インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第15話

「「…………」」

 

 あれから数分後、ここは東京の某所の交差点。道路には沢山の車が行き来しているが大抵は仕事かドライブ、家族でお出かけする為に走らせている車も多少は見受けられた。

 そんな中、一台のタクシー。そのタクシーには一夏と楯無がいた。二人はタクシーの後頭部座席に座っていた。楯無はシートベルトを締めているが窓の外を見ており、一夏は無言で腕を組みながら瞑目している。

 何方もタクシーの中で何かをしている訳ではない。何方も会話をしている訳でもない。喧嘩している様にも思えるがどちらも互いの相手を警戒していた。

 先のモノレールでの件だ。楯無は一夏が只者ではないことに気付き、一夏は楯無のことを警戒している様には見えないが思考を走らせていた。

 さっき、楯無のせいで遮られたが今はチャンスと思い、思考を走らせていたのだ。彼が考えていることは勿論、他の殺人鬼達の事だろう。

 彼の考えている事は誰にも解らないが彼から見れば重大な事だろう。そんな彼に楯無は声をかけない。かければ更に警戒すると思っていたからだ。

 そんな二人の間に流れるのはピリピリとした空気だけだ。被害者は勿論、タクシーの持ち主であり、タクシーを運転している運転手だ。

 彼は四十代後半の中年の男性であり、彼はタクシーを運転しながらバックミラーで二人の様子を見ていたが表情は良くない。二人の様子が心配であるのと、重苦しい空気に耐えきれないでいた。

 男性はタクシー運転手である以前に様々な客が乗って来る事は珍しくもなく、彼も仕方ないと思っていた。しかし、運転手から見れば二人は恋人か友人関係ではないかと思っていた。

 にも関わらず、二人の間はギクシャクとしていた。喧嘩したのか? そう思っていたのだ。自分が話題を出そうにも更に悪化すれば、帰って彼等の関係を悪くするだけであった。 

 運転手は二人の様子を気にしながらもタクシーを走らせているが目的地に着くと言う本来のお仕事を忘れてはいない。刹那、タクシーは静かな住宅街へと入るように車を左折した。

 そこは物静かな場所であると言う意味で車は走っていない。タクシーはその場所をぶち壊す様な事をしているが仕方ないだろう。本来の仕事をこなしてしるからだ。

 

「お客さん方、目的地に着きますよ」

 

 運転手は後頭部座席に座る二人に尋ねた。楯無は反応するが一夏は無言で姿勢を崩さない。運転手は二人の反応に驚きはしなかったが一瞬だけ、解放されると言う安心感が込みわげて来るのを感じた。

 不謹慎であるが彼は早く、二人から解放されたいという想いが強かったのだ。そんな中、楯無は一夏に言う。

 

「織斑君、もうすぐ着くわ」

 

 楯無は一夏に言う。しかし、一夏は何故か反応を見せない。思考を走らせており、彼の耳には届いていない。そんな一夏に楯無は溜め息を吐いた。

 楯無だけではない、運転手もまた、この重苦しい空気から早く解放されたいと願っていた。すると、運転手は奥に何かが見える事に気付くと、少し走るとブレーキを踏む。

 タクシーは、とある場所の横に停まるが楯無は一夏の方を見る。否、彼の先を見ていた。見覚えのある大きな門。間違いない――自分の家だ。

 楯無はそれに気付くと、運転手に軽く感謝すると今度は一夏の方を見る。一夏は腕を組んだまま瞑目していた。これには楯無はしかめっ面になるが彼の肩に手を置く。

 

「織斑君、着いたわよ?」

 

 楯無は一夏の肩を揺らす。一夏は思考を走らせていたが目を開くと、視線を楯無の方へと向ける。彼女は少し哀しそうであるが何処か警戒している様にも思えた。

 一夏は楯無の様子に気付いたが視線を向かい側の方へと向ける。そこにま門があった。そこら辺の門とは違う様にも感じた。一夏は視線を上の方へと向けるがどこからどう見ても普通の家とは違う事にも気付いた。

 

「私の家よ、勿論、貴方を保護する名目としてもね」

「…………」

「先に降りて、私は運転手さんに会計をしてから降りるから」

 

 楯無は一夏に優しく問うが警戒を解いていない。一夏はそれに気付きながらも頷かずにタクシーの扉を開けると、タクシーから出た。

 

「……此所が、か」

 

 一夏は目の前の門を見上げる。とても大きな家であるがお城にあるような造りの門であった。左右には白い壁が広がっているが一夏は門を見続けている中、後ろからタクシーの走る音が聴こえた。音は徐々に遠くに行く様に小さくなっていくが一夏は気にもしなかった。

 同時に、一夏は突然、身体を回転させる。後ろには楯無がいたが一夏は彼女の後ろへと移動する様に回ると、彼女の腕を捻る。

 

「きゃっ!」

 

