インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
三年後、此所は日本の首都、東京。今の時間帯は夜七時であるがこの日は記録的な大雨であった。しかし、雨の日にも関わらず街の様子は変わらない。
何処の店も灯りが点いているが営業中であり、道行く人達も傘を差しながら歩いているが気分は良ければ、良くない者達もいる。
雨だからか、それとも雨特有のジメジメとした湿気に嫌な気分をしているのかも知れない。
そんな中、一人の中年男性が街の中を走っていた。道行く人とぶつかっても謝りはせず、逆に不愉快にさせている。が、男の表情は恐怖で支配されている。
走っているのは、何かに逃げていたからであった。男は逃げる最中、何度も後ろを振り返っている。まるで誰かから逃げているが誰も男を追いかけようとはしない。
それでも男は少しでもその場から離れようとしていた。逃げようとしていた。が、身体は悲鳴を上げ、雨のせいか体力を奪っていく。男は走るのを止めると、肩で息をしながら膝に手を置く。
息を整えようとしていたが上手く整える事が出来ない。男は不意に後ろを見る。やはり誰も追いかけてこない――男は安堵と同時に不安も拭いきれない。
何故自分はあの変な奴に追い掛けられなければならなかったのだろう? 男は疑問を浮かべながらも歩き出そうとした。刹那、男は目の前の少し先に、ある人物がいる事に気付く。
その人物は傘を持っていないが黒いズボンを穿いているがフードの付いてる青いパーカーを着ている。顔は見えない――遠くからでもあるがフードで顔を覆い隠している。両手をポケットに入れているが俯いている様にも思える。
「う、うわあああ!!」
男はその人物を見て悲鳴を上げながら踵を返して走る。周りも突然の事で驚くが男はその場から走り去って行った。
「な、なんだよアイツは!?」
男は街の中を走りながらさっきの人物を思い出す。彼は自分を殺そうとしていた。その理由は一時間前、男は路地裏を歩いていた。理由は簡単――男は警察に追われていたからであった。
彼は警察を追われていたのはある事件を起こしたからであった――それは強盗殺人であった。彼はその事件を起こした犯人であり、人を殺している。
男は警察から逃げていた中、あの者、パーカーの人物に遭遇した。が、その人物は……自分を殺すと言ってきたのだ。男は最初、一笑して彼を殺そうとしたが返り討ちにされた。
男は恐怖のあまり逃げ出し、今に至る。男は街の中に逃げても彼は先にいる――まるで、自分の行く場所を知っているかの様に先回りしていた。
男は街の中に逃げ続けていたが何故か路地裏に入る。理由は、警察に見つかる危険が有ったからだ。男は路地裏に入ると奥まで進むと立ち止まり後ろを振り返る。
男は此所で身を隠そうとしていた――同時に休憩としていた。奥からは誰も来ていない。男は安堵すると前を見た――刹那、男は怯え、表情は絶望に変わった。
目の前に、パーカーの人物がいたのだ。それもこんな場所に。
「な、何だよお前!?」
男はパーカーの人物に問う。が、パーカーの人物は無言で男に歩み寄る。男は悲鳴を上げながら逃げようと踵を返す。刹那、男は首を掴まれる。
「あ、ああっ!!」
男は首を掴まれ悲痛の声を上げるが彼の首を掴んだのは男よりも少し大きいスキンヘッドの男だった。屈強な体格に黒く腐敗した肌に年代物の服やズボンが特徴的だが何より一番特徴的なのが、顔にホッケーマスクを着けていたのだ。
大男はその男を片腕で軽々と持ち上げていた。無言で見ていた。ホッケーマスクから見える瞳は男を捉えているが男は何とか逃げようとしていた。
が、どんなに暴れてもびくともしない。逆に大男は男を無言で持ち上げると首を掴む腕に力を入れる。
「うあっ!! おえっ!!」
男は首を絞められ息苦しいと感じていた。が、大男は男を自分の方へと寄せる――男の胸元を自分の顔に近づける様にしていた。そして、大男はもう片方の腕を軽く上げる――握りこぶしであった。
