インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
あれから数日後、此処はIS学園のアリーナ。そこは今、否、今日は慌ただしくも警備が厳重な日でもあった。それは、学年別トーナメントと言う一大行事かつ重大な日でもあった。
それは、学園中の女子生徒達が今までの知勇を最大限に発揮させ、今日と言う日をどんなに待ちわび、どんなに心配しているのか、彼女等にしか判らない。
この日は多忙の中、僅かしかない休日か返上覚悟で祖国から日本へと赴いた各国の重鎮達が来客している。彼等の目的は我が国から、この日本と言う極東の島国へと送った者達の成長を見届ける為でもあった。
我が国に貢献する次世代達でもあるのだ。常世とも言えるが当たり前の事だろう。それだけでなく、観客席も満員であった。生徒達や女教師で溢れている。
しかし、教師の大半は未だ見ぬ者達ばかりであった。それは数日前に派遣された新任達。あの事件を受けて、大規模な入れ替えが起きたのだ。何れもISに関しては知識が豊富かつ、学園の卒業者達もいる。
同時に彼女等は女尊男卑主義者ではない。同時に入れ替えさせられた教師達は一からやり直し、中には教員免許を剥奪された者達もいるが誰も気にもしないだろう。気にすると言えば、身内くらいだろう……。
「うわ〜〜凄い」
「観客席も凄いけど、来客には各国のお偉いさんもいるわよ!?」
「今更だけど、この学園って凄いわよね〜〜」
そんな中、アリーナ内にあるロッカー室。そこにはISスーツを纏っている女子生徒達がモニターを観ている。映像には観客席が映し出されているが皆、同級生や先輩方、教師達や来客席には各国の重鎮達がいる。
観客席の生徒達は楽しそうかつ、警戒している。どんな闘いが起きるのかを待っている。各国の重鎮達は自分達が送った生徒達の成長振りを期待しているのだ。
各国には重鎮達がいる。が、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、アメリカと言った国からもそうであるが中国は未だ知らぬ者がいる。それはこの前の事件で大規模な入れ替えも起きたからであった。
そして、日本からは最近着任したばかりの総理が来ているが近くには秘書もいた。生徒達はテレビでしか観ていなかった者達が学園にいる事に驚くが、ある一人の制服を着た生徒がカメラを手にしながら答えた。
「それもそうよ? 自分達の国が如何に凄いのかを発揮したり、国の為に働くのかを試したりする行事だからね〜」
「「えっ?」」
その生徒の声に少女達は振り返る。蒼い瞳に茶色い長い髪を側面に纏めている。リボンの色は黄色であるが二年生であった。
「あっ、黛先輩」
生徒の一人が彼女の名字を言う。彼女の名は黛薫子、二年であり、整備科のエースにして新聞部の副部長かつ、楯無の親友。因みに彼女のパートナーは楯無であるが二年は一年が終わり次第に行なう為、制服を着ている。
彼女はカメラを手にしているが取材でもあるからだ。内容は簡単、一年の今の気持ちや自信を知る為でもある。彼女が此処にいるのもそれが理由であるが先輩として、行事の事を教えていた。
「まあ、卒業してからだけど私は彼等の仔細はどうだって良いし、私達は実力よりも今の事を集中したいからね」
「実力、ですか?」
女子生徒の言葉に彼女は頷く。
「そっ。私達はIS学園の生徒だけど、私達は私達なりの事を集中すれば良いよ?」
「そうですか……」
少女達は頷くが、ある一人が彼女にある事を訊ねる。
「でも、先輩は大丈夫なんですか?」
「何が?」
「先輩、生徒会長のパートナーですよね? それに不安はないのですか? 生徒会長のパートナーになっても?」
「大丈夫よ? 私は……」
薫子は微笑む。
「私はたっちゃんの脚を引っ張るつもりもないわ……それに、たっちゃんが全力で闘えるようにサポートーするから、ね?」
薫子はニッコリと微笑む。彼女は楯無の親友でもあるが彼女の為に闘うつもりである。腕に自信もあるが彼女は期待に応える自信もあるからだ。
そんな彼女に周りは彼女を見て微かに羨ましいと感じた。自分の為にではなく、親友の為に闘おうとしている。彼女は器が多きのかとも感じた。
「……でも、私はやる事があるのよ?」
薫子は不意に呟いた。これには少女達も「えっ?」と惚けてしまうが彼女はニッコリと微笑みながら手に持っているカメラを彼女達に向ける。
「私の取材に、応えてくれないかしら?」
