インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「あらら?」
彼、一彦は今、目の前に起きている事に驚いてはいないが惚けていた。理由は言わなくても判るが惨劇とも言える現状を目撃しているからでもある。
微かに響いたであろう切られた音と、その直後にそれが原因で肌を傷付けられ、痛々しい切り傷が出来ている、そこから血が滴り落ちているが血は赤い。
同時にその者は手に持っているランスを落とし、切られた所、腕を手で押さえながら片膝を突いている。
「っ……!」
その者、彼女は膝を突きながら目の前にいる者を見上げる。そこには不気味な笑いを浮かべながら自分を見下ろしている者がいた。全身火傷姿かつラフな衣装を着ているが右手には鉤爪を付けているが血が付着していた。
それは彼女に血であり、肌を傷付けた物でもある。その男は下品な笑いを浮かべているが彼、一彦が引き連れている殺人鬼、フレディである。
そして彼に切り付けられた彼女は楯無であった。彼女は腕を切られたが肌を傷付けられたのだ。服越しからとは言え、そこだけは赤く染まっている。
彼女は腕を切られながらもフレディを睨んでいた。
「おいおいお嬢ちゃん? 俺を睨んでどうしたんだ〜〜?」
フレディは態とらしく笑うが切り付けた張本人である。彼は後悔や謝罪はなく、その言葉もない。逆に彼女を傷付けた事で悦びを感じている。彼が子供好きであるが故でもあるが殺す事を躊躇してもいないからだ。
そんな彼を楯無は不気味とも感じていた。彼からはあの大男、ジェイソンと同じ臭いがし、殺す事を快楽としか思えない異常者である事に気づいたのだ。
彼はジェイソンよりもタチが悪いとも彼女自身も感じたのだ。さっきは不意打ちであるが慌てて横へと避けたが腕を擦られてしまい、今に至っている。
同時に彼の狂喜は右腕にある鉤爪である事にも気づいていたが、この男は一彦の引き連れている奴までにも気づいたのだ。
「……っ!」
楯無は彼を睨む。彼の不気味さに微かな恐怖を抱いていた。しかし、彼は下品な笑いを浮かべたまま自分を見下している。彼女はそれに気づくが彼、一彦が口を開く。
「それにしても、君は何しに来たの?」
彼の言葉に楯無は振り返る。一彦はキョトンとしていたが楯無から見れば警戒心を煽らせる行為にも等しい。彼女は一彦に警戒する中、彼は更に続ける。
「それにしても何しに来たの、君?」
「……アンタ達こそ、どう言うつもり?」
「へっ? 何が」
「惚けないで!」
彼の言葉に楯無は怒る。
「アンタ達こそ何しに来たのよ!? それにあの、織斑君そっくりな男は誰なのよ!?」
「彼……ああ〜〜二夏の事?」
彼は軽く手を叩くと軽く頷く。彼女の言葉に納得したのだ。
「……二夏?」
が、楯無は彼の言葉に微かに眉を顰める。彼女が此処に来たのも箒がそうであるが二夏の存在も気になるからだ。
彼は何者で何故彼が、一夏が躊躇もなく彼と組んでいるのかも知りたかった。同時に一彦が此処にいる事は想定外であるが彼なら何かを知っていると、楯無は思った。
発言次第では彼を捕える事が出来る。同時に二夏の正体を知る事が出来れば、一石二鳥にもなるのだ。楯無は一彦に対して、二夏の事を訪ねている中、一彦は応えた。
「まっ良いか。取り敢えず教えとくよ?」
「……なんですって?」
一彦はそう言いながら笑う。
「彼は僕が造ったクローンだよ?」
「クローン?」
彼の言葉に楯無は微かに驚く。が、一彦は先を続ける。
「彼、二夏は彼、織斑一夏の右腕を元に造ったクローン……それもとびっきりの最高傑作」
一彦はそう言った後両手を横に広げる。
「彼の細胞、血液、癖等をありとあらゆる行動を全て本物そっくりに造った偽者……言わば贋作。でも、彼はクローンでありながらも一夏の弟だよ?」
「弟……彼が?」
「そっ。それに……」
一彦はモニターの方を観る。楯無は釣られるようにモニターを観るが映像には、アリーナでは一夏と二夏の義理の双子とラウラ、シャルのペアが闘っていた。
何方も一進一退の攻防であった。一夏は右腕がなくとも、シャルを押している。シャルは抗うが彼は霧で視界を遮らせている。一方で二夏はラウラを相手に苦戦を強いられながらも何とか抗っている。
ラウラは二夏を相手に善戦しながらも微かに苦戦している。何方も何とか闘っているが一彦は笑う。
