インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第165話

「救出、完了……!」

 

 二夏は千冬擬きから、その異形の中にいるラウラを引き剥がす事に成功した。彼は哀しそうに微笑むが持っていた剣を投げ捨てると彼女を横抱きした。

 刹那、彼女の目に付けられていた眼帯が外れる。が、二夏はそれを見て微かに目を見開く。彼女の眼帯に隠されたその瞳の色は金色であった。オッドアイとも言えるが虹彩異色症という症状を抱えているとしか思えなかった。

 同時に彼女の表情は哀しみに満ちていた。力を使い過ぎたのか敗北を認めてしまったか、或いは己のプライドが打ち砕かれたのかは判断出来ない。

 二夏はそれに気づくがラウラは彼の腕の中で抱かれながら彼を見上げていた。自分を見る彼、二夏の表情は哀しみに満ちている。自分に同情しているのか、或いは自分を助けた事を不快に感じているのかは判らない。

 しかし、ラウラには言い返す事は愚か、反撃する力もない。一方で、肝心のISが千冬擬きではなくなっていた。持ち主であるラウラから離れた事により力を失った。

 千冬擬きは形を崩すかのように氷のようにドロドロと溶けていった。それでも二夏はラウラを横抱きしたまま哀しい笑みを浮かべていた。

 

「……良かっ……た……」

 

 が、二夏はそう呟くと共に全身の力が抜け落ちるように意識を遠退かせていった……。彼だけでなく、ラウラも意識が遠退いていくように瞼を閉じた……。

 彼等は意識を遠退かせていくが聴こえるのはISの動く音だけであった……。

 

 

 

「……う、うん……」

 

 あれから数分後、ラウラはある場所に居た。彼女は瞼を微かに動かした後、ゆっくりと開いた。最初に飛び込んできたのは、視界に入ったのは白い天井だった。

 

「……っ!?」

 

 ラウラは目を見開くと上半身だけを起き上がらせ、周りを見渡す。白いカーテンで遮られていた、が、彼女はある事に気づいていた。自分はベットの上で仰向けになっていた事、自分はアリーナに居たのに何時の間にか此処にいる事。

 彼女は頭の中を整理していた。同時に頭を抱えているが自分は何故、此処に居るのかを疑問に思い、解らないでいた。彼女は何とかその答えを探そうとしていたが解らない。

 刹那、白いカーテンが音を立てながら開く。彼女が開けた訳ではない、向こう側に居る者が開けたのだ。ラウラはカーテンの音に反応し振り返る。そこには、彼女が居るクラスの担任かつ、教官と慕う存在、千冬が居た。

 カーテンを開けたのは彼女であるが表情は哀しい。が、その後ろには見慣れた物が幾つもあった。しかし、ラウラはそれよりも千冬を見て驚いていた。

 

「きょ、教官……」

「目が覚めたか? ラウラ」

 

 千冬はラウラを見て微笑む。哀しみが孕んでいるが今は彼女が目覚めた事に胸を撫で下ろしていた。

 

「教官、此処は……」

 

 ラウラは辺りを見渡すが千冬は深く頷く。

 

「此処は学園内にある医務室だ」

「医務室……」

 

 ラウラは彼女の言葉に微かに反応した。が、それは納得出来たのだ。微かだが色んな薬品の匂いが鼻に突く。ベッドもふかふかであるが簡易ベッドだった。

 白いカーテンも周りを遮断するように長いのも外部と遮断する為であったのだ。さっきの見慣れた物はデスクや体重計であったが医務室にある為、何の違和感もない。

 しかし、ラウラは千冬から部屋の事を教えられたがある事に気づく。

 

「それよりも教官! 私は……それに何が!?」

 

 ラウラは彼女に詰め寄る。刹那、彼女は身体に微かな痛みを感じ、身体を抑える。

 

「ラウラ、寝てなきゃダメだ」

 

 千冬はラウラを支えると彼女をベッドに寝かせ、布団を掛ける。

 

「きょ、教官……す、すみません……」

 

 ラウラは千冬の気遣いに困惑するが感謝の言葉を述べる。そんな彼女に千冬は微かに微笑むが不意に身を翻すと、ある物を持ち出し、それをベッドの近くに置いた。

 鉄パイプの椅子だった。彼女はそれを広げるとそれに腰掛け、ラウラを見据える。ラウラは彼女を見て困惑するが起き上がる気配はない。千冬を困らせたくない、それがラウラの行動を制止させ、躊躇させていた。

 ラウラは困惑する中、千冬は彼女を哀しい目で見ていた。無言であるが長い時間ではない、直ぐに口を開いたのだ。

 

