インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「は、半蔵さん!?」
楯無は半蔵に庇われながら倒れたが何とか起き上がると、半蔵を引きずりながら物陰に隠れ、半蔵を仰向けに寝かす。が、彼の右肩には血が流れ出ており、背中の右部分にも血が流れている。
さっき、青年のガトリングガンで撃たれたのだ。楯無は無傷であるが半蔵は傷を負った。致命傷ではないが何とか止血しない限り、失血死してしまう。
楯無は心配そうに傷を押さえようとする。が、半蔵は激痛で顔を歪めながらも楯無に対して、微かに呟いた。
「お……お嬢、様……私は、ぶ、無事です!」
「そんな事を言ってる場合ではないわよ!? 早く止めなきゃ死んじゃうわよ!?」
「だ、大丈夫です! それよりも早く!」
半蔵は何かを言い掛けるが辺りには激しい銃声が響き渡っている。ガトリングガンであるが鈴木が犠牲になってしまった。
しかし、それでも青年はガトリングガンの引き金を引き続けながら向きを変えるように身体を動かし続ける。ガトリングガンから幾つもの薬莢が飛び散り、銃弾は倉庫内にある物を破壊する。
大抵は物であるが穴が開き、破壊され、その音が響き渡る。青年は撃ち続けるがガトリングガンには最大の弱点がある事を青年は気付きつつも忘れていた。
「っ! このままじゃ……!」
そんな中、青年の少し後ろの物陰に隠れている従者達がいた。村上と神谷である。二人は辺りを窺うが青年が近くにいる事には気付いていた。
理由はガトリングガンから放たれる銃弾の光だ。発光と言い替えればいいがそれが青年の居場所を示させている。チャンスでもあったが同時に警戒もしていた。
さっきの光景を目にしたからだ。青年が風のように消えた事だ。それで驚いていたが直ぐに現れたのだ……直後に仲間を一人喪ったのだ……。
二人はそれを目撃したのと同時に怒りが沸いてくるがどうすればいいのかが判らないでいた。青年は少し先にいるのに、風のように消えたら流石に返り討ちに遭う。
出来る事なら捕えたいが殺すという選択肢もある。二人はそれに気付きつつも、神谷がある事を言う。
「村上、お前は側面に回れ」
「はっ? なに言ってんだ神谷!?」
村上は神谷の言葉に驚くが、神谷は青年を見ながら言葉を続ける。
「俺が自ら出てくる。その隙にお前は側面から攻めろ」
「な、なに言ってんだよ!? 正気か!?」
「俺が囮になれば、奴は俺に狙いを定める。それに同時に側面から回り込めば奴は対処しきれない。それにあれはガトリングガン……あれは出し続けるのは危険だ」
「……あっ……! そ、そうか、良し、俺は側面に回る」
「それで良い。何とか持ち堪えてくれ」
神谷はそう言うと、村上は頷きその場を離れ、青年の側面へと回る意味で移動する。一方、神谷は何かを待っていた。
それは青年のガトリングガンが動かなくなるのを待っていた。否、弾切れになるのを待っていた。刹那、ガトリングガンから弾が出て来なくなった。
弾切れでもあるが連射し続けたせいで薬室が熱くなっていたのだ。青年はガトリングガンが動かなくなった事に気付くがガトリングガンの泣き所を見落としていた。
そして、神谷はその瞬間を待っていた。
「今だ!!」
神谷は青年の元へと走る。青年は神谷が出てきた事に気付くが、側面からは村上が出てくる。二人は同時に青年を迫る。が、青年は無言で風のように消えた。
神谷と村上は驚くが直ぐに立ち止まり、辺りを見渡す。埃が宙を舞い、破壊された物が散乱していた。惨いとしか言いようがないが辺りは暗い為、二人は周りがどうなっているのかは判らなかった。
「っ、ど、何処だ!」
村上は叫ぶが、神谷は顔を引き攣らす。彼等は警戒していた。青年が風のように消えた事には気付いていたが直ぐ近くにいるのではないかと思っていた。
ガトリングガンは一時的であるが使い物にはならない。装填するだけでも時間は掛かるのだ。神谷は其処を突いたのだが辺りを見渡し続ける。
仲間の名を言いたかったのだが場所を知らせる様な物であり、殺してほしいと教えている。二人はそれが嫌であった。自分達で対処しなければならないと考えていた。
二人はそう考えながら離れようとはしなかった。同時に仲間達の安否を気にしていた。当主である楯無と筆頭でもある半蔵は生存してほしいと願い、仲間達の事も思い出す。
高橋と佐藤、否、二人は死んでいるのではないかと思い、更には誰か一人死んでいる事にも気付いている。
