インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「な、何なのあれ!?」
「わ、判らないわよ!?」
「あ、ISが変化した!?」
アリーナの観客席では今、戦慄と驚愕が入り混じった声が飛び交う。突然の事態に戸惑い、大半が我を失っている。対応は愚か、不意打ちにも近いからだ。同時に彼女等の視線の先はアリーナの中央であった。
そこには二機のISと、一人の少女が倒れていた。それだけなら未だしも、二機のISの他にも、もう一機のISがいた。しかし、それが彼女達を愕然とさせていた。
そのISはさっきまで闘っていた。否、押されていたと言い替えれば良いだろうが突然、変化したのだ。あの固くも速く、空を飛ぶ事が出来るISが変わったのだ。
アメーバのようにグニャグニャと形を変えている。不気味とも言えるが生き物とも言える。
「…………」
「あっ……」
そんな中、二機のISのそれぞれの操縦者達はそれを見て色んな事を思っていた。一夏は無表情で見ており、二夏は哀しい目で驚いていた。
彼等はさっきまであのISの操縦者、否、彼女、ラウラと闘っていた。二夏が殆ど相手にしていたと言い替えれば良いだろうが二人はラウラのISが変化した事に一夏は困惑していなく、二夏は微かに困惑していた。
一方でラウラのペアであるシャルは驚いていた。突然とは言え、非現実的な出来事に戸惑う一方であった。彼等の視線がアメーバに向けられる中、アメーバは徐々に形を構成させていく。
「!?」
刹那、観客席はアメーバを見て愕然とした。そんな中、一夏は更に眉を顰め、二夏は微かに驚く。二人と彼女等はアメーバを見ている。しかし、それは形を構成させた後であるからだ。
その形は一夏から見れば嫌悪しかなく、大半以上、否、全ての者達は良く知っているのだ。それは、そのアメーバはある人の姿をしていた。
ISを纏っているが姿形は、あの人物を沸騰とさせている。擬きとも言えるが贋物とも言える。しかし、一夏は舌打ちするが二夏は辛そうに目を逸らす。
そして、彼女の視線の先には彼女、織斑千冬がいた。ISを纏っているがモンド・グロッソを二連覇した時に愛用したISを纏っていた。
彼女よりも一回り大きいが黒い、とても黒い。液体で出来た者であるが液体自身が黒いからだ。一夏はあれを、千冬擬きを見て歯を食い縛ると、視線を放送席の方へと向けた。
彼処には彼女、本物の千冬がいるからだ。
「あ、あれは……!」
その頃、当の本人である千冬は自分と同じ存在とも言える千冬擬きを見て驚いていた。あの姿は自分の輝かしかった頃を思い出させる。が、それ以上に自分が教えた存在であり、崇拝を抱かれている彼女、ラウラの突然の
変化に驚いていた。
あれは何なのか? 何故変わったのかと、色々と憶測が脳内に飛び交う。千冬はその事で困惑する中、ある事に気づくと、慌ててマイクで周りに呼び掛けた。
『お、織斑達! 今直ぐその場から離れろ!』
「…………」
「えっ?」
放送からの呼び声に一夏は何も言わず、二夏は惚けてしまう。その声に反応したからでもあるが姉の千冬の声に反応したからだ。姉の声に二人はそれぞれの反応を見せる中、千冬は先を続ける。
『それは、今のラウラは危険だ! それに緊急事態だ! お前達はピットに戻れ!』
千冬はそう言いながら警報を鳴らす。これには観客席も困惑するが千冬は先を続けた。
『各生徒は教員やSP、婦警の指示に従って避難しろ! 来客の方々は教員達の指示に従って避難して下さい!』
千冬はそう言うと、観客席は騒然とした。同時に逃げようとしたが教員達や婦警、SP等が行動し始める。臨機応変とも言えるが彼女等は生徒達を不安がらせずに励まし、時には優しく誘導していた。
教員達も新しく赴任してきたにも関わらず、教師としての使命を重く受け止め、遂行している。観客席は生徒達の声が飛び交うが中央に居る一夏、二夏、シャルの三人は千冬擬きを見て何も言わない。
一夏は眉間に皺を寄せているが二夏は哀しそうに見ている。何方も対照的とも言えるが共通しているのは千冬擬きを見ている事だ。あれからは何の反応もない。
否、あれは敵を認識しているかどうかも判断出来ず、誰を攻撃すれば良いのかもあれ自身しか知らない。が、向こうから攻撃する気配はない。