「実は……ある事件が起きたんだ……」

「えっ……!?」

 

 千冬の言葉にラウラは目を見開く。が、千冬は先を続ける。

 

「ラウラ……実はお前が運ばれてくるまでやお前の身に起きた事を全て話す」

 

 千冬は彼女に対し、出来事を話した。実はラウラは彼女自身が乗っていたISが暴走した事、そのISを止めるべく一夏と二夏が名乗り出た事、そして止めたのは二夏であるがラウラを含め二人は気を失ったがそれを回収したのが一夏である事、をだ。

 そして彼女を此処まで運んだのは千冬であるが彼女は先を続けた。

 

「それに……お前のISにはとんでもない物があった……」

「……とんでもない物?」

 

 ラウラの言葉に千冬は頷く。

 

「ああ、VTシステムだ」

「VTシステム……ヴァルキリー・トレース・システムですか?」

「ああ。だがあれはとても危険な物だ」

 

 千冬はそう言った後、項垂れた。ヴァルキリー・トレース・システム、それは過去のモンドグロッソを戦闘データを元に開発された意味での復元システム。しかし、それは操縦者に大きな負担をかけさせるのと操縦者の命をも奪いかねない物でもあった。

 それがラウラのISに搭載されていると言う事はドイツ政府や軍が何かの理由で搭載したに違いない。それにそのVTシステムは今現在、搭載する事を禁止しているのだ。

 それを破れは相応の処罰を与えられ、最悪、ドイツと言う国はIS関係で大きな打撃を与えられてしまうのだ。

 

「それが搭載されているのは別として、ラウラ、お前は何故それに気づかなかった?」

 

 千冬はそう訊ねるとラウラは目を逸らす。何も知らなかった。そう意味していた。千冬はそれに気づくが溜息を漏らす。

 

「知らなかった……か、まあ良いお前のISは今、修理に出している。直るまで丸一日は掛かるだろうがVTシステムは外しておく。これからはそれに影響される事もない」

「……お気遣い、感謝致します」

 

 ラウラはそう呟くが千冬は哀しい目で見たいた。が、彼女は突然、立ち上がる。

 

「教官?」

 

 ラウラは千冬に驚くが彼女はカーテンの裾を掴みながらベッドの足下、鉄パイプの椅子と反対側まで移動した。同時にカーテンが全開するようにラウラは彼女の行動に驚くが千冬はある場所を親指で差す。そこは隣にあるベッドだがそれも白いカーテンで遮断されていた。

 誰かが居る事を意味しているが千冬はその近くまで歩く。

 

「彼にも感謝しとけ」

 

 千冬はそう言った後、白いカーテンを開く。そこには、一人の青年が仰向けになって目を閉じていた。ラウラはその人物を見て驚くが黒い髪に白い肌。容貌は千冬と良く似ているが気を失っているのか、眠っているのかも判らない。

 が、その人物は織斑一夏の双子の弟的な存在かつ、クローンでもある二夏であった。

 

「そ、その男は……!」

 

 ラウラは慌てて起き上がる。刹那、彼女の身体から微かな痛みが走るのに気づき身体を抑える。が、ラウラは彼を見て睨む。

 

「そ、その男は何故、此処に!? そ、それにその男は……!」

 

 ラウラは痛みを堪えつつ千冬に訊ねる。そんな彼女に千冬は溜め息を吐くと、それを教えようとした。刹那、扉の開く音が室内に響く。千冬とラウラは音に反応し扉の方を見やる。

 扉とは医務室を出入り出来る扉であった。が、そこには、扉には一人の女性が手を膝に当てながら俯いている。しかし、その女性は緑色のショートカットが特徴的だった。

 千冬はその物が誰かは直ぐに気づいたが訊ねる。

 

「や、山田先生、どうかしたのか?」

 

 千冬はその人物を山田と訊ねる。そう、その者は真耶であった。真耶は肩で息をしながら顔を上げる。汗を流しているが困惑していた。汗を流しているのは此処まで走ってきた、そう物語らせているが真耶はラウラに気づく。

 

「ボーデヴィッヒさん、お気づきになりましたか……!」

 

 真耶はラウラを見て安堵する。ラウラは彼女の言葉に反応するが辛そうに目を逸らす。

 

「それよりもどうかしたのか?」

 

 千冬は真耶に訊ねる。すると、彼女は千冬を見て驚くが答えた。

 

「お、織斑先生大変です!」

「どうかしたのか!?」

「は、はい! 実はフランス政府の方々が彼を、織斑君そっくりの彼の身柄を此方に引き渡せと言ってきたのです!」

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