インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第178話

 あれから数時間後の午後十一時……否、丁度十二時になる頃、東京は静寂に包まれているが一部、賑やかな場所が幾つもあった。が、ここはそこらとは違い、不気味な程静寂に包まれている、とある廃工場。そこは数年前から手付かずの状態で世間から放置されていた。

 此の建物は何を造っているのかは当時の関係者かつ、付近に棲んでいる住民達にしか判らない。が、その建物の至る所は錆び付いており、建物内は黴臭い。

 鼠やゴキブリ等、最悪、外来種の住処にもなっているだろう。同時にそこは人が足を踏み入れる場所ではないがそれを破る意味で侵入する者達も少なからずいた。

 大半は心霊関係で肝試し、検証等が理由だろう。昼間でも不気味なのに、夜中になるとそれが更に増すのだ。

 

「……ここか」

「……っ」

 

 そんな中、建物近くに二人の人物が居た。何方も子供であるが一人が右腕がない青年、もう片方が幼い女の子だった。が、彼等は兄妹ではない。

 彼等が来たのは、ある人物の催しに参加する為でもあった。彼等は肝試しに来た訳でもない、二人は廃工場を見上げるが青年は眉を顰めており、幼女は怯えていた。

 そして彼等は、青年は織斑一夏であり、幼女は楓一美である。二人が此の場所に来たのはゲーム関係である。ゲームと言っても愉しい、と言う訳ではない。命を懸ける意味でも参加しているのだ。

 彼等はゲーム関係者でもあるが同盟者同士でもあった。

 

「……行くぞ」

 

 一夏は工場を見上げた後、近くにいる一美にそう言いながら工場の方へと歩く。

 

「あ、あのっ!」

 

 しかし、そんな彼を一美は呼び止める。一夏は足を止めると、彼女を肩越しで見る。眉を顰めていたが一美は怯えていた。此のゲームに参加するのを躊躇っているようにも思えるが彼女は怯えながら彼に言った。

 

「わ、私達だけで……行くの……?」

「……はっ?」

 

 一美の言葉に一夏は呆れる。が、一美がそう言うのも無理はない。彼等は誰にも言わずに此処へと来たのだ。同時に補導される危険もあるのだがゲームに参加するのは宿命でもあった。

 彼等は死のゲームを制する為に此処へと来たのだ。それはゲームを進める為にも、生き残る為でもあった。彼等の目的は一つ、自分等以外に参加しているプレイヤー達を倒す為だ。

 此の催しを考えたプレイヤー、夢見一彦と自分達の他に参加するだろう黒峯一也、ピンヘッドのプレイヤー。彼等はその者達を倒す為に来たのだ。

 同盟しているが彼等を倒すのが先決だった。しかし、一夏はゲームに参加する事に戸惑ってはいない。一美は参加する事に戸惑っているが別の事を心配していた。

 

「い、言わなくても、良かったのかな?」

「……あいつ等にか?」

 

 一夏の言葉に一美は頷く。彼が言うあいつ等とは楯無達の事だ。彼女等はゲームの事を知らない。が、彼女等には言ってないのだ、此の事を。

 もしも教えるか、此の事を知ったら自分達に訊ねるだろう、それは二人にとって良い事か悪い事かは判らない。が、一美は楯無に教えた方が良いと思っているが、一夏は悪いと思っているだろう。

 一美の言葉に一夏は舌打ちした。

 

「……知るか、それに教えたところで奴等は干渉してくる……」

「でも……! つ……!?」

 

 刹那、一夏はギロリと一美を睨む。一美は彼の視線に怯える。彼は怒っている、そうきづいたのだ。が、二人は楯無達に言ってないのは兎も角、勝手に抜け出してきたのだ。

 学園で過ごしたのは良いとして、就寝時間まで学園に居たのだ。楯無達が寝静まった頃に此処へと来たのだ。準備は昼間やったのだが今は此処にいる。

 それなのに彼女等が干渉してきたらゲームの事を知られるのと、無理にでも参加する危険があるからだ。一夏はその事を言わないのは良いとして彼女等を信用している訳ではないのだ。

 同時に彼女等を足手纏いとしか思っていないのだ。一夏はその事を一美に言わないが舌打ちすると、彼女に言った。

 

「俺達はゲームを進めるのが先だ……それに、っ」

 

 一夏は何かに気づくと、再び舌打ちし、前を向く。

 

「取り敢えず……俺達は先を進める……奴を、他の奴等を潰す為にもな……!」

 

 一夏はそう言った後、工場の方へと歩き出す。

 

「あっ……」

 

 そんな彼を一美は心配そうに見ていた。彼の後ろ姿が、背中に何かを感じていた。彼はゲームを進める為に闘おうとしている。自分よりも経験は豊富かつ、強力な同盟……が、一夏は立ち止まると彼女の方を見る。

 

「……来い、そこでじっとするな」

 

 彼の言葉に一美は我に返ると、慌てて彼の方へと歩く。そんな彼女に一夏は溜め息を吐くが彼は再び歩く。そして二人は、工場の中江へと足を踏み入れた。そして、奥の方へと歩いていった。