「彼のIS、ジルドレも僕が与えた物だよ?」
「……ジルド、レ?」
楯無の言葉に彼は頷く。
「そっ。ジルドレは僕の持ってる奴と彼が持ってる奴で二つあるんだ。それに僕の奴と彼のあのISは僕がフランスにある軍事基地から盗んだ物」
「……盗んだ? 何時よ!?」
「う〜〜ん、彼が動かした何日かくらいかな?」
一彦は笑いながら応えた。そうである、彼のISと二夏のISは彼がフランスの軍事基地から盗んだ物であった。彼はその二機のISを探していたのだ。
暫く動かなかったのもそれであるが同時に他のプレイヤー、一也の前に現れたのは自分の他にも一夏を狙う輩がいるので肺のかとも思っていたのだ。
勿論、青年の変死事件に掛かったのは彼の殺人鬼、プレディが起こした物だが彼は更に笑う。
「それに今頃……ううん、フランスも大慌てだろうね〜〜二つのジルドレはフランスと言う国が全技術を駆使して造った最高傑作。でも、能力的には他の国よりも少し劣る……それ以上にフランスも近い内に国に大打撃を受けるかもしれないね? ……予想だけど」
一彦はそう言った後、立ちがあり、軽く手を叩く。
「僕が此処に来たのも彼の初陣を見る為であり、織斑一夏と言う彼に逢いに来たのもそれが理由。それ以上に僕は彼と、人形達を連れているあの女の子と闘う事になる……」
「闘う……?」
楯無は彼の言葉に警戒と不信感を抱く。彼が彼、一夏と闘う? それに女の子……人形を連れて……一美の事なのか、と。が、一彦は彼女の考えを知る由もない。
彼は先を続けるが不意に彼女に背を向けると、彼女を肩越しで見る。
「……それに話は逸れちゃったけど、彼が何故、二夏と手を組んだのかは彼に訊いて。理由は僕には時間がないから、此処で離れるね? 二夏には彼が先に戻っていると言っといて? じゃあね〜〜」
一彦は笑いながら彼女に対して手を振る。刹那、彼は風のように消えた。同時にフレディも風のように消えた。
「っ!?」
楯無は二人が消えた事に気づく。しかし、驚きとしか言いようがなかった。彼等は何しに来たのか? それに何の目的で二夏を彼に紹介したのか? 何故、二夏を造ったのか? 何故、一夏は彼と組んだのかとも。
彼女はその事で悩む中、大きな声が幾つも響き渡る。これには楯無も驚くが声がした方を見る。否、観ると言い替えれば良いのだろう。そこはモニターでもあった。
映像には彼等と彼女等の闘いが映し出されていた。が、楯無はその映像を観て驚いていたのだ。
「うぐっ……!!」
その頃、アリーナでは一機のISが倒れ、そして強制解除された。そのISの持ち主は仰向けに倒れているが身体中に激痛を走らせながら微かに視線を合る方へと向けた。
そこには銀色に輝くナイフを手にしながら黒く禍々しい機体を纏った彼がいた。彼は自分に対して冷たい視線で見下ろしている。そんな彼を、彼女は怯える。
彼女、シャルは彼、一夏と闘い負けたのだ。片手を失っている為に勝機はあったのだが先の闘い、二夏との共闘で押され、ついさっきの闘いでは霧の影響かつ、彼の実力で負けたのだ。
シャルは彼に怯えるが負けた事に変わりはない。同時に抗う姿勢もない。彼女は純粋に彼に怯えていた。
「…………あいつは」
一夏は視線を走らせる。そこには二夏がラウラを相手にしていた。が、二夏はラウラを追い詰めていた。
「……たっ!」
二夏は剣でラウラを斬り捨てた。
「っ……!」
ラウラは軽く吹っ飛ばされるが何とか持ち堪えると、彼、二夏を見る。彼は哀しい目をしていた。剣や盾は下ろしているが構える様子はない。
しかし、ラウラから見れば怒りしかなかった。自分を哀れむような視線に怒りしかなかった。同時に彼女は彼を見て歯を食い縛る。
「貴様……!」
ラウラは屈辱さえも感じた。彼の視線にであるが倒したい気でいた。彼は織斑一夏にそっくりだ。それが理由でもあるが彼女は抗おうとする。
が、ISからは火花が飛び散っている。限界を超えていたのだ。それでも彼女は二夏を倒す気でいた。
「お前だけは……お前だけは……っ、ああーーーーっ!」
刹那、ラウラは悲鳴を上げた。これには二夏は微かに驚き、一夏は眉を顰め、周りは驚く。更に、彼女の身体から大きな火花が幾つも飛び散る。これには周りは更に驚くが彼女は悲鳴を上げ続けていた。
そして、彼女のISが突然、アメーバのように黒い液体と化した……。