インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「…………」
あれから数分後、此処は学生寮の一夏と楯無の部屋。そこには一人の幼女がベッドに腰を下ろしながら兎の人形を包むように抱き締めていた。
が、彼女の表情は良くない物だった。これから起きる、否、数分前に届いた一通のメールを見たのと、それが原因で恐怖しているのだ。そのメールとは、あるプレイヤーが主催者に通して送ったメールでもある。
それは、自分と同じプレイヤーの一人でもある夢見一彦からだった。彼は自分を含めた全プレイヤーに殺し合いのバトルロワイヤルを提案してきたのだ。
生き残るのは一人かつ、全てのプレイヤーが決着つける為にもだ。それは幼女には、一彦と同じプレイヤーでもある一美には辛い物だった。
彼と闘う。それは避けられぬ事だが勝てるかどうかも判らない。彼はISを持っており、自分よりも体力や知力が富んでいる。自分にはそれと対等に渡り合える力はない。
が、勝てないと言う訳ではない。自分には彼がいるのだ。一美は彼の事を思い出す……刹那、何者かが彼女の近くに風のように現れた。
「あっ……」
一美は彼の気配に気づくがその人物は彼女を冷ややかな目で見ていた。同時に呆れていた。その人物は一夏である。彼は一美と同じプレイヤーの一人かつ、同盟者である。
彼女は彼の事を思い出したのだが一彦と対等に渡り合えるのは彼しかいないのだ。彼もISを持っているが強力な殺人鬼、ジェイソンを引き連れている。
同時に彼は既に二人のプレイヤーを倒している。実力はあるのと同時に何れ闘わなければならない。一美はそれに気づいているが怯えていた。
彼は自分を見下ろしている。眉を顰めているが無言なのだ。一美から見れば彼を怒らせたとしか言えない。しかし、自分は彼を怒らせていないのだ。
一美は彼を見て怯えるが彼は何故、此処に来たのかを知りたかった。それを訊ねたかったのだが無言の威光が彼女の言葉を詰まらさせている。
「……おい」
そんな中、一夏が口を開いた。これには一美は肩を震わせるが彼は彼女に訊ねているのだ。が、彼は何故か溜め息を吐く。一美の様子に気づいたのだ。
自分が訊ねた所為でもあるが彼女は怯えているのだ。が、一夏は彼女の様子に気づきながらも敢えて先を続ける。
「……お前も見たのか? 奴からのメールを?」
「……っ」
「……答えろ……!」
一夏は一美に対して怒る。これには一美は怯えるが涙を浮かべてしまう。彼に怒られたと思ってしまったからだ。そんな一美に一夏は舌打ちした。彼は彼女に訊ねているだけだが自分と同じプレイヤーでもあるからだ。
慈悲や優しさを与えるつもりはないのだ。同盟者であり、それが切れれば敵同士。一夏はそれに気づいているのと同時にそんな口調になっても可笑しくはないのだ。
一夏は一美を見て髪を掻く。彼女に訊ねても、無駄だと言う事に気づいたのだ。まあ、信用していないのもそうであるが彼女の近くから二体の人形が風のように現れる。
チャッキーとティファニーだ。彼等は一美の引き連れている殺人鬼でもあるが彼等は怒っていた。彼等の視線の先には一夏がいるがチャッキーは彼を指す。
「おいてめぇ! 俺達の同盟者だからってこの小娘を怒る事ないだろうが!?」
「そうよ! それに私達は奴、夢見一彦からのメールを受け取ったから知ってるわよ!? それなのなんで、この娘に訊ねる訳!? 絶対苛めているでしょう!? 殺されたガキ共と同じように!?」
今度はティファニーが彼に怒る。チャッキーと一緒にでもあるが二人で詰るつもりだった。が、一夏は眉を顰めていたがある言葉を気にしたのだ。
それは、ティファニーが放った言葉だった。彼はその事を訊ねた。
「……そこの女、今なんて言った?」
「はあ!? 夢見一彦からのメールを受け取ったから……」
「そこじゃない……! ……その後だ……!」
「はっ!?」
「早くしろ……!」
一夏はティファ二ーは対し、その後の事を訊ねていた。彼は彼女の言葉にある疑問を抱いたからだ。それは何を意味しているのか、一彦は何故、子供達を殺したのかの手掛かりでもあるのだ。
一夏はティファニーに対して後の事を言うよう怒るがティファニーは彼を見て舌打ちした。
