インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第163話

 

「……如何いう事だ、貴様?」

 

 一夏は自分の生き写しとも言える存在の彼、二夏の言葉に疑問と不信感を抱き、眉を顰める。楯無、千冬、シャルの少女達と女性は彼の言葉に疑問を抱いていた。

 楯無とシャルは彼が発言した事に驚いている一方で、千冬は泣きながら自分の弟の生き写しとも言える彼、二夏の言葉に微かな期待を抱いてしまった。

 しかし、彼女等は彼の発言を初めて聞いたのと彼が何故、ラウラを助けると一夏に勧めたのかを気にしていた。が、異性である青年達、一夏と二夏は互いの相手を見据えたまま、何も言わない。

 一夏は表情を険しくしているが二夏は哀しい表情を浮かべている。何方も正反対とも言える表情を浮かべているが彼等の性格を表していた。

 ゲームを制する為に喜び、笑い、愉しみ、哀しみと言った善の表情を全て忘れた一夏と、クローンでありながら哀しみしか覚えられなかった贋物である二夏。

 何方も双子とも言える容姿であるが互いの相手から目を逸らす様子はない。彼女達は彼等を見たまま何も言わない。口を挟む事をすれば何かをされる。そう気付いたからだ。

 が、二夏は口を開いた。

 

「彼女、僕と同じ、人間から造られたと思うんだ……」

「……何故、そう言いきれる?」

「……闘った時、彼女から人と同じような匂いがしなかった……」

「……何だと?」

 

 一夏は更に眉を顰めるが二夏はそれを教えた。実は二夏は彼女と闘っていた時、彼女からは人の匂いを感じられなかったのだ。微かな、自分の憶測でしかないが彼は彼女、ラウラを人間ではないと気づいたのだ。

 見た目は人間とも言えるがあれは人から造られた人造人間、言わばクローンではないのかとも思ったのだ。同時に自分も造られた為に親近感を覚えたが彼の憶測でしかない。

 しかし、彼女を助けたいと言い出したのは彼女は、被害者ではないかと思ったのだ。

 

「……僕、彼女は悪い人間じゃない、と思うんだ……それに彼女、君に怨みを抱いているのは恐らく……」

 

 二夏は視線をある人物へと向ける。千冬にだった。彼女は彼の視線に微かに驚くが二夏は視線を再び一夏の方へと戻すと、言葉を続ける。

 

「彼女を慕うのも、彼女自身が人の温もりを欲しかったからじゃない、かな? ……」

「……温もり?」

 

 一夏の言葉に二夏は深く頷く。

 

「うん……彼女、産まれた時から、造られた時から人間の温もりを与えられなかったと思うんだ。その人が言うように、戦場で身を置かれたのも何かの理由かは判らないけど、それに温もりを知らなかった……そんな自分に愛情を注いでくれた彼女、織斑千冬に執着するのも、人の温もりを教え、孤独だった自分に手を差し伸べてくれた彼女に対して、恩義を感じたからだと思うんだ……」

「……それで、何故俺を付け狙う? ソイツを慕うのならば俺は関係ないだろ?」

 

 二夏は首を小さく左右に振る。

 

「それは違う……君に憎悪を抱いているのも、自分を助けてくれた織斑千冬に対する想いと恩義……それに嫉妬だ」

「……嫉妬だと?」

「そう……彼女は君に嫉妬している。誰よりも温もりを、織斑千冬に可愛がられていた……否、それは表向きだった……君は彼女の弟であるから自分よりも温もりを与えられたからだと誤解している」

 

 二夏は不意に千冬を見る。彼女は驚いているが二夏は先を続ける。

 

「全ての元凶は彼女かもしれないけど、彼女はラウラと言う少女を幼き頃の君と重ねて見えたから、彼女に愛情を注いだ……」

 

 二夏はそう言った後、項垂れる。

 

「……誰が悪いのかは、造れたばかりの僕には判らない……でも、ラウラは被害者だと思うんだ……誤解だらけの出来事で歯車が狂ったのかもしれない」

 

 二夏はそう言いながら瞼を閉じる。彼女は被害者とも感じていたのだ。誰が悪いのかは彼女を造った者達のかもしれないが彼はそれ以上の事は判らなかった。

 造られて間もないが彼はラウラに同情しているのだ。もしも彼女がクローンなら彼女は被害者だ。人から造られ、人の所為で人生を狂わされた。

 数奇な運命でもあるが多くの苦難を乗り越え、何が遭ったかは判らないが孤独にもなり、更には罵られていた。千冬に助けれらたから彼女は彼女を恩人と感じている。

 が、織斑一夏と言う千冬を哀しませた事で憎しみと嫉妬を覚えてしまった。それに今、彼女のみに何かが起こっている。何が遭ったのかは知らないが助けなけれならないのだ。

 二夏はそう決意するように頷くと顔を上げ、彼を見据える。彼は、一夏は眉を顰めていた。近くには、彼の背中には楯無が困惑しているがそれでも彼は口を開いた。

 

