インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第170話

「そう……学園長が」

「はい。先を続けるのは困難として学年別トーナメントは中止と致しました。ですが他の生徒達の実戦データだけでもと一試合だけやる事を許可したそうです」

 

 あれから二十分後、一夏と楯無の部屋では一夏と楯無は元より、虚も部屋に居た。彼女達が来た理由は勿論、学年別トーナメントでの事だ。

 十蔵の通告の元であるが最善かつ苦渋の決断でもあった。ラウラの暴走の影響でもあるがそれが再び起きるかどうかも判断出来ないが彼女等を、生徒等を守る為でもあった。

 無論、この案を考えたのは十蔵だけではない、一義も考えたからだ。二人は生徒の身の安全を考える為に練ってくれたのだ。虚はその事を楯無に言ったのだが生徒会関係でだ。簪と本音は試合の為に居ないが二人は一夏と楯無の身を案じている事にかわりは無い。

 虚の言葉に楯無は項垂れているが彼女は今、一夏のベッドの足下に腰を下ろしていた。一夏は制服を纏っているが自分の机近くにあるイスに座りながら頬杖を突いているが目を閉じている。

 寝ている訳ではないが彼は耳を傾けているのだ、

 

「学園長は私達生徒の為に一試合だけを許可したのは、今までの練習を水泡と化させるのは可哀想だと判断したからです。それに試合は続いていますがお嬢様は二年ですがお嬢様の試合はまだまだ先ですので安心して下さい」

「そう……ありがと、虚ちゃん」

 

 楯無はそう言ったが虚は彼女の様子に気づいていた。同時に哀しい目をしているが何か遭ったのかと悟ったのだ。その原因は判らないが判るのは彼だけだろう。虚は不意に視線を一夏の方へと向ける。

 彼は瞼を閉じているが何かを考えて言うようにも思えた。それは何かまでは判らないが訊ねる事は出来ない。眉を顰めているのと一向に会話に入る気配はないからだ。

 彼からの助言なら兎も角、楯無を励ます事は出来ると虚は思った。なのに彼はそれを言わない何所か会話の輪に入る気配もない。虚は彼を見ているが彼が突然、瞼を開く。

 視線をギロリと鋭くする。

 

「ひっ!?」

 

 虚は一夏の視線にたじろぐ。が、一夏は何かを思うように立ち上がる。

 

「お、織斑、さん?」

 

 虚は一夏の行動に驚くが彼は突然、玄関の方へと歩き出した。

 

「お、織斑さん、ど、何所へ!?」

 

 虚は一夏の行動に驚くが彼は玄関に向かう足を止めると、肩越しで彼女を見る。困惑した表女を浮かべているが一夏を心配しているからであった。

 しかし、彼は鋭い視線を向けている。それが原因でもあるが一夏は彼女の問いに答えた。

 

「……奴の所に行くんだよ」

「えっ?」

「……奴、二夏の所にだ」

 

 彼の言葉に虚は目を見開き、楯無も目を見開きながら彼を見る。彼は二夏の所へと行くつもりでだった。理由は判らないが何かを話すつもりだろう。 

 しかし、彼は今何をしているのかは判らない。寝ているのか起きているのかの何方かも判断出来ない。二人はそれに気づくが彼は前を向くと靴を履き、風のように消えた。

 

「あっ……」

 

 楯無は一夏の行動に驚くが不意に手を伸ばしてしまう。が、哀しそうに目を逸らすと瞼を閉じた。彼はまた独断で動いた。それは暗部の一員……刹那、楯無は何かに気づいた

 彼は父、源次の願いで暗部に入った。それは承知しているが彼は取引をしたに過ぎない。それに彼は誰にも頼っていない。が、一介だけ頼った事があった。それは……刹那、楯無はそれに気づく。

 

「そう言えば……」

「お嬢様?」

 

 虚は楯無に気づくが彼女は突然、虚を見る。

 

「どうかなさいましたか?」

 

 虚は訊ねるが楯無はある事を話した。

 

「虚ちゃん、藤間首相は!?」

「えっ?」

 

 虚は少し驚くが楯無は更に続ける。

 

「鳳ちゃんの事よ! 早く藤間首相に言って助けなきゃ!」

 

 

「それにしても、無事で良かったです……」

 

 その頃、此処は学園内にある医務室。そこには彼、二夏とラウラが居た。二人はベッドに腰掛けながら話をしているが二夏は哀しい笑みを浮かべていた。向かい側にはベッドがあるがラウラが腰掛けている。

 彼女は二夏を見て辛そうに目を逸らしていた。彼等は二人っきりで話をしいていた。二夏が目覚めた後でもあるがその後、他愛も無い話をしていた。

 二夏が一方的でもあるが彼はラウラが無事である事に安心していた。一方でラウラは彼を見て何も言えないでいた。彼は自分が憎むべき対象、一夏と瓜二つである事、同時に彼には親近感を覚えるからだ。

 それは何かまでは判らないが二夏はその事を指摘した。

 

「それにしても貴女……クローンでしょ?」

 

