インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第176話

「い、一夏……!」

 

 千冬は今、ある理由で医務室に向かおうとしたのだが医務室が騒がしい事に気づき、駆け足でそこへ向かい、扉を開けたのだ。が、そこにはある人物がいた事に気づき、驚きを隠せないでいた。

 その人物とは一夏だった。彼は彼自身とは瓜二つの存在であり、自分のもう一人の弟ではないかとも思える者、二夏の胸倉を掴んでいるからだ。

 近くにはラウラが一夏に詰め寄っているが二夏は困惑している。しかし、ラウラと二夏は自分を見て驚いているいる。来た事でもあるが彼女も驚いていた。

 一夏を見ているからだが当の本人である彼は千冬を見て舌打ちしていた。嫌っているからでもあるが彼は訊ねた。

 

「……何しに、来た?」

 

 刹那、千冬は身震いした。彼の口調は怒りが孕んでいる。同時に自分に対して嫌悪している。彼女自身それに気づいているが辛そうに目を逸らすと、震えながら答えた。

 

「実は……その者、二夏と言う者の事や、ラウラを心配してきたのだ」

「教官……!?」

 

 千冬の言葉にラウラは驚きを隠せない。が、千冬の本心は兎も角、千冬は二人を心配し、医務室へと来たのだ。ラウラは自分の大切な教え子の一人であり、部下でもあるが生徒の一人でもあるからだ。

 

「それに……二夏と言う者の処遇も……決まった」

「えっ?」

 

 千冬の言葉に二夏は瞠目した。彼は、二夏は自分の所の生徒ではないが近い内、IS学園に入る事になったのだ。それは昨日決まった事であり、彼の身柄を何所にも渡さないと言う事で学園に入学許可が降りたのだ。

 しかしそれは十蔵及び、一義首相の判断により決まった事である。十蔵は元より、一義は日本の総理大臣かつ、絶対的な権力者の持ち主であるのだ。

 彼は国民を思うのは兎も角、二夏が他国での人体実験のモルモットにされる事を快く思わず、それを危険視したが為でもある。彼の判断は間違っていないが彼は何者以前に、知識や実力はどのくらいあるのかは試験を受けない限り、知る事は出来ない。

 試験は兎も角、裏口合格にも等しいが彼の安否を思えば苦渋な決断でしかないだろう。千冬はその事を二夏に言うが彼は哀しそうに項垂れる。

 

「ごめんなさい……僕なんかの為に……」

「い、否、お前が気にする事ではない……それに、お前は一……織斑に続いて第三の男性操縦者だからな」

 

 千冬の言葉に一夏は眉をひそめ、二夏は目を見開きながら顔を上げる。

 

「第三の……えっ?」

 

 二夏は彼女の言葉に疑問を抱く。自分が第三の男性操縦者。それは疑問でしかないが自分や義理の兄、一夏の他にも誰かが、第二の操縦者がいる事を意味しているのだ。

 しかし、そんな彼に対し、一夏はある事に気づき舌打ちすると、眉を顰めながら目を逸らす。彼は心当たりがあった。その者は恐らく奴の事だろう。

 奴とは黒峯一也の事だ。奴は数日前、自分が右腕を造れる存在の関係する資料を捜しにドイツ軍基地に侵入した際に襲撃してきた者だ。彼は主催者が教えてくれたISを纏っており、自分を殺すべく、襲撃してきたのだ。

 あの時はドイツ軍が抗戦したが壊滅的な打撃を受け、同時に回復を図るのには時間が掛かる。今はどうなっているのかは判らないが回復と言う意味で立て直しの最中だろう。

 が、一夏は微かに警戒していた。一彦だけでなく、一也までもがISを手に入れた。それは彼等も実力があるのと、自分達とは対等な存在と言う事を意味させている。

 一夏はそれに危惧するがもう一つ、気になる事もあるのだ。それは自分に襲いかかってきた全身包帯姿の大男。ミイラとまでは言えないがあれは何なのかも気になるのだ。

 

「織斑……」

 

 が、一夏は思考を遮らせ、我に返する意味での千冬の言葉に彼は視線を彼女へと向ける。

 

「っ……!?」

 

 彼の視線は鋭い。千冬から見れば辛い物だったが彼女は一夏が自分を嫌っている事は理解していた、和解したくても彼はそれを認めないだろう。ISの件は彼がジャックをパートナーとして認めている事だけは理解しているが和解したい事に変わりはない。

 今は彼が此処に居る事を咎めたいが今はそれが出来ない。彼に嫌われると言う恐怖、彼は自分に対し、言う事を聞かない事には気づいていた。

 千冬は彼を見て困惑するが一夏は何故か舌打ちすると、二夏を突き放す。

 

「うわっ……!」

 

 二夏はベッドの上に仰向けに倒れる。

 