「……義兄さん」

 

 刹那、彼の言葉に周りは驚く。彼は一夏を義兄さんと呼んだからだ。それは楯無、シャル、千冬の女性達だけだ。一夏は眉を顰めているが彼は、二夏の自分を呼ぶ際の事を許可しているのだ。

 それは一彦との取引に含まれていた事であった。最初は一夏も渋っていたが一彦は更に取引をしていたのだがその内容に彼は驚きもあったが二夏の出生も全て教えられたからでもあった。

 一夏は二夏を見て親近感を沸かせたのも、自分に弟が出来る事に微かな警戒と不信感を抱きつつも彼の呼び名を赦したのだ。彼は二夏を見据えるが二夏は先を続ける。

 

「彼女を助けよう……彼女は腐った奴等の所為で人生を狂わされたんだ……それに彼女は一人じゃない……僕達がいる……僕達で愛情を、友情を、哀しみを一緒に背負えば良いんだ……お願い」

 

 二夏はそう言った後、頭を下げた。彼なりの願いでもあった。彼女を助ける事が出来るのは自分達だ。彼女は一人ではない事を教えたかった。

 逢って間もないにも関わらず、彼は彼女を助けようとしていた。同じクーロンとして、人の欲望で造られたのかもしれない彼女を、だ。

 そんな彼、二夏に一夏は目を逸らす。彼の願いを聞き入れるかどうかを考えていた。自分の一言で全てが決まる。彼女の命運は自分に掛かっている。

 彼はそう気付くがそれを言わない。周りは一夏の言葉を待っているが彼の一言で全てが決まる事を悟っていた。

 

「…………」

 

 それ以上に千冬は彼の言葉を待っていた。彼女はラウラを助けたい気でいた。自分が助ける事が出来るがそれでは彼女の為にはならない事には気づいていた。

 だからこそ一夏に頼んだのも彼なら出来ると思ったからだ。しかし、自分の願いを彼は否定した。それだけは悔しかったが今は違う。今は、今度は二夏が彼を説得している。

 彼は何者かは判らないが彼を、一夏を、弟を義兄さんと呼んだのだ。それは自分から見れば納得出来ないが今は彼に賭けるしかないのだ。

ラウラを助ける為にはそれしか方法はないのだ。

 千冬はそう気付く中、一夏は溜め息を吐く。

 

「……良いだろう……助けてやるよ」

 

 

 

 

「う〜〜ん、もうすぐだね?」

 

 その頃、此処は一彦が身を隠している場所。建物内には彼がいたが彼は嬉しそうにソフアーに腰を下ろしながら足を軽く動かしていた。天井を仰いでいるが彼は笑っていた。

 これから起きる惨劇を、自分が考えた壮大な計画が今宵に起こす事を期待し、歓んでいるのだ。それは三年の歳月をかけてまで調べた物であるが成功しょうが失敗しょうが関係ないのだ。

 が、彼は成功すると言う絶対的な自信があるからだ。彼は鼻歌をしているがそんな彼の近くには鉤爪を研いでいる殺人鬼、フレディがいた。

 彼は鉤爪を研ぎながら疑問を抱きながら一彦を見る。

 

「おい一彦、お前、大丈夫なのか?」

 

 彼の言葉に一彦は彼を見る。キョトンとしているがフレディは先を続けた。

 

「あの計画は俺が起こすもんだけどよ……次の計画は命取りだぞ?」

 

 フレディは心配そうに彼に訊ねる。実は第二の計画もあったのだ。その計画は一彦にとって命取りかつ、チャンスでもあるのだ。その計画は、先の計画で混乱している日本を他所に彼は行動を起こすのだ。

 その計画は一彦にとって吉と出るか凶と出るかは判らない。が、一彦は笑う。

 

「大丈夫だよフレディ……それにその計画には彼も必要だから……」

「そうか? だったら良いけどよ?」

「まあいいじゃん? それにあの計画は……」

 

 一彦はニッコリと笑う。

 

「僕や、ジェイソンを連れている織斑一夏、ブギーマンを連れている奴と、チャッキー立ちを連れている女の子、そしてピンヘッドを連れているプレイヤー達による殺し合い、だからね?」

 

 一彦はそう言った、そう、第二の計画はプレイヤー達による殺し合いであった。そしてそれは一彦にとって命取りとなる、第二の計画でもあった。

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