インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第18話

 

 あれから三日後、此所は東京の某所。今の時間帯は夜七時であるが今日に限って記録的な大雨が降っていた。視界を遮るようにも思えるが電車や飛行機等に支障を来し、街行く者達を不愉快な気分にさせている。

 

「では、彼の行方は未だ掴めず、手掛かりがないと?」

 

 そんな中、此所は更識家の源次の部屋。部屋には灯りは点いてないが設けられたテーブルの上にはロウソクがあり、火が灯されていた。そして部屋には源次と楯無、男性の従者の一人が正座しながら何かを話していた。その内容は勿論、彼等は織斑一夏に関係する事であった。

 源次は従者からの報告を聞いて、眉間に皺を寄せ、楯無は軽く俯く。その報告は望まなかった物であった。

 

「はい――ですが彼の行きそうな場所には彼はおらず、手掛かりを求めようにも街行く者や親しい者達にも訊こうとしたのですが、彼が逃げたと知れば、更に混乱を極まると思い、止めました」

「……うむ、それは最善な事だ――それに彼が逃げた事を世間はまだ知らない」

 

 源次は従者の言葉に納得するが彼は不安を隠しきれないでいた。それは一夏が逃げた事を伏せているのだ。もしバレたら大問題になる。政府からは咎められ、千冬からは何を言われるのかは判った物ではない。

 源次は少し悩む。彼の行きそうな場所は一通り調べたが手掛かりは掴めない。彼の行動範囲は自分でも判断出来ない。彼の立場から考えても彼がどう動くのかも判断出来ないのだ。

 源次は少し悩む中、楯無はある事に気付く。

 

「それよりも織斑君の行きそうな場所は兎も角、一目に付かなそうな場所も調べたの?」

「それも調べたのですが、行きそうな場所は全て調べましたが見つかりませんでした――他の者達からの連絡も残念な結果に」

「そう……織斑君」

 

 楯無は表情を暗くした。彼はいなかった――それは楯無が自身を責めるに等しい事でもあった。出来る事なら見つけたい――手荒な真似をする事は仕方のない事だが保護すると言う名目でしかないのだ。

 彼を守り、彼がIS学園に向かう為の理由でもある。楯無はそう思っている中、源次はある事に気付き、従者に尋ねる。

 

「それよりも家内と簪はまだか? もうそろそろ帰ってきても良いのだが……こんな雨の中ではな」

 

 源次は話題を変える。重苦しい空気に耐えきれないからではない。楯無を、娘の後悔を察しての事であったが従者は源次の言葉にキョトンとしたが直ぐに我に返ると不意に微笑む。

 

「大丈夫です。別の従者達が偵察から戻る最中、奥様と簪お嬢様と合流し、一緒に帰路に付いております」

「そうか……ならば安心だな」

 

 源次は微かに笑みを零す。安堵していたがそれは悲劇の幕開けにしか過ぎなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「簪、久しぶりの私とのお買い物はどうだった?」

 

 更識家近くの住宅街の道路、そこには簪と一人の四十代前半の着物を着た女性と黒服を着た女性一人と二人の男性がいた。全員傘を差しているが軽い話をしていた。

 

「うん、久しぶりのお母さんとの買い物は楽しかった」

「そう……ありがとう」

 

 着物を着た女性は簪に微笑む。しっとりとした黒い髪に黒い瞳、四十代とは思えぬ美貌であるが彼女は更識美和。源次の妻であり、楯無と簪の母である。

 そして後ろにいる長い髪の女性は美川。後の二人は武藤と山岡である。武藤と山岡は途中、一夏の捜索と偵察の帰りであり、彼女等と偶然再会し、一緒に帰路に付いていた。

 荷物は武藤が持っているが簪と美和は話を続ける。

 

「それにしても遅くなったね……」

「ええそうね……でも,従者の皆を思えば仕方ない事よ?」

 

 簪と美和は他愛もない会話をしているが従者達は微笑ましそうに見ていた。

 

「「「!?」」」

 

 刹那、武藤と山岡、美川の従者達は後ろから気配を感じ、後ろを振り返る。後ろはさっき来た場所であるが何の変哲もない場所であるが誰一人いない。が、三人は何かを感じたのだ。

 それは殺気に近く、暗部の人間としての本能という意味で感じたのだ。

 

「どうしたの皆?」

 

 簪は三人の様子に首を傾げるが美和も気配を感じていた。彼女は現役引退した身とは言え、このくらいの殺気には気付く。四人は殺気を感じる中、武藤が口を開く。

 

「美川、お嬢様と奥様を連れて先に戻れ」

「えっ、武藤?」

 

 美川は武藤の言葉に少し驚くが武藤は美川に荷物を渡す。その表情は険しく、瞳も鋭い。山岡も美川を見るが山岡も武藤同様、同じ表情を浮かべていた。

 何方も殿の役目を担おうとしていた。相手は何者かは判らない。一人か二人かも判らない。二人はそれに気付きづつも美川に簪と美和を守るよう言い聞かせていた。

 二人の様子に美川は少し考える前に深く頷くと、簪と美和の二人に言う。

 

