インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「いたの! 本当にいたの!! お面を着けた大男がいたの!!」
その五分後、簪の部屋では一夏、更識姉妹、布仏姉妹、千冬、更識の両親、半蔵がいた。
しかし、簪は泣きじゃくりながら美和に縋り付きながら叫ぶ。これには一夏の姉の千冬、身内の楯無、源次、美和、従者の半蔵やその娘達の布仏姉妹は困惑していた。
実は五分前、この場にいて、一夏と簪を除いた者達は簪の悲鳴を聞き、何事かと思い部屋に来たのだ。簪は部屋から出てきたが彼女を保護したのは楯無であった。
楯無は簪が我を忘れて姉の胸で泣きじゃくるが何を言っているのか解らなかった。そして、その直ぐ後から一夏が来たが彼はジェイソンに消えるように言った後に部屋から出てきたのだ。
そして少し経った後に源次達も来たが彼等は彼女の言葉に戦慄し、部屋に来たが彼はおらず、源次や半蔵は他の従者達に命じ、更識家を隈無く捜すようにいったのだ。
話を戻そう。簪が見たという大男。それはどんな者で何故、簪の部屋に居たのかは判らなかった。しかし、同時に簪が嘘を言っているのではないかと思っていた。
別に簪を疑う訳ではないが大男とはどんな奴で、どうやって更識家に侵入したのかは判らない。
泣きじゃくる簪を美和は背中を擦りながら「大丈夫よ」と宥める中、楯無と源次は簪を見て戸惑い、布仏姉妹は簪の近くで彼女を慰めの言葉を掛ける。
一方、一夏は簪の部屋の壁に凭れ掛かりながら静かに見据えていた。近くには千冬がいるが心配そうに見つめていた。
彼女も姉として弟を心配しているが彼女はどう答えばいいのか、判らないでいた。刹那、楯無は一夏に近づき、彼に問い掛けた。
「ねえ織斑君? 貴方も見たでしょ?」
「……何がだ?」
「惚けないで。貴方も簪ちゃんの部屋に居たでしょう?」
「……いたけど?」
一夏の言葉に楯無は少し怒る。
「じゃあ教えて!? その大男は何処に行ったの!? それに貴方は簪ちゃんの後から出てきたんでしょ!? 答えなさい!」
楯無は一夏に詰め寄る。妹を心配する姉として、彼に問い質していた。例え嫌われてもいい、だが妹が怯えているのは見たくない。
姉としてでもあるが一夏は首を左右に振ると、窓の方へと歩き、窓に背を向ける。
「知らんな、それに俺が知ってる訳ではない」
「じゃあ彼は何処に行ったのよ!?」
「知らん……だが、手を引け」
一夏は楯無にそう言う。手を引けとは殺人事件での事だ。しかし、楯無は拒む。
「嫌よ。他の従者達が殺されたのよ? 手を引ける訳ないじゃない!」
「……そうか、だったら、……しろ」
一夏は彼等に鋭い眼差しを向けながら何かを呟く。これには楯無達は何て言っているのかは判らなかった。
刹那、窓の外から二本の太い腕が大きな音を立てながら窓を破る。これには千冬達は驚くが、一夏は突然、何者かに上半身を掴まれながら吸い込まれるように身体を引き摺り出される。
そして、彼の身体を掴み窓の外へと出そうとする二本の太い腕の主である者はジェイソンであった。
「き、キャァァァァァァァ!!」
簪は悲鳴を上げるが更に涙を浮かべる。しかし、簪を抱き締めていた美和と近くにいた虚は青褪め、本音は泣きそうになりながら簪に縋り付く。
楯無と千冬、源次や半蔵は驚愕し、戦慄さえもしていた。
「織斑君!」
「一夏!!」
が、楯無と千冬は慌てて、ジェイソンに引きずり込まれそうになる一夏の手を片方ずつ掴むと一夏を引き寄せようとした。彼を連れて行かせる訳にはいかない。
保護する者と身内である者。それが理由であり、彼女等はその立場の責任としても重く受け止めていた。二人は一夏をジェイソンから引き離そうとするが彼の力は凄まじく、どうにかなる事は出来ない。
源次や半蔵も慌てて一夏を助けるべく、二人に協力するべく、行動する。彼等はジェイソンの一夏を引き寄せるがそれでも足りなかった。
ジェイソンは四人に対しても微動だにしないが彼もまた、反撃するように暴れる。そのせいで四人は一夏と彼を引き剥がすのに苦戦している。
一方、一夏は無表情であり暴れる気配はない。否、彼はジェイソンとは知り合いであり、半霊でもある。その為、一夏は突然の事に微動だにもしない。