 楯無は一夏に腕を捻られるが一夏は無言で楯無を睨んでいた。が、一夏は楯無を無言で突き放す様に解放すると、腕を組む。

 

「おまえ……何故、俺の後ろに立った?」

「……うっ……ごめんなさい」

 

 楯無は腕の痛みを感じつつのも一夏を見ると答えた。

 

「ご、ごめんなさい……忘れていたわ」

 

 楯無は謝るが突然、門の開く音が聴こえた。一夏と楯無は門の方を見ると、門の向こう側から一人の少女がいた。一部が内側に跳ねている長い水色の髪に紅い瞳であるが眼鏡を掛けている。

 白い上着に水色のシャツ、白いスカートを穿いているが手には手提げ鞄を持っている。少女は一夏を見て少し驚いているが楯無を見るや否や顔を引き攣らせる。

 楯無には嫌悪を抱いている様にも思えた。一夏はそれに気付くが敢えて何も言わなかった。

 

「か、簪ちゃん? 何処に行くの?」

 

 楯無はその少女を簪を呼ぶが簪は楯無の問いに答えずにそのまま何処かへと行こうとしていた。

 

「ま、待って簪ちゃん!」

 

 楯無は簪の肩を掴むが簪は立ち止まるが振り返る――楯無を見ているがその目には憎悪が籠っている様にも思えた。

 簪の視線に楯無は「っ!?」と少し震える。彼女の見る目には憎悪が籠っている事に気付いた。否、彼女は自分の妹であるが楯無が姉としても情けなく感じる。

 簪は楯無には良い印象はなかった。それ以上に彼女達の間に何が遭ったのかは判らない。簪は楯無を睨む中、彼女の手を振り解く様に乱暴に身体を動かすと、そのまま何処かへと行くように歩く。

 

「か、簪ちゃん!!」

 

 楯無は簪を呼び止めようとするが簪は楯無の言葉に反応せず、そのまま何処かへと歩き去って行った。

 

「簪ちゃん……」

 

 そんな簪に楯無は彼女の名を呟く。彼女の後ろ姿がとても寂しい様にも感じていた。何故なら自分は妹である簪とは仲が拗れていた。幼い頃は仲良く遊んでいたが最近は――否、かなり前から仲が拗れていた。

 理由はある。それは家の仕来りと共に妹に酷い一言を言ってしまったからだ。そのせいでもあるが楯無は出来る事なら簪に謝りたかった。

 なのに、自分はそう言った事は出来なかった。妹に嫌われるという恐怖とその勇気がなかったからだ。出来る事なら謝りたいがいざとなると何故か出来なかった。

 楯無は簪への罪悪感がある中、一夏は楯無と簪のやり取りを黙ってみていた。助言する訳でもなく横槍を入れるつもりもなかった。しかし、同時に一夏は気付いた。

 楯無と簪は仲が悪い――それに気付いた。同時に楯無に対して何処か不信感をも抱き始める。彼女もまた、あの女と同じ姉のみでありながら身内に対して酷い事をした。

 一夏はそう気付いた。しかし、一夏は楯無が何故姉と判ったのかは楯無と簪が似ているのと、あのやり取りは姉妹としか思えなかったからだ。

 一夏は楯無から目を逸らすと「フン」と軽く軽蔑する様に言いながら肩を動かすが、楯無は何かに気付き我に返ると一夏の方を見る。

 

「ごめんなさい、あなたの事をすっかり忘れていたわ」

「…………」

 

 楯無は申し訳ない様に謝るが一夏は眉間に皺を寄せていた。

 

「……やっぱり気になるの? そうよ……彼女は簪ちゃん――私の妹よ」

「…………知るか」

 

 一夏の言葉に楯無は『っ!?」と下唇を噛む。簪を侮辱した様にも思えてしまった。別に一夏が気にする訳でもない。楯無は一夏に対して嫌悪しそうになるが彼は自分達とは赤の他人であり、部外者でもある。

 楯無は一夏に対して警戒だけでなく嫌悪を抱くが不意に簪の方を見る。簪は少し先まで歩いていたが後ろ姿が寂しく感じる様にも思えた。

 姉への憎しみを抱いている様にも思えたが楯無は「っ……」と再び下唇を噛むと俯く。

 悔しい――自分は妹とは仲を戻せないのか? そう感じていた。出来る事なら仲を戻したい。そう願っていた。

 

「簪ちゃん……」

 

 楯無は簪の名を呟きながら身体を震わせる。涙を流しそうになるが彼女は泣きたい気持ちを堪えていた。

 

(……馬鹿が……)

 

 そんな楯無を一夏は軽蔑する様に心の中で呟くが楯無に対して慰めの言葉をかけなかった。彼は門の向こうを見たがったが楯無の背中を見続ける。

 彼女の背中には哀愁漂うようにも感じていたが一夏は呆れて溜め息を吐いた。同時に早く楯無が気を取り直さない限り先が進めないと感じていた。

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