インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第36話

 翌日の東京。今の時間帯は朝七時であるが昨晩の雨が嘘のように快晴であった。洗濯にはうってつけの日であるが雨の名残りなのか水たまりがどこもかしこも見受けられた。

 そしてここは更識家の楯無の部屋。ベッドには楯無が眠っていた。その近くには父の源次と母の美和が心配そうに見つめていた。

 

「う……うん」

 

 楯無の瞼が微かに動く。源次と美和は驚くが楯無の瞼が開いた。彼女は気がついたのだ。

 

「刀奈!!」

「刀奈!」

 

 二人は楯無が気がついた事に喜ぶが楯無は何かに声がした方を見る。自分の両親がいたが楯無は目を見開くと慌てて起き上がる。

 

「ここは……! 皆は!?」

 

 楯無は源次と美和がいる事に驚きながらも自分の部屋にいる事にも気付いた。が、楯無は更に驚きを隠せなかった。彼女は源次と美和に訊ねる。

 

「は。半蔵さんは!? 皆は!? お、織斑君は!?」

 

 楯無の言葉に源次と美和は瞠目した。が、楯無は未だ問いつめ続ける。

 

「皆は!? 半蔵さんは!? 織斑君は無事なの!? 何処なの!?」

 

 楯無は源次と美和に訊ねた。彼女は他の従者達を心配していた。そして一夏もそうであるが自分が此処にいる事に驚きを隠せなかった。

 しはし、源次と美和は楯無の言葉に一夏という人物の名を聞いて驚くが、源次が訊ねる。

 

「か、刀奈、一夏君もいたのか?」

「ええ! 彼処にいたのよ! でも奴もいたの!」

「や、奴って……まさか……!」

「ホッケーマスクを付けた大男よ!」

 

 源次は何かに気付くが奴とは、白いホッケーマスクを付けた大男、ジェイソンの事だった。彼が何者で何故、更識家にいる一夏を連れてきたのかは判らない。

 だが源次は楯無の言ってる奴がジェイソンである事に気付くが、源次は楯無を落ち着かせる。

 

「取り敢えず落ち着きなさい刀奈、今はゆっくり休みなさい」

「でも皆が……織斑君が……!」

 

 源次は楯無を宥めるが楯無は我を忘れつつある。理由は自分が此処にいる事や従者達の事であるが源次はその事を教えた。

 

「それよりも聞きなさい……! 刀奈、お前は此処にいるのはお前が通路に倒れていたからだ!」

「えっ……通、路?」

 

 楯無が不安そうに訊ねると、源次は深く頷いた。

 

「ああ、お前は通路に倒れていたんだ。私がお前を部屋に運んだのだが……他の従者達の姿はなかった……一夏君もいない」

 

 源次はつらそうに言葉を述べるが、楯無は表情を青褪める。自分は通路に倒れている事に驚きを隠せなかったのだ。あの倉庫から、この屋敷にどうやって来たのかも判らない。

 しかし、彼女が一番最後に見た光景は一夏と再会した後であった。

 

「お父さん、お、織斑君は? 皆は……!」

 

 楯無は不安になる。そんな楯無を美和が宥めるが源次はその事も教えた。

 

「お前は少しの間、気を失っていた。今の時間帯は朝の七時だ」

「っ……そ、それで……他の皆は……」

「……私はその後、警察に連絡して、倉庫に向かわせたのだが……実は」

 

 源次は俯く。何か問題があった事を意味しているが楯無は不安そうに訊ねる。

 

「み、皆どうしたの?」

「……済まない、此処からはきつい話だが、其処は許してくれ」

 

 源次はそう言いながら、ポツリポツリと話し始めた。

 

 

 

「そ、そん……な……!」

 

 楯無は源次から事の事情を教えられたが、口元を押さえながら驚きを隠せなかった。が。それ以上に驚いていたのが従者達は、青年を捕えるのと一夏を保護する為に来た従者達は全滅したのだ。

 高橋は首筋を切られ、佐藤は首をあらぬ方向に曲げられ、村上と神谷は銃で額を撃ち抜かれ、鈴木はガトリングガンで射殺され、山川が青年が辺りに乱射したガトリングガンに巻き込まれる形で蜂の巣にされた。

 そして、神谷は頭を鷲掴みにされながら頭を押しつぶされてしまったのだ。皆、青年とブギーマンが殺したのだ。ブギーマンが殺したのは二人だけであるが後は全員、青年がやった。勿論、これは源次達には判らなかった。彼等の死体を調べたのは警察であり、自分達は被害者の遺族的立場でしかない。

 それ以上の事は警察に任せるしかなかった。これ以上調べられれば何か危険なことが起きるのだ。そこは政府が何とかしてくれるが楯無は震えが止まらず、目に涙を浮かべながら俯く。

