インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「織斑君! 私は反対よ!?」
一夏の言葉に楯無は怒りながら反論する。彼女の言葉に一夏は楯無の方を見る。彼女の表情は険しかった。反対している事を意味しているが一也と手を組むのは良しとせず、快く思わないのだろう。
彼、一也は自分達(一夏も最近入ったばかりである)の従者達を殺した。言わば仇でもあるが反対するのも無理はない。楯無の言葉に一夏は眉を顰めているが彼も反論する。
「……仕方ないだろうが……此の状況では俺達が勝てる見込みは皆無に等しい」
「だからって奴と手を組むのは間違っているわ!! それに裏切るのかもしれないのよ!?」
「…………」
楯無の言葉に一夏は何も言わない。一方で一也は楯無の言葉に舌打ちすると、軽く目を逸らす。それでも楯無は先を続ける。
「奴は皆を殺した……! 彼のした事は赦される事じゃない!」
「…………」
「彼等には家族がいた……! 妻や子がいた……! 両親がいた……! 恋人がいた……!」
楯無はそう言った後、一也を睨む。彼は彼女の視線に気付くが睨み返す。
「貴方……いえ、お前は私達の仇! ……絶対に赦さない……!」
楯無は一也に対して言葉を述べた。怒りや憎しみが籠った視線を向けている。一也をお前と呼んだのもその証拠である。が、彼女は言葉を続ける。
「私はお前を赦さない……それに織斑君、奴と組むよりも逃げましょうよ!?」
「……何故だ?」
楯無は一夏に言った。
「貴方は負傷しているからよ! それに逃げれば何とかなるわ!」
「……それでは、奴の思う壷だ……!」
「それでも良いじゃない! 勝ち負けなんて如何でも良い! 私は貴方を心配しているからよ!」
楯無は一夏に対して言った。楯無の言葉には一理あった。彼は、一夏は負傷している。ならば、逃げれば何とかなる。相手も、一彦も負傷している奴を追い掛けるまでは考えていないだろう。
それに、此処で逃げる意味で敗走しても誰も怒らない。同時に一夏が生き残る確率が高くなるからだ。
が、一夏は反論した。
「奴はそんな柔な男じゃねえ……! 此処で逃げてみろ……! 奴は追い討ちをかけるだろうが……!」
一夏は楯無に怒る。が、彼の言い分にも一理あった。自分達が逃げても、一彦は追い掛けてくる危険もある。負傷した自分達に止めを刺す事も出来る。
彼はそこまで馬鹿ではないのと、一夏はそれを危惧しているからだ。一夏の言葉に楯無は驚くが直ぐに辛そうに俯く。
「お前は奴が何者か間では知らない……だがな、ゲームのプレイヤーである以上、俺達は思考を張り巡らせながら生き残るんだよ……! 奴もその類いの才能を持っているなら、油断ならねえだろうが……!」
「……っ!」
一夏の言葉に楯無は何も言えなくなる。彼女はゲームの事を知ったがそれ以上の事は判らないからだ。一夏はゲームの事をよく知っていた。
自分を含めて、他のプレイヤー達は一癖も二癖もある。そんな奴等を、知勇が富むであろう者達を相手にしているのだ。今は一彦と言う危険人物を相手にしているが一美と、一時共闘する事になった一也もどんな力を持っているのか、知識がどのくらいあるのかは彼にも判らない。
それでも、一彦を倒す為に協同線を張っている。狙いは一彦一人だ、一夏はそう思っているが楯無は何も言わない……訳ではなかった。彼女はボソッと呟いた。
「やるつもり……なの?」
「……ああ」
一夏はそう良いながら頷く。それでも楯無は先を続けた。
「織斑君……貴方や一美ちゃん、それに奴やその夢見って男はゲームを……殺し合う為のゲームをするつもりでしょ? ……」
「……ああ」
「……だったら、何で殺し合う事を選んだの?」
彼女の言葉に一夏は更に眉を顰める。刹那、楯無は険しい表情を止め、変わりに哀しい表情を浮かべる。悲痛、悲哀と言った哀しい感情を沸き上がらせていた。
ゲームの事を知ったのはさっきであるが彼女は怖かったのだ。
「織斑君……貴方や一美ちゃんは……それでも後悔してないの?」
「……後悔していない。寧ろ、願いを叶える為には鬼にもなる……」
「……そんな……っ」
楯無は下唇を噛む。彼女は怖かったのだ。それは、織斑一夏という青年を喪う事がだ。彼は自分や妹の為に闘ってくれた。
利用されている事に気付いたのだがそれはどうだって良い。今は、ゲームの事を知ったが為に辛かった。彼は死ぬ危険もある、同時に一美も例外ではないが何方も幼いが故に命を散らす危険もある。
楯無はそれが厭だった。人は死んだら生き返らない、同時にゲームに参加し、生き返るかどうかも判らない。
