インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「もうすぐ、七時ね」
楯無は手首に付けている腕時計を見ながらそう呟いた。そしてここは、東京にある港の〇〇倉庫。今の時間帯は夜七時を回る頃であるが今もなお、大雨が降っていた。
楯無は倉庫内にいるが近くには半蔵と美川、そして其々の至る場所には従者達が隠れている。自分達を含めて十人だ。鈴木、佐藤、高橋、村上、山川、神山、神谷といった面々であるが全員、腕はいい。
信頼しているが相手は何人かは判らない為、警戒もしていた。今は倉庫の中にいるが視界を遮り、体力を奪う大雨が降り頻る外とは違い中は雨宿りするにはうってつけだった。
が、倉庫内は暗い。あちこちに物が散乱しており、埃まみれでカビに近い臭いが鼻をつく。いるだけでも悪影響であるが彼女等が待っているのは、ある人物であった。
それは武藤と山岡を殺し、伊藤や木村、更には村木を殺したと勘違いされながらも犯人だと決めつけられている青年と、仲間と勘違いされているジェイソンであった。
彼女等は彼等を捕まえるべく、待機している。彼女等が其処にいるのには理由があった。十数時間前、美川(偽物)の携帯から連絡があったのだ。
連絡したのは木村、否、木村は既に殺された上に青年に奪われた携帯からであった。これには楯無、源次、半蔵は驚くが青年は一夏が来る場所を教えてきたのだ。
理由は一夏を誘き出す為であるのと、自分達が一夏に問いつめているのと一夏は喋らないのと、従者達の仇を取りたいのなら自ら出てこいと自分が現れる場所やその時間帯まで教えてきたのだ。
彼の要求に楯無達は眉間に皺を寄せるが罠である事にも気付いていた。しかし、青年を捕えるチャンスでもあった。彼が何者で何故一夏を狙っているのかも知る事が出来る。
一夏は今、山本という従者が監視しているが尾行もしていたが数時間前に見失ってしまった。山本が半蔵に連絡したのだがそれは更識家にとって一大事であり、同時に保護しなければならない。
また同時に彼は何処に現れるのかは知らないのと、現れるとしたら青年が指定した場所ではないか、そう睨んでいた。
半蔵は山本に叱責したかったが山本は何故か独断で動いたのだ。それは一夏を捜すと言い残して……。山本を捜したかったのだが今は青年が先であり、山本は他の従者に任せたのである。
そして昨晩彼を一夏を誘拐したジェイソンとはどういう関係で、青年とはどういう関係でジェイソンとはどういう関係なのかも突き止めたかったのだ。楯無達はその事で話をするがジェイソンの件もある為、大半の従者を連れて行く事にしたのだ。
いずれも精鋭であるが警戒している。彼女等は倉庫内の至る場所に隠れているが倉庫内は暗い為に肉眼で捉える事は難しい。青年の罠ではないか? そう思っていた。
青年が決めた場所とは言え、有利な場所を選んだとしか思えなかった。誰もがそう思っている中、もうすぐ七時を回る。
刹那、楯無の手首にある腕時計は七時を回る意味で針が動いた。楯無は腕時計を見て「七時だわ」と呟いた。半蔵は頷くと、美川も軽く頷く。
「それにしても……織斑君や、奴は来るのかしらね?」
楯無は一夏や青年が来るのかを疑問に思い、呟いた。が、半蔵は答えた。
「それは私にも判りません。ですが来る事を祈りましょう」
「……そうね、でも半蔵さん、貴方に言いたい事があるわ」
楯無の問いに半蔵は「何でしょうか?」と聞き返すと、楯無は眉間に皺を寄せる。
「……半蔵さん、貴方にはちょっとしたお願いがあります」
「お願い?」
半蔵の言葉に楯無は頷くとある事を言った。
「ええ……そのお願いは貴方には生き残ってほしいのです」
半蔵は瞠目した。それは楯無がある者達からそうお願いされたのだ。その者達とは虚と本音の姉妹であり、半蔵の娘達である。
姉妹は楯無に父を無事に帰還させてほしいと願っていた。
それは失格であるが身内としての純粋な願いでもあった。父の無事を祈る娘達としてでもあった。
そんな楯無の言葉に半蔵は「アイツら……」と哀しそうに項垂れるが、楯無は言葉を続ける。
「彼女達の言い分は間違っているのかもしれない。でも父親である貴方を大事に思う娘達としてお願いしてるの。例え間違っているとしても貴方には、ね」
楯無は哀しそうに笑うが当主としての願いでもあった。姉妹を心配しているからであるが友としても心配しているからだ。
楯無の言葉に半蔵は哀しそうに微笑みながら頷く。彼は娘達の顔を思い浮かべたのだ。父親としても喜ばしいが従者としての使命もある為、私情を挟む訳にもいかなかった。
