その物だと言う事を理解したのだ。

 それを、哀しみを吐き出す意味でも涙を浮かべてしまった。が、一夏はそう言った後、部屋の中へと戻る意味で扉を閉めようとした。が、不意に彼女を見る。

 驚いているが身体を震わせ、項垂れる。嗚咽を上げるが一夏は口を開いた。

 

「お前は自らの力を過信している。それにお前は力を持っても何れ破滅する……持たぬ方が吉だ、身の為だ」

 

 一夏はそう言いながら扉を閉める。無情にも音が通路内に響き渡るが箒は、彼女は一夏の拒絶的な言葉を聞いて、泣いていた。涙は止まらず、何度拭っても溢れ出てくる。

 辛くも哀しい事実を突きつけられたのだ。箒はその事に気づくのは直ぐであるが箒は一夏の変わりように驚きつつも哀しかった……。

 

 

「…………」

 

 そんな中、一夏は部屋の中にいるが彼は扉の向こう側にいる箒の事を気にもしていなかった。彼は無言で舌打ちすると、部屋の奥へと歩く。

 

「……っ」

 

 刹那、一夏は突然、立ち眩みする。そして、膝を突くとそのまま俯せに倒れ、意識を遠退かせていった。否、さっきまでの、今までの疲れが一気に来たのが原因でもあるがそれは彼の意識を遠退かせる程でもあったのだった……。

 

 

『…………』

 

 ここは坑道の中。そこはとても暗く、壁にあるロウソクの灯りだけが頼りかつ、酸素も少ない。が、そこには二人の青年が居た。片方は一夏であった。

 しかし、もう片方は黒髪黒眼の眼鏡を掛けた青年。ラフな恰好であるが仰向けに倒れているが虫の息であった。目を強く閉じているが目尻には涙を浮かべている。激痛を感じているのだ、腹に。

 彼の腹には刺された後なのか血が滲み出ている。虫の息なのもそれが原因であるが死にかけている。手当てしても助かる見込みはない。

 が、そんな彼を一夏は冷ややかに見下ろしていた。助ける様子もない、彼は鶴嘴を手にしている。先端は血が付着しているが青年の物である。そして、青年を刺したのは彼、一夏である。

 

『…………』

 

 一夏は眼鏡を掛けた青年を無言で見た後、手にしている鶴嘴を両手でも持ち替えると、大きく振り上げた。そして、彼の頭上目掛けて振り下ろした……。

 

「……っ」

 

 あれから数時間後、此処は一夏と楯無の部屋。その部屋の一夏のベッドには彼が仰向けに寝ていた。が、彼は瞼を微かに動かすと目を覚ます。

 

「織斑君!」

 

 そんな中、近くから声が聴こえると共に彼の視界から一人の少女がベッドから身を乗り出すように彼の顔を見る。とても哀しそうであるが嬉しそうであった。

 しかし、彼女の言葉を聞いた一夏は目の前がぼやけている事に気づくが少女は誰かまでは判断出来た。

 

「……更識」

 

 一夏は目を擦るがゆっくりと起き上がる。

 

「起きちゃダメよ!」

 

 楯無は慌てて一夏を押さえるが彼は聞かずに上半身だけを起こす。

 

「此処は……俺は……」

 

 一夏は辺りを見渡す。そこは自分達の部屋である事には気づいていた。しかし、何故かそれ以前の事は思い出せなかった。否、思い出すと言えば……一夏は頭を抱える。

 自分は倒れた。そう気付いたのだ。どのくらい気を失っていたのかは自分にも判らない。それに自分は何故ベッドの上にいるかまでも判らないでいた。

 そんな彼を近くにいる楯無は心配そうに見ていたがそれを教えた。

 

「貴方、倒れていたのよ……!」

 

 楯無は一夏に教えた。実は楯無は部屋に戻った際、彼が倒れている事に気づいたのだ。彼女は一人で戻って来たのだが彼を見て驚くと共に彼をベッドに寝かせたのだ。

 そして彼が目覚めるまで、彼の手を握っていた……。楯無は一夏に事のあらましを一通り教えて後、一夏は彼女を見て何も言わない。が、一夏は辺りを見渡す。

 電気は点いていた。窓の外の空は暗くなっていた。壁に掛けられている時計は午後七時を回っていた。二、三時間も気を失っている事に気づいたのだ。

 一夏は部屋を一通り見渡した後

、軽く溜め息を漏らすと、俯く。近くから彼女の心配の声が聞こえるが彼は俯いていた。何故気を失ったのかを直ぐに理解したが相当疲れていた事も理解したのだ。

 今までの事もそうだが彼は舌打ちすると歯を食い縛る。

 

「……織斑君……」

 

 そんな彼に楯無は心配そうに見つめていた。彼女は一夏が倒れている事に驚いていたが疲れている事にも直ぐに気づいたのだ。彼は今まで無理をして来た。

 それは全て吐き出される意味と共に倒れたのだと。

 

「……っ」

 

 刹那、楯無は彼に抱き着く。これには一夏も眉を顰めながら顔を上げると、彼女に訊ねる。

 

「どういうつもりだ?」

 

 一夏は楯無の行動に気づくが楯無は彼の肩口に顔を埋めていた。が、一夏は何度も訊ねるが彼女からは返事はない。理由は楯無は一夏を心配しているが為でもあった。

 彼は今まで戦っていた。自分達を守る為に何度も命を削るような事をして来た。楯無はそれに気づくが呟いた。

 

「……少し、このままにさせて……」

「…………」

「お願い……お願い……!」

 

 楯無は一夏に懇願する。彼を慰める意味での行動でもあった。しかし、それは無駄に等しいが彼は何も言わなかった。同時に彼女の行動に呆れつつも静かに受け止めていた。

 一方で楯無は一夏に甘えるように抱き着いているが離れるまでの間、彼に抱き着いていた。

 そして、楯無が離れるまで、一夏はそこを動かなかった……。時間だけは過ぎていくが彼は無駄な時間を過ぎていくだけを気にしながらも動かなかった。

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