「チッ! それが何よ!? 私はアンタ殺されたガキ共と……」
「……それだ……!」
刹那、ティファニーの言葉に一夏はそれに気づいたのだ。そんな彼にチャッキーとティファニーは眉を顰め、一美は瞠目していた。一人の二体の人形達は判らないのだ。
が、一夏は何かに気づいていた。そして何故か瞼を閉じる。思考を走らせ始めていたのだ。彼はある事を思い出しているのだ。それは数日前に自分と一美が屋上に居た時に現れた一彦との再会の際だった。
彼は計画の事を自分達に教えた時でもある。一夏は計画の事は気にもしなかったがそれが実行された日が今日である事にも気づいているが子供を大量に殺した事に疑問を抱いていなかった。
が、ティファニーの言葉で、一彦が言った言葉を思い出す。
「それには多くの生贄が必要。それは大きな衝撃かつ、悲哀に憎悪、悪報、憤怒でしかなく、同情も無い……』
一彦は確かにそう言っていた。同時にその言葉には意味があったのだ。多くの生贄は子供達である事だ。しかし、『悲哀に憎悪、悪報、憤怒でしかなく、同情も無い……』。
その言葉の意味は理解出来なかった。否、彼自身、気にもしなかったのだ。が、その言葉は生贄である子供達に対してだったのだ。一夏は思考を走らせるが彼は瞼を開く。
刹那、彼は舌打ちしたのだ。
「ど、どうしたの?」
一美は恐る恐る彼に訊ねる。彼の様子が危うい物だと気づいたのだが怒っていると思ったのだ。チャッキーとティファニーは彼を睨むが一夏は歯軋りした。
「……まさか、夢見の奴……!」
一夏は彼の名字を呟く。彼は全てを悟ったのだ。生贄が子供である事と彼が口にした言葉。それ等は全て彼の言う通り、彼が放った言葉でしかないのだ。
怒りや哀しみ、沸き上がる憎しみ、それに同情はない。子供達は、殺された者達は皆、その言葉の通りでもあったのだ。が、一夏は彼の目的は判ったとして微かに彼のやり方に怒りはありながらも殺された者達に同情はない、あるのは怒りと憎しみだけだった。
一彦のやった事は赦される事ではないが大半は喜ぶだろう。が、子供を狙った事には理解出来ないがそれ以上にあの時の、あの事件が全ての序章だったのだ。
それは青年の変死事件、あれが意味させていたのだ。それは推測でしかないが恐らく、あの出来事しかない。青年や青年の近くにいた女性、彼等が全てを知っているが子供達も彼等と同じ屑なのだろう。
一彦はソイツ等を殺したに過ぎないが一夏は眉を顰めながら目を逸らす。今まで気がつかなかった事だがティファニーのお陰で全てを悟った。
後は彼の口から聞くしか方法はないが今は日が変わる午前十二時、そこで彼に逢う以外、方法はない。彼は全てを知っているが今は生き残る事を考えるしかないのだ。
一夏はそう思いながら彼女、一美を見る。一美は自分を見てビクッと震わせるが溜め息を吐く。ああ、やっぱりか、と。自分は怒っているつもりでもあるが一彦の事でそれ等は全て消えたのだ。
が、今宵多くのプレイヤー、自分達を含めた全てのプレイヤー達出の殺し合いが始まる。一夏はそう気付いていた。刹那、ポケットに違和感を感じた。
否、そこにはスマートフォンを入れていたのだ。彼はそれに気づきポケットに手を入れると、それをポケットから取り出した。スマートフォンは振動していた。違和感の正体はそれだったのだ。
しかし、一夏はスマートフォン、否、画面を見て眉を顰めていた。そこには一件のメールが届いていた。それは白い手紙ではない、赤い手紙だった。差出人は主催者からだが恐らく、一彦が主催者に通して伝えているのだ。
一夏はその手紙を見ていたがそれを開く。刹那、一夏は更に眉を顰める。
「お、織斑、さん……?」
そんな彼に一美は恐る恐る尋ねる。彼の様子に気づいたのだが声をかけてしまったのだ。が、一夏は彼女を見ていない。届いたメールを睨んでいた。内容を見ているのだ。
そして、そこにはある事が書かれていたのだ。
『件名、一彦からの全プレイヤー達への通達『更に更に追伸、場所は東京にある町外れの〇〇の廃工場、そこは広いし、隠れながら闘えるから。生き残るか残らないかは君達次第だからね〜〜』と』
一夏はそれを見ていた。が、今夜十二時、自分達プレイヤーはそこで集結し、殺し合う、それに気づいていたのだった。