インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「ウグッ……!」
「ッツ……!」
一方、一彦により炎の海に落とされた一夏と一也は身体中に走る激痛に耐えながら起き上がる。しかし、彼等は既に限界を超えていた。今まで蓄積されたダメージが全て吐き出されるように、それ等を意味するように彼等はISを解除した。
否、ISが悲鳴を上げるように、彼等に逆らうように解除したのだ。二人はそれに気付くが一夏は胸を抑えながら膝を突き、一也は身体中に走る激痛に耐えきれず膝を突く。
何方も途切れ途切れだが、息を何度も吐いている。ダメージが大きすぎたのが原因でもあるが彼等はその場を動こうとはしなかった。否、動けないでいたのだ。
互いは敵同士であるにも関わらず。休戦状態にも近いのだった。二人は何とか立ち上がろうとするがそれも出来ないでいた。
「……っ」
一夏は不意に辺りを見渡す。周りは炎で囲まれている。同時に何時巻き込まれても可笑しくはなかった。今まではISのお陰で何とかなったが今は解除しており、裸状態でもあるのだ。
服を着ていても炎で焼け焦げになる危険もあった。この場を離れなければ、自分達は焼死してしまう。最悪、その前に一酸化炭素中毒で死亡する危険もあった。
一夏はそれに気付くが不意に一也の方を視る。彼は煙を吸ってしまったのか咳をしていた。が、一也は彼が見ている事に気付く。
「何だ、よ?」
一也は一夏に対し、眉間に皺を寄せながら訊ねた。しかし、一夏は彼を見据えたまま、何も言わない。否、彼は何かを思うように何も言わないからだ。
自分達は既に負けた。一彦を相手にだ。彼はISを強くしていた。何時強くしたのかは判らない。だが、強大な敵に対し、勝てない戦をしているような物だった。
現に自分達が負けたのは事実かつ、曲げられぬ出来事。自分は一彦に一度も勝利せず、二回も敗北した。屈辱的かつ、心に大きな影を落とす出来事だった。
刹那、空から叫び声が聴こえた。
「!?」
「なっ!?」
二人は叫び声に反応し、空を見上げる。辺り一面真っ暗であるがそこには、何かがいた。一機のISだったがそれを纏っているのは一彦だ。
しかし、彼には異変が起きていた。それは、彼が全身を鎖でしばられているからだった。その異様な光景に一夏と一也は目を見開いていた。
「あがが……があぁっ……!」
一彦はISを纏いながらも全身を鎖でしばられていた。それはどす黒く、彼の自由を奪うだけでなく、締め付けている力も凄まじいからだ。
ISを纏っていても、それは解く事も壊す事も出来ない。どうすれば良いのかも、最善の策も浮かばないのだ。同時に自分の胸には風穴がある。
貫通されたのだ。突起物によるものと、それは鎖の先端でもあったのだ。彼はそれが原因でもあるが彼は何とか逃げようと抗っている。が、彼が動けば動く程、鎖は締め付けている。
死にかけている彼に情けや慈悲等与えるつもりもないようにも思えた。そして、鎖の出ている所は一彦の真後ろにあるがそこには黒い霧があった。
鎖は黒い霧から出てきたが何故現れたのかは、誰にも判らないだろう。
「あがが……キ、貴様……何処から?」
そんな中、一也は鎖に対し、訊ねる。彼は視線を走らせようとするがそれは出来なかった。自分の、自分の身体中に流れる白い血が半分以下になっていたからだ。
それは鎖に染み込み、彼のISをも汚す。しかし、彼は人間ではない。彼は、二夏やラウラと同じ、人間に造られた者だった。人間に対し、良い感情はない。
それもその筈、彼は人間達によって、出来損ないと言われたからだ。心ない罵声にストレス発散の意味での殴る、蹴るをされていた。彼はそんな日々を過ごす中、人間達に対し、憎しみを抱くようになったのだ。
ゲームに参加したのも、腐った人間達に復讐する為だった。笑顔を見せているのも、彼等を復讐する度に駆られの泣き叫ぶ声や止めてくれとの声が愉しくも、快楽を得てしまったからだ。
今までそれをしてきた為に彼は愉しみが何時でも出来ると思い、笑う事しか出来なくなったのだ。自分は強い、人間達は屑の集まりでしかないと歪んだ思考を走らせてしまったのだ。
しかし、それも今日で全て終わる、彼の愉しみは死を持って終わる。それは天罰か、今までの愚行が全て返ってきたのとしか思えなかった。
彼はそんな事を考えていないが彼は意識が遠退いてくのを感じていた。刹那、彼はある人物の顔を思い浮かべる。それは、自分が一夏の右腕を元に造ったクローン、織斑二夏である。
彼は自分が生まれて初めて造ったのと同時に、彼は欠陥品だった。何故なら、彼は哀しい表情しか浮かばないのだ。喜怒哀楽はあるが大抵哀しい表情が殆どだった。
まるで自分にはない表情を彼は持っていた。一彦から見れば、うっとおしいとしか思えなかったが同時にある事をも考えてしまった。それは、彼を一夏に預ける事だった。