変わりとは言えないがゲームに参加出来るかどうかは彼女次第である。が、彼女は一夏を見詰めていた。一方で彼は楯無を見て眉を顰め続けていた。刹那、頬に一滴の水が触れる。
否、一瞬だけだが冷たかった。それは、水ではない、涙だった。その涙の主は、流した者は楯無だった。彼女は涙を流しているが一夏を見てだった。
「……どうした?」
一夏は楯無に対して訊ねる。何故涙を流しているのか? 何故、自分を見てなのだろうか? 一夏はそれが判らないでいた。
「厭だ……」
「……はっ?」
楯無は粒いた。その言葉に一夏は更に眉を顰めるが楯無に対し、そう訊ねる。
「厭だ……厭だ!」
「…………」
「厭だ……私、貴方を喪いたくない……!」
楯無はそう叫んだ。その言葉に一夏は何も言わないが一美は驚き、一也は眉間に皺を寄せる。しかし、楯無は一夏に対して言っただけだ。一美と一也は蚊帳の外に置かれているが楯無は一夏を喪う事に恐怖していた。
殺し合いのゲームには一夏も参加しているのだ。彼は何かの願いがある。それは何かは判らないが楯無は一夏に対し、泣きながら言葉を続けた。
「貴方は私やかんちゃん……家の皆にとって、欠けてはいけない……」
「……俺は誰にも必要としない……」
「そんな事はない……! 貴方は私達にとって大きな人よ!」
「戯言だろうが……!」
「違う! 貴方は一人で行動しても貴方は文句は言わなかった!」
楯無は更に叫んだ。彼女は一夏の行動と仕事ぶりに驚きを隠せなかったからだ。彼は暗部に入ってからは多くの任務を熟して来たがゲームを制する為だとは気付かなかった。
学園に入ってからは色々と遭ったがそれ等を全て解決してきたのはほぼ、一夏だ。自分よりも当主としては相応しいと思ってしまった。が、それ以上に彼は命を消そうとしている。
ゲームから逃げる意味で撤退するのは彼の身を案じての事だった。彼は拒絶したが楯無は言葉を続ける。
「命を大事にしなさいよ! 逃げるのは悪い事じゃないわよ!」
「……無理だな」
「それでも、それでも自分の命を大事にしなさいよ……私達を頼りなさいよ……!」
楯無は泣きながら彼に訴えた。一夏に怒っているが心配しているからだった。しかし、一夏には届かない。今の彼はゲームを制する為に、一彦を倒す為に一美と一也と共に闘わなければならなかった。
楯無が泣いているにも関わらず、一夏は楯無を冷めた目でみ続けていた。一美は怯えているが一也は舌打ちしている。彼等のやり取りを見ているだけだったが一美は邪魔出来ず困惑していた。
一也の方は他人であるが故、一夏と一美を敵対しているがためだった。組んだとしても一彦を倒すまでの間だけであるからだ。
楯無は嗚咽を上げているが誰一人、彼女に慰めの声を掛けなかった。一美は出来るだろうが彼女は困惑しているだけであり、彼女を紀に掛けつつもそれが出来ないでいたのだった。
「……う〜〜ん、まだいるんだ?」
その頃、一彦は別の建物内であぐらを掻きながら腕を組んでいた。彼はキョトンとしているが一夏達が未だその場にいる事に疑問を感じていた。同時に、ある無線機を持っていた。
「別に良いじゃねかよ? 奴等がどんなに言おうが、何をやり取りしてようが俺達の勝利は間近だろう?」
近くにはフレディが居るが彼は右手に付けている鉤爪を研いでいる。彼は嬉しそうな表情を浮かべているが勝てると思い、余裕の笑みを浮かべているのだ。
そんな彼の言葉に一彦は軽く笑う。
「まあ、別に良いけど……それに彼等がどんなに考えようが……あれがバレない限り……うん?」
刹那、一彦は何かに気付く。同時にフレディも何かに気付くが一彦は立ち上がり、フレディは鉤爪を研ぐのを止め、辺りを見渡す。
「うん!?」
刹那、彼等の目の前に、ある人物が風のように現れた。その人物は一夏を襲撃した全身包帯姿かつ、顔や上半身を布で覆い隠された大男だった。
武器も持ってるが一夏を襲ったときと同じ物である。
「何だ君は?」
一彦は大男を見てキョトンとする。が、一彦とフレディの周りから三人の異形が風のように現れた。
「えっ?」
一彦は軽く驚くがその者達は皆、異形と言えるくらい、不気味な者達だった。枯れた木のような身体をした女の化物、足があるが宙を浮いており、顔を布か何かで隠しているナース、そして、兎の仮面を付けた女性だった。
枯れた木のような身体をした女性は兎も角、兎とナースは武器を持っていた。
一彦とフレディは自分達の周りを囲む異形の者達を見ているが少し驚いていた。
「キャァァァ!!」
「ガァァァァ!!」
刹那、彼女等は突然、悲鳴を上げながら一彦とフレディに襲いかかったのだった。