が、大男の狙いは男の胸元であった。その瞬間、何かに貫かれる音が微かに響き渡る。何かを潰した様な音にも聴こえるが大男が男の胸元を拳だけで貫いたのだ。
男の胸元には大きな穴が出来ているが断面には肉や砕かれた胸骨が見える。男は何かを微かに呟いていたが大男は男をゴミのように投げ捨てる。
男は白目を剥きながら事切れていた。死んでる――誰から見ても判断出来るが大男は男を見た後、奥にいるパーカーの人物を見る。
パーカーの人物は無言で大男に近づく。一歩、また一歩と近づく。彼が大男に殺される――誰かがいたらそう言うだろう。が、パーカーの人物は大男の前に立ち止まると、彼を見上げる。
大男もパーカーの人物を見ているが何故か殺そうとはしなかった。それもその筈、彼は面識があるからであった。パーカーの人物とはある関係があったからだ。
その関係は切っても切れぬ関係であり、あるデスゲームの為に決められた者達でもあったからだ。そのゲームは多くの人を殺す為であるのと、他の、自分達とはデスプレイヤー達もいるが殺し合うのも良しと言った、恐ろしいデスゲームでもあった。
そして彼の、大男の名はジェイソン・ボーヒーズ。そして彼、パーカーの男はパーカーに手を掛けると、後ろへと下ろす様に捲った。
彼の素顔が晒されるが整った顔立ちに片目は抉られているのか閉じている。髪も艶があるが正体は、未だ二十にも満たない青年であった。ジェイソンを見る片目には何処か憎しみをも感じるが、ある事を言う。
「良くやった――ジェイソン」
青年はそう言うと、男の方を見る。男は既に死んでいるが青年の男を見る目はゴミを見るかの様な目であった。
「あの男――ある事件で強盗殺人を起こしたようだけど、別に良いか」
青年はそう言うと男に近づく。男を見下ろす様に見ていたが言葉を続ける。
「貴様の様な人殺しに生きる価値はない――ましてや、金が欲しいが為に犯行に及んだのか……まあ、死んだ者達の事を思えばどうって事も無い」
青年はそう言った後、ジェイソンを見る。ジェイソンは青年を見続けていたが青年は軽く目を逸らすと、言葉を続ける。
「まあ良い――戻ろう……こんな所に何時までもいたら怪しまれる」
青年がそう言うとジェイソンは頷く。刹那、二人は風の様に消えた。そして、その場には胸を突き破られた男の死体しか転がってい無かった。
此所は、とある世界にある霧で包まれた湖で囲まれた二階建ての一軒家。其処は家だけでなく、畑もあり、鶏の養育場もあった。それは食料を確保する為でもあり、湖には魚が泳いでいた。
此所には住人がいない訳ではなかった――住人は居る。それも……刹那、ある人物達が風の様に姿を現す。ジェイソンと青年であった。
この家の住人達は、この二人であった。食料を確保しているのも彼等が食べる為の食料でもあった。
「ふう……取り敢えず、家に戻るか……」
青年がそう言うと、ジェイソンも何かを言ってるが二人は家の中に入る為に歩く――青年が扉を開けると、其処は外とは似つかわしくないような家内であった。
キッチンは冷蔵庫、テーブルもあった。二階は彼等の部屋があるが彼等は玄関で靴を脱ぐと、一階にあるリビングへと向かい、リビングにあるテーブル近くにあるイスに座る。
ジェイソンはイスに腰掛けるがギシッと言う音が聴こえた。
「おい……ジェイソン」
青年はジェイソンのイスの音に呆れるが怒りをも感じていた。が、何時もの事と思いながらも溜め息を吐くと、立ち上がり、キッチンの方へと向かった。
ふと、振り返ると、ジェイソンを見る。表情は険しいが何処か感謝している様にも思えた。
「取り敢えず……お前の好きなもんでも作ってやるよ」
青年はそう言った後、キッチンの方へと消えて行った、が、青年の言葉にジェイソンは無言で見ていたが何を思っているのかは青年以外、判らなかった……。