「二夏!」

 

 ラウラは驚きながら二夏の方へ向かうと、彼を心配そうに見つめる。が、直ぐに一夏の方を見ると軽く睨む。彼は自分が憎むべき存在。ラウラはそれに気づいているが二夏に対しては心を赦しつつある。

 彼は一夏とは違い、物腰が柔らかいのだ。その所為でもあるが二夏に対しては微かな好意を寄せている。しかし、一夏は敵対している存在であり、憎悪の存在だ。

 彼女は二夏に対し心を赦し、一夏には敵意を剥き出しにしているが一夏はラウラを見ている。鋭い視線を向けているが彼女の様子には気づいていた。

 自分を嫌っている事を理解していた。彼女は千冬と言う者を崇拝しているのと、それを、自分を汚名とも認識されている。それは下らない物であるが一夏は溜め息を吐くと、ラウラに対し、背を向けると、千冬の方へと歩き出す。

 

「い、一夏……」

 

 千冬は一夏を見て驚く。何かをされる。そう感じたからだ。彼は弟であり生徒だが何故か動けないのだ。彼を恐れているからだが一夏はそれを気にもしない。

 彼は険しい表情のまま千冬の横を通り過ぎる……訳ではなかった。彼は千冬の横に止まると、彼女に言った。

 

「……さっきの話、本当か?」

「えっ?」

 

 彼の言葉に千冬は目を見開くが彼を見る。彼は目の前を向いているが視線を横に向ける気配はない、表情も険しいままだが彼は先を続ける。

 

「奴……二夏は学園で面倒を見る事になったのか?」

「あっ……ああ」

「別の俺はソイツがどうなろうが気にもしない……が、面倒は見ない……!」

「なっ!?」

 

 千冬は驚くが一夏は視線を彼女の方へと向ける。

 

「奴は俺の義理の弟でもあるが出生は知らない……それに面倒は見ないのと、俺は奴を見る程、時間を無駄にしたくないからな……!」

「い、一夏、何を言ってるのだ!? 義理の弟は兎も角、奴はお前の……っ」

 

 千冬はそれ以上は言えなかった。二夏の事は兎も角、彼は一夏とは瓜二つの存在だからだ。それに二夏は彼、一夏を『義兄さん』と呼んだのだ。

 千冬から見れば驚きでしかないが客観的に自分の義理の弟ともなる。その考えは前にもあったが今はそれどころでは無い。彼は二夏を見ないと言ったのだ。

 千冬は反論しょうにも彼が面倒を見る理由はないのだ。彼女はそれに気づきながらも困惑していた。二夏はどうなる? 彼は学園で過ごす事を決定事項とされているが身寄りは無いに等しい。

 千冬はそう考えているが辛い物である事にも気づき、俯く。そんな彼女を一夏は何も言わずに見ているがどうだって良いと思い、知った事ではないと思い、医務室を出て行った。

 

「待て……!」

 

 ラウラは追い掛けようとした。

 

「ダメです……!」

 

 そんな彼女を二夏は彼女の手を掴みながら止める。

 

「何故だ!? 奴は教官を……えっ」

 

 ラウラは二夏に対し、一夏の事で怒るが何故か目を見開いた。二夏は哀しい表情を浮かべていたからだ。自分を呼び止めた事もそうだが彼はある事に気づいていた。

 一夏と千冬、二人の姉弟の問題は彼等で解決するしかないと気づいたからだ。彼等は何かの事でギクシャクしているが自分達が関わるべきではないのだ。

 二夏はそれに気づいたが産まれて間もない彼がそう感じたのも一夏の生前の記憶が原因でもあった。二夏はそれに気づくのは兎も角、ラウラを止めたのは部外者である事にも気づいているからだ。

 

「僕達は……義兄さんと彼女の問題に関わるべきじゃない……」

「だが奴は教官を……!」

 

 ラウラは反論するが二夏は首を左右に振る。

 

「僕達は……見ているだけでしか出来ない……それに、今の僕達に義兄さんを止める事は出来ない」

「そんな……!」

「ラウラさん……お願い、今は何もしないで……」

「……っ」

 

 ラウラは彼の瞳を見て何も言えなくなる。彼の瞳は哀しいが見守る事しか出来ないのを教えている。これにはラウラも何も言えなくなる筈だが彼女は辛そうに俯く。下唇を噛んでいるが己の無力さに気づき、遣る瀬ない思いをしているからだ。

 そんな彼女に二夏は何も言わないが不意に視線を千冬の方へと向ける。彼女は項垂れているが身体を震わせていた。一夏の拒絶とも言える反応と二夏の事で何も言えず、己の無力さに遣る瀬ない思いをしていた。

 彼は千冬を哀しそうに見ているが彼は辛そうに瞑目すると、項垂れた。

 

 

 




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