インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

175 / 198
第175話

 

「それでドイツにはウィンナーとかビールとかの美味しい食い物もある」

「そうなんですか?」

「ああ、それだけでなく家電に関しては……まあ、色々とな」

 

 その頃、ここは医務室。室内には二夏とラウラが話をしていた。話の内容は至って簡単、ラウラは二夏に対し、ドイツの素晴らしさを教えていた。

 ドイツは如何に偉大なのか、世界にどのような影響を与えているのかを教えていた。ラウラは自慢げに話しているが二夏は微かに微笑んでいる。

 哀しそうであるが喜んでもいるのだ。二人は一晩を医務室で過ごしたのだが今日までの間、二人で話をしていたのだ。最初はぎこちない物だったがラウラは何時の間にか、彼に対し、心を赦しつつあった。

 彼は自分と同じクローンである事に気づいたのだ。臭いは兎も角、彼は子供のように真剣に聞いてくれている。自分が怖いとか関係ないのだ。

 が、彼が聞いてくれるだけで心が落ち着いてく、憎しみ等が消えて行く。彼は一夏と良く似ているが性格はまるで正反対だ。一夏は憎しみでしかないが彼は哀しみや喜びと言った感情を持っている。

 ラウラは彼に対し、心を赦したのも自分の話を真剣に聞いてくれているからだ。その所為でもあるが彼女は徐々に表情を柔らかくしているのだ。彼女は嬉しそうであるが二夏は哀しそうでありながらも微かに喜んでいた。

 

「それにドイツの軍事力は世界……まあ、上位に入るくらい強い」

「そんなに……フフ、貴女もドイツ軍に所属しているから強いのですね?」

「当たり前だ……それにお前には押されていたからな?」

「それはごめんなさい……でも、試合で手を抜くのはあるまじき事でしょう?」

「まあな……それにしても二夏、お前は変な事を言うな? 試合に手を抜くのは相手に失礼だろう?」

 

 ラウラはいつの間にか彼を二夏と呼んでいた。が、心を赦した証拠でもあり、彼は危険人物ではない事を察知したからだ。彼は自分に攻撃する気配はない、と。

 自分勝手な考えではない、彼女はそう確信しているからだ。

 

「それにしても二夏、今日は天気が悪いな?」

 

 が、ラウラは何かを思うように窓の方を見る。窓は二夏のベッドの近くにあるが彼女は天気が悪い事に気づく。二夏も彼女の言葉に気づき、窓の方を見る。

 

「確かにそうですね……」

「今日は曇なのか?」

「曇?」

 

 ラウラの言葉に二夏は哀しそうに驚く。が、ラウラは頷くとそれを教えた。

 

「曇とは天気の一つだ。晴れになるか雨になるのかも判らない。が、何方かと言えば良い方か悪い方かは判らない物だ」

「そうなんですか?」

「ああ。それに二夏? お前は知らないのか、天気を?」

 

 刹那、二夏は哀しそうに項垂れる。否、彼は知らないからだ。彼は産まれた意味での造られたばかりのクローン。一夏を元にだが生前の記憶は曖昧でもあるのだ。

 が、ISの腕は申し分ない。練習すれば強くなる素質があるのだ。天気を知らないのはずっと、一彦のいる、霧に囲まれた建物で過ごしていたからだ。

 その所為でもあるが彼はISを使えるようになったり、霧の影響で身体の細胞が突然変異を起こし、一般人よりも強いのだ。二夏はそれを知らないが一彦に一夏を紹介された日が初めての外出でもあるからだ。

 彼は自分が知らない事が山程あるがそれは徐々に覚えらせれば良いだろう。現にラウラはドイツの事を良く教えているがそれは本の一部に過ぎないだろう。

 

「二夏?」

  

 ラウラは二夏の様子に気づくが彼は顔を上げると哀しそうに微笑む。

 

「いえ、何でもありません……ですが」

 

 二夏は不意に目を逸らす。

 

「僕は……自分でも……判らない事があるのです」

「判らない事?」

 

 ラウラの言葉に二夏は深く頷いた。実は彼は一彦に一夏を紹介された事を一彦自身から何も教えられていない。同時に自分は織斑一夏のクローンである事を教えられた。

 が、彼、一夏本人と邂逅したのは良いが、二夏はその事を教えられたのは彼と逢う前だ。二夏は突然の事で戸惑うが彼は産まれてから二日後でISの修行をさせられたのだ。

 一彦の教えの元であるが彼は何も解らなかったのだ。同時に人を思いやるのは一夏の記憶を受け継いでいるからでもあるが彼は何も知らないのも事実だ。

 赤子のような存在でもあるが二夏は自分が産まれた理由を知りたいが今はどうすれば良いのかは、彼にも判らなかった。二夏は自分の出生は愚か、一彦の目的を知らない。

 彼は一彦が何をするのかを判らない中、ラウラは自分を見ている。心配そうに見ているが彼女は二夏に対して、親しみを感じているからだった。

 そんな中、扉の開く音が聴こえた。彼等は音に反応し扉の方を見やるがラウラは目を見開いた。が、直ぐに歯を食い縛る。二夏は目を見開いているが微かに微笑む。

 そこには、扉を開けたのは一夏だった。近くには誰もいないが彼は風のように移動したからだ。彼が此処に来たのも、二夏にある事を訊ねにきたからだ。

 