「お嬢様に奥様、此所は先に帰りましょう」

「えっ……でも武藤さん達は?」

 

 簪は二人の様子がおかしい事に不信感を覚える。が、美和は簪に優しく言い聞かせた。

 

「大丈夫よ簪、二人はやる事があるから、私達は先に帰りましょう」

「でも……二人はどうなるの?」

「大丈夫よ。二人は後から帰って来るから私達は先に帰って、他の従者達の帰りを待つのよ?」

「う……あっ」

 

 簪は戸惑う中、武藤と山岡の二人と目線が合う。二人は簪に大して微笑んでいた。自分達は大丈夫、貴女は二人と共に先に帰り下さい。

 そう訴えかけていた。簪も二人の様子に気付き俯くが軽く頷いた。

 

「では帰りましょう……美川、荷物を持つわ」

「いえ、私が持ちます」

「そう……お願いね。簪、行きましょう」

 

 美和は簪を連れて帰路へと付く。美川も二人の後ろを尾いていくように歩くが不意に二人を見ながら「気をつけて、後で皆を呼ぶわ」と心配の言葉を掛けると前を見た後、更識家へと向かった。

 しかし、美川を見ていたのは武藤であった。山岡は三人が振り返る前に目を離さないように気配がした方を見続けていた。武藤は三人が見えなくなるのを確認した後、山岡同様気配がした方を見る。二人は傘を閉じると身構える。

 二人は雨に打たれているが目の前に集中していた。其処には何もない。気のせいとしか思えないが何故か気配は消えなかった。刹那、何者かが二人の少し先に風のように現れる。

 突然の事に二人は『っ!?』と驚きを隠せない。人が風のように現れたら流石に驚かない方がおかしい。しかし、二人の前に現れたのは上が黒い作業着に黒いジーパンという黒を基準とした青年であった。

 その青年は鋭い眼差しを二人へと向ける。が、その青年はブギーマンを半霊としたプレイヤーであった。彼が二人の前に現れたのには理由があるが武藤が彼に訊ねる。

 

「おまえは誰だ!? それに何故、その殺気を俺達に何故向ける!?」

 

 武藤は青年に訊ねるが青年は彼らに尋ねる。

 

「奴は……何処だ?」

 

 青年の言葉に山岡は「何だと?」と聞き返すが青年は言葉を続ける。

 

「奴は……男性操縦者は何処だ? 何処に匿っている……!」

 

 青年の言葉に二人は驚愕と戦慄した。彼は男性操縦者を、織斑一夏を捜している。そう気付いた。しかし、彼は何者かまでは判らない。何処かの国が彼を拘束する為か殺害する為にはなった刺客か?

 それに何故、男性操縦者を匿っているのを知っているのか、それが疑問に思ったが山岡は青年に訊ねる。

 

「おまえは何故彼を捜している!? それに何故、俺達が匿っている事を知ってる!?」

「……それは答えん……だが、奴を此方に差し出せ……そうすれば、殺しはしない」

 

 青年は二人に対して手を伸ばす。それは慈悲でもあるが一夏を殺す事に変わりはない。が、二人から見れば無理難題なお願いでもあった。

 一夏は今、自分達の所にはいない。いたとしても差し出すつもりはないが武藤は拒んだ。

 

「断る! それにおまえの目的は何だ!? 彼をどうするつもりだ!?」

 

 武藤は彼の要求を拒む。相手が謎に包まれているからだろう。青年からは殺気が放たれているのと信用に値しない者としても認識しているからだ。

 武藤の言葉に青年は鋭い眼差しを向けていたが不意に呟いた。

 

「じゃあ……死ね」

 

 青年がそう呟いた刹那、武藤は何者かに顔や首を掴まれながら持ち上げられる。

 

「武と……っ!?」

 

 山岡は武藤を見て驚くが彼は瞠目した。彼の近くには彼の頭を持ち上げているのが一人の大男であるからだ。作業着を身に纏っているが顔には白いハロウィンマスクを被っている。

 ブギーマンだった。山岡はブギーマンを見て愕然とする。が、不意に首筋に冷たい物があっている事に気付いた。ナイフであった。そして後ろには青年がいたが彼はナイフで山岡の首筋を切った。

 刹那、首筋から紅い鮮血が飛び散るが同時にブギーマンは武藤の首を片手であらぬ方向へと曲げた。ゴキッ! という音が微かに響くが雨の音が強く、かき消される意味で無駄だった。

 しかし、ブギーマンは彼を投げ捨て、青年は山岡を蹴る。武藤は捨てられたが山岡は俯せに倒れるが首からは血は止まらない。雨で濡れたアスファルトに血の海が広がるが雨水と混ざり合っていた。

 二人は直ぐに殺されたが青年は二人を見て舌打ちすると、ブギーマンと共に姿を消した。そして二人は美川が他の従者達を連れて戻ってくるまで、そのまま雨に打たれ続けていた……。

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