 

 

「……良し、行くぞ、ブギー……!」

 

 その頃、廃工場の別の出入り口では一人の青年と、一人のハロウィンマスクを被っている大男が居た。青年は全身黒ずくめであるが表情は険しい。手にはショットガンを持っている。

 もう一人、大男は青い作業着を着ているが右手には大きな包丁を持っている。そう、彼等もゲームの参加者であり、プレイヤーでもあった。

 彼等の名は、青年は黒峯一也、彼の近くにいる大男は彼が引き連れている殺人鬼、ブギーマンである。彼等は工場の中へと入る前、一也はブギーマンを見る。

 

「ブギー、奴らは来るか?」

「…………」

 

 一也の言葉にブギーマンは何も反応しない。が、一也は舌打ちすると廃工場を見上げる。何時見ても不気味であるが彼には関係なかった。

彼、一也はある事を呟く。

 

「ここに奴等が……織斑一夏……夢見一彦……それに人形を引き連れている奴に……ピンヘッドのプレイヤー……!」

 

 一也はある人物達の名を呟く。それは自分の他のプレイヤー達である。彼等は自分と対等の力を持っている。が、負ける訳にもいかなかった。

 自分には生き返らせたい大切な人がいる。彼女の為にも負ける訳にはいかない。それに一彦の催しは怒りが沸きながらも千載一遇のチャンスとも思っていた。

 奴等を全員倒せる。それは一也の考えでもあった。が、彼はそう思いながらも呟いた。

 

「行くぞ……奴等を倒しに……!」

 

 一也はそう言った。同時にショットガンを軽くスライドすると、ブギーマンを連れて、工場内へと入っていった。

 

 

「フフフ〜〜」

 

 同時刻、此処は廃工場にある、とある一室。そこには壁に凭れ掛かっている彼が居た。夢見一彦だった。彼は壁に凭れ掛かりながら鼻歌を歌っているが余裕な表情を浮かべている。

 理由は簡単、これから起きる、自分の催しがどうなるのかを今か今かと待っていた。十二時はもうちょっと先であるが彼は落ち着いていた。

 刹那、彼の近くに一人の殺人鬼が現れる。フレディだった。彼は一彦を見て首を傾げる。

 

「どうした一彦? 余裕そうじゃねえか?」

 

 フレディは彼を見てそう言うが一彦はフレディを見ると口を開く。

 

「だって自分が企画した催しだよ? どうなるか見物でしょう〜〜?」

「そうだけど一彦よ? お前は大丈夫なのか?」

「えっ?」

 

 フレディの言葉に一彦はキョトンとするが彼は先を続ける。彼は一彦の催しに厭な予感しかしないのと、胸騒ぎを覚えてからだ。今夜、誰かが死ぬ。それはフレディにとってどうだって良い事だが一彦ではないかと危険視していた。

 一彦が死ぬかもしれない。それはフレディにとってそうとしか思えなかった。が、彼の心配を他所に一彦は軽く笑う。

 

「大丈夫だよフレディ? 僕は死なないよ?」

「だけどよ……何か胸騒ぎを感じるんだよ……」

「それは君の心配だろう? それに君は昨日、多くの子供を殺したでしょ?」

「それはそうだけどよ……まあ、暫く出来なかった鬱憤を晴らせたし……」

「でしょ? それに僕にはジルドレもあるし……何より、此処は隠れる場所も一杯あるし、作戦もあるからさ?」

「作戦?」

 

 フレディの言葉に一彦は頷くと、彼は壁から離れ、歩き出す。

 

「此処は廃工場……それに」

 

 一彦は両手を横に伸ばすように広げる。

 

「隠し玉もあるし、相手の心理を付くには持って来いな場所でもあるからさ?」

「隠し玉……ああ、あれか!」

 

 フレディはそれに気づくと彼も笑う。そんな彼に一彦も釣られるように笑うが彼は言った。

 

「今宵始めるよ? ゲームを進める為の殺し合いがね? それに僕の願いを叶える為にもね?」

 

 一彦はそう言いながら軽く笑った。そう、此の催しは彼がゲームに本腰を入れた第二の計画でもあった。それは彼の願いを叶える為にも己の欲望を満たす為でもあった。

 それには一夏達プレイヤーが生贄になる必要があった。が、それはどうなるのかは彼等には判らない。しかし、彼等は工場内に居るのだった。

 ゲームを制する為でもあり、願いを叶える為でもある。

 

 一夏はISにより腐った世界を変え、自分を迫害した者達を絶望に叩き込む為に。

 一美は父を生き返らせる為や自分達を捨てた母や世界を変える為に。

 一也は家族や想い人を殺した奴を破滅に導き、家族を生き返らせ、大切な人を生き返らせる為に。

 そして一彦は、此の世界に腐った人間共を一人残らず消す為に。

 

 彼等は願いの為に殺し合おうとしていた。が、結果はどうなるのかは誰にも判らない、そして誰が脱落するのかも彼等の行動次第である事も、彼等は知らない。

 それをは、神のみぞ知る、だった。

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