インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第16話

「…………」

 

 此所は更識家内にある和室。そこには一夏が用意された座布団の上に正座しながら瞑目しつつ待機していた。和室には襖や畳、障子は当たり前として、目の前にはテーブルや生け花、掛け軸等が目に入る。

 誰かの部屋である事には気付いたが一夏は周りを見渡してはいない。彼は瞑目しながら静かに待機していた。近くには楯無はいない。彼女は前当主、つまり自分の父を呼びに行ってる為、一人待機していた。その間、彼は何かを考えている。

 思考を走らせていた。自分以外の他のプレイヤー達の動きを警戒していた。彼等は自分がISを動かした事により、どう動くのかを警戒していた。

 相手は一筋縄ではいかない連中ばかり、失敗すれば殺されるからだ。一夏は状況打開の為の策を練るが相手は一人ではない――他の殺人鬼もいるが協力関係を結ぶプレイヤー達がいる事も警戒していた。

 有り得ないが有り得なくもない上、最後の一人になるまで互いを警戒する事もある。しかし、一夏は誰かと協力するつもりはない――彼は主催者が自分の為に選んでくれた殺人鬼、ジェイソンとしか協力しないと決めていた。

 彼は殺人鬼であるが、相手を一撃で死に至らしめる程の腕力がある。例え、相手が剛力の持ち主であっても瞬間移動能力があるため相手に出来る。

 その上、体力も多く不死身な存在である。それ故、背中を預けるにはうってつけの存在なのだ。一夏は思考を走らせていたが軽く話がそれている事に気付き目を開け、軽く自分に呆れた。

 刹那、襖の開く音が聴こえ、一夏は視線を音がした方へと向ける――一人の壮年の男性と一人の少女が和室の中に足を踏み入れる。少女は楯無だと言う事に気付いたが男性は知らない。

 壮年の男性であり紫色の和服を身に纏っているが一夏は直ぐに気付いた。彼は前当主の者だと言う事に。貫禄がある様に思えたからだ。

 

「君が織斑一夏君かね?」

「……はい」

 

 男性の問いに一夏は少し沈黙したのち、静かに答える。敬語を使っているように思えるが彼は他人には興味はなかった。一夏の言葉に男性は静かに頷き、テーブルの方へと歩くと一夏と向かい合う様に腰を下ろす。

 楯無は男性の――父から一歩下がる様に腰を下ろすが一夏は壮年の男性を見据える。壮年の男性も一夏を見据える。部屋には電気は点いていないが昼間である為に明るい。

 しかし、一夏と壮年の男性は互いの相手を見据えていた。何方も互いを警戒しているが会話はない。二人は互いの相手に対し、只ならぬ者と感じていた。

 一夏は壮年の男性に対し、彼は楯無とは違うと感じていた。ただの壮年の男性ではないと思いつつも無言で見据えていた。一方、楯無の父は一夏を見て何かを思う。

 彼がただならぬ者である事に気付いていた。彼の瞳には怒りが籠っており、楽しい事や哀しい事を考えているようには思えなかった。引退したとは言え、娘に当主の座を譲ったとは言え、前当主である事に変わりはない。

 当主だった自分でも判る。彼の目は他人を信じるような目ではない事にも気付いていた。何より、楯無から今までの事を教えられたが男性は怒りが込み上げてくる以前に彼の行動にどこか疑問さえ思っていた。

 

「君に訊きたい事があるが、先ずは自己紹介しておこう――私は更識源次、君を連れてきた娘の父だ」

「そうですか……では俺も自己紹介しましょう――俺は一夏、織斑一夏と言う」

「君の事は娘から聞いた――君が噂の男性操縦者だね?」

「……ああ、別にISを動かせる事は知らなかった」

 

 一夏はそう言いながら俯く。想定外だった。しかし、同時に他のプレイヤー達をおびき寄せる事が出来ると思っていた。彼が学園に現れたのは大規模な捜査を解除し、奴等の活動が再開される事を願っての事である。

 同時に自分は更識の者達に身を保護される為に来たのではない。一夏はそう思いつつも顔を上げる。源次と目線があったが不意に横にいる

楯無とも目線があう。

 彼女は自分を見て顔を引き攣らすが一夏は目線を源次の方へと向けた。源次も眉間に皺を寄せていたが彼は頬を緩める。一応彼の緊張をほぐす意味でも優しく問い掛けようとした。

 

「君が何故ISを動かせたかは私にも判らない――だが、君を保護する事に変わりはない」

「…………」

「勿論君は暫くは外に出る事は出来ない。出る時は従者達を供にさせる――そうしなければ何処かの正体の判らぬ連中に何かをされる危険が伴う」

 