楯無、千冬、源次、半蔵が何とかしているにも関わらず彼は何もしていない。何も感じていないようにも思えた。そんな中、虚は突然の事で戸惑う中、半蔵が虚を見ながら叫ぶ。
「虚!! 他の従者達を呼んでこい!」
「えっ、は、はい!」
虚は我に返ると、慌てて部屋を出てていく。刹那、何処からかバタバタと足音が聴こえた。数名の他の従者達であった。彼等は簪の声に反応し、簪の部屋へと来たのだ。
刹那、今度は外の方から何かを殴る音が聴こえ、怒声も聞こえた。外にいた他の従者達であった。彼等はジェイソンに気付き戸惑っていたが彼等は直ぐに我に返り、ジェイソンを殴り、蹴っていた。
しかし、彼には何のダメージにもならない。彼は一夏を連れ戻すべく、一夏を離そうとはしない。
「な、何なのコイツ!? 何とも感じないの!?」
「取り敢えず何とか引き離すしかない!!」
楯無は戸惑い、千冬は腕に力を入れる。部屋には六人の従者達もいたが、二人はジェイソンの腕を攻撃し、四人は簪、美和、本音を部屋から退室させた、彼女達を別の部屋へと避難させる。
「っ、くそっ!!!」
刹那、従者の一人がジェイソンの顔を殴る。凄まじい音がしたがホッケーマスクが剥がれるように弾き跳び、転がり落ちる。しかし、ジェイソンの素顔が晒されるが一夏や外にいる従者達を覗き、部屋にいる者達は戦慄した。
それは、ジェイソンの素顔を見てしまったのだ。が、従者の一人が叫んだ。
「う、ウワアアアアアアアッ!!」
従者は叫んだ。それは恐怖に近い悲鳴であった。周りもジェイソンの素顔を見て目を見開く。彼の素顔は酷かった。焼け爛れた様な形相にミイラのように肌が腐敗している。
まるでミイラかゾンビとも言えた。酷い臭いが鼻に突くが彼等は突然の事で力を抜いてしまう。しかし、ジェイソンに隙を突かれてしまう。ジェイソンはその瞬間をチャンスと感じたのか、渾身の力を振り絞って一夏を引き寄せた。
周りは弾き飛ばされるように尻餅をつくが、千冬も尻餅をついてしまう。楯無も尻餅をついてしまうが彼女は一夏が連れ去られてしまうのではにかと思い、手を伸ばした。
「織斑……」
楯無は何かを言い掛けながら一夏に手を伸ばすが、一夏は手を伸ばそうとはしなかった。刹那、一夏とジェイソンは風のように姿を消し、
楯無の手は空を切った。
楯無は瞠目した。が、彼女は一夏がジェイソンと共に消えた事に驚きを隠せない。否、認めたくはなかった。彼が突然、消えたのだ。
現実的に有り得ず、瞬間移動したようにも思えた。認めたくはない……否、認める事しか出来なかった。
彼は消えたのだ、保護するといったが約束していない。否、彼を信じてと言っても彼はそれを否定し続けた。さっきそうであった。
が、楯無はその認めざるを得ない現実に愕然とし、項垂れる。一方、千冬や他の面々は何とか起き上がるが千冬は驚いていた。
「一夏? ……一夏!!!」
千冬は一夏やジェイソンがいない事に気づき我を忘れていた。ジェイソンは兎も角、彼女は一夏を捜すべく、部屋を出ると他の部屋を調べる。
源次や半蔵も他の従者達に屋敷内を隈無く捜すよう命じ、従者達は部屋を出る。外にいた従者達はジェイソンが消えた事に戸惑っていたが源次や半蔵に命じられ、捜し始める。
辺りは騒然としていたが楯無は動けなかった。彼女は一夏を助ける事が出来ず、非現実な事や、己の無力さに自信を無くしていた。
一夏を守れなかった……それにさっき、彼を罵倒に近い事をしてしまった。彼女はその事で罪悪感を感じていた。
そして楯無は消える直前でもあり、最後に見た一夏の顔を思い浮かべる。彼は無表情であった。どこか当たり前であり、何処か永別しているようにも思えた。
楯無は彼の顔を思い浮かべるがぎゅっと目を閉じると涙を浮かべる。
(……織斑、君……!)
楯無は涙を浮かべる。助けられなかった、そう重い涙を流してしまったのだ。そんな彼女を源次は隣に来ると、その場で屈むと彼女を優しく肩を抱く。
楯無は父に肩を抱かれるが彼女は一夏を助けられなかった事で嗚咽を上げていた。そして、近くにはジェイソンのホッケーマスクが落ちているがそれは風のように消えた……。
翌日の、土曜日の投稿はありまん。次回は日曜日に投稿します