これ以上の犠牲は嫌であったがガトリングガンの餌食にあったのではないかも考えてしまった。二人はそれを知りつつも声を出さず、息を殺している。
互いに背中を預け合うように近くにいるが青年が何処から来ても対処する為でもあった。二人は顔を引き攣らす中、冷や汗を流している。
刹那、近くから大きな音が聴こえた。二人はその音に反応し、音がした方を見る。暗い為に正体は判らなかった。
「い、今のは……?」
村上が神谷に訊ねるが、神谷は首を左右に振る。直後、二つの光が彼等の顔へと向けられる。二人は光により視界を遮られる意味で怯むが直後に二発の銃声が響き渡った……。
「なっ!? い、今のは!?」
倉庫の少し離れた場所にいて、半蔵を介抱していた楯無は二発の銃声に反応して眉間に皺を寄せる。半蔵は壁に凭れ掛かりながら息を荒くしているが止血の気配はなかった。
「ま、まさか……あいつらの身に……」
「喋ってはいけない! 少しも動いちゃダメよ!」
半蔵が何かを言い掛けるのを楯無は遮る。これには半蔵も苦笑いした。
「は、ははっ……だ、大丈夫ですよ……こ、この、く、くらい」
「ダメよ! 今の貴方は怪我人よ!? 安静にしていなさい!」
「お、お嬢様……それよりも私の事より、も……」
半蔵はそれ以上言った後、軽く咳をした。口から血を吐いていた。
「は、半蔵さん!」
楯無は半蔵を見て不意に慌てる。が、半蔵は手で制止した。
「大丈夫、です……自分は、これ、うっ……」
半蔵は身体中に激痛が走り顔を歪めるが右肩を押さえる。
「こ、これくらい……それよりも、お嬢、様」
半蔵の言葉に楯無は慌てながら「どうしたの」と聞き返すが、彼は楯無に対し、他の従者達の事を訊ねた。
「高橋と……佐藤は……恐らく、ですが、他の者、達は?」
半蔵は他の従者達の安否を気にしていた。高橋と佐藤は既に殺されていると思っていた。しかし、他の従者である山川、村上、神谷、鈴木、神山の事であった。
だが、鈴木はガトリングガンの餌食となり、神谷と村上は既に殺されていた。同時に美川も数時間前に殺されているが偽物である美川は楯無に様子を見てくると言い残し、先へと進んだ。
半蔵は他の従者達の事を訊ねるが楯無はつらそうに項垂れると首を左右に振る。
「ごめんなさい……他の皆は生きているかどうかも判らないわ……ガトリングガンの銃弾の中を避けながら、貴方を連れて此処まで連れて来たから」
「そうですか……それよりも他の仲間達は、無事で……っ」
半蔵はつらいのか横向けに倒れる。楯無は慌てて彼の肩を掴むが半蔵は咳をしているが血を吐き続ける。
「まずいわ……」
楯無は困惑した。このままでは半蔵は死んでしまう。それは楯無は望まなかった。自分は半蔵の娘達であり、従者でもあり、親友でもある虚と本音から半蔵を頼まれ、生きて帰ってきて欲しい事さえも望まれていた。
楯無は私情でありながらも布仏姉妹の願いを承知した。そして彼は自分の父、源次の右腕であり、父が当主の間は全力でサポートしてくれたのだ。
半蔵は更識家にとって欠けてはいけない存在である。更識家だけではない――家に残してきた従者達も彼の無事を願っていた。
自分や鈴木達もそうであるが今は自分や危険な状態の半蔵、様子を見に行った美川以外、他の従者達の生存は絶望的であった。
楯無は悩んだ。援軍を呼ぼうにも多くの従者を喪う訳にはいかない、更識家の警備も危うくなるからだ。
「どうすればいいの……っ」
楯無は頭を抱える。このままでは全員、殺されてしまう。楯無としての使命は此処で終わるのか? そして自分は永遠に、妹である、簪とは和解出来ないまま殺されるのか?
楯無はそう思っていた――刹那、彼女は後ろから口元を押さえられ、そして右手首を掴まれながら引き寄せられた。
「ううっ!?」
楯無は突然の事と、気配を感じられず瞠目したが耳元に誰かの声が囁く。
「何し来た?」
その声に楯無は瞠目した。しかし、その声は従者達や知らぬ者達ではない。美川でもなく、半蔵でもない。楯無はその声に聞き覚えがあった。
それは懐かしく、それは保護すべき存在であり、此所へ来たのも彼が現れ、保護する為でもあった。楯無はその声の主に気付き、自分を後ろから拘束した者に訊いた。
「お……織斑、君?」
楯無はその者を織斑と言った。が、その者は楯無の言う通り織斑――織斑一夏だった。彼は此所に来たのも青年と戦うつもりであった。
が、彼は怒っていた。それは彼女等が此処にいる事であった。そして同時に、楯無には心強い、援軍でもあった……。