そんな二人に美川の偽物は微笑むが内心、馬鹿らしいと感じていた。
「なあ、もう七時を回っているのに何故来ないんだ?」
楯無達がその事を話している頃、別の場所には二人の男が何かを話していた。何方も男性であるが黒を基準とした服を纏っている。
佐藤と高橋である。佐藤は青年が来るか来ないかで不信感を募らせるが高橋が呆れながら答える。
「それは俺にも解らない。だが向こうから連絡してきたのはおかしいがな?」
「だろ? それに自ら連絡してきたのは自殺行為じゃないか?」
佐藤は高橋に対してそう訊ねた。これには高橋は少し悩む
。佐藤の言い分は正しい。青年が自ら居場所を言ってきたのはおかしい。
自分の命を投げ捨てる行為である。にも関わらず、彼は自ら名乗り出たのだ。これには従者達に不安が走るが更に問題なのが、大男の存在だ。
大男とは知り合いなのか? それに彼は化物であった。あのホッケーマスクを付けているだけでも不気味なのにあの素顔は想像するだけでも吐き気がする。
彼等はあの時いたのだ。そして目撃したのだ。そして、悲鳴を上げたのは高橋であった。
高橋は大男の事で色々とあるが今は青年を捕えるのが先であった。彼は佐藤にそう言い聞かせる。
「それよりも目の前の任務に集中しろ。俺達は生きて帰れるのかも判らないだろう?」
「まあな? それよりも俺は今、非常に怒ってる」
佐藤の言葉に高橋は『なんだ?」と聞き返す。佐藤は静かに語り始める
「俺さ……仲間が死んでいるのに何も出来ないのはつら……っ!?」
刹那、佐藤は悲鳴を上げる。が、彼は宙に浮く。否、彼は何者かに首を掴まれていた掴まれていた。
「佐藤!!!」
高橋は驚くが叫んでしまう。彼の叫び声に他の従者達や楯無達は反応するが彼の悲鳴はそれっきりであった。
「た、高橋の声だ!」
半蔵は声の主は高橋である事に気付くが同時に佐藤の身にも何か遭ったのではないかと気付く。楯無も気付くが辺りは暗く、何処にいるのかも判らない。
「高橋! 佐藤! 返事をしろ!!」
半蔵は二人の名を叫ぶ。しかし、何の反応もない。何度呼んでも返事はなかった。
「ダメです半蔵さん! 敵に場所を知られます!」
「そうです! 相手は何人かは判らないんですよ!?」
楯無と偽物の美川が止めるが直後に奥から灯りが見えた。楯無達や従者達は灯りに気付く。暗い倉庫では唯一の灯りとも言えるがその灯りは突然、放り投げられる。
灯りは地面に叩き付けられるが灯りの正体は炎であった。それも、炎に包まれながら首をあらぬ方向へと曲げられた、何かの人であった。
高橋か佐藤かも判らない。理由は炎に包まれているのと俯せに倒れていたからであった。
「た、高橋かっ!!?」
「さ、佐藤さん!?」
半蔵と楯無は誰かは判らず戸惑う中、ある人物が風のように現れた。青年であった、それも重火器を両手で持っている。ガトリングガンであった。
背中にはガトリングガンの銃弾が入っているであおう大型の箱を背負い、右下からはガトリングガンの装填口へと伸びる銃弾が見える。
しかし、青年の表情は怒りに満ちており、鋭い眼差しをしている。が、そんな青年を見た楯無は周りに叫ぶ。
「み、皆伏せて!!!」
楯無はそう叫ぶと青年は声に気付き、青年は声がした方へと銃口を向けると、引き金を引いた。
刹那、彼は風のように消えた。直後、少し後に彼は姿を現すが彼の両手にあるガトリングガンは連続で銃弾を放っていた。
しかし、銃弾は楯無目掛けて突き進むが彼女には当たらなかった。が、楯無は誰かに庇われるように抱き締められながら倒れる。
「あああっ!!」
楯無を庇った物の右肩や背中の右部分を撃たれてしまう。そして彼女を庇ったのは半蔵であった。
「は、半蔵さーーーーん!!!」
楯無のひつの叫び声が響き渡る。が、これは序章に過ぎなかった。これは青年の罠であり、青年は一彦をおびき出すのと、一夏を誘い出す為ではなかった。
彼の目的は、ある理由で更識家の面々を皆殺しにする為であった。彼は一夏の周りにいる更識家を潰し、皆殺しにする事で一夏と一対一の勝負をしょうとしていた。
そしてこれは軽い準備運動でしか考えていない。そして彼の瞳にはある決意が宿っていた。それは此処にいる更識家を皆殺しにする……それしか考えていなかった……。
刹那、彼は風のように消えた。直後に横からナイフが投げられたが、青年は直ぐに姿を現した。それもナイフが投げられた方向であり、投げた者の後ろに姿を現した。
投げたのは従者の一人である男性、鈴木であるが鈴木は後ろから撃たれるが身体中に風穴が出来、そして赤い鮮血が出るが青年には飛び散らなかった……。
が、倉庫内は血の雨が出来る。それだけは確かであった……。