「二夏」

 

 一夏はそう言った後、扉を閉めると彼に近づく。彼は目を見開くがラウラは歯を食い縛りながら彼を睨んでいた。が、一夏は彼女の様子に気づく前に彼の前に立つ。

 

「義兄さん?」

 

 二夏は一夏を見て微かに驚いていた。彼が、自分を見る彼の目は険しいのだ。まるで自分に対し怒りを感じている。自分は彼に何も悪い事はしていない。

 二夏はそう言おうとした。刹那、二夏は胸倉を掴まれた。そして彼に引き寄せられる。

 

「二夏!?」

 

 ラウラは一夏の行動に驚くが二夏を心配し声を上げる。一方で一夏は険しい表情を浮かべながら歯を食い縛っている。彼は二夏にある事を訊ねようとしていた。

 それは疑問かつ憤怒しかない。彼が二夏に怒っている事、それはある人物に対してだった。

 

「貴様、何を隠している?」

「えっ……?」

 

 二夏は目を見開くが一夏は更に続ける。

 

「惚けるな……! 奴は何故、お前を俺の下へと連れて来た……!? 何故、お前を紹介した……!?」

 

 一夏は二夏に怒る。それは一彦に関係する物だった。彼は一彦が連れて来たのだ。右腕を元に造られたとは言え、彼は自分の義理の弟だ。同時に彼は何故、二夏と言う存在を出汁に取引に使ったのかを疑問に思った。

 因みにその取引とは、ゲーム関係だがそれはバトルロワイヤルでの事だった。二夏は第二の計画を彼に教えていたのだ。が、彼のメールには続きがあったのだ。そのメールは下にあったのだが一夏は怒りを隠せないでいたのだ。

 

『更に追伸、織斑一夏には織斑二夏と言う、彼のクローンがいるから気をつけてね〜〜それも彼の強力な仲間だから〜〜』と。

 

 これには一夏は目を見開くのも無理はないが取引に入っていないのだ。二夏の面倒を見ろと言う言葉とも見て取れる。一夏は二夏の面倒は愚か、したくもない。

 彼は親近感があるだけでそれ以上の感情はない。取引の道具とし手利用しているだけに過ぎない。一夏はそれ以上に一彦の騙しとも言える裏切りの怒りを感じているのだ。

 一彦は同盟相手ではないが取引相手かつ、潰すべき存在だ。一夏はそう思っているが二夏に言い続ける。

 

「答えろ……奴は何の目的でお前を俺に託した? 何故、お前の面倒を押し付ける? 答えろ……!」

「な、何の事なの? ボ、僕、何も知らないよ!?」

 

 一夏の言葉に二夏は困惑しかなかった。彼は何も知らないからだ。それは本当であるが一夏から見れば敵としか思えなかった。しかし、そんな一夏にラウラは怒る。

 

「止めろ! ソイツが何をしたんだ!?」

 

 ラウラは一夏を止めるが彼は彼女の事を機にもしなかった。ゲーム関係でもあるが今は二夏に指摘、否、尋問に近い事をしているのだ。ラウラは二夏を助けるべく彼を止めるが一夏は二夏に対して怒り続けていた。

 二夏は一夏の尋問で苦しい思いをしていた。彼等の間に不穏な、危険な空気が流れ始めていた。それは一夏が発端であるが彼から見れば関係ないだろう。

 が、ハイヒールの音が聴こえた。それは走る方であった。が、彼等はそれに気づいていない。そして、扉が大きな音を立てながら開く。

 

「これは何の騒ぎだ!?」

 

 扉を開けたのは、ある女性だった。その女性は一夏達を見て驚くがラウラは声がした方を見る。

 

「きょ、教官……!」

 

 ラウラはその人物を教官と呼んだ。その人物は彼女が慕う物であり、一夏とクローンであるが二夏の義理の姉とも言える千冬だった。千冬は彼等を見て驚くが一夏は彼女を見るが歯を食い縛っていた。

 嫌っている事を意味しているが千冬は彼を見て微かに怯えていた。それは和解出来ないと知りながらも再び彼と話が出来ると感じてしまったからだ。

 ラウラは驚き、一夏は彼女を睨む中、二夏は千冬を見て微かに困惑していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。