一夏はそう感じている中、二夏はあれを見て哀れんでいた。同時に何かを感じていた。あれ、つまり千冬擬きの原型であり、突然変化した彼女、ラウラに何かを感じていたのだ。
やはり彼女は……もしもそれが本当ならば彼女は自分の……二夏はそう思っている中、彼に声を掛ける者がいた。
「戻るぞ……」
一夏だ。彼は二夏に近づくと、彼にそう言った。これには二夏は驚くが彼は何も言わずに視線を千冬擬きの方へと向ける。動く気配はないが一夏は先を続ける。
「……俺達が出る幕じゃねえ……それに俺達はあいつに構っている暇はない……」
「……でも」
「俺達はトーナメントを制する為に闘う筈だった。しかし、あんなのは想定外だ……あいつがどうなろうが、俺達には関係ない……」
一夏はそう言うと、ISを動かしながらピットへと戻って行った。一方で二夏は彼を見て戸惑っていた。が、彼の言い分は正しく、反論出来る言葉や、弁明もない。
彼はそう思いながら視線を千冬擬きの方へと向けた。動く気配がないのは相変わらずだが二夏は哀しそうに見ていた。彼女は何故、あんな姿になったのか? と。
しかし、今はそれを咎める事や指摘する事も出来ない。二夏はそう思いながらピットへと戻ろうとした。が、彼はある事に気づいたのだった。
「織斑君……!」
その頃、一夏は一人ピットへと戻っていた。が、そこには彼女がいた。楯無である。彼女はモニターでラウラの様子を観て驚き、同時に彼、一夏の安否を気にし、此処へと来たのだ。
彼女は一夏を見て微かに安堵しているが同時に疑問を抱いていた。しかし今は一夏の事が先であったのだ。
「……更識」
一夏はISを解除すると、左手を腰に当てる。彼女を見る目は呆れているが楯無は彼に……刹那、彼女は何かを訊ねようとした時、一機のISの音に反応した。
楯無と一夏は反応したが一機のISがピットへと戻って来た。二夏である。が、彼はある人物を横抱きしながら戻ってきた。シャルである。彼は戻る前にシャルを連れて、安全な場所、このピットへと戻ってきたのだ。
が、一夏は彼を見て眉を顰めている。楯無は彼を見て微かに頬を紅くしている。何方も表情は違うが二夏を見ている。一方で二夏は彼等を見手首を傾げていた。が、シャルは。
「あ……あわわ……!」
一方でシャルは二夏の行動に驚いているが顔を真っ赤にしていた。とは言え、二夏は一夏とは瓜二つであるが容貌は愚か、紳士的な行動に驚きとドキっとしている。
シャルは少女であるが彼は青年であり、異性だ。そう感じられても仕方ない。一方で二夏は彼女の様子に気づく前に、一夏を見ていた。
「……何をしている?」
一夏は二夏の行動に不信感を抱いていた。彼は何をしているのか? 何故、シャルを横抱きしているのかと。が、彼は自分とは瓜富津であるが性格は正反対であるからだ。
根暗とも言えるが哀しい表情ばかり浮かべている。性格はそれ以上は判らないが今さっき、判ったようにも感じられた。彼は優しい、それも自分よりも、否、元の自分に近い性格をしているのだ、と。
一夏は二夏に対してそう思っているが楯無は彼の行動に対し、微かに頬を紅くし続けている。
「何って……彼女を抱えているだけだよ?」
「……そうじゃない……何故、ソイツを連れている?」
「何でって……」
二夏は彼の言葉に対し、哀しそうに項垂れる。シャルの事を指摘されたからだ。遅れてきた事をも指摘されているが、何かを呟いた。
「……ない……」
「はっ?」
二夏の言葉を聞き取れないのか、一夏は惚ける。楯無とシャルは彼の言葉を聞き取れないでいるが彼は哀しそうに瞼を閉じると、再び呟いた。
「出来ない……あんな状況で……!」
「一夏!!」
刹那、ピットを出切り出来る扉が開き、直後に叫び声が耳に響く。その声に一夏と楯無、二夏とシャルは声に反応し見やるが一夏は眉を顰めた。
楯無とシャルは目を見開くが二夏は微かに目を見開く。しかし、その者は、彼女はある人物を見て驚いていた。
「い、一夏が二人……!?」
その者、箒は二夏を見て驚いていた。彼女は今まで気を失っていたが今し方気がつき、慌ててピットへと戻ってきたのだ。しかし、二夏を見て驚いていた。
無理もない、今まで気を失っていた為に二夏の存在は知らないからだった。