二夏は一夏の右腕を元に造ったクローンであるが彼の義理の弟でもあるのだ。一彦を彼に預けたのも、二夏を自分と重ねて見てしまったからだ。
彼には何かを感じるが自分と同じ思いをさせたくない、そう感じてしまったのだ。何故かは判らないが一彦は二夏を一夏に預けたのもそれだった。
一彦はそう考えていたが彼は初めて涙を見せる。今まで、あの忌まわしい日々以来だが彼は二夏を思っていたのだ。彼は自分と同じくクローンであるが何も知らないよりは、多くの事を知る事が一番良いからだ。
彼はそう思いながらも突起物は、一彦の後頭部に近づいている。それは、脳天を突き刺す意味でもあった。
「……ふ……二、夏……」
意識が完全になくなりつつある中、一彦は彼の名を呟く。刹那、大きな音が聴こえた。同時に彼の額から何かが出てきた。否、突起物が一彦の額を貫通したのだ。
後頭部からであるがそれは一彦を即死させる意味での致命傷を与えていた。
「あ……が……」
一彦は声を上げる前に白目を剥いていた。刹那、一彦の身体を纏っていたISは解除され、一彦は地面に落下……しなかった。鎖が彼の身体を掴んだまま、黒い霧の中へと戻って行った。
「なっ!?」
そんな中、火の海の中にいた一夏と一也は彼を見て驚くが黒い霧からは一彦が出てきた。放り投げだされるようにだったが彼の亡骸は炎の海の中へと落ちていく。
一夏と一也はそれに気付くが一夏は突然、風のように消えた。一也は一夏の行動に驚くが彼は前線を離脱したのだ。このままでは巻き込まれると思い、消えたのだ。
一也は一夏に驚く中、彼も消える。刹那、一彦が地面に叩き付けられた。肉体は床に落ちた生卵のようにぐちゃぐちゃになり、骨も粉々に砕かれていた。
彼は白目を剥いているが生き返る気配はなかった。そして、彼は炎の海の中、死んだ。同時に、彼のIS、ジルドレは何者かに奪われてしまった。
夢見一彦、死亡。残り、四人。
「ふぅ……」
その頃、一夏は廃工場近くにいた。彼はボロボロでありながらも何とか起き上がると、廃工場を見た。そこは未だに炎に包まれていた。かの建物は人々の手に造られ、人々の生活や利益の為に存在していた。
しかし、何かの理由で倒産し、その名残としても長年放置された。同時に肝試し等の下らない事で使われた。そしていま、最後は炎に巻かれている。
最後の時でもあるが彼は目撃者であった、最後に此処へと来た者達だった。しかし、一夏はそこから離れようとした。が……。
「織斑君!」
彼の後ろから少女の声が聴こえ、一夏は振り返る。そこにいたのは、寝間着姿の楯無と、彼女の後ろには隠れるように一美が見ていた。楯無は一夏を見て困惑していたが一美は怯えていた。
しかし、彼女達が此処に来たのも、楯無が一美を説得する為に此処へと来たのだ。それは結構大変であるが最終的には一美は折れ、此処に来たのだ。それも少し前であるが彼女達は一夏を捜そうと周りを移動していた。
そして、彼は見つけたのだ。
「織斑君……!」
楯無は一夏を見て安堵するが彼に近づこうとした。一方で一夏は楯無が此処に居る事に怒りを通り越して呆れるのと、一美の弱気な姿にも呆れていた。
楯無は兎も角、一美は同盟者としてはどうかと思ってしまい、不信感をも抱くようになった。それ以前に楯無はゲームの事を知ってしまった。
一夏はどうしょうかと思った。刹那、一夏は目を見開く。
「織斑君?」
楯無は一夏の様子に気付くが、一美は目を見開く。が、一夏は激痛を感じたかのように、脇腹を抑えようとした。刹那、大きくも、小さくもない音が辺りに聴こえた。
「っ!?」
楯無はある物を、ある光景を見て目を見開いた。その光景は異様かつ、脳裏に焼き付く光景だった。自分の事ではないとは言え、一夏に関わる事だった。
それは、一夏の脇腹から腸の一部が飛び出してきたからだ。さっきの音は腸が飛び出してくる音だった。それだけでなく、血飛沫が辺りに飛び散り、楯無の肌や寝間着に付着していた。
「キャァァァァァ!!」
一美が怯えながら泣きながら叫んだ。
「イヤァァァァァ!!!」
同時に楯無も悲鳴を上げた。しかし、楯無と一美は知らないだろうがそれは主催者が掛けた呪いであった。そして、一夏は腸が飛び出してくる事に驚きつつも、そのまま意識を失うように仰向けに倒れた。
そこから、彼は何も怯えていなかった。
織斑一夏、主催者の呪いにより、ゲームに参加出来なくなり、一時的なリタイアとなる。
今回で最終回でしすが重大な発表があります。
今作の次回作を執筆中です。題名は『インフィニット・デスロイヤル』(投稿は三日後を予定)です。
今作の数時間後の話ですが主人公は、負傷した一夏の代理として、一夏の義理の弟である二夏です。そして彼が引き連れている殺人鬼はハリー・ヴォーデンです。