薫子はそう言った。彼女が来たのは取材の為でもあり、彼女達を取材するのが目的でもあるからだ。これには周りも愕然とするが直ぐに苦笑いした。
勿論、薫子は記者として、新聞部の副部長として、それらを全て、新聞の特別記事にしようとするのは言うまでもなかった……。
「織斑さん……」
此処は観客席の、とある席。そこには簪と本音の二人がいた。二人は自分達の番が未だである事で少しの間、観客席にいる事になったのだ。
しかし、二人の表情は暗く、心配する面持ちであった。二人が心配しているのは彼、織斑一夏である。彼は周りの制止も聞かずに参加すると言い出したのだ。
楯無がどんなに切願しても、千冬がどんなにお願いしても彼は聞く耳を持たなかった。その結果、当日まで彼は辞退しなかった。同時に彼には不安があるのだ。
「織斑さん……誰と組むんだろう……?」
「判らない〜〜でも、あれがあるからね〜」
「うん……」
簪は不安そうに呟いた。彼は誰をパートナーにするのかは決めなかったからだ。周りは彼にお願いしても彼は拒んでいた。その為、彼は当日まで、パートナー不在であるのだ。
因みにだが、パートナーが当日まで決まらなかった場合、籤引きで選ばれる。本音が言ったあれとはそれの事である。それはどんなに文句を言っても覆る事はなく、決定事項でもあるからだ。
簪と本音は一夏が籤引きでどんなパートナーを選ばれるのか彼や自分達には知らない。それは、神のみぞ知る。簪と本音は一夏を心配する中、周りは騒がしい。
早く始めろ、そう急かさせていた。が、もうすぐ始まるのは事実であるが彼女達は娯楽目的で見ているとしか思えなかった。刹那、放送が鳴った。
『長らくお待たせ致しました。これより、学年別トーナメント、第一学年部門を始めます』
その声に周りは歓喜の声を上げる。始まった。そう意味しているのだった。すると、放送は先を続ける。
『トーナメント表を映し出します。そこには一学年の生徒達の名が映し出されますので、各自、確認して下さい』
刹那、アリーナに大きな四角い映像が映し出される。トーナメント表が映し出されていた。観客席にいる者達は自分達の名前を探している。簪と本音も例外ではない。が、彼女達は目を見開いた。同時に戦慄したのだった。
彼女達の視線の先には、それは、第一試合の所であった。そこには。
『ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノアペアVS織斑一夏、篠ノ之箒ペア』と映し出されていた。
「……ちっ」
その頃、ここはアリーナ内にあるロッカー室。そこには彼、ISスーツ姿の一夏がいた。彼は室内にあるモニターを観て舌打ちした。自分のペアが彼女、篠ノ之箒である事に怒りを隠せないでいた。
彼女は足手纏いになるのだ。それもISの知識は皆無であり、突撃しか脳がない。辛辣とも言えるが本音でもあるのだ。彼女と組めば敗北は確実だ。
自分一人で闘う方が良いが何方も専用機持ちだ。警戒すべき相手である事にも変わりはなかった。しかし、箒はそれを妨害し、戦況を悪化させる。
一夏はそう考えているが不安を隠せないでいる。どうすればいい、どうすれば奴等を相手に出来るのだ、と。一夏は思考を走らせる中、不意に、ある音に反応した。
彼は視線を扉の方へと走らせると、音はどんどんと大きくなっていく。そして、扉が開き、ある少女がいた。
「一夏!! 喜べ! 私達はペアだぞ!?」
箒であった、彼女は満面の笑顔で彼を呼ぶ。ペアに成った事を嬉しく思い、共に闘える事を喜んでいるようにも思えた。しかし、それは一夏から見れば苦痛でしかないのだ。
一夏は箒を観て顔を引き攣らすが彼女は気づいていない。彼と組む事が何よりも嬉しいのだろう。彼女は扉を閉めると、彼に近づく。
「一夏、私達なら余裕で勝ち進める事が出来るぞ!」
「…………」
「どうした一夏? それにその表情、私では不服なのか!?」
箒は一夏に対し、少し怒る。が、一夏は何も言わず、彼女から目を逸らす。
「おい、一……うっ!?」
刹那、箒は声を上げる。これには一夏も反応し箒の方を見る。同時に箒は膝を突き、そのまま俯せに倒れた。が、彼女の後ろには、とある人物がいた。
「お前は……」
一夏は眉を顰める。が、その人物は一夏を見て無邪気な笑顔を浮かべている。
「久しぶり……それに組まない?」
その人物は、否、彼は一夏に対して訊ねた。そして彼は一夏や一美と同じプレイヤーかつ、壮大な計画を起こそうとする青年、夢見一彦であった。