 源次の言葉に一夏は無言で聞いていたが不意に両手を拳に変える。想定外だ――これでは他のプレイヤー達を捜すどころか、行動範囲を知るために動くことも出来ない。

 バトルロワイヤルを制する事が出来ない。逃げる事は出来るがいなくなったとなれば騒ぎとなり、戻ってきたとなれば監視が付く。監視の目を潜り抜ける事も出来るが更に監視の目は厳しくなる。

 一夏は思考を走らせ此所から出る方法を探していた。そんな一夏に源次は不意に微笑む。

 

「安心しなさい――君が此所にいる限り、君の安全は保証する――だから君も暫く此所に住みなさい」

 

 源次は一夏に対し、優しく言い聞かせた。が、一夏は源次を見据え続けたが答えた。

 

「断る」

 

 一夏は源次と楯無にそう言い放った。これには源次と楯無は驚くが楯無は彼に訊ねる。

 

「どうして!? 此処にいればあなたの安全は保障されるのよ!? それなのに何故!?」

「こら刀奈!!」

 

 楯無は一夏に訊ねるが源次が宥める。が、一夏はそれにも答えた。

 

「俺は誰も信用出来ない――それだけだ」

「それじゃあ理由にはならないわ!? あなたは自分の命が惜しくないの!? それに」

「俺には自分の命は惜しいがやる事がある……!」

 

 楯無が言い終わる前に一夏は遮るように言い切った。これには楯無は言葉を詰まらせ、源次は瞠目した。さらに、一夏は言葉を続ける。

 

「俺にはやる事がる――それには此所で時間を惜しむわけにはいかない――それに誰も信じないんだよ……!」

 

 一夏は眉間に皺を寄せながら言葉を続ける。彼の口調には怒りが孕んでいた。一夏は他のプレイヤー達を倒すという使命があった。それは重くも命に関わる重要な事であり、此所で骨休みする訳にもいかないのだ。

 一夏は楯無と源次を睨みゆっくりと立ち上がると、両手をズボンのポケットに入れる。二人は一夏を見て愕然としていたが一夏は「邪魔したな」と言いながら部屋を出ようとした。

 そんな一夏に楯無は「待って!」と言いながら彼に駆け寄り、腕を伸ばそうとした。刹那、一夏は楯無を躱す。楯無は目を見開くが一夏は楯無の後ろに回ると、彼女の腕を捻り、彼女の顎をもう片方の手で掴みながら拘束した。

 楯無は一夏に腕を捻られ「ああっ!」と悲痛の声を上げる。

 

「刀奈!!」

 

 源次は楯無を――否、刀奈を見て驚きながら立ち上がるが、一夏に鋭い眼差しを向けられてしまい、源次は「っ!?」と警戒した。彼の視線には怒りや殺意が籠っているようにも感じたのだ。

 あれは人を殺す目であり、躊躇さえも感じないようにも思えた。動けば刀奈が、娘に危険が及ぶ――そう感じたと共に殺されるのではないかと危険を感じた。

 前当主である以前に親であるのだ。父親として困惑する中、一夏は楯無を拘束しながら源次と向きあうように向きを変える。一夏は源次を睨み続けるが彼に訊ねる者がいた。楯無だ。

 

「ね……ね、ぇ? あなたは……何を……望んでいる、の?」

 

 楯無は一夏に訊ねるが一夏は無言で源次を見続けていた為に聞く耳を持たない。それでも楯無は一夏に問い続けた。

 

「あなたは人を……信じないって……言ったけど……何でなの?」

「…………」

「あなたがどう……思っているのかは……判らない――でも……私達を信じて……私達は、あなたの味方……よ」

 

 楯無は一夏に対してそう説得する。彼の身に何が遭ったのかは判らない――しかし、これだけは言いたかった。一夏は一人ではない――そう言いたかった。

 自分と父は特殊な家系の者達であるが彼の身の安全は保証出来る。誰がなんと言おうと自分は家系の為来りに習う意味で彼の身辺警護をするつもりであった。

 男性操縦者であるのと彼の命を守る覚悟もあった。しかし、楯無の想いは無情にも彼の放った一言で砕け散った。

 

「……知るか」

 

 彼は楯無にそう言い放った。これには楯無も瞠目したが彼の一言は冷たく、何処かトゲがあった。刹那。一夏は楯無を乱暴に突き放す。楯無は倒れそうになるが源次が何とか支える。が、一夏はその隙に部屋を出る。其処は通路だったが辺りに人がいない事を確認した後、通路の中を走りながら風のように姿を消した。

 

 部屋には楯無と源次がいるが源次は誰かを呼ぶ為に叫ぶ。が、楯無は一夏の言葉に未だ愕然としていた……。自分の言葉は彼には届かなかった。そう感じていた……。

 

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