 刹那、彼の言葉に彼女は瞠目した。彼は自分の事を知っている、出生を知っている。そう直感したからだ。しかし、それは誰にも言っておらず、知っているのは自分を造った者達と千冬の身。それを彼は何故か知っている事に驚きを隠せないでいた。

 ラウラは彼を見るが二夏は哀しい笑みを浮かべる。

 

「図星だ……ね?」

「っ……き、貴様、な、何者だ……ま、まさか!?」

 

 ラウラは更に目を見開くが二夏は深く頷いた。

 

「そう……僕も貴女と同じ、織斑一夏の細胞と血液、それに……この右腕を元に造られたクローン」

「なっ……お、お前もか!?」

「ええ。貴女と同じですが貴女をクローンと感じたのは、匂いです」

「匂い?」

 

 ラウラは不意に自分の腕の匂いを嗅ぐ。そんな彼女に二夏は哀しく笑う。

 

「その臭いじゃありません……気配です」

「気配?」

「ええ。僕達クローンは互いに意思疎通が出来るかどうかは判りませんが僕は感じたのです……貴女と闘っている最中に」

「私と、か?」

「はい。闘っている最中に僕は貴女が同じクローンである事に気づきましたが……貴女は突然、姿を変えた。いえ、ISの姿が変わったと言い替えれば良いでしょう」

「……」

 

 ラウラは辛そうに項垂れる。恐らく、VTシステムの事だろう。それが原因でもあるが彼は先を続ける。

 

「あの時、私は感じたのです……」

「感じた?」

 

 彼の言葉にラウラは疑問を抱き訊ねる。二夏は彼女の言葉に頷くとそれを言った。

 

「ボーデヴィッヒさんで良いですか?」

「…………」

 

 ラウラは無言で頷く。それを見た二夏は哀しい笑みを浮かべるが先を続けた。

 

「ボーデヴィッヒさん、私は貴女を助けた時、貴女はとても哀しい表情を浮かべていました……」

 

 二夏はラウラに対して、あの時の事を話した。あの時、二夏は全ての力を剣に込め、ラウラを千冬擬きから助け出した。が、彼女の表情はとても哀しみに満ちていた。

 人間の醜さとかではなく、彼女自身のつらい気持ち、悲しい気持ちが籠められているようにも感じられたのだ。二夏は彼女を見て何かを悟った。

 彼女は誰かの温もりを欲しかった。それは何かまでは判らないが一番心当たりあるのは彼女、千冬ではないのか、と。彼女はラウラを立派に育てたと思っているだろうが彼女は一夏に対して憎悪を抱いている。

 そんな状態で人の温もりを欲しいとは思えなかった。二夏はそれ以上の事を考えようとしたがあの時、全ての力をジルドレの剣に込めた影響で気を失ってしまったのだ。

 それはISを完全に使い熱せていないからだった。もしも完全にISを使い熱せたら倒れなかっただろう。が、今はそれとは関係ない。今はラウラに対してある事を願っていた。

 

「ラウラさん、僕は造られて一週間しか経っていません」

「何だと!?」

 

 彼の言葉にラウラは驚く。彼もクローンだという衝撃な事実に驚いていた。否、さいショア教えたから判っていたガウア稀手間も無い事に驚いているのだった。

 

「貴女から見れば僕は産まれて間もなく、無垢ともいえる赤子のような存在……ですが経験や知識は貴女の方が豊富……僕から見れば超えなければならない壁」

「…………」

「人の温もりは愚か、生前の記憶は本来の彼、織斑一夏にしか判りません。僕は彼を元に造られた存在ですが義理の弟的な存在です」

「…………弟」

 

 ラウラの言葉に二夏は哀しそうに頷く。

 

「ええ。僕はまだまだ知らない事が沢山あります。それには知識を付け、経験を積まなければなりません。ですが貴女は知識は愚か、経験も多少はある」

「…………」

「ボーデヴィッヒさん、貴女にお願いがあります」

「お願、い?」

「ええ、ボーデヴィッヒさん……出来る事なら僕に色々と教えてくれませんか? 文化の違いは愚か、経験や知識も、それに……僕も出来る限りの事はします……それに」

 

 二夏は彼女に手を伸ばす。

 

「貴女だけでなく、他の者達にも頼りましょう。僕達がクローンである前に、それを気にもせずに、人の温もりを互いに知りましょう……」

「……そんな戯言……っ」

 

 ラウラは彼の言葉に下唇を噛みながら項垂れる。彼の言葉に反論出来ないからだった。彼の言い分は間違っていないようにも感じられた。もしも間違っていたのなら……ラウラはそう思ったが彼は更に続ける。

 

「それに貴女が何故、織斑一夏に憎しみを抱いているのかは判りませんが、話をしてみたらどうですか?」

「なっ!? わ、私が奴とだと!?」

 

 ラウラは驚くが二夏は頷く。

 

「ええ、彼、居ますよ? 近くに」

 

 二夏は横の方を見る。ラウラは横の方を見た、そして驚いた。何故なら、そこには彼、一夏が居たのだ。彼はラウラを見て険しい表情を浮かべていたのだった。




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