 刹那、楯無は嗚咽を上げた。従者達が全滅した事に更識家当主としての自分への怒りと失望を吐き出す意味でもあった。

 自分は彼等を助ける事は出来なかった、そう思ったのだ。楯無を見た源次はつらそうに俯き、美和は楯無の背中を擦る。

 室内は重苦しい雰囲気と空気が流れた。従者を喪った事によるものだった。楯無の泣き声が哀しいBGMを思わせるが不謹慎としか言えなかった。

 それでも従者達を喪った事に変わりはなく、生き返る訳でもない。三人はその重いような出来事を了承しているが喪った哀しみは消えない。

 しかし、源次はある事を言ってはいない。それは二人の従者と織斑一夏の存在であった。彼が言ったのは殉職した従者達の事である。

 源次はそのことを言おうとして顔を上げる。

 

「気がついたようだな」

 

 刹那、近くから声が聞こえ、源次と美和、嗚咽を上げていた楯無は泣くのを止め、瞠目しながら声がした方を見る。

 そこにいたのは腕を組みながら仁王立ちしている一夏であった。白いシャツに黒いジャケット、青いズボンを穿いていた。

 

「お,織斑君……! っ」

 

 楯無は再び項垂れる。一夏を見れない訳ではなかった。彼がいる事に驚きよりも、彼が此処にいるなら、またいなくなるのではないかと思っていたからだ。

 源次は楯無の様子に気付くが一夏を見ると、訊ねた。

 

「織斑君……何時から此処に?」

「……さあな」

 

 一夏は源次から目を逸らすが源次は軽く下唇を噛むと、彼に近づく。一夏は源次に気付くが、彼は一歩も動かなかった。

 源次は強張っていた。恐らく自分や従者達の事を訊こうとしてる。一夏はその事に気付くが何も言わなかった。 

 刹那、源次は哀しそうに笑いながら口を開く。

 

「……無事で良かった」

 

 源次は一夏にそう言った。これには一夏は眉間に皺を寄せるが、楯無と美和は源次の言葉に瞠目した。が、彼は言葉を続ける。

 

「無事で良かった……そしてありがとう」

「……何がだ?」

「……惚けないでくれないか? 君だろ、刀奈を此処に連れて来たのは?」

「……さあな」

 

 一夏は否定した。しかし、源次の言い分は正解であった。楯無を連れて来たのは、一夏であった。彼は楯無を手刀で気を失わせた後、何故か此処に運んで来たのだ。

 その理由は彼にしか判らないが源次は更に、ある事を言った。

 

「それにありがとう……恐らく半蔵も君のおかげで、彼は何とか一命を取り留めたよ……」

 

 源次はそう言うと、楯無は目を見開いた。が、直後に楯無は源次に詰め寄ろうとした。

 

「お、お父さん! は、半蔵さんは無事なの!?」

 

 楯無は源次に詰め寄る。源次は哀しそうに頷く。半蔵は無事だ。そう意味していた。

 楯無は源次が頷いたのを見て項垂れる。泣きそうになった。半蔵が無事なのを喜びたかった。なのに、出来ない。

 他の従者達は既に帰らぬ人となっている。半蔵だけが無事なのは喜ぶどころか、半蔵だって彼らが死んだ事に嘆くだろう。

 

「半蔵は今、病院で集中治療室にいるが虚ちゃんと本音ちゃんが傍にいるよ……彼女達は父親が無事である事を泣いているのと、喜んでいる」

 

 源次はそう言葉を述べるが彼は不意に目を逸らす。源次は楯無を見ているが一夏を見ている訳ではない。

 しかし、一夏は楯無は半蔵が死んでいると思っているが、彼は半蔵は未だ生きている事に気付いていたのだ。

 彼が何故、その事に気付いたのかというと、彼の右目が教えていたのだ。彼の右目は人工的かつ、特殊な物であった。

 彼の右目は人が生きているのかを知る事が出来る。人が生きていると赤く表示され、されていないと死んでいる事を意味していた。

 背景は灰色であるが灯り等関係なく、暗闇の中でも難なく行動出来るのだ。彼が倉庫内を自由に行動出来たのも右目のおかげであるが、ジェイソンの境遇をも映し出している。

 彼はあの時、半蔵が生きているのを知っていたのも右目のおかげであるが、彼は半蔵を病院に連れて行ったのだ。勿論、受付ら変に放り込むと、内緒で姿を消したのだ。

 一夏はその事を楯無達には言わない中、源次は不意に項垂れる。

 

「半蔵は無事だった……だが」

 

 源次はつらそうに何かを言い掛けていた。楯無は源次の言葉に気付くが彼女は顔を上げ、美和は源次を見る。一夏は何かに気付くが直ぐに判った。

 しかし、彼は何も言わず目を逸らす。源次の言葉を待っていた。恐らく、あの事であるが敢えて黙っていた。

 すると、源次はつらそうに語った。

 

「美川は……、彼女は、死んだよ」

 

 源次がそう言うと、楯無は目を見開いた。が、それは楯無と半蔵しか生き残れなった、そう意味しているが一夏がいなければ、彼女達は全員、全滅していた、そう教えていた……。

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